僕のヒーローアカデミア:Battlefront of Blood   作:マーベルチョコ

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File.70最悪の事態

自分と親しい者だけしか知らない秘密を言われ、驚く血界を見て男は笑みを浮かべる。

血界は立ち上がると見下ろすようにして男を睨む。

 

「怖いなぁ、そんなに睨まないで欲しいね」

 

「誰だ、お前は?」

 

「君は自分の罪を理解しているのかい?」

 

血界の質問に答えず、質問で返してくる男に血界は目つきを更に鋭くする。

 

「質問に答えろ。お前は誰なんだ」

 

「君も周りの人間と同じだ。何も考えずただ平和を貪っている罪人だ」

 

血界は我慢の限界が来て男の襟を掴んで持ち上げる。

男の態度と今を平和に生きている人達を罪人と決めつけていることに腹を立て、何よりこの男と話していること自体が怒りを募らせた。

突然の出来事に周りの客は騒めき出し、血界達を取り囲む野次馬が出来始め、中にはスマホを取り出す人も現れる。

 

「ヒーローを目指す者の目つきじゃない」

 

「………」

 

血界の今にも殺さんとばかりの視線で男を睨む。

すると人混みの中から耳郎と八百万が現れ、血界に声をかけた。

 

「ちょっと血界!何やってんの!?早く放して!」

 

「血界さん!相手は一般の方ですわ!」

 

耳郎達にそう言われて躊躇いを見せた瞬間、男は血界の手からいなくなっていた。

一瞬で消えたことに血界達が驚いていると、横から声を掛けられる。

 

「君もまた罪を理解していない罪人だ」

 

「お前は一体誰なんだ!?」

 

男は飲み掛けのコーヒーを手にとって、揶揄うように笑みを浮かべて答える。

 

「君の両親を殺した犯人と言ったら?」

 

その瞬間、血界は全身の血が燃え上がるように熱くなるのと同時に殺意が剥き出しになり、ナックルガードを装着した。

 

「お前えぇぇぇっ!!!!」

 

「血界、ダメッ!!」

 

耳郎の静止が聞こえず、赫い雷を纏った拳を男の顔面目掛けて振るうが、男は余裕の笑みを浮かべたまま血界の拳を眺める。

当たる直前に血界の拳に人差し指を当てると拳は動きを止めた。

歯を食いしばって更に力を込めて押し込もうとするがビクともしない。

 

(まるで巨大な岩を殴っている感覚だ……!)

 

「ふむ、まだこの程度か。君には強くなって貰わないと」

 

男が指先に少し力を込めるとナックルガードは綺麗にパーツごとに分解され、地面に落ちる。

破壊されたナックルガードを見つめることしかできない血界を一瞥して男は去っていく。

それに気づいた血界は慌てて呼び止める。

 

「待て!お前の名前は何だ!?」

 

両親を殺した犯人の情報を少しでも得ようと無駄だとわかりつつも質問する。

すると男は立ち止まり、顔だけを血界に向けて笑みを浮かべた。

 

「僕の名前はサージュ、世界に罰を与える者だ」

 

男、サージュはそう言い残し人混みに消えていった。

 

 

木椰区ショッピングモールに多くのヒーローと警察が駆けつけていた。

事件が同時に2つ起こり、一方は緑谷が指名手配中の敵 死柄木 弔と接触し襲われた。

幸いにも緑谷と周りには何も被害がなかったが雄英生が立て続けに襲われること自体が問題となり大事となった。

もう一方では血界が一般人に手を挙げ、傷害事件となり血界が警察に連行されてしまった。

これには周りの人達も目撃しており、血界も大人しく連行された。

連行される時に耳郎達は心配そうにしていたが血界は何も言わず別れた。

警察署で事情聴取を行なうことになったが、それまでの間血界はサージュのことばかり考えていた。

本当にサージュが両親を殺したのか、サージュの正体は、何故自分に声を掛けてきたのか。

様々な疑問が頭の中を巡り、思考がぐちゃぐちゃになってくると部屋の扉が開き、1人の男が入ってくる。

 

「いやー!すまん!ウンコしてたら遅れてしまった!」

 

突然のウンコ宣言しながら入ってきたのは大柄で少し野暮ったさを感じる男だった。

 

「はぁ……」

 

「何だ!?若いのに元気がないぞ!」

 

そう言って豪快に笑いながら近いの肩を叩く。

 

「おっと、名前を言い忘れていたな。私は在郷 隆(さいごう たけし)。特殊犯罪を主に扱っている警部だ。USJ事件も少し関わったんだぞ」

 

「特殊犯罪?でも俺が起こしたのって傷害事件じゃ……」

 

「うむ。そうなのだが……ぶっちゃっけ暇で知っている名前を見つけたから事情聴取を代わりに名乗り出た!」

 

「そっ、そうですか……」

 

何だが警察らしくない言動に血界は引き気味だった。

 

「それじゃあ、元気よく事情聴取やっていこうか!」

 

「いや元気よくって……」

 

「何で人を殴ったんだ!?」

 

「殴ってませんよ!」

 

まるでコントのようなやり取りに困惑しながら血界は自身に起こったことを話した。

 

「突然話しかけられて、妙な事を言われて段々と怒りが湧いてきて……それで掴みかかってしまって」

 

「妙な事とは?」

 

「なんか……今生きてる人間は全員罪人だ、とか」

 

「ふむ……危険な思想を持った人間か。だからと言って掴みかかって言い訳じゃないぞ」

 

「分かってます。ただあの男と話していると怒りが我慢できなくて」

 

自分でも訳がわからないと言った表情をする血界の肩に在郷は手を置く。

 

「……10代にはよくある事だ。感情が我慢できずに体が動く事はな」

 

「…………」

 

慰めの言葉に血界は少し複雑そうな顔になる。

怒りに任せて動いたのは中学以来で最近は大人しかったのに何故また感情で動いてしまったのか、わからなかった。

 

「それで相手の男性は誰か分かっているのか?」

 

「いえ、俺は知らないんですけどアッチは知っているようでした」

 

「む?男性の名前はわかるか?」

 

相手の男性が一方的に血界のことを知っている事に疑問を覚えた在郷が名前を聞くと血界はしっかりと答えた。

 

「サージュです。確かにそう言ってました」

 

「っ!!」

 

血界からその名前を聞いた瞬間、在郷から血の気が引く感覚が襲った。

 

「容姿は!?どんな見た目だった!!?」

 

「え、ちょ、ちょっといきなりどうしたんですか?」

 

突然の在郷の様子の変わり様に動揺する血界に在郷は肩を掴んで更に詰め寄る。

 

「答えろ!」

 

「は、白髪で背丈は平均男性と変わらないくらい。顔は……あれ?」

 

サージュの顔を思い出そうとして首を傾げる。

 

「どうした?」

 

「顔が思い出せない。何で……」

 

「顔に印象が残らない。あやふやな男だったが?」

 

「はい、確かに印象に残ってません」

 

「やはりか!」

 

在郷は立ち上がってスマホを取り出し、扉に向かう。

 

「君はここで待機しておいてくれ!時期に迎えが来る!」

 

在郷はそう言い残して部屋を出て行き、血界は取り残され訳が分からなかった。

 

「何なんだ?」

 

その後、事情聴取をされることもなく部屋で待たされていると警察官がやって来て出入口に案内された。

出入口に向かうとそこには別件で事情聴取されていた緑谷と迎えに来ていたトゥルーフォームのオールマイトと敵連合の捜査を行なっている塚内、そして心配で迎えに来ていた緑谷の母がいた。

 

「あっ、緑谷だ」

 

「血界くん!何で血界くんもここに?」

 

「うーん……俺も事件に巻き込まれたというか、起こしたというか……」

 

「へ?」

 

言い淀む血界に疑問が浮かぶ緑谷だが、そこに血糸を連れた在郷がやって来た。

血糸は血界を見つけると駆け足で近づく。

 

「血界。怪我はないか?」

 

「え、ああ、怪我はないよ」

 

「そうか……」

 

どこか焦っている様な血糸を見たことが無い血界は戸惑ってしまう。

血糸は安心し、一息つくと緑谷親子の方を向く。

 

「お久しぶりです、緑谷さん」

 

「あ、は、はい。お久しぶりです。授業参観ぶりですね」

 

「ええ、本日は私どもでお家までお送りします。警察、学校からは許可を頂いております」

 

「ええ!?そんな……ご迷惑をおかけ出来ません!」

 

「いえ、本日お子さんに起きた事件と血界との一件が繋がっているかもしれませんので念のために。八木さんと塚内警部もよろしいですね?」

 

「ああ、よろしく頼むよ」

 

「お願いします」

 

オールマイトは頷き、塚内も頭を下げてお願いする。

緑谷は血糸がオールマイトの本名、八木 俊典を知っていることに驚いた。

 

(オールマイトの本名を知っている!?何で……!?)

 

「そ、それじゃあ……お願いします」

 

「では、此方へ。車と護衛は外で待たせてあります」

 

驚く間も無く、血糸は緑谷達と血界を連れて外に出る。

すると外には黒いSUVとその周りで守りを固める346プロのヒーロー、ライトニング、ジャズ、バンブルビー、ナイトクラブがいた。

 

「No.6ヒーローライトニング!?若手実力派のジャズに346プロヒーロー事務所のベテランのバンブルビーとナイトクラブ!?何で346プロヒーロー事務所のヒーロー達が!?」

 

「何でみんなが?」

 

緑谷は大勢のヒーロー達が一同に現れたことに興奮し、血界も驚いていた。

 

「君たちを家まで護衛する。ライトニング、後はよろしくお願いします」

 

「おう」

 

血糸は血界達をライトニングに任せると警察署に戻ろうとし、血界が慌てて呼び止める。

 

「叔父さんは一緒に帰らないのか?」

 

「俺は警察と話すことがある。帰りは明日になりそうだ」

 

「………帰ってきたら話したいことがあるんだ。俺の両親について」

 

「…………」

 

血界の言葉に血糸は表情を変えることはなかったがすぐに返事ができなかった。

不思議に思った血界は再び声をかける。

 

「叔父さん?」

 

「……わかった。帰ったら話そう」

 

そう約束し、警察署から出て行く血界を心配そうに血糸は見ていた。

 

 

その後、緑谷親子を家に送り届け、血界も自宅に到着し、ライトニング達は今晩は家の周りでパトロールを行なうと言って出て行った。

自室に入ってベットに寝転び、今日起きたことを思い返していた。

突然訳も分からない男に話しかけられ、感情が我慢できずに暴走し、殴りかかったが何もお咎めなしで更にはVIPのような護衛も付けて貰った。

何か知っているであろう血糸は警察署に残り、ライトニング達も話をする前に去ってしまった。

モヤモヤとした気持ちが募るが今日は疲れで目が閉じそうになる。

 

(あっ……耳郎達に連絡しないと。あとナックルガードもなお、さなきゃ……)

 

血界はそのまま眠りについてしまった。

 

 

警察署の会議室ではオールマイト、塚内、血糸、在郷が今日起きたことについて話し合っていた。

 

「緑谷少年に続き、血界少年も敵に襲われるとは……」

 

「敵は一律で危険なものだが今回は別格だ」

 

塚内は古い白黒の写真を取り出して、皆に見せる。

 

「『サージュ』。特一級指定犯罪者、通称スーパーヴィランと区別された伝説級の敵。AFOと同格の凶悪犯罪者だ」

 

「AFOと同格……」

 

オールマイトはその名を聞くだけで拳に力が入る。

 

「しかし、何故コイツは日本に現れた?今は確か……」

 

「欧州の監獄に収容されているはずだ。特別厳戒体制でな」

 

在郷はコキュートスの資料を見ながら答える。

 

「まっ、あの国は隠し事が多い。大方、他の国に知られるのが嫌で秘密裏に処理しようとしたんだろ」

 

「そのせいで奴は日本に現れ、血界と接触した」

 

血糸の底冷えするような声色に全員に緊張が走る。

オールマイトは落ち着くように声をかける。

 

「緑川くん。落ち着くんだ」

 

「……すいません、取り乱しました。今は対策についてですね。此方では関東圏を中心にパトロールを強める予定です」

 

「我々警察も警戒を強める。塚内、敵連合捜査班から何人か借りられるか?人手が足りなくなりそうだ」

 

「先輩、そのことで相談が……」

 

塚内はオールマイトの方を向き、オールマイトは言いにくそうにしながらも自分の考えを述べる。

 

「……緑谷少年と血界少年の事件は別々で起きたとは思えない」

 

「どういうことだ?」

 

在郷はわからない様子だが血糸はその言葉の意図がわかった。

 

「敵連合とサージュが協力関係にあると言いたいんですか?」

 

「ああ、正しくその通りだ」

 

オールマイトが言いたいのは敵連合とサージュが協力関係であるということだ。

確かに死柄木は危険な人物だが、USJ、保須での件ではそこまで脅威となる存在ではなかったが敵連合の裏で手を引いているであろうAFOとサージュが手を組むのは不味すぎる事態だ。

全員が最悪の事態を考え、思い詰める。

 

「緑川、公安は動かないのか?」

 

「公安は動きますが『奴ら』は事態が動いた時しか動かない。憶測だけでは駄目です」

 

「そうか……」

 

在郷がもう一つの頼みの綱である公安の特殊部隊を動かせないか血糸に聞くが首を横に振られる。

 

「どの道、最悪の事態を想定して動かないといけない。明日は雄英と会議を行なう。それまでに話を詰めなければ」

 

「警察でも情報を根回ししておきます。更に厳戒体制にしないといけないですし」

 

「公安の方からは俺が言っておく。サージュの名前を出せば『奴ら』も動くかもしれない」

 

「346でも準備をしておきます」

 

オールマイト、塚内、在郷、血糸はそれぞれやるべきことを頭に入れて立ち上がり、仕事に取り掛かる。

346プロに連絡しようとした緑川に在郷が話しかける。

 

「緑川、ちょっといいか?」

 

「何ですか?」

 

「サージュが血界に接触したということは奴らの目的は……」

 

在郷が言おうとしていること理解できている血糸は覚悟を決めた目で答える。

 

「わかっています。必ず血界は守ります」

 

「そうか……なら、いいんだ」

 

そう言って去って行く在郷を見送り、握っていたスマホに力を入れる。

 

「今度こそ守ってみせる」

 

血糸の決意の言葉が警察署に静かに響いた。

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