僕のヒーローアカデミア:Battlefront of Blood 作:マーベルチョコ
楽しんでいただければ嬉しいです。
File.1 Begining of Blood
現在の人口の内、約8割が『個性』という超常の力を持つ世界。
超常が日常となった世界である職業が脚光を浴びていた。
その職業とは『ヒーロー』。
悪を打ち倒し、人々を救う皆が憧れる仕事だ。
しかし、『悪』と言ってもそれには様々な形がある。
その中にはこの世の人知を超えた『悪』……いや、『闇』が存在する。
これは世界の均衡を守るため、そして大切な人を守るために戦う者達の記録である。
○
桜が舞い散る4月………季節は春。
多くの者が新たなスタートをきり、胸に期待と不安を抱えて歩き出す季節だった。
そんな素晴らしい日に物騒な光景が広がっている。
多くの不良たちがバット、鉄棒など武器となる物を持ち、1人の学生を囲んでいた。
「おうおうおうっ!!!今日こそはテメーの首貰うぜ!!!」
不良の1人が前に出て、囲んでいた学生に啖呵をきる。
囲まれた学生は少しため息を吐いてから、啖呵をきった不良のほうを向いた。
「いや、このまま何もせずに学校に行きたいんだけどな」
「『真紅の鬼』であるテメーを倒せば俺たち、普羅血(ふらち)高校は株が上がるってもんだぜ!!!」
「………中坊を寄ってかかって倒して株が上がる?」
「殺れ!テメーらァァァ!!!」
一切に不良たちは襲いかかり、殴る鈍い音が響いた。
○
学生が多く歩いている通学路の中で、スマホに耳たぶから伸びるコードを指している女子中学生は学校に向かっている途中だった。
彼女は耳郎 響香。
辺須瓶(べすびん)中学校に通っている今年から3年生の女子中学生だ。
スマホでニュースや音楽のことを調べていると彼女の前に慌てた同じ制服の女子2人がやってきた。
「耳郎さん!!」
「大変なの!!」
「ど、どうしたの?」
2人の慌てように響香は耳たぶのイヤホンを外し、取り敢えず聞く姿勢になる。
「私たちが不良の人たちに絡まれているところにラインヘルツ君が助けてくれたんだけど、不良の人たちに連れていかれちゃって……!」
「先生呼ぼうか迷ったんだけど、ラインヘルツ君が呼ばなくていいって言っちゃったの……」
それを聞いた響香は呆れた表情になり、ため息をついた。
「あンのバカ……わかった。あとはウチがなんとかしとくから2人は学校に行っていいよ」
「い、いいの?」
「先生とか呼ばなくていい?」
「うん……逆に呼んだらややこしくなりそうだし……」
耳郎は2人に教えられた場所に行くとそこには………不良が全員のびており、その中心で先程袋叩きにされそうだった学生が立っている。
それを見た耳郎はまたため息をつく。
「はあ、もう………血界(ちかい)!!!」
耳郎が学生の名前を呼ぶと彼は振り返った。
彼の名前は血界・V・ラインヘルツ。
耳郎と同じく、辺須瓶中学校に通う男子中学生で3年生だ。
「よお、耳郎」
「よお……じゃないよ!!アンタまた喧嘩して……」
「喧嘩じゃないって、ちゃんと全員から一発貰って一発ずつ返したから正当防衛だ」
「正当防衛ってねぇ……」
耳郎が倒れている不良に目を向けると全員が目を白くして気絶しているか、うめき声を上げている。
明らかにやり過ぎだ。
「これじゃあアンタが悪いことになるよ」
「なに!?」
するとそこにカメラのシャッター音が聞こえた。
2人がシャッター音の方を向くと、そこには氷のような水色の髪をツーサイドアップにした、小柄だが中学生3年生しては豊かな胸を持つ女子学生がスマフォを向けていた。
「みーちゃった。衝撃的証拠」
「おい!氷麗!!何撮ってんだ!!」
彼女は氷麗・A・スターフェイズ。
2人とは友人だが、何かと血界とぶつかり合う。
「おはよー響香」
「ぐへっ」
「おはよう、氷麗」
氷麗が倒れている不良を踏みながら耳郎に抱きついた。
何気にひどい。
氷麗の豊かな胸が耳郎に押し当てられ、若干耳郎のこめかみが僅かにヒクついた。
「くっ………!」
「どーしたの?」
「おい。俺を無視すんな。写真今すぐ消せよ」
「ヤーだよー。これはアンタを脅すために使うんだから」
「なに!?スマホかせ!」
血界が氷麗を捕まえようとするが、氷麗はスルスルと逃げていく。
「待て!コラ!!」
「捕まえてみなさーい」
「氷麗。その写真ウチも写ってるから消してほしんだけど……」
「………響香が言うなら消す」
耳郎が頼むと氷麗は素直に写真を消す。
「なんで俺の頼みは聞いてくれないんだ」
「血界だからイジメて楽しい」
「なんだと!?」
「ほら、2人とも学校に行くよ。このままじゃ遅刻しちゃう」
響香が2人を促し、学校に行こうとすると血界の頬に傷があることに気づいた。
「ちょっと血界、傷があるじゃん」
「マジか。まあ、このくらいならすぐに治る」
「動かないで。拭いたげる」
耳郎はポケットからハンカチを取り出し、傷の汚れを拭ってくれた。
それを見ていた氷麗は2人を茶化してきた。
「お二人さんアツアツだねーまるで夫婦みたい」
「ハアッ!!?な、何言って………!!」
「んなわけないだろうが。耳郎と俺なんて似合わない」
「ふんっ!」
「なんで!?」
氷麗の茶化しに耳郎は顔を真っ赤にさせて慌てるが血界はそれを冷静に返すと、耳郎は突然自身の個性である『イヤホンジャック』を血界に突き刺し、内部に衝撃波を放って血界を痺れさせた。
「うっさいバカ……」
「響香も苦労するね」
「氷麗も!!そんなんじゃないって……」
少し拗ねた様子の耳郎に慰める氷麗だが、氷麗のそばに倒れていた不良が立ち上がり、氷麗を捕まえた。
「氷麗!!」
「わー」
「動くんじゃねえぞ!!こいつがどうなってもいいのか!!」
不良は指をナイフのように尖らせて氷麗の顔に近づける。
「おい、お前やめとけって」
「うるせえ!!中坊に負けたとか面目丸潰れなんだよ!!!引き下がれっか!!!」
どうやら不良は自暴自棄になっているようだが、それは命取りだ。
「違う。お前のためにだな……」
「……せ」
「あ?」
血界が説得を試みようとした瞬間、氷麗からか細い声で何か言い、不良が目を向ける。
「離せ」
「おごっ!!?」
その瞬間、絶対零度の目を向けた氷麗が足を振り上げ、不良の首にその小柄な体からは到底出せると思えないほどの強烈な蹴りを放ち、不良は吹き飛んでいった。
「あれはいいのか?」
「いや、ダメでしょ」
「響香ー怖かったー」
「う、うん。ウチはアンタが怖いわ」
蹴られた不良を指差した血界は呆れ顔で耳郎に聞くと、耳郎は苦笑いしながら答えた。
すると3人の耳にパトカーのサイレン音が聞こえてきた。
「やばっ!警察来ちゃったじゃん!どうしよう!?」
「氷麗走れるか?」
「よゆー」
「よし。耳郎ちょっと失礼するぞ」
「え?なに?……きゃっ!」
血界は耳郎の後ろにまわり、突然お姫様抱っこをした。
「ちょっ……ちょっと!何やって……!!」
突然のことに顔が赤くなる耳郎だが、2人はそれを気にしなかった。
「このまま走って逃げるぞ」
「りょーかい」
「逃げるって……うわっ!」
耳郎を抱えた血界と氷麗はその場から信じられないスピードで離れていった。
○
学校にたどり着いた3人はなんとか遅刻せずに済んだ。
「はあ……なんとか間に合った」
「ため息ばっかりだと幸せが逃げちゃうよ?」
「主にアンタら2人のせいなんだけどね」
なんとかたどり着いた3人はさっさと教室に入ると3人以外の生徒が来ていた。
耳郎が席に着くと前に座っていた女子が振り向いて話しかけて来た。
「遅かったね、響香。今朝も真紅のお世話してたの?」
この話しかけて来たロングヘアーにピアスをつけたどこかクールな感じがする女子は渋谷凛。
凛も血界たちと仲がいい。
「そっ。今日も喧嘩してた」
「喧嘩じゃねえよ。襲われたからやり返しただけだ」
「血界はやり過ぎなの」
「お前に言われたくはねえよ」
氷麗に言われ、血界が言い返すとそこにもう1人現れた。
メガネをかけたひ弱そうな男子だ。
「おはよう、みんな」
「おはようクロ。聞いてくれよ、今朝さ……」
血界はクロと呼ばれた男子に今朝の経緯を話すとクロは苦笑いをした。
「うーん……血界は力が強いからね。ただ反撃するだけでも相手にとっては致命傷になるんじゃない?」
「クロもか……」
「でも血界はその女子2人を助けるためにやったことなんだよね。ヒーローみたいだ」
「まぁ、そりゃヒーロー志望だからな。人助けは当たり前だ」
「氷麗もだっけ?」
「うん、凛は?」
「私は2人みたいなヒーロー向けの個性じゃないから普通の高校にする予定。クロは?」
「僕も普通の高校だよ」
「響香はどうするの?響香の個性ならヒーロー向けじゃん。それともやっぱり音楽系?」
「ウチもヒーロー科志望だよ」
この5人は1年の頃から知り合い、それからよく一緒にいる仲良し5人組だった。
(進路か……昔のウチなら音楽系とヒーロー科で悩んでただろうな)
耳郎は親の影響で音楽、特にロックが大好きだった、いくつもの楽器を使いこなせるほど練習もしたし、それが楽しかった。
それで昔は音楽系に進もうかと考えていたが、血界との出会いが彼女の進路を変えた。
「隣町で指名手配中の敵(ヴィラン)が出没したというニュースがありました。皆さん登下校中には十分に気をつけましょう。それと皆さんそろそろ進路について考えなければいけません。今週中にとりあえずの進路を提出したくださいね」
「響香!」
「え!?」
「プリント回ってきたよ。どうしたの?」
「ごめん、何でもない」
耳郎は回ってきた進路希望の用紙を見つめ、用紙に自分の進路を書き込んだ。
○
血界に倒された普羅血高校の生徒たちは警察のお世話になり、全員が不貞腐れながらいつもの溜まり場に集まり、今日のことの不満を言い合おうとして溜まり場に行くと知らない誰かがいた。
「あ?誰だテメェ!!?」
「お前ら朝見かけたよ?中学生にボロボロにされていたよね!?アハハハハッ!!!」
男は突然笑い出し、不良たちが怒り出した。
「テメェ!ふざけんなよコラァッ!!!」
不良たちが朝のストレスをぶつけるかのように殴りかかるが、男が指を鉄の鞭に変えると不良たちに高速に振るって全員を叩きのめす。
「そんなんだからやられちゃうんだよ?」
「な、何なんだよお前!?」
「あれ?知らない?今ニュースで有名なんだけど?指名手配中の敵『アイアンウィップ』って呼ばれてる?やっすい名前だけどねー」
自分が敵と言った瞬間、不良たちは顔が強張る。
「ヴィ、ヴィランってマジかよ……」
「ヤベーって……」
ウィップは立ち上がり、不気味な笑みを浮かべて不良たちに近づいていく。
「君たちにはリベンジのチャンス、あげようか?」
○
翌日の下校時間、耳郎、凛、氷麗は3人で行きつけのCDショップに寄って行こうという話になり向かっていると、普羅血高校の生徒が耳郎たちを取り囲んだ。
「またアンタら?いい加減懲りない訳?」
耳郎が呆れたように聞くと、不良たちの顔が昨日と違い、何か怯えていることに氷麗は気づいた。
「響香、凛……何かおかしい」
「え?」
「どういうこと?」
警戒する氷麗に彼女たちもおかしいことに気づく。
「頼むから黙ってついて来てくれ!」
「仲間が危ねぇんだよ!!」
言っていることがわからない耳郎たちは警戒していいですよ、とは言わない。
「いや、なんで付いて行かないといけない訳?」
耳郎がそう言うと不良たちは苦虫を潰したような表情になってポケットからナイフを取り出した。
「痛い目にあいたくなかったらついてこい」
「ベタだなー」
氷麗があきれたように言うが、耳郎と凛は緊張した表情で固まり、取り囲まれて下手に動けない。
「わかったわ。付いて行くから手荒なことはしないで」
2人の様子を察した氷麗は3人で逃げるのは難しいと判断し、ため息を付いて不良達について行くことにした。
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その頃血界とクロは2人でハンバーガーショップで駄弁っていた。
「今日も耳郎にイヤホンジャックされた……」
「あれはね〜……明らかに氷麗が何か仕掛けていたもんね」
「やっぱりか!」
「でもそのあとイヤホンジャックされたのは血界が悪いと思うよ。あれは誰でも恥ずかしいと思うし」
「何でだ?耳郎が転びそうになったのを俺が抱きとめただけだ」
「その後言った言葉覚えてる?」
「確か『綺麗な顔に傷がつくと俺も悲しい』だったな。……何か今思うとスッゲェ恥ずかしいこと言ってるな俺」
「そんな事がしょっちゅうだからね。そりゃ耳郎だって恥ずかしくなってイヤホンジャックしたくなるよ」
「マジでか、気をつけよ」
「……多分焼石に水だね」
呆れたように言うクロに訳がわからない血界は首を傾げていると、血界のスマホにメッセージが届き、それに目を向けると血界の目が一気に険しくなった。
「クロ……悪いけど、この後の約束、また今度にしてもいいか?」
「どうかしたのかい?」
「急用が入った」
「……そっか、なら仕方ないね」
「また後日埋め合わせするから。じゃあ、またな」
血界は口数を少なく、そのまま店を出て行ってしまい、クロはそれをコーラを飲みながら見ていた。
血界が店を出て、すぐにスマホを確認するとそこには写真付きでこうメッセージがあった。
『友達を傷つけて欲しくなかったら、誰にも知らせず昨日の場所まで来い』
そして写真には拘束された耳郎たちの姿があった。