僕のヒーローアカデミア:Battlefront of Blood   作:マーベルチョコ

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Hero's youth
File.56 イレイザーの先輩


職業体験が終わり、通常の学校生活が戻ってきた。

朝のLHR前に皆がそれぞれの体験先はどうだったか話している。

 

「みんなどうだったー!?」

 

「あんまりヒーローっぽい事はさせてくれなかったなー」

 

「私もそんな感じだったよ」

 

葉隠が皆に職業体験がどうだったか聞くが芦戸と上鳴は似たような感じで、あまり何もさせて貰えなかったらしい。

 

「そういや峰田はMt.ガールのところ行ったんだろ?どうだった?」

 

上鳴は近くにいた峰田に聞くと峰田は目の光を失い、自分の親指の爪を齧り、ブツブツと呟き始めた。

 

「女ってのは裏があるんだよぉ……」

 

「……何があったんだよ」

 

「爪囓るのやめろって……」

 

峰田の豹変に上鳴と瀬呂が怯える。

峰田のことがどうでもよかった葉隠は他の女子に話を振った。

 

「梅雨ちゃん達はどうだったの?」

 

「私は密入国者を捕まえたりしただけね」

 

「何ソレスゴ!」

 

何気なく言う蛙水に驚く葉隠達。

 

「ウチはジャズさんだけじゃなく、色んなヒーローに付いて回ったよ」

 

「へー、いいなー。ねぇねぇ、346プロだからさ、アイドルと会ったりした?」

 

芦戸が少し緊張した様子で聞いてくる。

 

「うん、一緒に食事をしたりした」

 

「いいな!いいな!血界も一緒だったんだから、会ったんでしょ!?」

 

「血界も……」

 

そこで思い出したのが自分が酔っ払って血界に迫った時のことだ。

途端に耳郎は顔が熱くなり、悟られないように顔を伏せて隠した。

 

「あれ、どうしたの?」

 

「耳郎ー、何かあった?」

 

葉隠と芦戸が聞いてくるが耳郎はとにかく何もないと言い、話題を自分から晒すためにまだ聞かれていない麗日に振った。

 

「そ、そういえば麗日はどうだったの?」

 

「有意義だったよ……とってもね」

 

武術の構えを取る麗日はどこかの達人の雰囲気を醸し出している。

 

「皆んな、色々凄かったんだね」

 

「いや、凄いって言えば緑谷たちだろ!」

 

上鳴が興奮したように談笑していた血界、緑谷、飯田、轟のほうを見て言った。

血界たちがステインの事件に関わっていたのは皆が知っていた。

皆が心配するなか、上鳴はステインのいきさまがカッコいいのではないかと言った。

ステインが緑谷を脳無から助けた姿は何者かに撮影され、動画をネットに投稿されていた。

巷ではその動画を見た者はステインの生き方に共感、感心する者が現れた。

 

「ステインがカッコいいって声も結構あるなー」

 

「ちょっと!やめなって!飯田のこと忘れたの!?」

 

「あっ、悪りぃ……」

 

飯田の兄は足に後遺症が残り、下半身不随とまではいかないが長時間の運動が不可能になり、今はヒーローを引退し、後輩たちを育てるのに力を入れている。

飯田がステインに復習しようとしていたことは血界たち以外に知られていないがステインを憎んでいるのは知っていた。

上鳴は申し訳なさそうに頭を下げる。

 

「いや、気にしないでくれ。ステインを恨んでいないと言えば嘘になるが、それよりも僕は兄を意志を受け継いで兄のような『エンゲニウム』を目指して邁進していく!!」

 

飯田は自分の目標を掲げ、宣言する。

皆がいつもの飯田に戻ったことに安心した。

 

 

そして朝のLHRでいつもの無愛想な相澤の挨拶が始まった。

 

「おはよう。職業体験ご苦労だった。レポートを3日後に提出してもらうから、そのつもりで。ついさっきまでイベントがあったが早速次のイベントだ」

 

「またイベントかー」

 

「次は何だろうね!」

 

「時期的に……うっ、期末……」

 

「テスト!?」

 

皆が各々予測を立てているなか、相澤が黙らせる。

 

「静かに!……次の催し事だが……『授業参観』だ」

 

『学校っぽーーい!!』

 

テストじゃなく一気に色めき立つ生徒たちに相澤が前から原稿用紙を渡していく。

 

「原稿用紙1人4枚で親御さんたちへの感謝の気持ちを書いてくるように、参観日は来月の頭を予定している。詳しいことは後日知らせるが早めに書いてくるように。それでは解散」

 

皆がどんなことを書こうか、どんな授業参観になるのかと話し合っているなか、教室を出ようとする相澤が思い出したように付け加えた。

 

「そうそう、授業参観が終わったらすぐに期末試験が始まる。その準備もしておけよ」

 

その一言に何人かの生徒が固まった。

 

 

昼休みになり、血界は食堂に向かっているなか悩んでいた。

 

「どうしたものか……」

 

「どうしたの?」

 

「感謝の気持ちを誰に書けばいいのかなって思ってさ」

 

「保護者のおじさんでいいんじゃないの?」

 

耳郎がそう答えるが血界は頭を悩ませる。

 

「おじさんはそういうの嫌がるんだよな……どうしたものか」

 

「いいじゃん、書いちゃえば」

 

「おじさん、こういう催しものとか嫌いなんだよ」

 

血糸はあまり人付き合いが好きな方ではなく、仕事でも必要最低限の会話しかしない。

 

 

「じゃあ、授業参観も参加しないんた?」

 

「多分な。おじさん、仕事忙しいから。耳郎のところは?」

 

「多分母さんが来ると思う。いやだなー、あの人授業参観とかはしゃいじゃう人だし……」

 

耳郎は小学、中学の授業参観でやたらテンションが高めの母親を思い出して、恥ずかしくなる。

 

「「前途多難だ……」」

 

血界と耳郎は同時にため息を吐いた。

 

 

翌日の放課後、授業参観の日程と内容を決めた相澤は各生徒の親に授業参観の連絡をしていた。

大体の親は生徒から知らされており、行けると答えた。

1人のの生徒を残し、報告は終わったが、その最後の前に手が止まってしまっている。

 

「とうとう来たか……」

 

名簿を見て、相澤は嫌そうに呟いた。

名簿のページには血界のものであり、彼の保護者の電話番号が書かれている。

合理的主義の相澤にしては、嫌だからと言って手を止めるのは珍しい。

それほどまでに嫌なのだろう。

 

「ん?どうしたイレイザー!いつものシケタ面がいつも以上にシケてんぞ!」

 

いつも喧しいプレゼント・マイクが困っている相澤を揶揄いに近づき、何の作業をしているか覗く。

 

「うるさいぞマイク。邪魔するならどっか行け」

 

「おいおい!せっかく手伝ってやろうと思ったのによ!そりゃねーぜ!」

 

マイクの「手伝い」の言葉に相澤は即座に反応し、名簿を渡す。

 

「そうか。ならラインヘルツの保護者に授業参観の連絡を頼む」

 

「授業参観?そんなのちゃっちゃとやればいいじゃ……」

 

「ラインヘルツの保護者は緑川先輩だ」

 

それを聞いたマイクは回れ右してどこかに行こうとするが、相澤は肩を掴んで止めた。

 

「どこに行く?」

 

「いや、ちょっと腹痛が……」

 

「その前にちゃっちゃとやってくれ」

 

「無理だって!あの人に電話するとかマジ無理!イレイザー担任だろ!?じゃあお前がやらなきゃいけないだろ!?」

 

「規則にそんなことは書かれていない。つまりお前でもいいってことだ」

 

逃げるマイクを逃がさない相澤。

いつもの相澤らしくない様子によっぽど血糸に電話するのが嫌らしい。

騒がしいため、ミッドナイトが様子を見に来た。

 

「何騒いでいるの?いつものイレイザーらしくないわね」

 

ミッドナイトは血界の名簿の保護者欄の名前を見て、それに見覚えがあるため懐かしむ。

 

「緑川って……あ!もしかして『ストリング』かしら?」

 

「……そうです。ここの卒業生で俺たちの先輩だった」

 

「へー、今ラインヘルツ君の保護者をしているのね」

 

ミッドナイトが意外そうに話す。

ミッドナイトが雄英高校の教師をする前の現役のヒーローの頃、血糸は少し有名だったからだ。

通常はヒーローのサイドキックを経験してから独立してヒーローになるが、血糸はミッドナイトが独立したばかりの頃に突然ヒーローとして現れ、活躍していたからだ。

数々のヴィランを容赦なく倒す姿は今でも思い出せる。

その時の血糸は『捕縛ヒーロー ストリング』と名乗っており、誰も寄せ付けない抜き身の刀のような雰囲気を出していた。

 

「それで?何で連絡をしたくないのよ?同じ雄英高出身なら電話もしやすいでしょ」

 

「いや…俺たち、先輩には訓練とか付き合ってもらってたんだけどよ……それがキツくてキツくて……」

 

「………」

 

マイクは当時のことを思い出して体が震え出し、相澤は黙ってしまった。

マイクはともかく合理主義の相澤がここまでなるのだから相当だな、とミッドナイトは察した。

 

「でも、相澤くんは担任なんだから連絡はしっかりとしないといけないでしょう。さぁ、早く早く!」

 

「この女……」

 

それでもサドなミッドナイトは滅多に見れない相澤の困り様に興奮し、もっと見たいと促す。

それを察したマイクはミッドナイトに呆れた。

 

「……」

 

相澤もここで手を止めても仕方がないと、覚悟を決めて電話をかける。

名簿に記された番号は仕事用らしく、繋がったの346プロの受け付けだった。

そこから要件と血糸に繋げて欲しいと頼み、待っていると血糸に繋がった。

 

『はい、346プロダクションアイドル課、課長の緑川 血糸です』

 

「……っ!私、雄英高校で血界・V・ラインヘルツ君の担任をしております。相澤 消太と申します」

 

血糸の声を聞いた瞬間、相澤は背筋を伸ばし、緊張した様子になる。

それを見ていたマイクとミッドナイトは笑いを堪えており、相澤が睨む。

 

『相澤か、久しぶりだな』

 

「お久しぶりです、先輩。今回はラインヘルツ君の授業参観について連絡をさせていただきました」

 

『授業参観?なるほど、だからアイツ挙動不審だったのか』

 

どうやら血界は血糸に授業参観のことを伝えるかどうか迷っていたらしい。

 

『それでいつあるんだ?なるべく参加しようと思う』

 

「え?参加するんですか?」

 

あの人付き合いを全くしようとしなかった人が親らしいことをしようとしていることに驚く。

 

『なんだ?悪いのか?』

 

「あ、いえ、別に」

 

声が少し低くなったのを気づいた相澤は慌てて訂正する。

 

「先輩にはその授業参観で頼みがあるんです」

 

『頼み?』

 

 

 

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