僕のヒーローアカデミア:Battlefront of Blood 作:マーベルチョコ
炎に囲まれ、一瞬でも力を抜けば全員が炎の海に飛び込んでしまう危機的状況の中、血界は体を焦がす熱に耐えながら檻を必死に支える。
「アッヂィ!!」
「血界くん!無事か!?」
「無事なように見えるか!?ピンチだ!」
檻の中で捕まりながら、血界を心配するが血界は歯を食いしばりながら必死に耐える。
爆豪も檻を何とかしないといけないが敵を自由にした瞬間、何をするかわからないため動こうにも動けない。
するとそこに緑谷がやって来た。
「かっちゃん!」
「クソデク!何しに来やがった!?」
「助けに来たんだ!」
緑谷はそう言いながら、檻を引っ張る。
しかし、崩れた足場と斜面になっているせいで引っ張り上げることができない。
「テメェの助けなんかいらねぇんだよ!!消えろ!!」
「カツキ!アンタまたそんなこと言って!!」
「ウッセェババァ!!人質は大人しくしてろや!!」
口が悪い我が子に親らしく注意するが、いつものごとく口喧嘩になってしまった。
それを見かねた緑谷が一喝する。
「今は親たちのことが第一優先だろ!?喧嘩なんてしている場合じゃないって!!」
「出久……」
息子は昔から幼馴染に苦手意識っぽいものがあるのは知っていたが、ハッキリと言ったことに驚いた。
するとまた地面にヒビが広がり、檻が滑って落ちていく。
「キャアアアァァァッ!!」
保護者たちの悲鳴を聞いて、より力を入れる血界たち。
「クッソ……!」
「ぐぐぐぐ………!」
しかし、それでも檻は滑り落ちるのを止まることはなかった。
ふと、その時血界は不安そうにする楓と目が合い、安心させよう笑顔を見せる。
「大、丈夫…!姉ちゃんは……俺が守るから……!」
熱さに耐えながらそう言うが血界のすぐ後ろまで炎が迫って来ており、堪らず楓は『叫んだ』。
「チーくん!『頑張って』!」
その途端に血界は体の底から力が溢れ出してくる感覚に襲われた。
今なら何でもできるという全能感さえ感じてしまう。
そして血界は檻を押し上げ、緑谷は下から檻が押し上げられているのを感じた。
「血界くん!?」
さっきまでビクともしなかった檻を突然押し返している血界に驚いていると妙にハイテンションな血界が答えた。
「なんだァ!?どうした緑谷!!」
「す、すごいね!このままなら押し返すことができるよ!」
「ハハッ!今ならなんだってできる気がするぜ!!」
徐々に檻が上に押し返されるが緑谷の背後の道が完全に崩れ落ち、崖になってしまった。
「血界くん!ストップ!!ストップ!!」
「あぁ?どうした!?」
「退路がもうない……」
当初の予定では檻を元あった場所まで押し返し、そこから瀬呂のテープと八百万の創造で骨組みを作り、橋か滑り台で救出する作戦だった。
しかし、高さが足りずこのままでは火の中を渡ることになってしまう。
「どうする……!」
その時、緑谷は崩れた足場の部分が滑り台状になっていることに気づいた。
「この形ならアレができる…だけど、受け止めるにはどうすれば?それなら八百万さんやみんなの個性を合わせて作れば………」
ブツブツと何かを呟き出す緑谷に爆豪が怒鳴る。
「何ブツブツ言っとんじゃ!!」
緑谷は怒鳴られたことを無視して、腰に下げてあった八百万特製のトランシーバーで連絡を取る。
「八百万さん!作戦変更だ!」
○
緑谷が作戦を伝えてから少し経ち、敵はどう出るか見守っていた。
(流石に追い込みすぎたか?)
未だに状況が動かないことを見て、そろそろ止めるかと考えていた時に耳に装着した小型のイヤホンから連絡が入った。
『どうですか様子は?』
敵はマスクに備え付けられてあるマイクで周りには聞こえないように話す。
「そろそろ止めてもいいかもしれない。少し追い込みすぎた」
『そうですか……貴方がそう判断して止めるのであれば俺は何も言いませんが、まだ奴らは諦めたわけではありませんよ』
そう言われて敵は血界達を見る。
確かにまだ絶望したわけでもないし、諦めた目をしていない。
「もう少し見守る」
『了解です』
○
「血界くん!さっき何でもできるって言ったよね!?」
「おうよ!任せろ!!」
今だにハイテンションなのかサムズアップしてくる血界に緑谷は頼もしく思えてくる。
「じゃあ、十字架を坂にして滑り台みたいに並べることってできる!?」
「あ?……モチロンできるぞ!!」
その言葉に緑谷は心の中でガッツポーズをとる。
「緑谷君!一体何を……?」
「今から檻ごと下に落ちる!」
「なっ!?それは危険ではないか!?」
落ちると言うことは炎の中に突っ込むと言うことだ。
炎の中に突っ込むのは危険すぎる。
「大丈夫!そのことも八百万さんが考えてくれている!」
すると空から何かが檻の上に落ちて来た。
その反動で檻の足場が少しグラつく。
「それは……」
落ちて来たのは包まれた防火シートと3人分の防火服、それに拘束バンドと人1人分の厚いマットだった。
檻を優に包み込めるほどの大きさだ。
これで炎の中に檻が突っ込んでもしばらくは安全だ。
「かっちゃん!この防火服に着替えて!」
「ああ!?」
「この作戦はかっちゃんが要なんだ!」
○
その頃、防火シート等を打ち上げた八百万は多くの物を創造した疲れにより、座り込んでしまっていた。
「はぁ……はぁ……」
「大丈夫ヤオモモ!?」
葉隠が心配そうに声をかけるが八百万は苦しそうにしながらもしっかりと答えた。
「このくらい何ともありませんわ……お母様達の命がかかっているのですもの」
それでも立ち上がろうとする八百万を見て、耳郎は他の皆に声をかける。
「血界達があんなに頑張ってるんだ。ウチらもやるよ!」
『おう!』
まず耳郎が掘り近くにイヤホンジャックを刺し、技を使う。
「H・R・B!!」
ドクンと衝撃とともに掘り近くの地面に大きな罅が入る。
「よっしゃあ!みんな掘るぞ!!」
残った生徒達は耳郎が壊していく地面の瓦礫を取り除いていき、やがて堀と薄い壁を隔てた檻が軽く入るくらいの大きな穴ができた。
「後はあっち次第だな」
そう言って泥を拭いながら轟は呟いた。
○
防火服に着替えて、檻を防火シートで包んだ緑谷たちにトランシーバーからの合図が出た。
『デクくん!こっちはオッケーだよ!』
「うん!かっちゃん!血界くん!飯田くん!準備はいい!?」
「たりめぇだ!!ハヨしろや!!」
「オウよ!力が漲って仕方がねえ!!」
「ああ!皆さん!しっかりと檻に捕まっていてください!」
拘束バンドで敵を拘束した飯田は保護者にまた檻に捕まるように伝えた。
「血界くん!」
「オウ!ブレングリード流血闘術!『34式 段差型十字撃』!!」
ナックルガードから放たれた血の十字架は階段状に並んでいき、穴のところまで届く。
「轟!届いた!」
耳郎がイヤホンジャックで炎の中の状況を伝えると轟は堀のすぐ近くに立ち氷を走らせる。
伝った氷は血界の十字架を凍らせ、氷結の滑り台ができた。
「後はここを真っ直ぐに滑れれば……」
「やるしかねぇだろ!安心しろ!もし危なくなったら俺が何とかしてやる!」
緑谷は檻の後ろから押し出そうとするが、こんな巨大な物が真っ直ぐに滑れると思えず、土壇場で不安になってしまう。
しかし、檻の上で姿勢を低くして待機する血界の強気な発言に緑谷は大きくうなづく。
「うん……行くよ!!」
緑谷が檻を大きく押し出すと檻は滑り始める。
やがて、檻の重さに従って徐々にその動きを早めていき、滑走していく。
やがて炎の中突っ込み、血界達は熱に襲われる。
だが、やはり重さに偏りがあるのか横にそれ始める。
それに気づいた後ろでしがみついている緑谷は血界を呼ぶ。
「血界くん!」
血界は檻のそれてる方向の方にしがみつき、拳を構える。
「ブレングリード流血闘術!『117式 絶対不破血十字盾』!!」
打ち出した盾に足を置き、押しのけることで方向を修正する。
「オオオォォォッ!!!」
「よし!方向は戻った!後は……かっちゃん!頼んだ!!」
緑谷は方向が戻ったことを確認して、前方で準備をしていた爆豪に声をかける。
「クソデクに言われなくても、こちとらいつでもできんだよ……!!」
同じく防火服を着て、檻の上で待機していた爆豪がニヒルな笑みを浮かべる。
檻の前方にはマットとその面に固定された爆豪の手榴弾型の籠手が備え付けられており、それを使うためのピンには糸が巻きつけられ、爆豪の手に握られていた。
すると、前方に壁が見え始め爆豪は一気に糸を引っ張り、特大の爆発をお見舞いする。
「ぶっ壊れろ!!」
爆発は優に壁を打ち壊し、さらに爆発の反動で檻のスピードが緩くなる。
「今だよ!瀬呂!峰田!」
「オウよ!」
「オラオラ!出血大サービスだぁ!!」
芦戸の合図で瀬呂がテープを限界まで檻が進む先に張り巡らせ、峰田は檻がぶつかる先の地面にもぎもぎを投げつけていく。
檻は爆発で舞い上がった煙を切って、穴の中に入り、テープともぎもぎの中に突っ込んでいく。
「緑谷!」
「血界くん!」
しかしそれでも勢いが止まるとは思えず、緑谷と血界が檻の後ろで止めようと地面に足をつき、引っ張る。
「「止まれェェェェッ!!!」」
2人はあらん限りの力で引っ張るとやがて檻は穴の壁ギリギリで、前方が僅かに浮き、その動きを止めた。
「と、止まった?」
「止まったぞ……」
『………ヤッタアァァァッ!!!』
止まったことを確認した1-Aの生徒達は歓声を上げた。
「やったな!緑谷!」
「う、うん………」
「もっと元気出せよ!お前の作戦で成功したんだからよ!」
「喜びより、安心しちゃって……」
血界はヘルメットを脱ぎ、煤だらけの顔を満面の笑顔で緑谷の肩を叩きながら、褒める。
「爆豪も良かったぞ!!」
「ウルセー!!まだ終わってねえだろうが!!」
「そうだぞ君達!次は保護者の方々を檻から出すんだ!!」
檻の中から聞こえる飯田の声に血界達はハッとして、保護者たちを上に上げることに移った。
檻に入った血界たちは保護者を上に上げないといけないが、まずは自分たちの親の安否を確認する。
「楓姉ちゃん!」
「母さん!」
「チーくん」
「出久ゥゥ!!」
血界は楓に近づき、肩に手を置いて安否を確認する。
「大丈夫か!?どこか怪我とか、あっ!暑さでやられたりしてないか!?」
慌てる血界に楓は成長した義弟の煤だらけになった頬に手を当て、慈愛の表情で労わる。
「チーくん、とっても格好良かったわ。お姉ちゃん、チーくんの成長が見れてとても嬉しかった。私ももう大丈夫、だから……『落ち着いて』」
楓の言葉を聞いた血界にはその言葉が反復するように染み渡り、やがて体に巡っていた力が徐々に治り、興奮も治る。
「………あれ?俺……?」
「さあ、チーくん。皆さんを上に引き上げましょう」
「お、おう……」
自分に何が起こったがわからなかったが、今は保護者を上に上げることに専念する。
○
保護者のことは緑谷と飯田に任せ、血界と爆豪は檻に拘束された敵をどうするか話し合っていた。
「どうする?先生が来るまで待つか?」
「ンな必要あるか。ぶっ飛ばしてから上でぶっ飛ばせば良い」
「二回ぶっ飛ばすのか……」
爆豪の物騒な物言いに呆れながら、血界はどうするかを話し合うがその時敵のマスクから鋭い眼光が輝いた。