僕のヒーローアカデミア:Battlefront of Blood 作:マーベルチョコ
2人は内装も城のような豪華なエントラスで受付を済ませ、仮社員カードをもらい、案内された場所に移動し、たどり着いたがそこは地下にある物置部屋の近くある部屋だった。
「ここだよな?」
「うん、看板もあるし」
耳郎が上を指すと埃と蜘蛛の巣がかかった『346プロヒーロー事務所』の看板があった。
薄暗く人がいる気配がないがどうやらここが目的の場所らしい。
「開けるぞ?」
「うん」
少し不安になるが血界は耳郎に確認を取り、ドアを開けると目の前に千川マヒロが立っていた。
「ようこそ!346プロヒーロー事務所へ!」
明るい笑顔で言うマヒロに血界と耳郎は面を喰らった。
「私、346プロヒーロー事務所の事務員兼ヒーローの千川マヒロと申します。お近づきの印にスタミナドリンクです!」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとう、ございます」
マヒロからスタミナドリンクを渡され、戸惑う2人だがとりあえずは自己紹介をする。
「俺は雄英高校の血界・V・ラインヘルツです」
「ウチは、あ、いや私も雄英高校の耳郎響香です」
「血界さんに耳郎さんですね、確認しました。どうぞこちらに来てください」
マヒロに案内されたのは一番奥の部屋だった。
「お入りください」
マヒロに促され、入るとそこにはディスクと血界達が立っているところにしが光が当たっておらず、そのディスクに座ったライトニングが険しい表情をして、2人を見ていた。
「「え?」」
突然の重苦しい空気とライトニングの視線に2人は固まる。
「それではごゆっくり」
「「えっ!?」」
ドアを閉められ部屋に閉じ込められた2人は突然訳がわからない状況とライトニングの鋭い視線に焦り始める。
「………」
「「………」」
ライトニングは喋らず、2人も何を話せばいいか分からず黙ってしまう。
すると耳郎が血界に聞こえる範囲で話し出した。
(ちょっと!どういう状況!?)
(知らねーよ!何だよこの重苦しい空気!)
(アンタ何かしたんじゃないの!?)
(何もしてねーよ!)
(前会ったときはあんな雰囲気出してる人じゃなかったのに、何で……!)
もう耳郎は泣きたい気持ちだった。
2人がコソコソと話していると長い沈黙を貫いていたライトニングが口を開いた。
「一つ……質問がある」
「「はい!」」
言葉に重みがあり、対峙しているだけで威圧感を感じ取ってしまう。
ライトニングからの質問に緊張している2人にその内容が聞かれる。
「2人の好きなアイドルは誰だ?」
「「………はい?」」
身構えたにも関わらず、訳のわからない質問に今度は呆けてしまう。
「だから、好きなアイドルは誰だと聞いている?」
「え、えーっとウチは好きって程じゃないかもしれませんけど、気に入っているのは木村夏樹です」
「お、俺は高垣楓です。あと個人的に及川雫です」
「……そうか」
2人の答えを聞くとライトニングは俯いた、と思ったら顔を上げ、険しい表情が取れた。
「いやー!ごめんな!」
2つの照明しか照らされていなかった部屋の全体が電灯で照らされる。
部屋の一面には城ヶ崎美嘉のポスターやフィギィア、彼女の特集が載っている新聞や雑誌の切り抜きなどが部屋一面に飾られていた。
「え、何これ」
「さあ……」
突然のライトニングの変わり様と部屋に一面にある城ヶ崎美嘉グッズに戸惑う2人だがライトニングが近づいてくる。
「2人の好きなアイドルが気になってな。ほら、一応ここアイドル部署があるだろう?もし何かの間違いで美嘉に危険があるといけないから」
笑いながら耳郎の肩をポンポンと叩くライトニングだが、血界の肩に手を乗せたとき、顔は真顔になった。
「だけどもしお前が美嘉のことを愛してるとか言った瞬間に脳天に風穴が空いていたな」
肩に乗せた手に力を込め、ライトニングは平坦な声でそう言った。
「ハハ……面白い冗談だね」
(いや!あれはマジだった!)
耳郎は冗談だと思ったようだが、目の前に立たれた血界は確かにライトニングの殺気を感じ取ってしまった。
(なんてっこった……まさかのNo.6ヒーローは親バカかよ!?)
血界は少しここに来たことを後悔し始めた。
「じゃあ、早速職業体験を始めようと思うがその前に説明だけはしておこうか。もう入ってきていいぞ」
ライトニングが扉に向かって言うとジャズとマヒロ、黄色と黒のどこか蜂を思わせるヒーロースーツを着た小柄な男性と全身黒一色で統一し、口元を布で隠した女性が入ってきた。
「全員じゃないがここのヒーローを紹介しよう。まずは君たちも知っているかもしれないが今、注目の若手『ジャズ』だ」
「よろしくね2人とも」
「わっ、よ、よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします」
耳郎は緊張したようにジャズと握手した。
「そしてウチの事務員兼ヒーローの千川マヒロ、ヒーローネームは『メディス』だ」
「これから1週間よろしくお願いします」
マヒロ改め、メディスは丁寧に頭を下げる。
次に前に出てきたのは一見中学生と見間違うほどの低身長の男性だ。
「そしてそこのチッコイのが遊撃ヒーロー『バンブルビー』。もうウチじゃ中堅ってとこだな」
「………っ!」
「よ、よろしくお願いします」
バンブルビーは人懐こっい笑顔を見せて2人の手を握って上下に振る。
「ちなみにソイツ話すことができないから何かと不便かもしれないが了承してくれ」
「はぁ……」
「ただノリはいいぞ」
バンブルビーは突然ブレイクダンスを始め、バク転などアクロバティックな動きを見せる。
「「おー!」」
ビーのダンスに拍手する血界と耳郎は拍手を送る。
「ビー、踊ってもいいが美嘉のグッズに傷つけたら容赦しないぞ」
「………っ!?」
声が低くなったライトニングの声にビーは慌てて立ち上がり、姿勢を正した。
「何やってるのよ」
ビーに呆れながら2人の前に出てきたのは黒一色で統一した女性だった。
「彼女は諜報ヒーロー『ナイトクラブ』、俺と同じく古株だ」
「やめてください。歳をとっているみたいに聞こえるじゃないですか。これから1週間よろしく」
「「よろしくお願いします」」
「あと2人いるんだが、今出張で日本にいないんだ。もしかしたら最終日に会えるかもしれないけどな。と、まぁこんな感じのヒーローがいるのが俺たち346プロヒーロー事務所だ。これから1週間俺たちが教えられることは全て教えていく。よろしく頼むぞ」
ライトニングが手を差し出し、血界が握手した。
「よろしくお願いします!」
○
その後血界と耳郎はヒーロースーツに着替えて、血界はライトニング、耳郎はジャズと共に行動することが決まり、それぞれの職場体験を始めた。
血界はライトニングに指示され、346の大型駐車場で待っていた。
「ここで待てって言われたけど……」
待っているとどこからかエンジンの重低音が響いてきて振り向くとシルバーのスポーツカーがやってきて血界の横で止まった。
普通の乗用車と違いどこかメカメカしい作りになっており、素人目から見てもただの車ではないことがわかる。
車の窓が下がり、運転席からライトニングが顔を出した。
「乗りな。これからパトロールだ」
「は、はい!」
血界が助手席に乗り込み、車は走り出した。
「パトロールしながらヒーローの仕事を説明するけど、その前にお前のヒーローネームはなんだ?」
「俺のですか?えーと『チカイ』です」
「名前か?自分で考えたンじゃないのか?」
「それが却下されました……」
少し気落ちする血界を見て、ライトニングは合点がいった。
「なるほど、よっぽど変な名前だったんだろ?じゃなきゃ滅多に却下なんかされない」
「うぐっ!」
「図星か!ハハハ!」
もはや親戚のおじさんと話している感じが血界はした。
「さてとパトロールって言ったが俺は他のヒーローとは違うんだ。何かわかるか?」
「車を使ってること、とか?」
「正解だ。パトロールってのは街中を歩くことでヴィランの抑止力にもなるが俺はそれをしない。俺の場合は……」
ライトニングが言葉を続けようとした瞬間、車に備え付けられたモニターから電子音が鳴った。
「どうした?」
ライトニングが話すとモニターにメディスが映る。
『応援要請です。新宿に行ってください』
「新宿?シンリンカムイがいるだろ?アイツ1人で間に合うはずだ」
『それがヴィランが炎熱系らしくて、消火できるヒーローも応援には行っているらしいんですが、まさに焼け石に水で』
「了解、しっかり捕まっとけよ」
モニターを切り、ライトニングはハンドルを急に左に切り、アクセルを全開で踏む。
「うおおぅっ!?は、速っ!!」
「俺の主な仕事は広域活動だ。市街地戦が得意で東京全域を任されている。だからこうやって車を使ってるんだ。そら、もう着くぞ」
目の前には煙が立ち込める建物が連なっており、その真ん中で炎を全身から滾らせており、顔も判別できない3mほどの大男と何人かのヒーローが対峙していた。
「シンリンカムイにMt.レディ、他にもいるな。チカイ、降りたら周りにいる野次馬を避難させろ」
「りょ、了解です」
いきなりの大事件に血界も緊張してしまう。
車から降り、ライトニングと血界は人混みを分け、前に進んでいく。
「オラオラどうした!?ヒーローってのはそんなものかよ!!」
「ぐう…炎のせいで近づけない!」
「アッツ!」
挑発するヴィランだがヒーローたちは火の勢いが強すぎて近づくことすらままならない。
「これならどうだ!」
消防士の格好をしたヒーロー、バックドラフトが水を浴びせるが浴びせたところは水が蒸発するだけで炎の勢いは衰えない。
「ハハハハハハッ!!俺ってもしかしたらエンデヴァーより強いんじゃねえの!?」
ヒーローたちの無力さにヴィランはより調子に乗ってしまう。
そこにライトニングと血界が到着した。
「待たせたな」
「ライトニングさん!申し訳ありません!何もできずに……!」
何もできずにただ押されただけのシンリンカムイは悔しがる。
「個性の相性もあるんだ、気にしなさんな。それよりアイツ、俺のとこに来た職業体験の子でさ。他の奴らと一緒に避難誘導してやってくれ」
そんなシンリンカムイにライトニングは落ち着いて宥め、指示を出していく。
そしてヴィランと対峙した。
「次はライトニングかよ!いいねェッ!アンタを倒して次はエンデヴァーだ!俺がエンデヴァーより強い炎だって証明する練習台にしてやるよ!!」
「エンデヴァーより強い?おいおい、何言ってんだよ?」
ライトニングは呆れたよう息を吐く。
「アイツの火と比べもんになるはずがないだろ。お前は良くてマッチの火だ」
「テメェェェェッ!!!」
ライトニングの挑発に怒ったヴィランは迫ってくるが、ライトニングは腰のホルスターからマグナムを抜き、一発相手の腹に放つ。
しかし、その弾丸は跳ね返された。
「?」
「ハハハッ!俺に弾丸は効かねえぞ!!」
ヴィランは炎に包まれた腕をライトニングに振るう。
ライトニングは体を晒すことで避けるがその熱は無慈悲にライトニングを襲う。
しかし、ライトニングほそれを顔をしかめるだけだが、一方的に攻撃されてしまっている。
「ライトニングさん!」
「落ち着け少年!あれくらいでライトニングさんはやられはしない」
シンリンカムイがそう言った瞬間、事態は動いた。
ライトニングはバク宙する事でヴィランと距離を取り、もう一度マグナムを向ける。
「だからそれは効かないって言ってんだろうがァ!!」
「どうだろうな?」
ライトニングはニヒルな笑みを見せて、個性を発動する。
マグナムを握る右腕に雷が纏わりつく。
「BBA Electric laser.44」
マグナムから放たれた44口径の弾丸は雷を纏い、一筋のレーザーとなりヴィランの腹を貫き、向こう側の景色が見えていた。
ヴィランは前に倒れ、動かなくなった。
「やった!」
「なっ……!?」
それと同時に沸き立つ野次馬たちだが、ヒーローたちは焦り始めた。
急いでライトニングの所に集まる。
「ライトニングさん!何をやっているんですか!!」
「殺しちゃったら不味いですよ!」
シンリンカムイとMt.レディが慌てた様子で言うが、ライトニングは平気な様子で倒れたヴィランに近寄り、軽く蹴る。
「ライトニングさん!聞いているんですか!?」
「これ見てみろよ」
ライトニングが顎で指す方を見るとヴィランの体はそこら辺のガラクタでできていた。
「これは……!?」
「黒幕は別にいるな」
ヒーローたちが集まる中、野次馬の1人に焦りを見せる男がいた。
(俺の自信作があんな簡単にたおされるなんてェッ〜〜〜!!)
彼、火本 発生(ひもと はつせい)の個性は『火炎人形』、炎を元にして人形のように操る。
骨組みとなるものがなければ小さなものしか作れない。
今回の事件の黒幕である。
建設の鳶職で働いていたが建設中の建物が火事になり、自分のせいではないのに不当な解雇されてしまった。
その不満をぶつけるために自分が建てた建物を襲っていたのだ。
(とにかく今は逃げなきゃ……)
「あのー大丈夫ですか?」
逃げようとする火本だが血界が様子がおかしいと思い、声をかけた。
すると火本は急に走り出し、すぐそばに居た女性を捕まえた。
「動くなー!!動いたらこの女に火をつけるぞ!!」
「はぁっ!?こいつ、ヴィランか!」
血界は漸く理解が追いついたが、人質がいるため動くことができない。
周りの野次馬も突然のことに驚き、蜘蛛の子を散らすように避けていく。
男は指先から火を出し、女性の顔に近づける。
「ヒィッ!」
「クソッ!」
「いいか!逃走用の車を…」
火本が要求を言おうとした瞬間、発砲音と共に火本の頭に何かがぶつかり、倒れてしまった。
「え?何が……」
血界が突然のことに頭が追いつかないが群衆を超えたその先でライトニングがマグナムを構えていた。
「それじゃあタバコの火にもならないぜ」