僕のヒーローアカデミア:Battlefront of Blood 作:マーベルチョコ
『魅惑の事務員と個性練習』
戦闘訓練の次の日、放課後血界は1人で事務室前に立ててあるテーブルであるものに記入していた。
そしてそれを事務室の窓口に提出しようとすると同じく出そうとしていた人と鉢合わせしてしまう。
「「あっ」」
鉢合わせしたのは緑谷だった。
「あ、緑谷だ」
「え、えーっとラインヘルツ君、だよね?」
昨日少し訓練のあとに話した程度のため、少し緊張した様子の緑谷だった。
「血界でいい。緑谷も申請しに来たのか?訓練所の使用許可書」
血界が書いていたのは訓練所の使用許可書。
雄英にはヒーローになるために多くの訓練施設がある。
血界は昨日話しかけてきて仲良くなった切島と尾白で今日訓練をする約束をし、そのために訓練所を借りにきたのだ。
「だったら一緒にやらないか?俺少し緑谷の個性に興味があったんだ」
「え?いいの?」
「1人でやるより複数でやった方がいいだろ?」
「あ、ありがとう。じゃあ申請は僕がやっておくよ」
「いいって、ここは俺がやっておく」
血界は申請書を窓口に出すと受け付けたのは黒目黒髪の美女で胸がスーツの上からでも分かるくらい大きいのが特徴だった。
そしてその胸には『チェイン・皇』と記された名札が着けてあった。
(す、すごい美人……!)
色恋に疎い緑谷でもアジア系美人であるチェインに一瞬見とれてしまい顔が赤くなり、さらに彼女の巨乳に目が行ってしまい更に赤くなる。
「すいません。訓練所の使用許可が欲しいんですけど」
「はいはーい。申請書見せてねー」
チェインは申請書を見て何か書き込み、判子を押して血界に返す。
「あとは担任の先生に判子をもらったらそれで使えるわよ」
「ありがとうございます」
血界は淡々と礼を言ってクールに受け取る。
(すごいな、血界君はこれくらいじゃ動揺しないのか。僕もしっかりしないと)
緑谷は心の中でそう思っているとチェインが話を続ける。
「あと君と後ろのモジャモジャ君も女性と話す時は胸を見ないこと。そーゆうの案外わかっちゃうもんだから」
「「!!」」
2人ともチェインの胸を見ていたことに気づかれ、顔を真っ赤にして慌てて事務室を後にした。
それを見送ったチェインはいじめっ子が笑うように笑みを浮かべた。
使用許可が取れた訓練所で体操服に着替えた血界、緑谷、切島、尾白が準備運動をしながら今日する訓練の話をする。
「それでどうすんだ?」
「俺は血界が格闘家だから少し戦ってみたいと思ったんだ」
「俺もだ!それに鍛えるなんて男らしいしな!」
「僕は個性がうまく使えないからその練習がしたいな」
「じゃあ最初に俺ら3人で模擬戦ぽく戦うか。緑谷はその間に個性の練習しといてくれ。こっちが終わったら手伝う」
血界と対峙する尾白と切島。
2対1でいいのか、それじゃ男らしくないと言ったが血界はそれでいい、それでも負けないと言った。
流石にそれを言われた2人は少々カチンときて2対1で戦うことになったが結果は血界の圧勝。
2人の攻撃は血界に完全に見切られ、防がれてしまい、カウンターで攻撃が当たってしまう。
「いたた……武術には少し自信があったんだけど血界には敵わないな」
「俺もだわ。なんつーか全部見切られてる?」
「今回は個性無しでやったからこうだったけど、個性ありだとどうなるかわからないけどな」
三人はその後少し話し合い、それぞれ鍛えることになり別れ、血界は緑谷のほうに行くと緑谷は1人ブツブツと何か呟いていた。
「何やってんだ?」
「え?わっ!ち、血界君?もう終わったの?」
「おう。そっちは何か掴めたか?」
「ううん。まだ……」
緑谷は少し気落ちした表情で答える。
「今の緑谷を見てると昔の俺を見てるようだ」
「昔の血界君?」
「俺さ。個性が発現したのが11歳の頃だったんだ」
「遅咲きだったんだ……」
「うん、まあな……」
血界はその時少し言葉を濁すようにうなづく。
緑谷はその血界の態度に少し引っかかった。
「まあ、それで遅く発現したものだからどう扱えばいいかわからなくて、最初はベタ踏みの状態だったんだよ」
「確か血界の個性って血液を凝固して武器みたいに使う個性だよね」
「本来はもっと違うらしいけど俺自身わかってないからな。で、俺の個性でベタ踏みするとどうなると思う?」
「どうなる……?」
緑谷は元々観察眼に優れているため、血界の個性のベタ踏みがどうなるかは容易に想像つき、顔が少し青ざめる。
「血が無制限に凝固しちゃうとか……」
「当たり!よくわかったな!実際は無制限に武器を作ろうとして血が吹き出るのが止まらなかった。いやー、あん時は死ぬかと思った」
軽く言う血界だが、小学生の頃に血が溢れ出続けるなんてトラウマものだ。
緑谷もそれを想像してしまい、顔を少し青くする。
「そ、それでどうしたの?」
「俺が無制限に血を流し続けるのと、緑谷の超パワーの全力使用が似てるなって思って。緑谷は感覚が掴めないからあんな危なかっしい使い方してるんだろ?」
「うん。僕も最近発現したばかりで全然感覚が掴めないんだ」
緑谷の個性『ワン・フォー・オール』はオールマイトから受け継いだものだ。
元々無個性だったためか、使う調整ができていない。
「だから俺がやってた個性の練習法を教えようと思うんだ。緑谷は体の一部に個性を使っているだろ?」
「うん」
「それって言わば俺のブレングリード流血闘術と同じだ。だけど俺だって最初から使えたわけじゃない。最初は少しずつ体が個性になれるように全体に慣らしていったんだ」
「全体に慣らす……はっ!」
全体に慣らす、という血界の言葉に緑谷の頭の中で何かが閃く。
「ワン・フォー・オールを特別なものだと考えていたけどこれだって同じ個性なんだ。個性は身体能力、筋繊維と同じだから、使い続ければ体が慣れると思っていたけど、いきなりの負荷は今までみたいに傷が増えるだけ……なら、少しずつ全体に使うことで体に慣らすことが………」
突然俯きブツブツ言い出した緑谷に血界は若干引いてしまう。
「お、おい。どうした緑谷?」
「血界君!」
「はい!?」
「少し練習付き合ってくれないかな!?」
そしてその後、切島と尾白を加えた3人で緑谷の訓練に付き合い、緑谷はその日新しいスタイルを手に入れた。
○
『idol』
血界たちが訓練している頃、耳郎たち1Aの女子たちは女子だけで集まって親睦会を開いていた。
と、言っても近くのショッピングセンターで簡単なショッピングしたり、お茶したりなどするだけのものだが。
「ここがショッピングセンターなのですね!」
その中でも八百万は目をキラキラさせていた。
「ヤオモモってショッピングセンターって初めてなの?」
「はい……今まで必要な物は専門店に執事かメイドが行くか、あちらから来ていただいていましたから」
「金持ちや!」
八百万のブルジュア発言に目を剥く麗日。
「それじゃあ、まずどこ行こうかしら?」
「アタシ服見に行きたーい!」
「わたしもー!」
芦戸と葉隠の提案により、ショッピングセンターの中でも一際目立つピンク色の店にやってきた。
この店はファッション服からスポーツ服まで幅広いジャンルの服や小物を可愛くした物を売っており10代の女子に大変人気があり、店の中には多くの女子で溢れていた。
「すごく奇抜なお店ですのね」
「うちの地元にもあったなぁ。少し派手で中々買わなかったけど」
「あー!」
八百万と麗日がそう感想を言っていると芦戸が指差し、驚いている。
「城ヶ崎美嘉ちゃんの新作の服が出てる!」
「どれどれ?」
芦戸が指差した先にはマネキンに着せられてある服があった。
素人目から見てもお洒落だとわかる服だった。
「城ヶ崎美嘉って誰だったかしら?」
「今カリスマギャルとして人気なアイドルだよ!アタシ好きなんだぁ」
「私は同じ事務所の輿水幸子ちゃんが好き!だって面白いもん!」
蛙水の質問に興奮したように話す芦戸と葉隠はよっぽど好きなようだ。
「私も知ってる!最近アイドルブームだよね。私は違う事務所だけど天海春香ちゃんが好きやな」
「ウチは好きって程でもないけど興味があるのは木村夏樹かな。ギターが得意でバンドに入ってたって言うし」
それを聞いた蛙水は後日、弟たちにアイドルを知っているかと聞いたら、知っていると言われて自分だけが知らないということに衝撃を受けた。
「皆さん詳しいのですね」
「今じゃアイドルってヒーローの次に人気のある職業だよ!」
八百万も知らなかったらしく、物珍しそうにマネキンの側に置いてあったその服の紹介ページを見ており、そのモデルとなったのがピンク髪の城ヶ崎美嘉でポーズを取っている。
周りをよく見るとその服を買っている人は多くいる。
皆がそれぞれ服を見るということになり、耳郎は八百万と共にランジェリーコーナーに来ていた。
「耳郎さんは何かお探しですの?」
「動きやすいスポーツブラをね。これから戦闘訓練ってなると必要になると思うし。ヤオモモはどうなの?」
耳郎は興味で聞いてみると八百万は恥ずかしそうに胸を押さえた。
「わ、私の場合は専門店に行かないとないので、ここでは……その……」
八百万の胸は大きいので下着となると数が限られてしまい困っているのだ。
耳郎からしてみれば羨ましい悩みだ。
耳郎は自分の慎ましい胸と八百万の自己主張の激しい胸を見比べてしまう。
「くっ……!」
「耳郎さん?」
突然悔しそうにする耳郎に首を傾ける八百万。
すると耳郎の横に人が現れた。
ランジェリーコーナーのため女性かと思われたが、立っていたのは背が高く細身だが筋肉質だとわかるほど鍛えられている金髪の外国人の男性だった。
男性は悩んだ表情で小中学生用のスポブラを見比べている。
女性専門店でそんなことをしていると嫌にでも注目を集めてしまう。
そしてその男性は耳郎の視線に気づき、耳郎と目が合ってしまった。
「いや、違うんだ。これはそうじゃなくてだな……」
突然男は何も言われてないのに弁解を始めてしまう。
それが余計に不審者っぽく見えてしまう。
耳郎と八百万が不審な目を向けていると男の背後から中学生くらいの金髪のツインテールの女の子が男に抱きついてきた。
「パパー!何してるの?」
「あ、莉嘉。なんでもないよ〜」
莉嘉と呼ばれた少女が来た瞬間、男はだらしない顔になり、猫撫で声が話し始める。
「次はトレーニングウェアを見るんだから早く来てよね☆」
「わかったわかった」
莉嘉は父親を連れてその場から離れて行った。
「よかった。不審者じゃなくて……」
耳郎はそっとそう呟いた。
不審者だったらどうすればいいかわからなかったのだ。
その後それぞれ買い物を済ませ、ショッピングセンター内のカフェでお茶をして帰ろうとしていた。
すると前から突然悲鳴が上がる。
「やめてー!」
「ウルセェ!騒ぐな!!こ、このガキが悪いんだ!俺がゲームしてたら突然割り込んできてよォオ!!」
「ママー!」
泣き叫ぶ母親の近くに異形型の個性持ちの男が持腕で5歳くらいの子供を捕まえて、鋭い爪を向けている。
「ヴィラン!?」
「いや、というより只のトラブルのように思われますが……」
突然のことに驚く女子たちだが、八百万は落ち着いて状況を判断する。
「ど、どうしよう?」
「とりあえず近場のヒーローを呼びに行きましょう。相手が逆上しないように気づかれないように……」
八百万が言葉を続けようとした瞬間、人の間を縫っていく人の姿が耳郎の目に入る。
「あの人……」
その人物は子供を捕まえている男の前に姿を現わす。
「よう兄ちゃん。どうした大声なんか上げて?」
「だ、誰だ!?」
男に話しかけたのはさっきの服屋で耳郎に不審な目を向けられていた男性だった。
男性は気楽にフレンドリーに話しかけ、男は突然のことに警戒を強くし、だんせきは両手を上げて何も持っていないことを示す。
「まぁヒーローだよ」
「お、俺を捕まえにきたのか!!」
「捕まえる?それはお前がしたことによるな。いったい何があってこんなことをしたんだ?」
男性は努めて落ち着かせるように話しかける。
「こ、このガキが俺のやっていたゲームを途中から割り込んできやがって……やめるように何度言ってもバケモノのことなんて知らないって言いやがってよ……親に苦情を言ったら『そんな姿だから仕方がないでしょう?』とか言いやがって!!ふざけんな!!俺だって好きでこんな姿じゃねえんだよ!!」
「なるほど……」
個性に対する差別発言。
今や個性社会となってからそう言った発言は少なくなったが、なくなったわけではなかった。
「そちらの親子に非があることはわかった。だが、今もしここで暴行を働けば言われた通りお前はバケモノになっちまうぞ」
「………」
それを言われた男は少し捕まえていた腕の力を緩める。
「わかったらゆっくりと離しな」
男性に言われた男はゆっくりと子供を下ろそうとした瞬間、母親が叫んだ。
「早く離してよ!バケモノ!!」
「……っ!!テメェエエ!!!」
その一言に再び逆上した男はその鋭い爪を子供に突き刺そうとしたが、それより早く一発の銃声が響いた。
すると男は白目を向き、子供を捕まえていた腕の力は緩み、後ろに倒れてしまう。
男性は素早く近づき、落ちてくる子供を受け止めた。
「何が起こったの?」
「今さっきすごい音が響いたんだけど……」
すると周りにいた野次馬は男性が持っていたある物に気づいた。
「な、なああの銃って……」
「もしかしてNo.6ヒーローのライトニング!?」
男性が持つ銃口に髑髏の装飾がされているリボルバーを見てらその1人の呟きに周りから一気に歓声が上がる。
「No.6ヒーロー、ライトニング!?」
「スゲェ!初めて生で見た!」
「コスチュームじゃないよね?オフなのかな?」
一気に騒がしくなる周りにライトニングは帽子を少し深く被り直す。
「はぁ……今日はオフなんだけどなぁ」
「どいて!どいて!通るぞ!!」
ライトニングが少し気怠げにそう呟くと人の間を割いて、現れたヒーローがいた。
「ライトニングさん!?」
「ようデステゴロ。悪いけどあと任せてもいいか?」
驚くデステゴロにライトニングはことの詳細を説明し、倒した男が気絶していることを確認して現場の後片付けを任せた。
どこかに行こうとしたがふと足を止めて被害者である親子の前に腰を下ろす。
「ちょっといいか?」
「はい?」
「今の社会、個性への差別発言は良くない」
「だ、だけどあんな姿怖いでしょ!!」
ライトニングは自分の注意に開き直って反抗する母親に困ったが、子供に目を向ける。
「息子さんの個性は?」
「いえ。まだ発現してませんけど……」
「だったら、もしかすると異形型の個性かも知れないな」
「そんなはずは……!」
「突然変異だってあり得るんだ。絶対なんてない。アンタ自分の息子に化け物とか言えるのかい?」
それを言われた母親はバツが悪そうになり、俯いてしまった。
ライトニングはそれを見て、群衆の方に向かっていく。
「ライトニング!握手して!」
「サインください!」
周りの野次馬は一気にライトニングに詰め寄るがその瞬間ライトニングは一条の雷となり、その場から消えてしまった。
耳郎たちは騒動を見届けてから流石にお茶はやめとこうとなり、帰ろうとすると耳郎は莉嘉と呼ばれた女の子と歩くライトニングの姿が見えた。
「ごめん!先行ってて!」
「耳郎さん?」
耳郎はライトニングに向かって走って行き、声をかけた。
「あの!すいません!」
「ん?誰だ?」
「パパのファンの人?」
振り返るライトニングに耳郎は頭を下げた。
「さっきはすいませんでした!勝手に不審者だと思ってあんな目を向けちゃって」
「ああ、さっきの……それは仕方ない。あれは誰だって怪しいと思っちゃうものだよ。だけどなるべく広い目を向けて世間を見てくれ。ヒーローを目指すなら視野の狭い見解は命取りになる」
「はい!ありが……ヒーロー科っていいましたっけ?」
「制服を見ればわかるさ」
そう言ってライトニングはクールな笑みを浮かべる。
すると莉嘉が耳郎に笑顔を浮かべて近づく。
「オネーさん。ヒーローを目指してるの!?すごーい!」
「い、いや。それほどでも……」
素直に褒められ、耳郎は照れてしまう。
「私、莉嘉・ボルトストーン!あっ、でも芸名だと城ヶ崎莉嘉!よろしくね☆」
「芸名?って、城ヶ崎ってもしかして……」
「そう!私のオネーちゃん、カリスマギャルの城ヶ崎美嘉なんだ♪私の将来の夢はオネーちゃんみたいなカリスマギャルみたいになることで、今度アイドルになるんだ☆」
「莉嘉、もう行くぞ」
「はーい♪じゃあねオネーさん!」
そう言って莉嘉は手を振りながらライトニングに駆け寄った。
耳郎はライトニングの教えを心の中で何回も思い返しながら、八百万たちが待つところまで走って戻った。
○
『少女の決意』
その日血界と耳郎、氷麗は夜とある公園で一緒にいた。
男女の密会、とかではなくメールで凛に相談したいことがあると言われ、公園で集まっていたのだ。
「クロはいつ来るんだ?」
「もうそろそろじゃない?」
「もうここにいるよ」
血界が声のする方を向くとそこには久しぶりに会うクロの姿があった。
「おおー!久しぶりだなクロ!」
「久しぶりって…ラインではしょっちゅう話してるんだけどね。耳郎と氷麗も久しぶり」
「うん。久しぶり」
「そっちはどうなの?」
久々に会う級友と話に花を咲かせていると凛が愛犬の『ハナコ』を散歩させながらやってきた。
「4人とも久しぶり。今日は来てくれてありがとう」
「別にいいよ。ラインでは話づらいことなんでしょ?」
「うん。その前に血界、そんなに離れてちゃ話なんてできないよ」
「わかってるけど……」
凛が来たとき、血界は4人より少し離れたところ立っていた。
そして血界の視線は凛が連れているハナコに向けられる。
「ワン!」
「うっ…!」
ハナコが可愛く吠えると血界は体をビクつかせる。
そして凛がリードを首輪から外すとハナコは勢いよく血界に向かって走って行き、血界は慌てて逃げ出した。
「なんで放してんだよォォッーーー!!!」
「ハナコが遊びたそうにしてたから」
「ワンワン!」
凛は最初の真剣そうな表情からいじめっ子が浮かべる笑みを浮かべていた。
とりあえずハナコを抱き止め、血界の逃走を止めて凛の話を聞くことになった。
「私さ、もしかしたらアイドルになるかも知れない」
「マジか。どこの事務所だ?」
「346プロダクション」
「大手だね」
「応募したの?」
「ううん、スカウトされた」
「凛かわいいもんね。スカウトされて当然だよ」
「あ、ありがとう…」
褒められて凛は少し照れる。
「それで相談したいことって?」
「うん……私どうしようかなって思ってさ。クロは違うけど血界たちはヒーローを目指して雄英に行ったけど、私には目指したいこともないし、やりたいこともない……だけどアイドルならなんか変われるかなって、それを見せてくれた娘もいたんだよね。でもやっぱり怖いんだよ。アイドルなんて軽い気持ちでやっていいもんじゃないと思うしさ」
凛の思い悩む表情に耳郎たちはどう声をかけてあげればいいか、わからなかった。
そこで血界にある言葉が浮かんだ。
「なあ凛。今凛はスタートラインに立つ権利が与えられてるんだ。そこからどうするかは凛次第だ。俺たちが何言っても決めるのは凛だ。凛がやるって言うなら俺たちは応援する。そんな凛に雄英の校訓を送ろう」
血界はわざとらしく咳き込む。
「『かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と!!“更に向こうへPlus Ultra”!!」
それを聞いた凛は思い悩んだ表情から笑い顔になった。
「はははっ!何それ。私は英雄になるんじゃなくてアイドルになるのに……でもPlus Ultraか……」
“更に向こうへ”。
その言葉が凛の背中を押す。
「ありがとう。私アイドル、やってみるよ」
決心した凛の表情はとても晴れやかだった。
「ウチ、凛が曲を出したら必ず買うよ」
「僕もだよ」
「なら私は家の力使って凛が売れるように頑張る」
「何をする気だよ……てか、凛がアイドルになるなら俺たちがファン第1号か。何か感慨深いな」
「ちょっとまだ売れるって決まったわけじゃないよ」
5人はそのまま久しぶりの談笑を楽しんだ。