僕のヒーローアカデミア:Battlefront of Blood 作:マーベルチョコ
血界と氷麗との試合の時に346プロのシンデレラガールズのオフィスでは、氷麗の猛攻に顔を青くする者が多くいた。
ちなみに年少組には見せられないと新田美波がいち早く勘づき、外に連れ出した。
「いやー…これはちょっと見てられないなぁ……」
「スターフェイズさん、怖いです……」
「………」
普段は明るい本田未央と島村卯月だが、飛び散る血に顔を青くしているが凛はその試合を真剣な表情で見つめていた。
そして血界の逆転で試合が終わると、疲れたのか一息ついた。
「凛ちゃん大丈夫ですか?」
「卯月……うん、ちょっと疲れちゃったけど大丈夫」
「いやーライライ、すごいね。私ならすぐ降参しちゃうよ」
「それだけ氷麗に勝ちたかったんだろうね」
凛はそう言いながら、無事に終わったことに安心した。
「いやー……本当によくやるよね。下手したら一生もんの怪我しちゃうじゃん」
「うぅ……戦士の勲章として……でも痛そう」
双葉杏が驚きながらも少し呆れたように血界たちの試合の感想を言い、神崎蘭子はいつもの厨二病が陰りを見せるほどだ。
「次は響香の試合……」
「対戦相手はあの爆豪勝己……絶対に危ないニャ!」
「私は断然耳郎さんに勝ってほしいな」
全員が耳郎の安否を気にするが、試合は始まった。
容赦ない爆豪の攻めに全員が目を背きたくなるが、耳郎の健闘を見守った。
試合が終わった。
「負けちゃったね」
「でも!耳郎さん頑張っていました!」
「技がカッコよかったよね。ロックでさ」
「うぅ……グス……」
「智絵里ちゃん大丈夫?」
皆が耳郎の健闘を讃えたり、爆豪に怖がったりした。
その中凛は、
「…………」
「しぶりん?また固まってる」
「色々とショックだったんですね」
○
同じ頃血糸のチーフオフィスでも血界たちの試合を見ていた。
「チーくん、大丈夫でしょうか?このまま試合を続けたら……」
「それでもアイツは続けるだろうな。それにしてもスターフェイズさんのところのお嬢さんか。母親に似て容赦がない」
○
そして時は戻り、現在。
観客たちは次の試合をウズウズと待ちわびていた。
日本のヒーローNo.2のエンデヴァーの息子で全てを持って生まれた男の子、轟 焦凍。
この体育祭で勝利への執念を見せ、何度も逆境に立たされたが逆転し勝利を収めた血界・V・ラインヘルツ。
まさに1年の体育祭で最も目立っている者たちの試合が今始まろうとしている。
「血界くんと轟くん……轟くんは熱も使えるようになったから左側に回る戦法は使えない。近接戦主体の血界くんは不利だ」
冷静に分析する緑谷に飯田が声をかける。
「ではやはり勝つのは轟君だと思うのかい?」
「……わからない。血界くんが簡単に負けるはずがない」
過去のことを聞き、助けたいと思った轟。
自分に新たな強さを見せてくれた血界。
緑谷はどちらか選ぶことができなかった。
「……頑張れ」
静かに緑谷は応援した。
○
対峙する2人だがその様子は対照的だった。
轟は緑谷との対戦でダメージがあるはずだが、それはリカバリーガールにある程度治療してもらった。
しかも緑谷戦で使っていなかった熱を使ったのだ。
これで轟の左側が安全圏内という弱点は使えなくなった。
もはや死角がないと言ってもいい。
しかし血界はリカバリーガールの治療がしてもらうことができないため、体操服から覗く包帯が痛々しく見え、少し辛そうに見えるが血界は気にした様子はない。
「お前の挑戦通り、全力でいかせてもらうぜ」
「ああ……」
血界が轟に向かってそう言うが、当の挑戦してきた本人は軽い返事をするだけだった。
それに少し気になった血界だが、とりあえず構える。
『スタート!!!』
合図とともに轟は最大出力で血界を覆った。
『また開始早々のブッパだー!!』
ステージの半分を覆う氷山に何度見ても観客は度肝を抜かれる。
『血界!早々にリタイアかー!?』
しかし、その瞬間十字架の槍が現れ、氷塊を粉々に破壊した。
「こんなので倒せると思ったかよ?」
「……」
轟は血界の問いかけに答えず、今度は小規模の氷を血界に向けるが、それを避けて轟に向かっていく。
それを数回続けると、今度は大きな氷をぶつけてきた。
「っ!」
咄嗟に轟の左側に避けてしまい、熱側の射程範囲に入ってしまった。
「しまっ……!!」
「熱側に立った!」
「使え……!!」
血界はやってしまったと思い、エンデヴァーはまた熱側を使う機会だとニヤリと笑う。
しかし、轟は熱側を使わず血界に向き直り、また氷を放つ。
血界はそれを見て苛つき、向かってくる氷を包帯で包まれた拳で殴って受け止めた。
「舐めてんのか轟………」
「なんだと?」
氷に包まれた右腕だが、個性を発動し粉々に破壊する。
「何で緑谷に使った左側を使ってこない?」
「………」
「まだ父親のことを吹っ切れていないのか?」
「っ!お前、何でそれを?」
「悪いな。盗み聞きするつもりなんてなかったんだけど、つい聞いちまってな。緑谷のときは熱を使ってたからもう吹っ切れたと思ってたぜ」
「………あの時は親父のことを忘れていた。それが悪いかどうか今考えているところだ」
2人は試合中だと言うのに世間話をしている。
側から見ると会話は聞こえてこないので、観客たちは不思議に思った。
「何を話してるんだ?」
「轟くん……」
轟と戦った緑谷はまた熱を使わなくなった轟に不安を覚えた。
「なるほどな……お前は自分の左側が嫌いなんだろう?」
「ああ、だけど緑谷と戦ってわからなくなっちまった」
左手を見つめて、自分の中でぐちゃぐちゃになっていることを思い返す。
父を許したわけじゃないが、左を使う自分をどうすればいいのかわからない。
母に言われた「なりたい自分」とは「なりたいヒーロー」とはどんなものだったのか、忘れてしまった。
「左を使う俺は、どうなんだろうな……」
1人呟く轟は悲しそうだった。
血界は腕を組み、頭を傾けて悩んで轟に話す。
「とりあえず許せばいいんじゃねえか?」
「親父をかよ?そんなの……」
「ちげーよ。自分を許して、自分を受け入れろ。お前だってヒーロー目指してここにいるんだろ?じゃなきゃ父親に復讐するためにここにいるなんて考えられないしな」
「それは……」
「お前がどんなヒーローになりたいか知らねぇけど、まずは自分を許さないとお前は先に進めないんじゃないのか?」
それを聞いた轟は思いつめた表情になる。
復讐だけが今までの目標だった……でも、緑谷が母が憎いと言った左側は父親のものじゃなく自分の力だと教えてくれた。
なら、今度は受け入れなきゃいけない。
その力を持って、自分がなりたいヒーロー………それは、
「俺は……母さんがなっていいと言ってくれた、俺のヒーローになりたいと思う。とりあえずはな」
「いいんじゃねぇか?俺もまだどんなヒーローになりたいかはちゃんと決めてねぇ。だけど……ここでお前を全力で倒すってことは変わりはない」
血界は氷で凍らされ、傷ができている右腕を構える。
「そうか……なら、俺もお前を全力で倒す!」
轟の体から炎が立ち上り、右側を覆っていた霜が消えていく。
「熱だ!轟くん!」
「いいぞ焦凍!使え!!」
観客席から喜ぶ緑谷とエンデヴァーの声が聞こえてくる。
「スゲぇな、やっぱ」
立ち上る炎を見て、そう呟く血界に轟が話しかける。
「血界」
「何だよ?」
「ありがとうな」
「……おう!」
血界に向かって炎が襲ってくるが、血界はそれをかわす。
まだ緻密な操作ができない轟は腕を横に払うことで炎をかわした血界に向ける。
「ブレングリード流血闘術……!」
『117式 絶対不破血十字盾』
迫る炎を盾で防ぐが、熱は防げず血界の身を焦がす。
「うぅっ…!」
叫ぶ血界に今度は氷が迫る。
「あぶっ……!」
かわそうとする血界だが氷は血界の片足を凍らせる。
「終わりだ!」
また炎を向けられるが血界は凍らされた足を無理矢理氷から足を引っ張り出した。
「ぐうぅっ!?」
凍らされたことでできた凍傷と無理矢理引っ張り出したことで皮膚が一部剥がれ、血が流れる。
轟の炎が血界を包み込んだが、血界は地面を個性を発動した拳で殴りつけ空高く舞い上がった。
「ブレングリード流血闘術、推して参る!!」
「来い!血界!!」
空に舞い上がった血界は多少火傷をおってしまった。
しかし血が染み付いた包帯を巻いた右拳を轟に構え、轟もより炎を滾らせる。
左腕を向け、今出せる最高出力の炎を血界に向ける。
「ブレングリード流血闘術……!!」
『111式 十字型殲滅槍』
今までで最も大きな槍が出現し、血界の腕の動きと合わせて轟に向かっていく。
「これは……!?」
「ちょっと!シャレにならないわよ!!」
審判であるセメントスとミッドナイトも血界の槍の大きさに焦りを見せる。
「オオオォォォッ!!!」
打ち出された槍は轟の炎を物ともせずに突き進み、ステージに突き刺さり激しい爆発を起こした。
『血界の技が炸裂ー!!煙でステージが見えねぇ!!てか、轟、セメントスとミッドナイト無事か!?』
「ケホッ、ケホッ……!無事よ」
「こっちも」
煙が徐々に晴れてくると少し土埃晴れてくる。
ステージは粉々に砕けた散り、その瓦礫の間にできた地面に轟は気絶して倒れていた。
血界は辛うじて残ったステージに降り立った。
『轟くん行動不能!勝者血界・V・ラインヘルツくん!!』
ミッドナイトのアナウンスとともに沸き立つ観客たちは勝者の血界に歓声をあげた。
「やっ……た……」
血界は視界がグラつき、地面に膝をついた。
「はぁ…はぁ……力が……」
「血界くんをすぐに医務室へ!酷い怪我だわ」
『ガッテン!』
担架ロボットは血界と轟を医務室へと運んだ。
○
医務室のモニターで血界と轟の試合を見ていた耳郎は血の気が引く思いだった。
氷麗戦でも怪我はしたが今回はその度合いが酷すぎる。
見ていた時、布団のシーツを握っていた手は震えぱっなしだった。
リカバリーガールは椅子から立ち上がり、急いで治療の準備をする。
「急いで準備をしないとね。ありゃ重傷だよ。あんたは早く観客席に帰りな」
「り、リカバリーガール、血界は大丈夫なんですか?」
「……なんとも言えないね」
リカバリーガールから考えられない弱気な声で話し出した。
「あの子の個性は自身の身体能力全てに発動しているみたいだからね。怪我なんかも普通じゃありえない速度で治っていく。だけどそれは体力が残っている状態での話さね。あんな状態じゃ治るのかどうかも……」
「それならリカバリーガールの個性で……」
しかしリカバリーガールは首を横に振って否定する。
「わたしゃの個性じゃどんな影響が出るかわからない。迂闊に手を出せないよ」
「そんな……」
耳郎の落胆する声の直後医務室の扉が開かれ、担架に乗った血界と轟が運ばれてきた。
「血界!」
「さて!やるとするかね!」
「まずは轟から……ふむ、打撲と打ち身だね。あの攻撃をうまく受けたかい。なら……チユ〜〜〜〜!」
轟をさっそく治療し、次に血界を診察する。
「血界!しっかりして!」
「あんた気はしっかりあるかい?」
「うぅ……いってぇ……」
「まだ痛みを感じているならいいよ。しかしこりゃ酷いね……」
裂傷、打撲、凍傷、特に左足の怪我が酷い。
(だけど、もう止血している……それに傷が塞がり始めている部分もある。こりゃ少し異常じゃないか?)
「アンタ、回復系の個性を他に持ってたりしないかい?」
「それだったら今頃アンタの世話になってないよ……」
「それもそうだね」
顔色を悪くしながらもしっかりと答えることができる血界に少しリカバリーガールは安心する。
「リカバリーガール!ウチも治療手伝うから早く!」
「ふー……今は猫の手も借りたいからね。他の救護員は2、3年の方に出向いているし、頼むよ」
「はい!」
リカバリーガールの指示の下、耳郎は血界の治療を手伝いながら、血界にに話しかける。
「ねぇ、血界。もうここまで来たらウチが何言っても聞かないだろうから、もう戦わないでとか怪我しないでとかは言わないよ」
「おう」
「だから、無事に勝ってきて」
「……任せろ」
そう言って血界の顔をまっすぐ見てくる耳郎の目から心配しているということがわかるが、それを言わず、血界を応援した。
それに血界もまっすぐに受け止め、答えた。
(青春だね〜………)
それを見ていたリカバリーガールはしみじみと思いながら、血界が次の試合に出られるように全力で治療を施す。