僕のヒーローアカデミア:Battlefront of Blood   作:マーベルチョコ

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File.53 オリジン:耳郎響香5

廃工場には多くの不良たちが武器を持って待ち構えていた。

その奥ではソファが置かれており、そこにはガタイが良く、肌が赤黒く、額に僅かに角が生えている男が座っており、足浦がしだれもたれていた。

 

「来るんだろうな。最近調子に乗っているガキは?」

 

「来るはずさ。徹底的に脅したからね」

 

「そうか。おい、まだ来てないのか?」

 

「目印になるように外で待たせている奴らがここまで連れてくるようになっていますから、時期に来ますって。焦らず待ちましょうよ〜」

 

ヘラヘラと答える仲間の1人に男は顔を顰め、立ち上がって近づく。

 

「な、なんすか?」

 

「お前調子に乗ってるな?」

 

「へ?い、いや、そんなわけ……」

 

仲間が答える前に男は側にあった鉄パイプで頭を殴った。

 

「ぐぁあっ!?」

 

「調子に乗ってるなァッ!?」

 

突然の凶行に全員が驚く。

男はそれを気にせず、鉄パイプを振り下ろし続ける。

 

「お、鬼瓦(おにがわら)さん!そこまでにしときましょうって!死んじゃいます!」

 

仲間の1人が止めるとやった振り下ろすの止めて、傷つけた相手を見下ろして、その場にいる全員を見渡す。

 

「いいか!俺に調子に乗ってる奴は誰だろうとぶっ飛ばす!例え女だろうとなぁ……」

 

その言葉に全員が緊張した表情になる。

突然の凶行に走った男の名前は鬼瓦 凶児(おにがわら きょうじ)。

普羅血高校の元締めであり、足浦の彼氏だ。

先の通り、自分の少しでも気に入らないことがあると暴力に走るイカれた男だ。

 

廃工場に緊張した空気が流れていると工場の大きな扉が僅かに開かれ、外で待機していた部下の1人が顔を覗かせた。

 

「あの……鬼瓦さん。例の奴来たんですけど……その……」

 

「なんだ?サッサっと入れろよ」

 

気まずそうに報告する部下に催促し、連れて来させる。

 

「オラ!サッサっと入れ!」

 

「ちょっと!痛いって!」

 

連れて来られたのは耳郎、たった1人だった。

 

「あ?おい、男はどうした?」

 

「それが来たのはコイツだけで、男の姿はなかったっす」

 

「ふーん……」

 

すると足浦が激昂して耳郎に詰め寄る。

 

「おい!ラインヘルツはどうした!?」

 

「……呼ぶわけないしでしょ?バッカじゃない」

 

「〜っ!!てめェッ!!」

 

足浦が耳郎を踏み倒そうとし、耳郎は目を瞑るが、鬼瓦が止めた。

 

「凶児!なんで止めるんだよ!」

 

「ちょっと待てよ。……俺の言うことが聞けないのか?」

 

不服そうな足浦だが鬼瓦に睨まれて、目を伏せて後ろに下がった。

耳郎はあの足浦が言うことを聞くことに驚くが、目の前に立つ鬼瓦から視線を外すことができない。

下から上へとじっくりと耳郎を見た鬼瓦は連れてきた部下の1人を呼んだ。

 

「おい、ケータイは取り上げたのか?」

 

「はい、サツにバレると厄介なので」

 

「ふーん………」

 

鬼瓦は耳郎の首元に目が止まり、セーラー服の襟口に手をかける。

 

「ちょっ!?何すん……!!」

 

「静かにさせろ」

 

「はい!」

 

「んー!」

 

暴れる耳郎を部下に抑えさせ、服を思いっきり引っ張ると首元が曝け出され、その首に紐が掛かっていた。

その紐を手繰り寄せると小型のマイクレコーダーが付いていた。

 

「うっ……」

 

「ガキの浅知恵だな。こんなんでどうにかなると思ったのか?なぁっ!!」

 

鬼瓦が皆に見せびらかすようにレコーダーを掲げると耳郎を馬鹿にする笑いが起こる。

悔しそうにする耳郎に鬼瓦が顔を近づける。

 

「まぁ、証拠を持っていても無駄だけどな」

 

「は?」

 

「灼焼の親父さんはこの街の警察署長、兄貴は警官だ。犯罪なんていくらでも揉み消せる」

 

「嘘……あの噂本当だったんだ……」

 

警察が頼みの綱だったが警察もグルでは、全てが無駄になってしまった。

呆然とする耳郎に腹部から突然衝撃をくらい、吹き飛ばされる。

 

「かはっ……!」

 

吹き飛ばされた耳郎は息が吸えず、咳き込みながら凄まじい痛みが走る腹を抑え、苦しそうにする。

 

「ヒヒッ!」

 

蹴り上げた本人の鬼瓦はそれを見て歪んだ笑みを浮かべていた。

鬼瓦は倒れた耳郎に馬乗りになり、手を抑える。

 

「ラインヘルツの野郎はお前のせいで来なかったんだ。責任取れよ……俺が楽しんだらお前らにもヤラせてやるよ!」

 

鬼瓦がそう大声を上げると一気に部下たちが湧き立つ。

 

「ゴホッゴホッ!ちょっ…ェホッ!……止めてよ!」

 

嫌な予感がよぎり、耳郎は暴れるが両腕を部下に抑えられ、馬乗りされているため振り解こうにも身動き取れない。

 

「お前のレイプ映像、街中に広めてやるよ!そうしたら愛しのラインヘルツもここに来るだろうよ!」

 

血界を巻き込まないために身を呈して、乗り込んだのに結局血界を追い込む羽目になってしまった。

これからされることの恐怖、血界への申し訳ない気持ちで目元から涙が流れる。

 

(ごめん……血界……)

 

最後に心の中で謝った瞬間、工場の扉が大きく開かれた。

全員が扉の方に注目し、耳郎も扉の方を向く。

そこには息を切らせている血界が立っていた。

 

「ハァ、ハァ……ここか……探し回ったぞ」

 

「血界、なんで……」

 

呆然と呟く耳郎を足浦に任せ、鬼瓦は血界と対面する。

 

「お前がラインヘルツか?」

 

「ああ、そうだ。耳郎を返してくれ」

 

鬼瓦がリーダーだと、瞬間的に悟った血界は睨みながら話す。

その目つきが気に食わなかったのか、鬼瓦はこめかみをピクリとヒクつかせた。

 

「俺はこれからコイツとお楽しみなんだよ。お前は俺の部下と遊んでろ。……ヤレ」

 

耳郎を血界の彼女だと思っている鬼瓦は傷つけながら、目の前で陵辱すれば生意気なあのガキを悲しみのどん底に落とせるとほくそ笑みながら、背を向ける。

血界を倒すのは部下に任せればいいと思い、自分はどのように耳郎を鳴かせてやろうかと考える。

この場には百を超える自分の部下がいる。

いくら喧嘩が強いからって百を超える相手に勝てるはずがない。

そう思い、耳郎に近づこうとするとすぐ横を人影が砲丸のように飛んでいき、耳郎たちのすぐ横に落ちた。

 

「あ?」

 

鬼瓦が倒れた部下を見ると前歯がなく、口と鼻から血を流し、白目を剥く姿だった。

振り向くと血界が拳を突き出しており、殴ったのは明らかだ。

 

「耳郎に手を出すな」

 

静かに怒りが篭った目で鬼瓦を睨む。

それに更に苛ついた鬼瓦は部下たちに怒鳴る。

 

「オラァッ!お前ら!中坊に舐められてるんだぞ!!?サッサっとやっちまえぇっ!!」

 

「かかって来いっ!!」

 

怒鳴られた部下たちは一斉に武器を掲げ、血界に襲いかかる。

血界は迫り来る攻撃をかわし、受け止め、一人一人倒していく。

数が多いため何度も殴られるが、血界は止まらず倒していく。

頭からも血を流しながら戦う血界を見て、耳郎は堪らず叫ぶ。

 

「なんで……なんでここに来たんだよ!」

 

「あぁっ!?耳郎の友達に教えてもらったんだよ!!ウッ!?耳郎が大変な目にあってるってな!!ぐっ!」

 

「そうじゃなくて!なんでウチを助けるために来たのって聞いてるの!!だってウチ……あんな非道いこと……」

 

悲しそうに目を伏せる耳郎。

あの時言ったことは絶交されても仕方がないと思っている。

しかし、血界はそれでも助けに来てくれた。

 

「なんでって……!友達だったら助けるのは当然…!いってぇなぁ!!……だろうが!それに……!!」

 

「ヒーローだったら人のために動くんだろ?」

 

それは耳郎が言ったヒーローらしいことだ。

血界はそれを覚えていた。

 

「ヒーローってお前はヒーローなのか!?えぇっ、おい!?」

 

それを聞いていた鬼瓦が煽るように言うが、血界は笑みを浮かべて答える。

 

「ああ、そうだ!今は耳郎だけのヒーローだ!!」

 

それを聞いた耳郎は一気に顔が熱くなり、赤くなる。

告白のような言葉に耳郎は恥ずかしくなってしまった。

そうしている内に次々と部下を倒していき、遂には最後の部下も倒した。

 

「ハァ…ハァ……後は、ハァ……お前だけだぞ」

 

頭から血を流し、傷だらけの血界は鬼瓦を睨み、片足を引きずりながら近づいてくる。

鬼瓦は血界のその様子に一歩後退りしてしまったことに気づき、怒りが頂点に逹する。

 

「ゥゥウルァアアアアッ!!!!」

 

「っ!」

 

服をはちきるほど体が膨張し、角がより発達した姿になった鬼瓦はその巨大な拳を血界にぶつけた。

踏ん張る血界だが鬼瓦の力に負け、吹き飛ばされ、捨てられていたドラム缶にぶつかり崩れ倒した。

 

「血界!」

 

「動くな!」

 

飛び出そうとした耳郎を足浦が止める。

 

「ぐっ……くそ……!」

 

ドラム缶の山から抜け出そうと血界は身動きするがダメージが積み重なって思うように動けない。

そこに凶暴化した鬼瓦が拳を振って突撃してくる。

 

「ウラァアァァッ!!!」

 

「うあぁっ!!」

 

血界はドラム缶とともに吹き飛ばされ、地面に倒れる。

立ち上がろうとするが体に力が入らず、立ち上がれない。

傷だらけの体に鞭を打ち、立ち上がろうとする血界を見て耳郎は叫ぶ。

 

「血界!もういいって!このままじゃ死んじゃう!!」

 

「おい!黙ってろ!」

 

足浦が止めるが耳郎は構わず叫び続ける。

 

「ウチ、アンタに非道いことを言った!だから…!もういいから…!逃げてよ……!!」

 

涙を零しながら叫ぶ耳郎に血界は倒れながら笑みを浮かべる。

 

「嘘が、下手だな……お前……俺を……ハァ、巻き込まないために……ハァ…ハァ、あんなこと言ったんだろ?」

 

血界はフラつきながら立ち上がり、耳郎に笑みを浮かべ、自信のある目で見る。

 

「絶対にお前を助ける」

 

その一言には絶対の自信が溢れていた。

圧倒的逆境だというのに血界のその表情には不安が一切見られない。

 

「絶対ニ助ケルダトォ……?調子ニ乗ッテンジャネェゾッ!!!」

 

更に激昂した鬼瓦はより腕を肥大化させる。

それに対して血界は初めて構えを取った。

 

「ブレングリード流血闘術……推して参るっ!!!」

 

肥大化した腕を振り上げたと同時に飛び上がり血界を潰さんと振り下ろす。

しかし、それと同時に血界の腕は紅く輝き、技を発動する。

 

「ブレングリード流血闘術……!!」

 

『111式 十字型殲滅槍!!』

 

飛び上がってガラ空きになった鬼瓦の体に血の槍を突き刺す。

 

「ガハッ……!!」

 

「オオォォォッ!!!」

 

腕を振るって槍ごと鬼瓦を吹き飛ばし、工場の壁を突き破り、鬼瓦は地面に叩きつけられ気絶した。

 

「ハァ…ハァ…勝ったぞ」

 

「倒した……」

 

鬼瓦が倒された足浦は不味い状況だとわかり、焦ってポケットからカッターナイフを取り出し、耳郎の顔に向ける。

 

「こっちに来んなァ!!来たらコイツの顔ズタズタにすんぞ!!」

 

「………1人でどうすんだよ?」

 

「へ?」

 

足浦が呆けた瞬間、血界は拳を突き出すのと同時に小型の十字槍を発射し、足浦の額に命中させた。

足浦は後ろに仰け反って倒れた。

自由になった耳郎は傷だらけの血界に駆け寄った。

 

「血界!大丈夫!?」

 

「お、おう。なんとか……」

 

若干フラつく血界を支えて、工場を出る。

 

「終わったな……」

 

「うん、ありがとう……助けに来てくれて」

 

「気にすんな」

 

「でも、どうなるかな……コイツら警察と繋がっているみたいだし……もみ消されちゃうかもしれない……」

 

事件が終わっても鬼瓦たちが終わるわけではない。

今後も血界たちを狙う可能性はある。

だが、血界は笑って答えた。

 

「何度来ても倒してやるよ。俺はヒーローだからな」

 

能天気に答える血界に耳郎も不思議と笑顔になる。

 

「そうだね」

 

 

後日、学校の昼休みに血界は屋上で弁当を食べていた。

そこに弁当箱を持った耳郎もやってきた。

 

「よぉ、耳郎」

 

「よっ、ここにいたんだ」

 

耳郎は血界の隣に座り、一緒に昼食を取り始めた。

 

「結局、アイツらの報復もないな。なんか拍子抜けだ」

 

「それなんだけど、噂だとね。今回関わった奴、ウチらを除いて全員補導されたらしいよ。足浦の家族は色んな不正がバレて捕まったんだって」

 

「ふーん……まっ、平和になるならそれに越したことはないな」

 

能天気に答える血界に耳郎は少しため息を吐いた。

 

「はぁ……あのね、ウチらもあの事件に関わったんだから補導されるかもしれないだよ?そうしたらマズイじゃん」

 

鬼瓦たちは捕まっているのに何故自分たちだけが何もないのが不思議だが不安は残る。

 

「何も心配することなんかねぇよ」

 

「どうして?」

 

「俺は耳郎を助けようと戦っただけだし、耳郎も俺を助けようと1人でアイツらと立ち向かったんだろ?何にも悪くねぇよ」

 

自信を持って答える血界に耳郎は呆れながら、笑った。

 

「なんか、アンタらしいね」

 

「どういうことだよ?」

 

「後先考えず、とにかく人を助けようとして動くとこ」

 

「む……」

 

そう言われると何も言い返せない血界は少し恥ずかしそうにする。

 

「でも、それって最高にヒーローっぽいよね」

 

いい顔でそう言う耳郎に血界も笑顔でうなづく。

 

「ウチもアンタみたいなヒーローを目指そうかな?」

 

「おっ、耳郎もヒーロー志望か!じゃあ、先ずは悪口を言われてもキレないようにしないとな!」

 

「アンタに言われたくないんだけど……」

 

「例えば……貧乳とかまな板とか」

 

「ふん!」

 

「たわばっ!?」

 

 

顔を真っ赤にした耳郎はテーブルに突っ伏しながら顔をダラけさせながら、ニヘヘと笑い話を締めくくる。

 

「これが〜ウチと血界の出会いなんですよー。えへへ……」

 

「若いっていいわねー。キュンキュンしちゃったわ」

 

「瑞樹さん……それって死語じゃ……」

 

「カレンちゃん。何か言った?」

 

「ナンデモナイデス。ハイ」

 

昔を懐かしむようにする川島に、顔を青くするジャズ。

すると楓が安心したように息を吐いた。

 

「大丈夫?」

 

「はい……安心しました。チーくん、学校でも楽しそうで。初めて会った時は空っぽの子でしたから」

 

昔の血界を思い出し、少し悲しそうにする楓にナイトクラブが労わるように肩を置いた。

するとナイトクラブの携帯に連絡が入り、確認するとビーが迎えに来たようだ。

 

「カレン、ビーが来たわ。耳郎さんを運びましょう」

 

「はい!耳郎さん!行くわよ!」

 

「それでは皆さん!お休みなさい!!ビシッ!!」

 

酔ってる耳郎は川島と楓に敬礼してからナイトクラブとジャズに引きつられて店から出て行った。

 

「お疲れ様ー」

 

「おやすみなさい」

 

3人が出て行ったから川島は楓に話しかけた。

 

「それで〜?将来のお義姉さん候補としては耳郎さんはどうだったのかしら?」

 

揶揄うように話しかけた川島は楓を見る。

楓は少し悩むフリをして、箸を正解棒のように持ち、笑顔で答えた。

 

「合格です!少し素直になれない所があるみたいですけど、可愛いから全然ありです」

 

2人はその後も耳郎を酒の肴にして、飲み続けた。

 

 

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