僕のヒーローアカデミア:Battlefront of Blood   作:マーベルチョコ

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File.39 少年にとって

職業体験の初日がもう終わろうとしている時間帯に血界は346プロの敷地内に社宅寮の、客室に向かっていた。

 

「あー、フラフラする……」

 

あの後血界は1人でニュースタイルを確立するべく、何時間も特訓していた。

その際個性を使っていたため、貧血気味になっており足元が覚束ない状態だった。

なぜ深夜の時間になってもまだ346プロにいるのは血界と耳郎の職業体験は泊りがけだからだ。

わざわざそのために346プロは部屋を用意し、食堂も使わせてくれたのだ。

血界は346プロの施設内にある大浴場で身を清め、割り当てられた部屋に向かっていた。

 

「しっかし、おじさん家帰ってこない時はこんなところに泊まっていたのか、羨ましくなってきたな」

 

そう愚痴を零す血界の目の前に部屋着姿の耳郎がフラフラとこっちに向かって歩いてくるのが見えた。

 

「耳郎?アイツも今終わったのか。おーい」

 

手を振って耳郎を呼ぶが返事がなく、フラフラとこっちにゆっくりとやって来る。

血界は耳郎も初日で疲れたのかと思ったが、耳郎は血界の前で止まらず、そのまま抱きついた。

突然抱きつかれた血界は慌ててしまう。

 

「うおっ!?じ、耳郎?」

 

「う〜ん……あっ、ちかいらー!えへへ♪」

 

顔が赤い耳郎は満面の笑みを浮かべ、血界の胸元に頬ずりをし始めた。

 

「じ、耳郎さん?」

 

いつもと違う耳郎に血界は動揺が隠せない。

 

「もう!さんづけなんてイヤ!いつもみらいに呼んで!それかキョウカでもいいよ?」

 

「じゃ、じゃあ耳郎で」

 

「うーん……まぁ、いいや。えい!」

 

「うおっ!?」

 

少し残念そうにした耳郎だが、取り敢えず良いらしかったが、突然血界の首に飛びつき、腕を回した。

そのせいでより体を密着してしまい、血界は胸に当たる僅かな柔らかさに気づいてしまう。

 

「じ、耳郎!?当たってるって!」

 

「なにがー?」

 

「何がって……うっ、酒クサッ!お前酒飲んだのか?」

 

顔が近づいたことで耳郎から僅かに香るアルコールの匂いに気づいた。

 

「誰がお前に飲ませたんだよ?」

 

「飲ませたっていうか……楓しゃんたちといっしょにいたら楽しくなっひゃったの!」

 

「楓姉ちゃん……」

 

血界はここにはいない楓に呆れた。

しかし彼女とて飲兵衛ではあるが未成年に飲ませるような人ではないことはわかっているので恐らく間違えて耳郎が飲んでしまったのではないかと思った。

すると耳郎が頬を膨らませて、怒りはじめた。

 

「ムー……!今ちがうおんにゃのこと考えたれしょ!」

 

「考えてないって」

 

「考えら!ちかいはウチのなの!」

 

そう言って首に回す腕の力が強まり、より2人は密着してしまう。

胸に感じる耳郎の体温と2つの柔らかいものに血界は恥ずかしくなり、慌てて耳郎を引き剥がそうとする。

 

「耳郎!離れろ!」

 

「やっ!」

 

しかし、耳郎は頑なに離れたくないらしくより密着して来る。

血界も耳郎の匂いとか柔らかさに興奮して頭に血が上って来る。

 

「やば……頭が……」

 

貧血に加えて、興奮して頭に血が上ってしまい思考がぼやけてきてしまう。

とにかく今の耳郎を誰かに見られるのは不味いと思い、耳郎を抱き上げ自室に向かう。

 

「きゃ!ちかいってだいた〜ん♡」

 

血界との距離がより近くなった耳郎は今度は猫のように頭を血界に擦り寄せてきた。

幸いにも誰にも見つからず、自室に入れた血界は耳郎を抱えたままベッドに座る。

 

「はぁー……疲れた」

 

「おつかれ♪」

 

「誰のせいだと思ってんだか……ほら、とにかく離れろって。いろいろと不味いから」

 

「………」

 

血界は部屋に入って安心したのか、落ち着いた様子で耳郎に離れるように言うがさっきまでの喧しさと打って変わって黙ってしまった。

 

「耳郎?」

 

様子が変わった耳郎を心配して耳郎の顔を覗き込もうとした瞬間、ベッドに押し倒された。

仰向けになった血界に耳郎は四つん這いになってにじり寄ってくる。

 

「うおっ!?耳郎どうした!?」

 

「血界にとってさ……ウチってなに?」

 

目を潤ませ、見つめて来る耳郎。

酔っているせいか若干の汗をかいており、色気が出ていた。

いつもと違う耳郎に血界は固まってしまう。

耳郎な顔が赤いのは酒のせいなのか、それとも……

 

「ねえ、どうなの?」

 

「どうって……」

 

耳郎の部屋着は大きめのサイズなのか血界から少し視線を下げるだけで胸元が見えてしまい、耳郎の柔肌が血界の目に入ってくる。

それだけで胸が高鳴ってしまう。

 

(やば……)

 

血界は見ないようにと視線をズラそうと顔を上に向けるが耳郎がそれを許さず、血界の頭を掴んで自分のほうを任せる。

 

「どう思ってるの?」

 

目を潤ませながらも真剣なことはわかった血界は答える。

 

「大切な……友達だと思っているさ」

 

「友達……そっか。ウチはさ、血界のこと……」

 

友達と聞いて、残念そうな耳郎は徐々に血界の顔に自分の顔を近づけていく。

 

「じ、耳郎……?」

 

「血界のこと……」

 

近づく耳郎の顔に胸の鼓動が止まらない血界も顔が赤くなる。

耳郎は目を閉じ、唇を血界の唇に近づけていく。

あと数cmで互いの唇が合わさる。

 

 

しかしその寸前で耳郎は血界の胸に倒れてしまった。

 

「……耳郎?」

 

血界は耳郎を揺さぶると穏やかな寝息しか聞こえてこない。

とりあえずの事態は回避できたが、血界にとっては安心したような残念な気持ちだった。

 

(ん?残念?)

 

血界の気持ちに僅かな変化があったかもしれない。

 

 

翌朝、血界は事務所でライトニングと待ち合わせていた。

 

「おはよー……ってどうした?顔が腫れてるぞ?」

 

ライトニングが部屋に入ると顔に紅葉状の腫れができた血界が待っていた。

 

「いや、昨日の特訓でちょっと怪我しただけっス」

 

血界の表情から哀愁漂わせている。

 

「………まぁ、深くは聞かねえよ」

 

ライトニングは空気を呼んで血界に何も聞かなかった。

その優しさが血界にとって、嬉しく涙が少し出そうになった。

 

「ジャズたちはもう行ったのか。メディス、今日の仕事は?」

 

「今日は午前から昼まで地方まで護衛ですね。その後、保須市で例の件です」

 

「了解」

 

聞き慣れない言葉を並べられ、血界は疑問を持ったがとりあえずは出発となった。

現場に向かう途中でライトニングが説明してくれる。

 

「今日の仕事は特殊だ。俺たちみたいなアイドル業界と隣接している会社の事務所しかない仕事になる」

 

「護衛でしたよね。どんな仕事なんですか?」

 

「言っちまえばアイドルたちの護衛だ。変な輩が近づかないようにガードマンをする仕事なんだよ」

 

昨今のアイドルブームはますます大きくなり、熱狂を呼んでいる。

そのためアイドル愛が行き過ぎる者も現れ、このような仕事が増えた。

今ではアイドル事務所は2〜3個のヒーロー事務所と契約して護衛してもらうのが定番になっている。

 

「普段はビーが行っているんだが、ビーが別の現場に行ってしまって手が足りないから今日は俺が行くことになったんだ。昨日と比べて楽な仕事だが気は抜くなよ」

 

「ウッス!」

 

車は現場に進んでいった。

 

 

その後は何事もなく、ロケも終わったが、その日の護衛対象が高垣楓で、昨夜の耳郎について少しオハナシをしたり、そのロケの見学とお手伝いとして来ていたシンデレラプロジェクトのメンバーと交流した。

前川みくとは、

 

「私、前川みくニャ!猫ちゃんアイドル目指してるの!」

 

「猫いいよね。俺も好きだわ」

 

「! ぜひ猫ちゃん会に登録して、猫の可愛さを布教してほしいニャ。

ちなみに犬は……」

 

「嫌いです」

 

「良い人ニャ!」

 

「みくちゃん、チョロすぎだって」

 

緒方智絵里とは、

 

「あの、これ……どうぞ」

 

「ん?四つ葉のクローバー?」

 

「私の個性です……その、お守りになれば良いなって思って」

 

「(ええ子や……)ありがとう。大切にするよ」

 

智絵里から四つ葉のクローバーを貰い、胸ポケットに入れた。

その後、初対面のメンバーと挨拶したり、凛との関係を聞かれたり、神崎蘭子の厨二精神がくすぐられたのか技のことを聞かれ、技を出して欲しいと頼まれたり、うっかり発動してしまった新田美波の個性にかかり不味いことになりそうになった。

ついでに、たまたま見回りが重なった耳郎にその現場を見られ、折檻をくらってしまった。

その現場の仕事が終わり、今度は保須に向かっていた。

 

「保須ってことはステインの件ですか?」

 

「ああ、俺が一度ステインと交戦しているからな。調査するように頼まれた。調査には同行してもらうが、もしステインと交戦するってなったらすぐに逃げて近くのヒーローのところまで行け。今のお前じゃ相手にならない」

 

ライトニングのその言葉に少しムッとしたが、素直に聞くことにした。

その表情をライトニングは見逃さなかった。

 

(こいつ少し自分の力に自信を持ちすぎだ。ない奴より全然良いが、今後のことを考えると危ういな)

 

ある程度、実力があるためそこらのヴィランと戦っても勝ってしまうので危機感というのが薄れてるのかもしれない。

今後、ヒーロー活動をしていく中で危機感というのは大事だと考えているライトニングは血界の将来を少し心配した。

その時、今日アイドルにデレデレしていた血界に折檻を加えた耳郎を思い出し、その話を振った。

 

「そういや耳郎とはどんな関係なんだ?」

 

「耳郎ですか?耳郎とは……」

 

血界は昨夜のことを思い出し、少し顔を赤くしてそっぽを向く。

 

「俺なんかとなんでもないですよ。ただの友達です」

 

(ん?こいつ……)

 

そう言い切る血界の言葉にライトニングは少し違和感を覚える。

すると保須までの道を指していたモニターに突然メディスが映った。

その様子は慌てている。

 

「どうした?」

 

『緊急です!保須で正体不明のヴィランが5体暴れている模様!すぐに急行したください!被害が酷いです!』

 

「了解。チカイ、捕まってろ。飛ばすぞ!」

 

「ウッス!」

 

ライトニングはアクセルを踏み込み、保須へと急いだ。

 

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