僕のヒーローアカデミア:Battlefront of Blood 作:マーベルチョコ
突如氷麗の足から冷気が溢れ、スパイク状の氷柱が形成された。
「エスメルダ式血凍道……」
絶対零度の棘脚
血を媒介に万物を凍らせる血の技……エスメルダ式血凍道。
それが氷麗をB組最強に押し上げた要因の一つだ。
「いくよ?」
そう言った瞬間、氷麗の姿はまたも消え、血界が周りを警戒した瞬間には氷麗の蹴りが血界の顔の側面を蹴っていた。
「があっ!?」
突然襲う衝撃に血界は吹き飛ばされるが、何とか体勢を整え立ち上がろうとし氷柱が刺さり、側面からも血を流れている顔を上げる。
しかし血界が気づいた時には顎に向かって振り上げる脚が迫ってきていた。
そして顎を打ち上げられた血界は後ろに仰け反りながら、口から血が吹き出る。
「がふっ!!」
『血界!氷麗の猛攻になす術がなーーい!!てか攻撃がエゲツないな!!』
マイクの実況の中にも血界を心配する台詞が入るほど、一方的な状況だ。
「なんて速さなんだ……俺のレシプロバーストといい勝負じゃないか」
「うん。それもあるけど氷麗さんのあの的確な攻撃は恐ろしいよ」
飯田は自分とほぼ同じスピードを出す氷麗に驚き、緑谷は的確に人間の弱点を狙ってきている氷麗に戦慄した。
しばらく氷麗の猛攻が続き、アリーナには蹴りの鈍い音が響き、その地面には血が撒き散らされた。
「ハァ…ハァ…ハァ……」
開始から10分、体操服は擦り切れが多く血が滲んでいた。
擦り切れているところから見える傷は痛々しく、立ってるのがやっとなように見える。
「まだ倒れない、相変わらずタフね」
「チクショー……攻撃できねぇ……!!」
疲れた様子を見せない氷麗は冷静にそう呟き、血界は苦しそうにしながらも笑みを見せて自分を奮い立たせる。
「倒れるまで蹴り続ける」
「ッ!」
またも氷麗の姿が消え、血界は咄嗟に腕で顔をガードするとそこに蹴りが当たる。
「ぐうぅっ、おおぉ!!」
受け止めた足を掴み、投げようとするがその瞬間手が凍りつく、
「い"っ!」
「フッ!」
「ぐあっ!」
掴まれた足を軸に血界の頭を蹴り落とす。
倒れる血界に氷麗はさらに攻撃を加えていく。
血界も防御姿勢になるが氷麗の容赦ない攻撃にダメージだけが溜まっていき、ステージが血で赤く染まっていく。
それを見ていた観客たちは堪らず、声を上げた。
「もういいだろう!ミッドナイト!試合止めろよ!」
「これ以上やったら死んじゃうわ!」
『うーん……爆豪のときみたいな感じじゃないけど、流石に止めたほうがよくないか?』
『ミッドナイトが主審をしてるんだ。あの人の采配に任せるしかない』
相澤もそうは言い、ミッドナイトに采配を任せた。
とうのミッドナイトは防御姿勢の血界の目に注目する。
血界はどれほどの傷つけられようと、その目には一切の諦めが見えない。
ミッドナイトは止めず、試合を続行した。
しかし、やはり観客はそんなこともわからないので血界が氷麗にただ嬲られているようにしか見えない。
「あの氷麗ってやつヤベーって!ただの嬲り殺しじゃねえか!!」
「もう見てらんない……!」
切島が立ち上がながらそう叫び、葉隠は見てるのが辛いのか顔を手で覆う。
また氷麗の蹴りが血界の顔に突き刺さり、口から血が吹き出すのを見た切島は堪らず、試合を止めるようにミッドナイトに言おうとするが、それを隣で何も話さず試合を見守っていた耳郎が止めた。
「なんだよ耳郎!このままでいいのかよ!」
「待ってよ……まだ試合は終わっていないから」
「試合ってこんなの一方的なモン、試合じゃねえよ!」
上鳴が耳郎に堪らず叫ぶが耳郎はステージ上の2人から目を離さない。
「まだ終わってない」
切島も言い返そうとするが自分の腕を掴んでいる耳郎の手が震えていることに気づいた。
「切島ちゃん、みんな心配なのは同じよ。だけど血界ちゃんを信じて待ちましょ?血界ちゃんが何もせず終わるはずがないわ」
蛙水のその言葉に切島は何もできない、してはいけない自分に歯痒さを感じながらも座った。
耳郎も2人を見守ってはいるが本当ならすぐにでも駆けつけて2人の試合を止めたい。
血界が傷つくの見たくないからだ。
だが、2人の試合を止めるのはそれよりもしたくない。
友人であり、憧れである2人の試合を止めるのできない。
耳郎は心の中で、無事に試合が終わるように祈るのと2人を応援することしかできなかった。
○
「ハァー、ハァー、ハァー……!」
「ハッ…ハッ…ハッ……」
血界は身体中から血を流し、息遣いも先程よりも荒くなっており満身創痍なのは目に見えていた。
しかし氷麗もずっと一方的に蹴り続けてきたからか、疲労が見えていた。
「タフなのも大概にしときなさいよ……!死ぬわよ、アンタ」
「まだ……ハァッ……まだ……ぐっ!」
ふらつく体を止めようとするが膝から崩れ落ちる。
なんとか立ち上がるがもはや虫の息だった。
「もう終わりにしましょう。私が勝って終わりよ!」
またも高速移動で姿が消えた氷麗に意識が朦朧としている血界は気づくのが遅れ、ガードできていない。
「フッ!」
「ぐあぁあっ!!?」
氷麗の蹴りが血界の左脇腹に当たり、血界は堪らず叫んだ。
(?、USJの時の怪我か!)
苦しそうに呻く姿を見て、血界の最も弱いところ、USJ事件の際に最も大きな怪我を負った脇腹がわかった氷麗は今度は顔に蹴りを放つ。
「くっ!」
しかし氷麗の蹴りは血界のガードをすり抜け、蹴りの反動を使ってガラ空きになっている左脇腹に再び重い一撃を放った。
「………っぁ!!!」
もはや言葉にならない叫び声をあげる。
そこにすかさず氷麗は胴体に蹴りを入れ、血界が上空に高く上がるように蹴った。
身長が180近くある血界が上空約8mも蹴り上げられた。
それだけで氷麗の脚力が凄まじいものだとわかる。
『血界が上空に吹き飛ばされたーッ!!』
上空に蹴り上げられた血界よりも高く、そして追いつくように氷麗も飛び上がり、足を大きく振りかぶる。
「エスメルダ式血凍道、」
絶対零度の巨剣
足から放たれた巨大な氷の激流は一本の剣のように伸び、血界の腹に当たり、まるで串刺しのように血界を通り抜け地面を凍らせた。
それはさながら公開処刑のような光景で、観客も声が出ない。
「はぁ……はぁ……、これで……終わりよ」
『氷麗!決めの大技で血界を氷漬けにしたァ!!』
氷麗は氷を伝って、腹の部分だけが氷で凍らされた血界の前まで近づき、そう宣言した。
ミッドナイトも流石の血界も動かないだろうと思い、勝敗を宣言しようとすると、突然血界の腕が動き氷麗の足を掴み取った。
「うそっ…!まだ動けるの!?」
「やっと……捕まえた!」
氷麗が掴まれた逆の足で血界を蹴るがその手は絶対に離れない。
掴んできた手も足からの冷気で氷が張ってきているが離さない。
余裕があった氷麗の顔がだんだんと無くなってきた。
「離せ!」
「お前のスピードに俺がついていけないのはわかってたんだ……だから待ってたんだよ!お前が大技を使ってくるのをなぁ!!」
血界では氷麗のレシプロバースト並みの速さに追いつくのは無理、それに反応するのだって難しい。
だから待っていた。
氷麗が自分にトドメを刺す時に繰り出す大技を。
血界が叫び、空いている手で氷を殴ると個性で氷を破壊し、重力に従って2人とも落ちる。
「この勝負!俺の我慢勝ちだな!」
「くぅっ……!」
地面に落ちながらも血界は腕を構える。
「ブレングリード流血闘術……!」
121式 貫通式血十字撃
氷麗を下にして地面にぶつかる前に拳を氷麗の腹にぶつけ、血の衝撃が貫通し、ステージにの大きな十字架のクレーターを作った。
「かはっ……!」
氷麗の体にも凄まじい衝撃が伝わった。
血界は痛みと疲れでフラつく体を抑え、立ち上がり、降りてきたミッドナイトが氷麗の様子を見た。
氷麗は血界の強烈な一撃で気絶しており、動かなくなっていた。
「………スターフェイズさん行動不能!勝者!血界・V・ラインヘルツ君!!」
ミッドナイトの宣言と同時に観客から歓声が上がった。
『一方的な蹂躙劇からの大・逆・転!!!たった一撃で仕留めたー!!』
『ラインヘルツのやつ……ずっとこの時を待ってやがったな』
『どういうこったよ?』
『アイツなら色々な技でスターフェイズの動きを止めることだってできただろう。なのにアイツはそれをせずガチンコで戦ってやがった。確実に倒すためなのか、それとも手心を加えたのかはわからないが、作戦だったんだろうな』
相澤の解説が聞こえてくるが今の血界にそれを聞く余裕がなく、頭がボーっとするが倒れている氷麗に近づく。
「ラインヘルツ君、すぐに医務室に行きましょう。ひどい怪我よ」
「すいません……ちょっと待ってもらってもいいですか?」
血界は倒れている氷麗の側に立つ。
「ほら、医務室行くぞ」
血界がそう言うと仰向けに倒れていた氷麗は寝返りを打って顔を血界とは逆の方に向けた。
どうやらもう目が覚めいるようだが体がうまく動かないらしい。
血界がため息を吐くと氷麗を肩に担ぎ、医務室に向かった。
「ラインヘルツ君怪我大丈夫なの!?担架に乗りなさい!」
「大丈夫っす。ほっとけば治るので」
片足を引きずりながら歩く姿はどう見ても大丈夫なようには見えないがそれでも氷麗を担いで医務室に向かう。
すると担がれている氷麗が話しかけてきた。
「……ねえ、アンタ手加減したの?」
どうやら相澤の放送を聞いていたらしく、『手心』の言葉に引っかかりができたようだ。
「そんなことできる余裕があるかよ。全力でお前を倒したかったから、あんな戦い方しかできなかった。……あと一発貰ってたらヤバかったな」
実際に氷麗のスピードは目の前にしたら全く反応できなかった。
だから血界は一撃で倒せるようにあんな作戦とは言えない、無茶な作戦を立てたのだ。
「……次は私が勝つわ」
少し拗ねたように言う氷麗に血界は痛みで少し顔が引きつるが笑った。
「残念、次も俺が勝つ」
「………………次の試合、頑張りなさいよ」
「おうよ」
○
耳郎、八百万は医務室に急いでいた。
「血界!大丈夫!?」
耳郎が扉を開けるとリカバリーガールに包帯を巻いてもらっている血界の姿があった。
「おう、俺は元気だぞ」
そう言って笑う血界だが、体の至る所が切り傷、擦り傷、打撲傷で埋め尽くされており、見てるだけで顔が青くなる。
「馬鹿……心配したんだから」
耳郎はとりあえず笑って返事をしてくれた血界を見て安心した。
「どこが元気だい。骨折、骨の罅、それに凍傷……見ただけじゃわからない傷がいっぱいあるって言うのに」
リカバリーガールはため息を吐いた。
「そんなに酷いなんて……次の試合には出れますの?」
「私としては出したくないんだけどね……そう言っても聞かんだろうさ。この子は……」
「わかってんじゃん。リカバリーガール」
そう言って笑う血界に少し苛つきを覚えたのかリカバリーガールは傷口をペシッと叩き、叱咤した。
「イダッ!?」
「生意気なことを言うんじゃないよ!本来なら病院送りなんだからね!!」
「ちょっ、ちょっと!そんな状態なのに出て大丈夫なの?」
リカバリーガールの言葉に流石に耳郎も不安になってくるが、血界は大丈夫だと言う。
「それより今、飯田と常闇の試合なんだろう?次は耳郎と爆豪の試合じゃねえか。頑張れよ、爆豪は強いけどお前なら勝てるって俺は信じてる」
耳郎は傷ついている血界が心配だが、彼の応援の言葉に次の試合に意識を向けることにした。
女子であろうと容赦無しに攻撃してくる爆豪に苦戦は必至だ。
血界と決勝で戦うために、自分が目指すヒーローになるためには超えなければいけない。
血界は血みどろになりながらも勝利を掴み取ったのだ。
自分も負けていられない。
「う〜ん……うるさい」
すると血界の後ろのベットから氷麗の眠そうな声が聞こえてきた。
「氷麗!ここにいたんだ」
「氷麗さん、お腹は大丈夫ですか?」
驚く耳郎たちだが、氷麗も労わる。
「響香がんばってね。あんなヴィラン顔に負けないで」
「私も応援してますわ。頑張ってくださいね!」
友人たちの応援に耳郎は覚悟を決めた目で3人を見た。
「うん……頑張るよ」
その応援に耳郎は自信を込めて返事をした。