僕のヒーローアカデミア:Battlefront of Blood 作:マーベルチョコ
『それでは表彰式を始めます!』
ミッドナイトの合図で表彰台が地面から上がってくる。
表彰台に乗っているのは1位から4位までの健闘したものたちだが、その中で一際目を引くものがいた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
顔色がすこぶる悪く、点滴を吊るしてある器具に寄りかかっている血界だった。
体調が優れないのかプルプルと体は震えて、顔はやつれていた。
全員がその状態の血界に軽く引いた。
『うわぁ……』
「アレ、大丈夫なの?」
「寝てたら普通だったんだけど、立った瞬間にあんな風になっちゃって……無理するなって言っても聞かないし」
「だから点滴してんのか」
耳郎の説明に納得した皆だが、それでも血界の姿が気の毒すぎる。
『んんっ!なんか変な空気になっちゃってるけど……続けます!』
「続けるのね」
『それではメダル授与式を行います。当然授与するのはもちろんこの人!』
するとどこからともなく、高笑いが響き、オールマイトが飛び降りながらやって来た。
「私がメダルを持ってやってき『我らがヒーロー、オールマイトォ!!』……」
いつもの決め台詞が被ってしまい、なんとも言えない空気になったが仕切り直した。
オールマイトは咳ばらいをしながらも、メダルを持ちまずは常闇へと渡していく。
「常闇少年、おめでとう! 君は強いな」
「勿体ないお言葉……」
「だが、個性に頼り切りな場面が多かった。これからはもっと地力を鍛えていきなさい。そうすればもっとうまく立ち回ることが出来るだろう」
「御意……」
次に轟にメダルを渡す。
「轟少年、おめでとう」
「ありがとうございます」
「今回のことで左の熱を使う良いきっかけになったのかな?」
「……緑谷にきっかけをもらって、血界のおかげで先に進もうと思いました。今はこれがいいかどうかはわかりませんけど、進んで行こうと思います」
そう言った轟の目には恨みなどがなく、表情もどこか晴れやかなものだった。
「顔が以前と全然違う。深くは聞くまいよ。今の君ならきっともっと自分が目指すものに進むことができると思うよ」
そして次は件の血界だ。
「さて、決勝は惜しかったが、とにかくおめでとう!血界少年!」
「…………え?」
「聞いてないのね……まぁ、とにかく!今日君は何度も逆境に立たされながらも立ち向かい、勝ち続けた。君の勇姿はお父さんであるヴァンも喜んでいるだろう!……君とは一度ゆっくりと話がしたい。お父さんのことでね」
「…………ぅえ?」
「とにかく、おめでとう!」
オールマイトは締まらない血界をさっさと済ませ、次は1位になったのにも関わらず不機嫌な顔の爆豪にメダルを渡そうとする。
「優勝おめでとう!爆豪少年!」
「……あぁ」
「見事に選手宣誓での伏線を回収したな!その調子でヒーローへの道を進んでくれ」
オールマイトからの激励だと言うのに爆豪は不機嫌なままだ。
「……俺は1位になったとは思わねぇ」
「何故だい?」
「本来なら、決勝じゃ俺は負けていた」
爆豪が言うことにオールマイトも少しわかる。
血界は本来ドクターストップがかかるほどの怪我をしていたが無理を通して出場していた。
爆豪もダメージを負っていたが、血界に比べて明らかに軽い。
そして最期の場面でも爆豪は立ち上がれなかったが、血界は立ち上がったのだ。
爆豪はそのことを言っているのだ。
「俺が言ったのは完膚無きまでの1位だ!あんなギリギリでの勝ちなんていらねぇ!!」
「勝ったというのに素晴らしい向上心だ。君なら更に上に行けるだろう」
「だから血界!また戦うぞコラァッ!!」
「…………はぃ?」
「待って爆豪少年。今の血界少年にそれは酷だぞ!」
血界に食ってかかる爆豪だが、当の血界は頭がボーっとしていて話にならない。
とりあえず爆豪と血界を離したオールマイトは手を広げ、観客たちのほうを見る。
「さぁ!! 今回は彼らだったわけだ!! だが皆さん! この場の誰にもこの場に立つ可能性があった! ご覧いただいた通りだ! 競い! 高め合い! さらに先へと登っていくその姿! 次世代のヒーローの卵達は確実にその芽を伸ばして成長をして前へと進んでいる!」
オールマイトのその言葉に勝ち進めなかった生徒たちはやる気を見せる。
また来年、次こそ勝ち上がると闘志が燃える。
オールマイトもそんな生徒たちを見て満足そうにうなづいた。
「てな感じで最後に一言!皆さんご唱和ください! せーの!!」
締めの一言を皆が揃える。
『プルス「お疲れ様でしたッ!!!」ウル……!?』
「ちょっとオールマイトー!」
「そりゃないよー!!」
「えっ、いや、疲れていると思ったから……」
こうして激動の体育祭は終わった。
○
教室で相澤の短めのホームルームが終わり、血界は速攻でブラッドベリ総合病院に連れて行かれたが、治療するところもなく、体を休めらように言われたが、その時エステヴェス女医が血界を怪訝な目で見ていた。
『リカバリーガールから簡単な診察書貰ったけど……あんた本当に人間?』
『医者が言うことにじゃねぇ』
冗談抜きで言われたので、少しショックを受けた血界だった。
家に戻り、スマホを確認すると体育祭が終わった時間帯から凛から尋常じゃない数の着信とラインが来ていた。
このままだと心配したとか、やり過ぎだとか説教されるのはわかった血界は、
「………明日でいいや!」
血界はスマホをポーンと投げて、面倒なことは全て明日の自分に任せることにした。
血界がベットに倒れるとまたラインの着信がきた。
「また凛か……?」
画面を見ると耳郎からラインが来た。
『怪我大丈夫?』
自分を心配してくれる耳郎に嬉しくなった血界は痛みと傷で上手く動かない手で大丈夫、と返信した。
ふとその時血界は包帯を巻かれた手を見た。
(あん時……握ってくれたんだよな)
爆豪に負けた時、悔しかった自分に寄り添ってくれた耳郎。
その時感覚はなかったが握ってくれていたのは確かだと感じた。
「………〜っ!」
何故かわからないが途端に恥ずかしくなった。
血界が耳郎の気持ちに気づきのは案外近い……かもしれない。
○
雄英体育祭を見ていたのはヒーロー、世間の人だけではない。
闇に潜む者、ヴィランたちも見ていた。
そしてその中には1-Aを襲った張本人である死柄木もいた。
「なんだよこれ……クソつまんねぇ」
薄暗く、モニターの光しかない部屋で死柄木は吐き捨てるかのように呟いた。
モニターには1-Aの様子が映し出されていた。
「こんなのが意味あるのかよ……?先生……」
死柄木がもう一つあるモニターの方を向くと『SOUND ONLY』と表示されていたモニターから声が響く。
『意味ならあるさ!ここから倒すべき者たちを学べばいいんだらね』
底冷えするかのような声が響く。
死柄木に話かける時の声色は教師が教え子に教える時のように温和な感じだが、常人が聞いてしまえば失神してしまうかもしれない威圧感が発さられている。
『それじゃあ僕は少し用事があるから、切らせて貰うよ』
「ああ……」
弔との通信が切れると部屋中に医療器具が備え付けられた場所で至る所にチューブが繋げられた男が一息ついた。
「フフ……今回は中々良さそうな子たちがいるじゃないか。オールマイト」
不気味に笑う男はふと何かを思い出した。
「そろそろ手紙が届くころかな?」
男はどこか楽しそうに嗤った。
○
某国の切り立った山が連なる場所では人を一切寄せ付けようとはしない猛烈な吹雪が吹いていた。
その中で最も大きい山の中は岩ではなく、綺麗に整備された機械的な建物があった。
そしてその最も奥の部屋には1人の男が拘留されていた。
部屋は全てが白で埋め尽くされており、無機質なものだった。
クラシック音楽がかけられている部屋のベットの上でグレーの髪と髭が伸びきった男が使い古された本を読んでいると、突然本の文字が動き出し、一つの文章になった。
それを読んでいくと男の体はだんだんと震え、笑いだした。
「フフフ……ハッハッハッハハハッ!!!」
すると白一色だった部屋は透明になり壁の向こうにいくつもの機関銃が男に向けられた。
しかも男がいる部屋は巨大な空間に宙ぶらりんにされており、その下は剣山がひしめいていた。
『囚人番号66893番!何を笑っている!?』
「いや、すまない。少し昔を思い出してね」
男はよっぽど可笑しいのか、嗤いが止まらない。
「そろそろ出るかな?」
伸びきった髪の間から覗く目には怪しい眼光を纏っていた。
プロフィールに追記しました。