僕のヒーローアカデミア:Battlefront of Blood 作:マーベルチョコ
血界と喧嘩別れしてから数日が経ち、未だ耳郎は血界との関係に悩んでいたが他にも悩みがあった。
最近クラスだけでなく、学校中から奇異な視線を送られるのだ。
友人たちに聞こうとしても気まずそうにしながら、何もないと言い、慌ててどこかに行ってしまい、孤立してしまっている。
そんなことが数日続き、耳郎にもストレスが溜まってきていた。
「なんなんだよ、もう……」
ここ最近、ため息が多いなと思いながらふと血界のことを考えた。
(アイツもこんな感じだったのかな……)
遠くから奇異な視線を送られ、孤立している状況は血界と同じだ。
(こんなのストレスがめっちゃ溜まるじゃん……そりゃ苛立つよね)
経験して初めて血界の状況が理解できた。
こんな状況でも血界は人を助けていたのだ。
改めて凄いと思い、済まないことをしたと思った。
(今度会ったら謝らなきゃな……)
そう思いながら、下校しようと教室を出るとこの前襲われていたところを血界に助けられた友人2人と出くわした。
「あっ、キョウカ……」
「早く行こ……」
急いでその場から離れようとする友人たちを耳郎は呼び止める。
「ちょっと待ってよ!どうして皆んなウチを避けるの?ウチがなんかした?」
いい加減、何故避けられるのかを問いただしたくなった耳郎は少しキツめに問いただすと友人はおずおずと答えた。
「そ、その……キョウカがラインヘルツを使って人を傷つけたり、カツアゲしてるって噂があって……」
「他にも気に入らない奴がいたらラインヘルツを使ってボコボコにしてるって噂もある……」
「そんな……ウチがそんなことするわけないじゃん!」
耳郎は必死に誤解を解こうとするが、友人が遮る。
「だって!最近キョウカ、ラインヘルツと仲良かったじゃん!それに証拠写真だってあるんだし!」
「写真?」
友人が見せた携帯のディスプレイには血界と喧嘩別れした日の2人が並んでいるところを撮られていた。
それは2人が加害者と言われてもおかしくない写真だ。
「なに…これ……」
「今のキョウカとはあんまり一緒にいたくない……」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
耳郎は2人を呼び止めるが、それを聞かず耳郎を置いて行ってしまった。
耳郎の胸には疑惑が残る。
誰があんな写真を撮ったのだろうか。
すると、耳郎の背後から声をかける者がいた。
「おい」
「アンタは……」
声をかけてきたのは先日、耳郎がカツアゲを止めた金髪の女子の取り巻きの1人だった。
「ちょっと面貸せよ」
○
連れてこられたのは人目がつかない校舎裏で、そこには煙草を吸っている金髪女子が待っていた。
睨んでくる不良たちに若干緊張しながらも、それを悟られないようにする。
「で、何?こんなお約束の場所に連れてきて」
「あぁん!?お前口には気をつけろよ!?」
「お前は黙ってろ」
耳郎は毅然とした態度で金髪女子に話す。
取り巻きが怒鳴るが、金髪女子はそれを遮って吸っていた煙草の吸殻を捨て、耳郎に近づく。
金髪女子は背が高いため耳郎を見下ろす形になる。
「足浦 灼焼(あしうら しゃくや)だ。名前くらい聞いたことあんだろ?」
金髪女子、足浦 灼焼の名前を耳郎は確かに聞いたことがある。
友人たちと気をつけるべき不良について話していたとき出てきた名前だ。
曰く、不良の溜まり場である普羅血(ふらち)高校に彼氏がいて自由に不良たちを使える、警察と裏で繋がっていて多少の犯罪は見逃してもらえるなど、悪い噂が絶えない人物だ。
耳郎もそんな人物だとは知らなかったため、顔に僅かに緊張が見られた。
「……それでウチに何か用ですか?足浦先輩」
「お前、最近寂しそうだよなー。可哀想って思ってさー」
わざとらしい口調で話してくる足浦に耳郎はコイツが噂を流した張本人だとわかったが、証拠がないために責めることはできない。
「そこで名誉挽回のチャンスをあげようと思って」
「チャンス?」
耳郎が聞き返すと足浦は嫌らしい笑みを浮かべる。
「ラインヘルツを差し出せ。そうしたら噂を無くしてやる」
まさかの引き合いに血界が出てきたことに耳郎が驚く。
「なんで……血界は関係ないでしょ」
「彼氏の後輩がめちゃくちゃアイツにヤられてるんだよ。中坊に負けて彼氏の顔、丸潰れなわけ。わかる?」
血界は今まで自分から喧嘩を売ったことはないと言っていた。
つまり彼らの勝手な逆恨みだ。
喧嘩別れしたと言っても血界をこんな下らないことに巻き込むわけにはいかない。
「そんなことしないよ」
耳郎は強気で断るが足浦が耳郎の胸ぐらを掴んで、僅かに持ち上げられ、顔を近づけられる。
ヤニ臭さと僅かに甘い匂いがし、顔をしかめる。
「お前の意見なんかどうでもいいんだよ。お前が逆らえば、お前だけじゃなく周りの奴がどうなるかわかんねぇぞ?」
足浦の目は本気で冗談ではないことがわかった。
言い返そうとしたが、足浦の凄みと本気の脅しに足がすくみあがってしまい、言い返すことができなかった。
「明日の17時に廃工場に連れて来いよ。連れて来なかったらどうなるかわかるよな?」
突き放された耳郎は地面に座り落ちてしまい、足浦はその場から離れる。
「輪姦すのもいいかもしれませんねー!動画で撮って売りましょうよ!」
「その後は売春でもさせますか?あんな貧相な身体でもオヤジなら高値で買いますよ」
好き勝手言いながら足浦に続いてどこかに行く奴らに、耳郎は言い返すことができず、拳を握る。
ただ悔しく、涙を零さないようにするだけで精一杯だった。
○
教室に戻った耳郎はどうすればいいか、わからなかった。
教師に相談しようにも教師陣は足浦が怖く、なぁなぁで誤魔化そうとするし、親には迷惑をかけたくないため話すことができない。
とにかく帰って整理しようと鞄を持って教室を出ると血界と鉢合わせした。
「あっ……」
「おっ……」
少し気まずそうにする血界だが、すぐに頭を下げた。
「その……この前は、ごめん」
「え……」
「イライラしてたからってお前に当たるのは間違っていた。ごめん」
素直に頭を下げるのを見て、血界を差し出すなんてできるはずがないと思った。
元からその選択肢はないが、改めてそんなことはしないと心に決めた。
だから、辛いが言うしかない。
「そんなことどうでもいいって」
「は?」
「ウチはもうアンタのことなんて知らないし、アンタがどれだけ嫌われても知らない」
わざとキツイことを言って、自分から遠ざける。
乱暴者だが、不器用な優しさを持つ血界は自分の状況を知ったら、わざと乗り込んで喧嘩を始めてしまうかもしれない。
そうしたら、いくら強い血界だろうと無事で済むはずがない。
奴らの思う壺だ、そんなことはさせない。
「なんだよ!そんなこと言わなくていいだろうが!」
「だから何?謝ったて、アンタの印象は変わらないよ。乱暴者が良いことしても結局何も印象が変わんなかったし、無駄骨だったね。あーあ、貴重な時間無駄にした!」
「…………わかったよ」
血界は悔しそうにして、耳郎に背を向けた。
(ごめん……)
耳郎は血界の姿が見えなくなると俯き、下唇を噛んで泣きそうになるのを我慢しながら、心の中で謝った。
人を助けるために傷ついてきた血界を助けるって言ったんだ。
約束は守る、絶対に。
○
翌日、耳郎は1人で指定された場所に赴く気だった。
ただでは終わらせない、奴らの悪事を暴露するためにどうするか考えていると教室に足浦の取り巻きが入ってきた。
「よぉー耳郎。今日の約束忘れてないだろうな?」
「17時に廃工場に連れて来いよ?ビビって来なかったらどうなるかわかるよな?」
ニヤつきながら言ってくる取り巻きに周りは不安そうな表情になる。
耳郎も怖いがそれを悟られないように拳を握りしめ、取り巻きたちに挑発的な笑みを浮かべた。
「アンタたちも血界にビビって廃工場にいないとか、やめてよね」
「あぁ!?何だと!?」
「ここでボコしてもいいんだぞ!?」
怒鳴る取り巻きに大勢がビクつく。
するとそこに教師がやって来て、注意する。
「お、お前たち!何している!」
教師が足浦たちに怖がっているというのは本当らしい。
怯えながら注意している。
取り巻きたちは舌打ちしながら、教室を出て行った。
「じ、耳郎も教室で騒ぐのはやめなさい!」
「はい……」
自分は騒いでいないのに、体裁を保つために注意している教師に嫌になりながらも返事をする。
教師も足浦が関わってる分かれば耳郎を助けてくれない。
完全に孤立しているが、それでも血界を巻き込むわけにはいかない。
耳郎は決心して約束の場所に乗り込む。