僕のヒーローアカデミア:Battlefront of Blood 作:マーベルチョコ
ヴィランとの一戦を終えたジャズに耳郎はどうしても聞きたいことがあった。
そのため彼女は事務所に戻ったあと相談したいと言い、喫茶店に移動していた。
「それで?相談ごとって?」
「その…ジャズさんの戦い方に感激したんです。それで、できればその戦い方を教えて欲しいって思ったんですけど……」
「私の?」
「楽器を使った戦い方です」
その言葉にジャズは納得がいった。
「でも、貴女の使う楽器ってギターでしょ?」
「え、なんで知ってるんですか?」
「握手した時に指にタコができていたの気づいたから」
ギターをやっている人の特徴にジャズは気づいていた。
「私、そんなにギターが得意じゃないから教えることはできないと思うけど……なんで私みたいに戦いたいと思ったのかしら?」
「……そのウチの両親は音楽関係の仕事をしていて、その影響か音楽は凄く好きです。小学生の頃まではヒーローよりそっちの方が興味がありました。でも、中学の時にそれが変わって……」
耳郎は出会った当初の血界の姿を思い出し、嬉しそうにして少し顔を赤く染める。
「そっか……それが貴女の原点なのね」
「そう……ですかね」
「別に教えるのは構わないわ。でも、これって特別な武器ありきの戦い方だから中々難しいわよ?」
「それでも!やってみたいんです!ジャズさんが言っていた『好きなもので人を助ける』のをウチもやってみたいんです!」
耳郎の本気の目にジャズは真っ直ぐと見つめて、彼女の本気を確かめる。
「わかったわ。私が何を教えることができるかわからないけど、できる限りのことは教える」
「ありがとうこざいます!」
頭を下げる耳郎を見て、私もこんな時があったなぁ、と昔の自分と重ねて懐かしんでいるとジャズのケータイに通知が入った。
それは呑みの誘いだった。
「ねぇ、耳郎さん。この後って何か予定とか入ってる?」
「いえ、特にはないですけど……」
「それなら一緒に食事はどう?他の人もいるんだけど、耳郎さんに会ってみたいって言ってるの」
「ウチはいいですけど迷惑じゃないですか?」
「全然よ!むしろあっちが会いたがっているみたいだし」
「あっち?」
それを聞いて耳郎は了承し、ヒーロースーツから私服に着替え、目的のお店にやってきた。
住宅街の中にひっそりと佇んである純和風な居酒屋で横にかけられてある大きな赤提灯には『しんでれら』と書かれてあった。
「ここよ」
「なんか意外ですね。もっと人が大勢いるところかと思っていました」
「まぁ、人気者だと色々と面倒があるからね」
店に入ると質素な作りの居酒屋で落ち着く感じだった。
ジャズは奥の座敷に進んでいくとそこにはもう飲んでいる人たちの姿があった。
「あ、来ましたね」
「楓さん!?」
そこにいたのは高垣 楓と川島 瑞樹、そして私服姿のナイトクラブだった。
「耳郎さんお久しぶり」
「お久しぶりです」
楓が耳郎に挨拶すると川島が間に入ってきた。
「貴女が耳郎さんね。私は川島 瑞樹です」
「よろしくお願いします」
「ノーチさん、今日は夜番じゃないんですか?」
「今日はビーが当番よ。久しぶりにゆっくり呑めるわ」
「今日は寝かせないからねー!勿論カレンちゃんもね!」
「あはは……お手柔らかに」
テンションが上がっている川島にジャズこと本名、青木 カレンは苦笑いをする。
和気藹々とする楓たちに耳郎は参加していいのか、不安になる。
「あの…ウチも参加していいんですか?お酒なんて飲めないし」
「いいんですよ。私がゆっくりお話ししたかったんです」
楓が耳郎に優しく、そう説明する。
そうして楓たちと耳郎との親交会が始まった。
主に楓たちが耳郎に質問しており、耳郎は質問攻めされていた。
するとお酒が入って顔が赤くなってきたジャズが爆弾発言をした。
「それで〜…響香ちゃんは血界くんと恋人関係なの?」
「へっ!?」
「カレン……貴女酔ってる?」
ナイトクラブが呆れたようにジャズを見る。
「いいじゃないれすか!ヒーロー業って色恋沙汰と無縁なんですから!」
「じゃ、ジャズさん?」
「カレンちゃん。お酒弱いのに今日はハイペースだったもんね」
「初めて後輩を相手しているから、テンションが上がったんでしょうね」
耳郎の中にあったクールな印象が崩れていった。
「それ、私も聞きたかったんです」
「楓さんも!?」
「私も気にならないって言ったら嘘になるわね」
「今時の若い子ってそこら辺はどうなのかしら?」
それに便乗して楓、川島、ナイトクラブも質問しだした。
「それでどうなの?」
楓が優しく聞くと耳郎は顔を赤くして、恥ずかしそうにしながらしぶしぶと答えた。
「べ、別にウチと血界はそんな関係じゃありませんよ」
「でも、貴女達ここに来るとき仲が良さそうだったじゃない」
「それにチーくんのこと大切な人って言ってましたよねー?」
「あら?楓ちゃんもう酔っちゃった?」
楓が酔っ払ってしまい、爆弾発言をしてしまい耳郎の顔は一気に熱くなる。
「そ、それは……!と、とにかく!血界とは何にもありません!!」
耳郎は誤魔化すように大声を出し、隣に座っていたジャズのそばに置いてあった飲み物を一気に飲み干した。
「ふふっ、若いっていいわねぇ。じゃあ血界君との出会いとか聞いてみたいわね」
「いいれすねー!私も聞きたいです!」
「私もです」
「アンタたち……」
川島は少し悪戯心で耳郎にさらに質問する。
それに便乗するジャズたちにナイトクラブは呆れる。
ここで耳郎が嫌がったら止めようと思っていたが、それはならなかった。
「はーい!わかりましたー♪」
『!?』
さっきまでの様子とは打って変わって快活に話し出す耳郎に一同面を喰らう。
「じ、耳郎さん?」
「あっ、アンタそれ!?」
「え?」
耳郎が持っているグラスはジャズが頼んだアルコール数が高めの酒だった。
流石の事態にジャズも酔いが一気に覚めた。
「あっ……やっちゃった」
「もう、何やってるのよ」
「とにかく水を飲ませましょう!耳郎さん、お水飲んで」
川島から水を渡されるが耳郎はそれをジッと見る。
「それでですねー!血界との出会いわ〜」
「ダメだ。言うことを聞かないわ」
どうやら耳郎は酒にはめっぽう弱いようで、キャラが壊れていた。
無理矢理飲ませるのも気が引けるので、どうするべきかと悩んでいると楓が切り出した。
「いいじゃないですか。このまま耳郎さんのお話しを聞きましょうよ」
楓は飲みながらそう言った。
「楓ちゃん、もしかして酔ってない?」
「はい、こうでもしないと耳郎さん話してくれなさそうだったので少し演技を。チーくん、自分のことあまり話さないから聞きたかったんですよ」
悪戯っ子ぽく微笑む楓を見て、ナイトクラブたちは仕方がないなといった表情になる。
「それではー!ウチと血界の出会いを話したいと思いまーす!」
とりあえず迎えの車を呼んでおいて、それまで耳郎の始まりの話に耳を傾けた。
○
小学校から中学校に上がり、彼女は自宅から一番近い中学校に入学した。
彼女の両親は成績もいいのだから進学校を勧めたが、友人達と別れるのが嫌で多くの友人が通う学校にしたのだ。
しかし、耳郎の地元である東京の少し郊外は中々有名な治安の悪さだった。
素行の悪い若者が多くおり、ヴィランがよく目撃されており、親としてはそんなところにある学校より、もっと治安のいいところに進学させたいが娘の意思を尊重して、入学を許した。
耳郎の性格は元々クールなところがあるが、悪いことは見逃さない熱いところがあった。
小学校ではそんな性格でよく周りに頼られていた。
中学に入ってもその性格で周りとは良好な関係を築いていた。
そんな生活も慣れ始めたころ、いつも通りの通学路を通っていると路地に差し掛かったとき、誰かの悲鳴が僅かに聞こえた。
気になった耳郎はスマホを取り出し、いつでも警察に通報できるようにして、路地裏に入り覗き込んだ。
覗き込んだ先には1人の男子学生が立っており、その周りには多くの学生が倒れていた。
路地裏は陽が当たらず、立っている学生の顔はよく見えない。
しかも、その立っている学生は耳郎が通っている辺須瓶中学校の制服を着ていた。
(あれってうちの学校の制服だ……マジかよ……)
通っている中学校の生徒が暴力事件を起こしたことに驚いた耳郎は足元の空き缶に気づかず、蹴り倒してしまう。
「誰だ!」
「やばっ……!」
逃げようとするがつまずいてしまう。
転びそうになるが、耳郎の手を男子学生が掴んで助けた。
その時、男子学生の顔がはっきりと見えた。
真紅の髪と吊り上がった目。
それだけなら、恐怖の対象だけだったがその目はどこか優しさが見えた。
「大丈夫か?」
「え、うん」
起こされた耳郎はさっきまでの緊迫した様子の少年とは打って変わって優しげな雰囲気に、戸惑う耳郎は立たせてもらうと少年と対面する。
「あ、アンタ、ウチと同じ学校だよね?」
「あぁ、そうだな。俺は血界・V・ラインヘルツだ」
「え、あっ、ウチは耳郎響香……」
普通に挨拶してきた血界に戸惑う耳郎は詰まりながらも自己紹介をした。
これが耳郎と血界の出会いだった。