僕のヒーローアカデミア:Battlefront of Blood 作:マーベルチョコ
ステインはいつの間にか手にしていたナイフを口元に持っていき、ナイフに付着していた僅かな血を舐めとる。
その瞬間、血界は体の自由が効かなくなり、倒れる。
「なっ……!?」
「いい強さだ。口だけでないことはわかった。しかし、俺は止められん」
ステインの個性『凝血』はステインが口に含んだ血の人物を動けなくする個性だ。
血界に殴り飛ばされたときに一瞬、ナイフで顔を少し切っていたのだ。
ステインはゆっくりと血界に近づき、倒れた血界を見下ろす形でそう言い放った。
「安心しろ、お前を含めて3人は命を取らん。用があるのは後ろの2人だ」
ステインは倒れる血界を通り過ぎ、轟たちに近づく。
「チッ……!」
「不味い!」
ステインの個性で倒れてしまった血界を見て、不味いと思った轟はいつでも氷を放つ準備をするが、ステインはそれを見越して言った。
「いいのか?後ろの奴にも当たるぞ?」
「くそっ!」
ステインは丁度血界の後ろを歩いており、攻撃すれば血界に当たってしまう。
同じくステインの個性で動けなくなっている緑谷もなす術がないと焦り、始める。
どうにかこの状況を突破しないと、と思考を巡らせようとした瞬間、目の前の光景に驚く。
それは緑谷だけでなく轟もだ。
「?、 なんだ?」
それに気づいたステインも後ろを振り向くと血界が立ち上がっていた。
「なんだと!?」
「ぐっ……くっ……待てよ……!」
まだ体の自由が効かないのか苦しそうにする血界だが、ゆっくり一歩、一歩ステインに近づく。
ステインはもう一度、血界の血を舐めとると血界の体は自由を奪われるが、今度は倒れはしない。
「俺のダチに手を出すな!!」
そう叫んだ瞬間、目は紅く輝き、紅のエネルギーが体中に回り、ステインの個性を破壊した。
「なんだと?」
「ハァ……ハァ……いくぞ!」
血界は息を荒くしながらもステインに向かって走る。
ステインは剣を構え、血界を迎え討とうとした時、背後からの緑谷の奇襲に気づくのが遅れた。
「チッ!」
緑谷の攻撃を剣の腹で受け止めるが、フルカウル状態のパンチに剣はあっさりと折れる。
向かってきた血界を緑谷にぶつけ、距離をとる。
「悪りぃ、緑谷」
「ううん、大丈夫だよ。それより血界くんなんであんなに早く動けたの?僕より早くステインの個性で動けなくなった飯田くんたちはまだ動けないのに……ステインの個性は血液型に関係しているのか?血液を含んで相手を動かなくする個性?」
「分かンねぇけど、俺にはアイツの個性は効かないってことは体でわかった」
轟が血界たちのところまで下がり、話に参加する。
「今はここから逃げたほうがいい。2人とも動けるなら飯田たちを担いで逃げるぞ。俺たちじゃステインに勝てない」
轟の作戦を聞いた2人はうなづくが、それに飯田は反対した。
「みんな……俺のことは放っておいてくれ!」
「は!?」
「何言ってるんだよ!飯田くん!」
「俺は奴の言う通りだ。……人命を蔑ろにして、私欲を優先した!兄さんが託してくれた『インゲニウム』を穢してしまった!俺はヒーローとして失格だ!!俺のことは置いて行ってくれ!!君たちがここで命を落とす必要なんて無いんだ!」
飯田は涙を流し、自分を悔いる。
「ヤだね!」
しかし、血界はバッサリと断った。
「なっ!?」
「お前が何て言おうが俺はお前を助けるからな。仲間が殺されそうなのに放っておけるかよ。放って逃げたら俺のヒーローはそこで死ぬんだよ」
ステインから目を離さず、自分の信条を語る。
絶対に助ける。
その覚悟が血界にはあった。
「僕もだよ!飯田くんを置いていくなんてできないよ!」
「俺もだ。クラスメイトを置いていくなんてできねえ」
緑谷、轟も飯田を置いていくなんて選択はなかった。
「素晴らしい友情だな……だが!」
ステインは血界たちが逃げようとするよりも早く動き、一気に血界たちに詰め寄る。
轟が氷で迎撃するが、全て切り捨てられる。
「俺の粛清は止まらない!」
血界が近づき、BOXスタイルで攻めるが全て見切られ、距離を取られ、腕が届かない。
隙をついて血界の肩を切り裂く。
「イッテ……!」
「血界くん!」
「より良い世界にするために!」
向かってきた緑谷の攻撃をかわし、鳩尾にエルボーをぶつけ、血界に向かって投げる。
「オールマイトのような真の英雄が……!」
轟が炎を放つがかわし、ナイフを投げ、轟の腕に刺さる。
「ぐっ!?」
「存在し続ける世界を作るために!!」
ステインから威圧感が放たれる。
それは殺気か、それとも執念か。
それに当てられた血界たちは一瞬動きを止めてしまう。
ステインはそれを見過ごさず、血界に向かって刀を振るう。
「ガラ空きだぞ」
「……っ!」
刀が血界を切り裂こうとした瞬間、飯田が刀を蹴り折った。
「レシプロバースト!!」
「飯田!」
「チッ(早い……!)」
ステインの個性から解放された飯田が加速して、血界の窮地を救った。
「みんな、関係のないことですまない……」
「また、そんなことを言って……」
「だからもう、3人には血を流して欲しくないんだ……!」
ステインの言う通り、自分は3人にしてみれば未熟だ。
だが、それでも兄が言っていた言葉を思い出し、自分の原点(オリジン)を思い出した。
憧れたヒーローになるために、兄との約束のために、自分を助けてくれた友人達のために立ち上がらなくてはいけない。
その思いが飯田を奮い立たせた。
「感化され取り繕おうとも無駄だ。人の本質はそう易々と変わらない……お前は私欲を優先させた贋物だ……!ヒーローを歪ませるガンだ……!誰かが正さなければいけない!!」
ステインは飯田の志を自分の執念をもって否定する。
「貴様の言う通りだ。僕にヒーローを名乗る資格は……ない。それでも……ここで折れてしまったら、インゲニウムは本当の意味で死んでしまう!」
「論外」
飯田がステインの言葉を認めながらも自分の在り処を示す。
しかし、ステインにとって飯田はもう粛清対象以外の何物でもなかった。
轟が炎と氷で攻めるがまたもステインに避けられてしまうが、奴も焦り始め、攻撃が単調になり始めている。
轟と血界がここにいることはプロヒーロー達も知っているはずだ。
大勢との戦闘を苦手とするステインは一刻もここから離脱したいが、そうしないのは飯田ともう1人のプロヒーローを殺すという『イかれた執着心』があるからだ。
そんな奴が逃してくれはずもない。
なら、倒すしかない。
今動ける中で最も有力な力を持っているのは……
「血界!個性使えねぇのか!?」
「使いたくても使えないんだよ!ここは狭すぎて周りに被害が出る!」
氷で飯田のエンジンを冷やしながら、轟が一撃で倒せるはずの血界に聞くが、血界は個性が使えないと言った。
すると緑谷が上空を指す。
「上ならどう!?何も障害物はない!」
「いける!だけど、隙を作ってくれ!じゃないと技が出せねえ!」
技を使おうにもステインの異様な速さに発動が遅すぎる。
「任せろ!」
轟が炎で牽制するとステインは上空に飛び上がり、ナイフを轟に向かって投げる。
「させるか!」
飯田が轟を庇って腕でナイフを受ける。
轟に向かって飛んでくるステインを見据えて、飯田は痛む腕を無視し、足に力を込める。
(今は友を助けるためにッ!!)
今までで一番の加速を見せる。
そしてそれと同時に緑谷もフルカウルで上空に飛び、壁を蹴ってステインに向かっていく。
「レシプロエクステンド!!!」
「8%デトロイトスマッシュ!!!」
上空で防ぎようがないステインは身体を捻ることです二人の力を受け流すが、頭と腹付近に食らってしまい、落ちていく。
「グッ……!?」
「「血界君/くん!!」」
「いけ!血界!!」
ステインが落ちてくる方向に血界が拳を構えて立つ。
「ブレングリード流血闘術……!!」
ナックルガードから紅蓮の光が輝く。
ステインはその光、そして血界の言葉に目を見開く。
「貴様、それは……!!」
「『119式 血十字式打上槍』!!!」
アッパーと共にに放たれた血の十字槍がステインの腹に直撃し、空高く打ち上げた。
ステインは落ちて地面に激突し、動かなくなった。
「流石に気絶してるっぽい……?」
動かなくなったステインを見て、全員が安心した表情を浮かべる。
「とりあえず、拘束しちまおうぜ」
「縄なんかあるだろう。ゴミ箱がある」
「武器も全部外しておこうよ」
「僕も手伝おう……っ!」
「飯田、腕大丈夫か?めっちゃ血出てるぞ」
「ああ……」
全員が戦闘が終わったと安心していた。
しかし、そこにステインに襲われたプロヒーローが声を上げる。
「お前たち!まだ終わってないぞ!!!」
絶望にも聞こえたその声で全員が振り向くと動かなくなっていたはずステインが起き上がっていた。
左腕は地面に落ちた際に折れたのか不自然な腫れ上がっている。
「ブレングリード流血闘術……貴様、あの家系の者か?」
ステインは血界に飯田に向けた先とは段違いの殺気が篭った目を向ける。
「……っ!?(なんだ、これ!?殺気!?)」
濃密な殺気を向けられた血界は身体がすくみ、動かなくなる。
「名前は?」
「ち、血界・V・ラインヘルツ……」
血界は身体が震えそうになるのを我慢して、答える。
緑谷たちは突然のステインの殺気に身体が震えている。
「ラインヘルツ………やはりか………」
ステインは納得したという表情をし、再び視線を血界に向ける。
「貴様はここで殺す。必ずだ」
その目には殺気とともに覚悟したものもあった。
ステインは痛む自分の左腕に目をやる。
右手人差し指を向けると血のような紅い糸が出て、折れた箇所を補強する。
そして、ステインはナイフを取り出し、自分の右腕を傷つけ血を流し、その名を口にした。
「斗流血法・カグツチ」