僕のヒーローアカデミア:Battlefront of Blood 作:マーベルチョコ
満身創痍の体に鞭を打ち、立ち上がる両者。
緊張が走る会場。
「ブレングリード流血闘術、推して参る!」
「いくぞォ!!」
爆豪が爆発で空高く飛び上がり血界に向かって落ちていくが、体を捻り手からの爆発を加えて高速で回転していく。
血界は今出せる力の限りを右拳に集め、右腕が紅蓮の血に包まれる。
「ブレングリード流血闘術……!」
「榴弾砲《ハウザー》……!」
落ちてくる爆豪に迎え撃つ血界がぶつかる瞬間に2人の技が炸裂した。
「『211式 単発式紅蓮血獄撃』!!!」
「
二つの衝撃がぶつかり合い、紅蓮の波動と爆炎がステージ一面に広がる。
「うおおっ!?」
「キャアアアッ!?」
「ヤバイって!」
「アイツら無事かよ!?」
「……血界ぃッ!」
その衝撃はステージだけでなく、観客席にも及んだ。
煙が晴れてくるとステージ上には二つの影が倒れていた。
『両者ダウンー!!』
爆公と血界は倒れており、起きる気配がない。
「ミッドナイト、審判を」
「ちょっと待って」
セメントスがミッドナイトに審判を促すが待ったをかける。
倒れた爆豪の体が僅かに動き、目が開く。
「ゲホッ…!うぅ……」
起き上がろうとすると全身に走る激痛のせいでできない。
するとマイクのアナウンスが響いた。
『先に動いたのは血界だ!』
「なん…だと…?」
顔を血界の方に向けると、血界は血で濡れた拳を地面に立て起き上がろうとしていた。
「ここで、負けられる…かよ……!」
爆豪も歯を食いしばって立ち上がろうとする血界に負けじと立ち上がろうとする。
「ちっくしょうが……!」
立ち上がろうとするが震える手足で立つことが出来ず、倒れる。
「はっ…!はっ…!くそがぁっ!!」
大声を上げて自分を奮い立たせようとするが全く体に力が入らない。
無理に体を起こそうとして、また地面に倒れる。
『立ったー!!血界が立ったー!!』
「ふっー…!ふっー…!」
血界は息を荒くし目の焦点もあっておらず、フラついてはいるが立ち上がった。
それを見た爆豪はここまで来て負けられないと力を込めるが体は言うことを聞かず、地面に伏せてしまう。
「はぁっ!はぁっ!クソォォォッ!!!」
全員の前で1位になると言った。
血界に向かって勝つと言った。
なのに、起き上がれず負けてしまう自分にとてつもなく悔しさがこみ上げ、叫んだ。
そしてミッドナイトが審判を下す。
『雄英体育祭、優勝者!!………………爆豪勝己君!!』
「………………は?」
一瞬ミッドナイトの言っていることが分からず、呆けてしまう。
爆豪は血界の方に目を向けるとそこには立ったまま気絶している血界の姿があった。
『……立ったまま気絶してんのか?』
『最後は意地だったんだろう』
あまりの最後の姿に全員が息を飲んだ。
爆豪は血界のその姿を見届けると途端に意識が遠のいていく。
「………クソ」
最後に誰に向かっていったのかはわからないがそう言って、爆豪も意識を手放した。
○
救護室で血界は全身に湿布、包帯、ガーゼを巻いた姿で寝ていた。
僅かに指が動き、次第に目が開いていく。
「ぅ……ぁ……こ…こ、は?」
「血界!?目、覚ました!?大丈夫!?」
朦朧とする意識で周りを見る血界の目の前に心配する耳郎の顔が飛び込んできた。
「じ、ろ……ぅ」
「うん!ウチだよ!しっかりして!」
「ちょっと落ち着きな!別に死にはしないよ!」
呂律が回らない血界を心配して詰め寄る耳郎をリカバリーガールが注意して下がらせ、血界の容態を見る。
「リカバリー……ガール」
「もう呂律が戻ってきたのかい。相変わらずとんでもない回復速度だね」
「ここは……?」
「救護室だよ。爆豪との試合が終わって一緒に運ばれてきたの」
耳郎が血界の疑問に答えると、次第に頭が整理できてきた。
「試合……?試合!そうだ!試合はどうなっ…!?」
試合の結果がどうなったか聞こうとし、起き上がろうとするが平衡感覚がなくなり視界がグラつく。
倒れそうになるところを耳郎が受け止めた。
「ちょっと何やってんのさ!今治療が終わったところなのに無理に起き上がろうとしないでよ」
「いや、でも…結果が」
「アンタ、いま血が限りなく少ない状態なんだよ。普通なら起き上がれるどころか意識がまだ戻らないはずなんだけどね。怪我も何もしなくても勝手に治っていくし、全くアンタは医者泣かせだよ」
リカバリーガールのどこか呆れた様子に血界はなんとも言えない空気だった。
同じくリカバリーガールの言い方に顔を引きつらせる耳郎に結果を聞いた。
「試合はどうなったんだ?」
血界が聞くと耳郎は言いにくそうにしたが、ゆっくりと口を開いた。
「……爆豪が勝ったよ」
「………そうか」
それを聞いた血界は体をベットに沈めた。
「悔しいなぁ……」
顔を顰め、そう小さく呟いた。
拳を握って悔しさを耐えたいが、感覚がない手に力が入らず、余計悔しさを感じる。
「チクショウ……手も握れねぇのかよ」
「血界……」
「アンタはハンデを背負いながら戦って、ギリギリのところで負けたんだ。悔しがるなとは言わないけど、アンタはよくやったよ」
リカバリーガールが血界を慰めるが、血界はそうは思わない。
「それでも負けは負けだ」
「まっ、あの子も勝ったとは思っていないみたいだけどね」
「あの子?」
「後でわかるさ。爆豪はもう目を覚まして表彰式の準備に向かったよ。あと30分後に始まるから、その前にもう一回診察して動けるならアンタも式に参加するんだよ」
リカバリーガールはそれだけを言って救護室から出て行き、部屋には血界と耳郎だけになった。
二人っきりになったが悔しむ血界に何と言えばいいかわからないが、とりあえず話しかけた。
「……惜しかったね、爆豪との試合。あともうちょいだったのに」
「でも負けたんだ。それは受け入れる。でも……」
悔しそうだった血界の顔に不敵な笑みを浮かべた。
「次は勝つ」
いつもの血界に戻り、耳郎も安心した。
「うん……ウチもだよ」
耳郎は包帯に巻かれた右手をそっと握って呟いた。
○
そして少し時が経ち、表彰式となり雄英1年生が全員集められ、観客席にいたメディアも集まってきていた。
「あっ!耳郎ちゃん戻ってきた!」
戻ってきた耳郎に麗日が気づいた。
「結構ギリギリになっちゃったね」
「血界ちゃんはどうかしら、とりあえずは表彰式には出れるけど……ねえ?」
「どうかしましたの?」
何か言いにくそうな耳郎が気になり、八百万が聞くが耳郎は言葉を流す。
「まぁ、見てたらわかるよ。……飯田がいないじゃん?いつもなら整列するようにとか言ってみんなを並ばせるのに」
「なんか電話があってでれなくなっちまったんだと、やけに焦ってたな」
切島がそう呟くと、耳郎の視界にニヤニヤと笑う芦戸と恐らく芦戸と同じように笑っているであろう葉隠が映った。
「どうしたの?」
「いやーねぇー?」
「あーんないい空気の後なのに何にもないのかなー?」
「あんないい空気?」
「すいません耳郎さん……覗く気は無かったのですが」
耳郎は分からなかったが芦戸のニヤケ顔と八百万の覗くの言葉に合点がいってしまった。
救護室で血界と2人でいたところを見られたのだ。
途端に耳郎は顔が赤くなり、わかりやすく動揺した。
「ちょっ!?なっ!へっ!?な、なんで……!?」
「いやーわかりやすいですなー」
「耳郎ちゃんかーわぅいー」
「ごめんなさい耳郎さん」
芦戸と葉隠(見えない)はニヤニヤして、八百万はペコリと頭を下げた。
『静かにしなさい!……それではこれより表彰式に移ります!』
全員の目がミッドナイトの方に集まった。
○
時は遡りまだ爆豪と常闇が試合を始める前のころ、某県の保須市の路地裏では凄惨な光景が広がっていた。
「が…ぁっ……」
飯田の兄であり彼が尊敬するヒーロー『インゲニウム』が体から血を流し、血溜まりの中に倒れていた。
そしてその側に立つ幽鬼のような男は体の至る所に刃物を装備し、手には刃こぼれが目立つ刀を持っていた。
「ハァァッ……紛い物め。お前は正しい世界への供物となれ………」
男は刀を振り上げ、インゲニウムにトドメを刺そうと振り下ろす。
しかし、その瞬間一発の銃声が響き、男が持つ刀が弾き飛ばされた
「ぐっ!?」
「おいおい、昼間っから物騒だな」
インゲニウムの窮地を救ったのはたまたま保須市に仕事に来ていたライトニングだった。
ライトニングは髑髏の装飾がされているマグナムをインゲニウムを襲った男に向ける。
「また紛い物か……」
「紛い物って……ヴィランがヒーローを評価すんなよ。ステイン」
インゲニウムを襲ったのは『ヒーロー殺し』の二つ名を持つヴィラン、ステイン。
「俺はヴィランではない……ヒーローを正す者だッ!!」
ステインはライトニングに向かって4本のナイフを投げるがライトニングはそれを全て撃ち落とす。
「シャアァァッ!!」
しかし、ステインは投げたと同時にライトニングに近づき、もう一本の刀を振るい、切り裂こうとする。
その瞬間、ライトニングは呟く。
「BBA(ブラッドバレットアーツ)、Thunder Ricochets .44」
次の瞬間、4発の弾丸が雷を纏い、ステインの手足を掠るように四方八方から襲った。
「ぐあぁっ!?」
「俺がそう簡単にやられると思ったか?」
手足に軽くない傷を負ったステインは傷口を抑えるようにして膝をついた。
「あとはお前を警察に渡せば終わりだな」
「…………そう簡単にやられると思ったか?」
「あ?」
ステインから流れる血が突然火を吹き、ライトニングを襲った。
「チッ!」
ライトニングは雷を纏った弾丸を撃ち、炎を霧散させた。
しかし、ステインの姿はもう既になかった。
「……逃げたか」
「うぅ……」
「おお、悪い。待たせたな」
ライトニングは応援と救急を呼び、インゲニウムを手当てに移った。
すぐに応援のヒーローと救急車が来て、インゲニウム乗せられた。
「すいま……せん。ライトニングさん……俺のせいでステインを……」
「気にすんな。後はオッサンに任せといて、傷を治すのに集中しな」
インゲニウムは悔しそうにそう言って、病院に運ばれていった。
「さて……」
他のヒーローたちはステインが近くにいないか捜索に出たが、ライトニングはステインがインゲニウムを襲った路地裏にできた炎の跡と流れ落ちていたはずのステインの血の跡を見たが、血は一滴も落ちていなかった。
「まさかな……」
ライトニングはそう呟いて、タバコに火をつけて自分の頭の中でできた不安を吐き出すかのように煙を吐いた。