僕のヒーローアカデミア:Battlefront of Blood 作:マーベルチョコ
早速見てきます。
血界と氷麗はヴラドに引率され、試験会場に向かっていた。
血界は一番後ろの席に座りながら、前に座る氷麗を見て、それぞれの試験場に向かう際に耳郎が血界に話しかけてきたことを思い出した。
○
ヴラドの引率でバスに乗り込もうとした血界に耳郎が声をかける。
「血界!」
「どうした?」
血界を引っ張り氷麗に聞こえないように顔を近づける。
「氷麗のこと気にして欲しいんだ」
「何でだ?」
「あの子、少し様子がおかしくてさ」
血界は既にバスに乗り込んでいる氷麗に目を向けるが特に変わった様子はない。
「そうか?いつもと変わらないように見えるけど」
「ラインでも話さなくなったし……なんかいつもと違うよ」
心配そうにする耳郎を見て、ただ事ではないと思った血界は耳郎の頼みを聞き入れた。
「わかった。なるべく気にかけるようにする」
「頼んだよ」
○
耳郎との会話を思い出し、氷麗を改めて見ると確かにいつもと様子が違うのがわかった。
氷麗は試験の前だろうと緊張を見せるようなタイプではない。
どちらかと言うと爆豪のような自信家タイプだ。
爆豪よりは好感触を持てる性格なはずだが、今は凍てついた氷のような雰囲気を醸し出している。
いつもなら一緒にいるとからかってくるのだが、その様子はない。
思えばこの前の昼休みの時も様子がおかしかった。
考えても埒があかないと思った血界は立ち上がり、氷麗の隣に座り、話しかけた。
「なぁ、何があったんだよ?」
「………」
「黙ってないで何か言えよ」
「………」
血界から話しかけても黙ったままの氷麗に血界は困ってしまった。
「お前たち、そろそろ試験場に着くぞ。準備をしておけよ」
ヴラドが2人に声をかけ、血界は仕方なく氷麗から離れ準備を始めた。
腑に落ちない血界と無表情の氷麗を見て、ヴラドは前を向くと少しため息を吐き、先日の職員会議での事を思い出した。
○
相澤がA組の実技試験の担当教師を発表していると血界のパートナーと実技試験の担当を発表した。
「ラインヘルツ、スターフェイズの担当はヴラドにお願いします」
「俺か、片方はウチの生徒だが俺は他の生徒の監督もしなければいけないんだがな」
相澤の采配に苦言を呈するが相澤は譲らなかった。
「分かっています。ですが、この2人の個性については貴方が最も相性がいい。それに、スターフェイズについては頭を悩ませているでしょう?」
「ムゥ……」
そう言われると図星で何も言えなくなるヴラドは了承した。
○
(あの時は流されるままに了承してしまったが結果的にはこれで良かったのかもしれんな………)
自分が受け持つ生徒の中で最も実力を持つが最もヒーローに
それぞれの思惑を持ちながら、バスは試験会場に着いた。
○
血界たちに用意された試験会場はショッピングモールを模して造られたらしく巨大なU字型の建物だった。
その先端のところにはポップなアーチが掛けられており、そこには校長のイラストもかけられていた。
「制限時間は30分!お前たちの目的は「このハンドカフスを俺に掛ける」か「どちらか1人がこのステージから脱出」だ!」
「逃げてもいいんですか?」
「ああ、なにしろ戦闘訓練とは訳が違う。相手は格上だからな」
現役ヒーローが相手、確かに逃げに徹しなかければ勝てないかもしれない。
「今回は極めて実戦に近い状況での試験だ。俺たちを敵そのものだと考えろ。会敵したと仮定し、そこで戦いに勝てるならそれで良いが、実力差が大きすぎる場合は逃げて応援を呼んだ方が賢明だ。……ラインヘルツ 、お前たちはよく分かっているハズだな」
「………」
血界は先日のステイン戦を思い出す。
確かにあのまま戦い続ければ殺されていた。
その時のことを思い出し、冷や汗を流す。
その様子を氷麗は少し視線を向けた。
「だが、この状況では実力差が大きすぎて逃げの一択になってしまうと思う。そこで俺たちにはハンデが課せられた」
ヴラドが取り出したのは何かの重りだった。
「サポート科に作らせた『超圧縮重り』だ。これで俺たちは体重の半分の重さをつける」
「戦闘を視野に入れるためか……」
「それでは所定の場所に移動しろ!そこから開始の合図で試験は始まるぞ!」
血界たち2人はモールの中間地点で開始の合図を待っていた。
その間、血界は氷麗に何度も話しかけたが悉く無視された。
「はぁ……一体どうしたんだよ?」
「………」
困った表情の血界と無表情の氷麗にアナウンスが流れる。
『皆、位置に着いたね。それじゃあ今から雄英高1年、期末テストを始めるよ!』
一先ず氷麗のことは一旦頭の隅に追いやり、試験に集中する。
『レディイイー………ゴォ!!!」
血界と氷麗は合図もせずにヴラドがいるゲート近くに向かって走り出す。
「とにかく合格するには先生を倒すか、ゲートを通るしかない。こんなステージだ。先生はゲート近くで待っているからこっちから向かって行くしかないないな」
「………指図しないでよ」
「は?」
か細い声でボソっと呟き、血界は聞き取れなかった。
聞き返そうとしたがゲート付近に立つヴラドが目に入った。
「いたな。俺が大技で先行するからお前は隙をついてー…」
即席の作戦を伝えようとすると氷麗は一気にスピードを上げ、ヴラドに向かって行く。
「あっ、おい!…………くそっ!」
血界が悪態をつくが氷麗は構わず、向かっていく。
「来たか」
腕を組んで待つヴラドまで残り10m程となったところで氷麗の姿が消え、ヴラドの頭上に現れ、脚を振り上げる。
エスメルダ式血凍道 絶対零度の鎌
脚から氷の鎌が生成され、ヴラドをなぎ払おうと振るわれる。
「それは悪手だ!スターフェイズ!」
ヴラドはあらかじめ来るのが分かっていたかのように氷の鎌を手で受け止めた。
「ウソッ!?」
素手で受け止められるとは思っていなかった氷麗は驚いた表情になる。
ヴラドが氷麗を投げとばそうとすると血界がヴラドの目の前で拳を握る。
ブレングリード流血闘術 111式 十字型殲滅槍
技を発動させようとした血界にヴラドは掴んでいた氷を氷麗ごと振り回し、血界にぶつけた。
「ぐっ!?」
「うわっ」
吹き飛ばされた2人は近くの店舗にぶつかった。
「いてて……無事か?」
血界が氷麗に声を掛けるが返事はなく、問題なさそうに立ち上がっていた。
返事を返さない氷麗に腑に落ちなかったが、血界は立ち上がりながら話しかける。
「先生も現役ヒーローだ。真っ向から勝負しても勝てるかわからねぇぞ。協力して攻撃を仕掛ければ……」
「関係ない……!」
「あっ、氷麗!」
またも勝手に先行してヴラドに攻撃を仕掛ける氷麗。
華麗な足捌きでキックを連続で打ち込んでいくがヴラドは全てを捌いていく。
「スピードは申し分ない!個性を使わずにこのスピードは驚異的だ!だが……!」
ヴラドはコメカミに向かってのハイキックを片手で受け止めた。
「パワーが足りないから簡単に掴まれる」
「くっ……!」
受け止められた氷麗は悔しそうに脚を下げようとするがヴラドの力が強く引き剥がせない。
ヴラドは腕を振って氷麗を背後の壁に向かって投げると右手から血液を飛ばす。
「束縛血!」
ヴラドキングの個性『操血』により、氷麗は壁に貼り付けにされた。
「次はラインヘルツか!」
走って向かってくる血界は右拳に力を込め技を放とうとするがヴラドの背後に氷麗が捕まっていることに気づいて力を抜き、左腕を構え、ジャブを放つ。
「お前の技は一つ一つが必殺の威力を持つが団体戦では動きが制限される!故に新しいスタイルを確立したのは褒めてやる!だが……!」
血界のジャブかヴラドの顎を捉えようとした瞬間、その腕を掴まれた。
「っ!?」
「動きが率直すぎてわかりやすい!」
「ぐあぁっ!」
ヴラドは掴んだ腕を握りしめ、血界は締められた痛みで膝をつく。
右拳で殴りかかるが左腕を掴んでいる腕から血が溢れて血界の体にまとわりつき、動きを制限する。
「う、動け……!」
「技が出せる場所が限られているならそこを抑えれば制圧は容易い!」
ヴラドは渾身のボディパンチを血界の鳩尾にぶつけ、殴り飛ばす。
「ごほぉっ!!」
地面に倒れる血界だが、何とか起き上がり拳を構える。
「さあ、何度でもかかってこい!」
ヴラドが腕を広げ、待ち構えると血界は駆け出し、ヴラドに攻撃を繰り返す。
しかし、ヴラドは体捌きと個性で血界の攻撃を全て無効化する。
その間に氷麗は自分を拘束していた血を徐々に凍らせていた。
やがて全てが凍り、壁に足をついて体を押し出すと簡単に出ることができた。
戦っているヴラドと血界を見て、次にゲートを見る。
今ヴラドは血界との戦いに集中してこっちに意識を向けていない。
今ならゲートを通ることができる。
そう思った氷麗は迷わずゲートに向かって走る。
横目でその様子を見ていたヴラドは呟いた。
「それは悪手だと言っただろう」
ゲートを通過しようとした瞬間、ゲートの柱から血が溢れ、氷麗の行く手を防ぐ。
「っ!?チッ……!」
氷麗は血の壁に蹴りを入れようと脚を振りかぶるが血の壁から何本も槍状の血液が伸び、氷麗を攻撃する。
「キャアっ!」
「氷麗!」
氷麗の悲鳴を聞こえ、そちらに目を向けるとヴラドが背後に立つ。
「余所見とは余裕だな」
「しまっ……!」
「ヴラッドナックル!!」
血液で固めた拳で血界を殴り倒し、地面に叩きつける。
「があっ!?」
地面にヒビが入る程の威力に血界は一瞬意識が飛んでしまった。
「どうした?もう終わりなのか?」
ヴラドは睨むように2人を見下ろし、その威圧感を2人にぶつける。
2人は早くも窮地に立たされた。