僕のヒーローアカデミア:Battlefront of Blood 作:マーベルチョコ
血界とともにイメージアップの活動をし始めてから数日が経った。
あれから色々なことをしたがことごとく失敗している。
例えば挨拶をしては普通の人たちは怖がり、そうでない者たちは喧嘩を売っているのかと詰め寄ってくる。
ボランティアに参加しては何か裏があるのではないかと疑われ、木に引っかかった風船を取ってやれば顔を見た子供が泣いてしまう始末だ。
「はぁ〜……」
学校の屋上で血界は深いため息をついた。
最近の耳郎とのイメージアップ作戦の空振りで疲れていた。
そこに扉を開けて耳郎が入ってきた。
「あっ、いた」
「耳郎か……」
「何しょげた顔してんのさ」
「しょげた顔もしたくなるって、やってもやっても俺の印象変わらねえだろ」
「そんなことないって!少しは改善……」
血界は耳郎をジッと見てきて、耳郎は気まずくなる。
「ごめん……」
「はぁ」
2人の間に気まずい空気が流れるなか、耳郎が話しかけた。
「そういえばさ、血界って何であんな風に……その……人のために動けんの?普通怖いじゃん。あんな状況」
普通の人ならば見て見ぬフリをしてしまう。
その中に飛び込んで行けるのはよっぽど正義感が溢れる者か、考えずに介入する馬鹿だ。
「……父親の影響だろうな」
「父親?血界のお父さんって何やってんの?」
「ヒーロー……」
「凄いじゃん!親がヒーローなんて…!」
「……だった」
「あっ……」
少し表情を暗くして言う血界に察した耳郎はより気まずそうにする。
つまり、血界の父親は死んでしまったということだ。
「そんな暗い顔すんなよ。俺だって父親がヒーローだったっていうのは聞いただけだからな」
「どういうこと?」
「俺、記憶が無いんだ。12歳から前のがな。それで父親のことも覚えていないんだよ。それでも父親のことを知りたくてヒーロー気取りのことしてるけど、これだからなぁ……」
あっけらかんに答える血界だが、耳郎にはどこか寂しそうに見えた。
「それでも凄いよ。人のために自分から進んで動けるなんてそうはいないよ」
耳郎がそう褒めるが血界は複雑そうな顔になる。
「どうだかなぁ……」
「何が?」
「……最近は分からなくなってきたんだ。人のためにっていうより俺が苛立ったから動いていたかもしれねぇ」
「そんなこと……」
「警官が俺を疑うのは仕方ないよな。これじゃあ、そこらの格下ヴィランと同じだ」
今までの活動が功を奏さないからか、自分を卑下するように血界は言った。
すると、耳郎が立ち上がり血界の前に立つ。
「なにそれ?」
「どうした?」
「血界がそんなこと言うなんてガッカリした」
耳郎はどこか残念そうにして、血界の下から去って行った。
○
(はぁ……やっちゃったなぁ……)
耳郎は教室の机に頬杖をつきながら、外を眺めながら心の中でため息を吐く。
自分でも何故あんなことを言ってしまったかわからなかったが、自分を卑下する血界が何故か許せなかったのだ。
1人落ち込む耳郎に友人たちがやって来た。
「キョウカー、今日スタバ行かない?」
「新作出たんだって」
「うーん…今日はあんまり気乗りしないから、ウチはパスするよ」
耳郎はそう言って荷物をまとめて下校した。
「なんか今日元気無かったよね」
「もしかしてラインヘルツに何かされたとか?」
「えー、マジー!?」
耳郎が下校しているとまた路地裏から微かな物音が聞こえて来た。
(また?聞こえすぎるのも問題だな)
耳郎は僅かな音も拾ってしまう自分の個性をそう思いながらも、一応物音がした方を覗き込む。
するとそこには耳郎と同じ制服の女子たちが1人の女子を囲っているのが見えた。
どうやらかこまれているのは耳郎と同じ学年らしいが、囲っているのは上級生だ。
「今週の分は持って来たよな?」
「そ、その……もうお小遣いの前借りができなくてお金の用意は……」
「あぁっ!?」
上級生の中でも最も背が高く、染めているであろう金色の長髪の女子生徒は大声を上げて威嚇する。
カツアゲされている女子は怖くなり、しゃがみこんでしまう。
「ひぃっ!で、でも……用意できないものはどうしようも……」
「お前調子乗ってんじゃねえぞ!!」
金髪の女子は下級生の顔面の横スレスレの壁を思いっきり踏みつける。
するとその壁から焼けるような音が音が鳴り、熱を発する。
「熱い!?」
下級生が頭を退かすと壁には焼けた跡が残っていた。
彼女の個性のようだが、それを顔に向けるのはとても危険だ。
金髪の女子は歪んだ笑みを浮かべながら次は下級生の顔面に靴底を向けて、見せる。
「これ凄いだろ?私の個性、『溶解』を武器に使うために靴底に鉄仕込んだんだよ。顔に当たったら皮膚が捲れるかもよ?」
「ヒィィッ!」
「流石にそれはヤバイって……!」
不味いと思った耳郎は女子たちの前に姿を現わす。
「ちょっと!アンタたち!やめなよ!」
「あ?誰だお前?」
耳郎は囲っている女子たちに睨まれるが臆せず、前に立つ。
「カツアゲなんてやめなって、そんなダサいこと」
「あぁ?なんだお前?」
「ヒーロー気取りかよ」
「ヒーロー気取り……」
(血界も言われていたな……それでも血界は気にせず助けてたっけ。そっかウチは血界のその姿に憧れてたんだ)
自分を投げ打ってでも人を助ける姿に、耳郎は憧れていたのだ。
だから、そんな自分を卑下する血界を許せなかったのだ。
(ダサいのはウチもか)
血界に向かって酷いことを言った自分を思い出しながらも、そんな自分も血界と同じようにしていることに笑みが零れてしまう。
「おい!何笑ってんだよ!」
「何でもない。ただちょっと可笑しかったからさ」
「ハア?頭でもおかしいのか?」
「そうかもね」
睨んでくる上級生たちに耳郎は一歩も臆さず、対峙する。
「おい、どうする?」
「ボコって金盗ろうぜ」
笑みを浮かべて不埒な話をしてくると耳郎はすかさず携帯を向ける。
「何かしたらすぐ警察呼ぶよ」
「あ?何してんだ!ビビリが!」
「何でも言えばいいよ。ウチは正しいと思うことをするだけだし」
煽ってくる上級生だが耳郎は一切引かない。
すると金髪の女子が煽った仲間の肩を引く。
「……行くぞ」
「チッ!」
上級生たちはどこかに行き、耳郎たちは解放された。
その後、囲まれた同級生からは感謝されながら、耳郎は血界のことを考えていた。
(血界もこんな風に感謝されたら考え方も変わるかも……とりあえず明日謝ろう)
○
そして翌日、耳郎は血界と連絡を取ろうとしたが血界から返事が来ないまま登校していると昨日遊びに誘ってくれた友人2人が怯えた様子で耳郎の前を通り過ぎようとしていた。
「あっ、おはよー。どうしたの?」
「キョウカ!」
「じ、実はさっき不良に絡まれたんだけどラインヘルツ 君が助けてくれて……」
「血界が!?」
耳郎は慌てて、友人が出てきた所に向かうと血界が1人の不良を殴っているところだった。
「血界!」
「っ!耳郎か」
振り向いた血界の顔には返り血が飛び散っていた。
「喧嘩しちゃダメってあれほど言ったじゃん!」
「………」
怒鳴る耳郎に血界は気まずそうに目を背ける。
「このままじゃまた振り出しに戻るよ!?」
「……うるせーなぁ、別に頼んでねぇだろ」
「え……?」
突然、血界は不貞腐れながら耳郎に反論する。
それを聞いた耳郎も顔が険しくなるが、血界も心のうちに溜まっていた苛立ちが爆発してしまった。
「お前は俺の母親か?違うだろうが。頼んでもいないのに余計なことしてくれなくてもいいんだよ」
「……わかった。もう、アンタのことなんか知らない」
耳郎は血界に背を向けて、その場から離れて行った。
「じゃあね」
○
学校に着いた耳郎は机に突っ伏しながら今朝のことを考えていた。
(何だよ、血界のやつ……)
血界に苛立ってもいたが、少し悲しくもあった。
そんなことないと頭を振って切り替えようと、授業の準備をしていると周りがヒソヒソと話しながらこっちを見ていることに気づいた。
嫌な視線を送られ、気分が悪いが気のせいだと思うことにした。
1話、2話を少し変更しました。