僕のヒーローアカデミア:Battlefront of Blood   作:マーベルチョコ

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File.26 ロックガールと血闘少年の意地と覚悟

飯田と常闇の試合は一見、スピードがダントツの飯田に軍配が上がるかと思ったが一瞬大きな雲が太陽を遮り、光がなくなった。

その瞬間、ダークシャドウの機動が素早く、そして大きさが倍近くなり飯田を襲った。

結果として常闇は勝ったが、どこか釈然とした表情ではなかった。

 

 

そして耳郎と爆豪の試合となり、両者は睨み合う。

だが、耳郎は緊張しており口は固く結び、冷や汗を流している。

その逆に爆豪は笑ってはいないがひどく落ち着いており耳郎を殺さんばかりの眼で睨みつけている。

 

『次はあんまり見たくねー……まさかの新技で相手を撃破!そのままクールに決めるか!?ロッキンガール!耳郎響香!! 対………女だろうが容赦無し!その様はまさに悪逆非道!!爆発ボーイ!爆豪勝己!!……いやー素直に耳郎に勝って欲しいわー』

 

『だから偏見放送すんなって』

 

『イダッ!?』

 

スピーカーから相澤がマイクを殴る音が響いたがステージの2人には聞こえていない。

 

「おい、耳たぶ女」

 

「耳たぶ…!? なに?」

 

爆豪のあまりの名前のつけ方に耳郎は少しショックを受けるがすぐに立て直す。

 

「さっきの俺と麗日の試合を見てただろ。俺は誰だろうと容赦しねぇ。ツリ目野郎のツレだろうがテメェなんざ眼中にねぇ、さっさと終わらせるぞ」

 

爆豪のあまりに不遜な挑発にまた観客からブーイングが飛ぶ。

 

「爆豪君!?君って奴は……!!」

 

「アイツ、また敵を作りやがって……」

 

それはA組も同じで委員長である飯田としては爆豪の発言には怒りを覚え、切島はそんな爆豪を少し心配した。

彼らのように爆豪を非難する者、耳郎を心配する者と多くいたが緑谷は違った。

 

「かっちゃん……真剣だ」

 

「え?どういうこと?」

 

緑谷の呟きに隣に座っていた麗日が反応した。

 

「かっちゃんなら笑ってさっきの言葉を言うのに、さっきは全く笑ってなかった……もしかしてだけど、麗日さんとの試合で一切の余裕を無くしたのかも」

 

「じゃあ、今の爆豪くんには私がしたみたいな不意打ちはできんってこと?」

 

「それはわからないけど……あまり効かないと思った方がいい」

 

人の分析に長けている緑谷がそう言うのならそうだろうと麗日は思った。

実際に爆豪はさきの麗日との試合で警戒心が強くなっており、さらには次の試合、決勝と先のことを見ていた。

しかし、その言葉に耳郎は怒るわけでもなく真剣な目で爆豪を見る。

 

「悪いけど、アンタが思った通りになんてさせないから」

 

「やってみろ耳たぶ女」

 

両者が構え、スタートの合図を待つ。

 

『両者準備はいいな!?……スタート!!!』

 

マイクの合図と同時に耳郎はイヤホンジャックを爆豪に伸ばすが、爆豪は空中に飛ぶ事でそれをかわし、爆発の勢いを使って耳郎に迫る。

 

(やっぱりそう来るか!)

 

すかさず耳郎はイヤホンジャックを戻し、爆豪に向ける。

しかしそれを待っていたと言わんばかりに爆豪は笑みを浮かべ手を前に出し、拍手するかのように合わせようとする。

 

(やばっ!何か来る!)

 

そう感じ取った耳郎は即座にイヤホンジャックを戻そうとし、それと同時に爆豪は拍手をした。

 

「サウンドグレネード!」

 

拍手したのと同時に爆発させ、音を劇的に高くさせた音爆弾が炸裂した。

 

「うああぁっ!!?」

 

咄嗟にイヤホンジャックを戻したと言えど、爆豪のサウンドグレネードの射程圏内に僅かに入っており、僅かにイヤホンジャックが強烈な音を感じ取ってしまった。

音を敏感に感じ取ることができる耳郎にとって僅かと言えどサウンドグレネードは強烈で耳鳴りが酷い。

 

「うう……」

 

その場に膝をついてしまう耳郎だが爆豪は容赦なく耳郎に襲い掛かる。

 

「響香ちゃん!!」

 

「響香さん!立ってください!!」

 

蛙水と八百万が叫ぶと聞こえたのか、耳郎が顔を上げると目の前に腕を振りかぶった爆豪が来ていた。

 

「オラアァァァッ!!!」

 

「うあっ!?」

 

咄嗟に横に避けることで直撃を免れたが爆発の余波に巻き込まれ、少しの火傷と傷を負ってしまう。

 

「くぅぅぅっ……!」

 

痛みに悶えてしまう耳郎だが、そんなことしている場合ではないと立ち上がり爆豪と向き合う。

しかし、その時にはもう爆豪は迫ってきていた。

 

「くっ!」

 

爆豪に向かってイヤホンジャックを伸ばすが爆豪はそれを横に避けて、耳郎の腹に爆発をお見舞いする。

 

「ああぁぁぁっ!?」

 

『直撃ーーー!!』

 

爆発が直撃した耳郎は吹き飛ばされ、ステージ際まで追い込まれてしまう。

 

「まだ……まだ……!!」

 

それでも立ち上がる耳郎は爆豪に向かってイヤホンジャックを伸ばす。

しかし驚異的な反射神経を持つ爆豪はかわしていく。

何度もイヤホンジャックを向けるが全てかわされる。

 

『耳郎!果敢に攻めるが爆豪にはカスリもしなーい!!つーか一回くらい当たれよ爆豪!!』

 

『偏見放送だな。爆豪はもうスピードを上げてきやがったな。体が温まってきてる』

 

マイクの放送の間に爆豪はまた耳郎に手を伸ばす。

 

「終わりだ!耳たぶ女!!」

 

「この……!!」

 

しかし耳郎は氷麗に教えられた護身術で伸ばしてきた腕を掴み、背負い投げで場外に向かって投げ飛ばした。

 

『まさかの爆豪、場外負けかー!!?』

 

「チィッ!!」

 

すかさず掌から大爆発を起こし、無理矢理ステージの中に戻った。

そして腕を掴んでいた耳郎も連れられて、中に戻る。

 

「邪魔だ!!」

 

「ああっ!?」

 

中に戻った爆豪はすかさず払いのけるように爆発を起こし、耳郎を吹き飛ばす。

 

「はぁ……はぁ……」(遠くからでもすぐに近づかれてH・R・Bが使えない!近くじゃ負けちゃう!もうさっきみたいな不意打ちは効かないと思うし……)

 

体にダメージが蓄積し、息が荒く、最早満身創痍だ。

 

「一か八か……」

 

「終わりにしてやるよ!耳たぶ女!!」

 

爆豪が近づいてこようと手を後ろに回す動作をした瞬間、耳郎はまたもイヤホンジャックを伸ばすのではなく爆豪に向かって走り出した。

 

「近づいた!?自殺行為だぞ!!」

 

耳郎の行動に切島が驚きの声を上げる。

広範囲の爆豪の攻撃に近づくのは危険だが、耳郎には何か秘策があるのか突進していく。

 

「ラアァァァッ!!」

 

「今だ!」

 

間近に迫った瞬間、爆豪の手が向けられる前にイヤホンジャックからH・R・Bを発動させた。

 

「ガアアァァァッ!!?」

 

「ああぁぁぁっ!!」

 

2人が悲鳴を上げて、音波により吹き飛ばされる。

 

『耳郎の技が炸裂!爆豪にようやくダメージが!!』

 

「……のォ、クソ女ァ……!」

 

間近でのH・R・Bを喰らって流石の爆豪も辛そうで立ち上がれない。

耳郎はまだ音に耐性があり、しかも自分から出した音だからか辛そうにしながらもすぐに立ち上がる。

 

「ハァ…ハァ…舐めないでよね」

 

少し目がくらむ中、イヤホンジャックを爆豪に向け、刺そうとする。

 

「ぐっ…くっ!まだ終わりじゃねぇぞ!!」

 

しかし爆豪は爆発を起こし、体を飛ばすことで耳郎に体当たりした。

 

「うわっ!?」

 

再び倒れる2人だが、爆豪は体の痺れが若干取れたのか耳郎に飛んで向かっていく。

 

「くっ……!」

 

耳郎はH・R・Bの反作用で鼓動が早くなっている胸に手を置き、苦しそうにしながらもまたイヤホンジャックを向ける。

 

「ワンパターンなんだよ!!」

 

しかし爆豪はそれがわかっていたかのように手を前に向け、イヤホンジャックに向かって爆炎を放った。

 

「いたっ!?」

 

イヤホンジャックに熱さと痛みを感じ、急いで戻すと両耳のイヤホンジャックは火傷して赤くなっていた。

 

「これでもう音の攻撃はできねぇな!!」

 

さらに爆破の攻撃で耳郎を追い詰める。

しかし、耳郎は襲ってくる熱と風に負けじと耐える。

 

(血界も血みどろになりながら、立ち続けたんだ……!!ウチだって……負けていられない!!)

 

憧れた人の戦う姿を自分も情けない姿は見せられない、見せたくない。

決勝で戦おうと約束したのだ。

その意思が耳郎に力を与える。

 

「終わりだァ!!」

 

この試合一番の爆破を耳郎にお見舞いし、爆風が耳郎を包み込み、姿が見えなくなる。

 

『特大の爆風をお見舞いしたァ!!容赦ねえな、オイ!!』

 

『耳郎のあの技を脅威に感じたんだろう。攻撃させる隙を与えていなかった』

 

痛む両腕を気にしながらも、爆豪は煙で姿が見えない耳郎を警戒する。

すると煙の中から体操服の上着が見えた。

 

「っ!!同じ手を喰らうかよッ!!」

 

しかし爆豪はそれを無視し、背後に迫っていた耳郎に振り返り至近距離で爆発を浴びせた。

 

「きゃあっ!!!」

 

全身に傷を負った耳郎は爆破で勢いよく飛ばされ、地面に叩きつけられるがその瞬間、僅かだが笑みを見せた。

耳郎の片方のイヤホンジャックが上着から伸びて爆豪の後ろに迫る。

 

(あと……使えるのは…一回だけ……)

 

朦朧とする意識をなんとか繋ぎ止め、イヤホンジャックを動かす。

 

「くらえ……」

 

か細く呟いたその言葉と同時にイヤホンジャックから血がふきだし、爆豪の至近距離でH・R・Bが炸裂した。

 

「があっ!?」

 

不意打ちの音の衝撃により、爆豪は上空に高く飛ばされ地面に落ちる。

 

『こ、これは両者ダウンー!!』

 

倒れ伏せる2人だが、その瞬間爆豪が腕を地面に立て、立ち上がろうとする。

 

「くっそぉぉぉ……テメェ……!!」

 

息を荒くし、もう目の焦点が合ってない耳郎を睨む爆豪だがその口は笑っていた。

 

「うぅ……」(立たなきゃ……!)

 

耳郎も立ち上がろうと体を動かす。

なんとか立ち上がる2人だが、2人ともダメージが蓄積し、疲労困憊だ。

しかし、爆豪は手から小さな爆発を起こし、やる気を見せる。

 

「行くぞ!耳郎!!」

 

麗日同様に名前呼びになり、耳郎に向かってフラつきながらも走って行く。

耳郎も爆豪を睨みつける。

 

(勝って……ウチは血界に……!)

 

しかし、その瞬間耳郎は膝から崩れ落ちた。

 

「爆豪君、待って!」

 

ミッドナイトが待ったをかけ、倒れた耳郎の様子を見た。

 

「かた、ないと……」

 

小さく途切れそうな声で呟く耳郎を見て、高らかに宣言した。

 

「耳郎さん行動不能!勝者!爆豪君!!」

 

喚き立つ観客だが爆豪は痛む体を抑えながら、倒れた耳郎に一瞥して、戻って行った。

 

「耳郎さん……」

 

「………」

 

担架で運ばれる耳郎を何も言えずに見送る八百万たちの後ろで血界は試合を見ていた。

 

「耳郎……」

 

『10分間の休憩の後、準決勝を始めるぜ!!』

 

マイクのアナウンスを聞いた血界は何も言わず、その場から離れて控え室に向かった。

 

 

医務室では爆豪と気絶している耳郎がリカバリーガールの治療を受けていた。

 

「チユ〜〜〜!とりあえずこの子の治療はこれでいいかね。全く女の子相手にメチャクチャやるねアンタは」

 

包帯で複数箇所を包まれ、ベットで寝ている耳郎を見て、リカバリーガールは呆れたように言う。

 

「知るか。敵ならぶっ倒すだけだ。それより俺の怪我を治せや」

 

「全く、それが人に物を頼む態度かい……」

 

不遜な態度で頼む爆豪にリカバリーガールが呆れながら診断をするが少し眉を顰める。

 

「うーん……外観の怪我なら治せるけど、内側のダメージは少し残るね」

 

「あ?」

 

「あの子の攻撃は外側より、内側にダメージを残すようだね。恐ろしい技だよ」

 

「治せねぇのかよ?」

 

「わたしゃには無理だね。怪我は治せても、ダメージまでは消せないよ」

 

首を横に振るリカバリーガールに爆豪は麗日と耳郎との戦いを思い出す。

弱いと思っていたが自分を追い込んだのだ。

必死に食らいついてきた2人が爆豪には緑谷を思い起こさせ、少し気に入らなかった。

 

「チッ!」

 

「ちょいと!舌打ちしてんじゃないよ!!」

 

「アンタにはしてねぇよ!!」

 

その後、耳郎を心配した八百万たちが爆豪と会い、なんとも言えない空気になったが、それは置いておく。

 

 

次に強敵轟との戦いを控えた血界だが、次の試合に集中しておらず、耳郎と爆豪の戦いを思い出していた。

血界は勿論耳郎のことを本気で応援していたが、勝つのはやはり爆豪で圧倒されると思っていた。

しかし、耳郎は自分の予想に反して耳郎は爆豪に善戦し、引き分け寸前まで持ち込んだのだ。

予想していた自分が少し恥ずかしかった。

 

「あんなに強かったんだな……」

 

中学から知り合い、今では大切な友人の耳郎、今まではどちらかというと自分が守る側の立ち位置だったが、USJの時もそして今回も耳郎は自分を助け、強敵と戦えるようになったことにショックと嬉しさを感じた。

 

「こりゃ、下手な試合は見せられないな」

 

『さあ!そろそろ準決勝を始めるぜ!!』

 

「っし!行くか!!」

 

全力で轟と戦って勝つ、それが負けた耳郎に自分ができる唯一のことだと信じ、入場口に力強く踏み出した。

 




血界の父親の名前を変更しました。
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