今日からこちらでこの作品を投稿させていただくので、読んでくださると嬉しいです。
投稿頻度は遅めになると思いますので、ご了承ください。
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温厚な性格に優男風の愛嬌のある整った顔をした、普通の高校一年生だ。
しかし、それはある一点を除いてのことだ。
それは、響が6歳の頃のこと。
家族で海外へ旅行に行った際、余程治安が悪かったのか、響は誘拐されてしまった。
響の家が金持ちだったわけではない。
にもかかわらず誘拐され、刃物を突き付けられながら何かを言われるが、6歳の響には当然その国の言葉がわかるはずもなく、恐怖だけが募った。
その上、手足を縛られ声を出せないように布をくわえさせられていたため、さらに恐怖が募った。
そして、痛め付けるかのように、また、弄ぶかのように、響の体のあちこちを刃物で切りつけた。
響は、痛くて痛くて堪らない上に、外人の不適な笑みを見たために、それがトラウマとして心に深く刻まれてしまった。
そんな恐怖に晒されながら、結局、響が助かったのは誘拐されてから3日後のことだった。
助けられた時、響は飯にもありつけず疲労困憊、その上浅いながらも刃物で切りつけられ3日も血を流していたため、危険な状態だった。
そんな過去があったため、響の体は、頭では外人にもいい人が居るとわかっていても、外人を目にすると動悸が乱れ呼吸困難に陥ってしまうようになってしまった。
医師には、外人恐怖症と診断された。
べつにそんな恐怖症がある訳ではないが、症状などから見て病名化するとこういう名前、とのことだった。
その為、学校で英語の時間やその他の時に外人の先生が来る場合、その時間は特別に高欠扱いとなった。
そんな響に対しクラスメイト達は、不満をぶつけることなく普通に接した。
それは恐らく、響の人柄が関係しているのだろう。
響は、外人恐怖症というものさえなければ、誰にでも笑顔で分け隔てなく接することができるフレンドリーな人間なのだ。
幸い、クラスの中に外人やハーフは居ないので、響はクラスの中では一,二を争うフレンドリーさだった。
そんな過去を持った響に、ある日の学校からの帰り道に起こった出来事から、この物語は始まる。
◆
「響、中間テストの結果どうだった?」
そう聞いてきたのは、響のクラスメイトであり親友の
誰が見ても認めるイケメンで、少し自惚れな性格だが弁えてはいる。
「全部いつも通りだったよ。これが中々上がらないんだよね」
「それ、響くんが言うと嫌味にしか聞こえないよ?」
そう言ったのは、同じくクラスメイトであり親友の白石香純(しらいしかすみ)だ。
容姿は、現在人気グループでアイドルをやっているだけあって美少女だ。
響としては、そんな子が自分と仲良くしていることに疑問を持っているが、向こうから話し掛けてきたりするので気にしないことにしている。
学校には来たり来なかったりするが、今日は仕事が休みで学校に来ていた。
「そうそう、響
そう言ったのは、響の双子の妹であり恐怖症の一番の理解者である狩矢
容姿は、響を女性にしたようなものではあるが、香純程ではないにしろ美少女ではある。
クラスは違うが兄である響が好きなため、学校では休み時間になる度に響の下へ来るぐらいだ。
響としては、産まれた順番が先であっただけだから呼び捨てでもと言ったのだが、響兄は響兄だからと言われて却下された。
そんな四人が会話をしながら歩いていると、急に足下が光り始めて魔法陣らしきものが浮かび上がった。
「えっ!? なんだこれ!?」
「どうなってるの!?」
「響兄、これってもしかして!?」
「うん、異世界召喚かも……」
3人が慌てる中、響は神奈に腕を抱きつかれながら冷静に神奈の問いに答えた。
あまりの光に目を瞑り、光が収まったのを感じて目を開けると、そこは石のような建材で造られた建物の中のどこかの部屋のようだった。
ただ、窓も何もなく、入り口はあるが密閉されたような空間だった。
足下には、先程足下に現れた魔法陣と同じ魔法陣が描かれており、周りには黒いローブを身に纏った人が5人居た。
この5人が、魔法陣を使って自分達を召喚したんだということは、響達には容易に察することができた。
入り口の方には、着飾った衣装を着て王冠のようなものを被り、かなり長い白い髭を生やした年配の男性も居れば、その男性の傍には真っ白なドレスを着た絶世の美少女が居た。
「こ、ここは……?」
来輝が代表するかのようにキョロキョロとしながら呟くと、それに答えるかのように声が聞こえてきた。
「ようこそ、我らの世界へ。私は、この世界にある五つの国の一つ、アルマリーナ王国の王であるヴォルヴォス=ウェル=アルマリーナだ。貴殿らには、勇者として魔王を倒してもらいたい」
その言葉を聞いてはいたが、来輝,香純,神奈はそれどころではなかった。
そう、響が国王達を見た途端、恐怖症の症状が出て自分の胸ぐらを掴みながら苦しそうにし始めたのだ。
異世界人とはいえ、外人と似た容姿に変わりはない。その為、響の恐怖症の症状がでたのだ。
それを神奈が響に寄り添って「大丈夫だよ、響兄。私も、香純も、来輝も居るから、大丈夫」と優しく諭していた。
「む、その者はどうしたのだ?」
心配そうな国王の問いに、来輝が手短に響の過去とそのせいでこんな症状が出るということを、チラチラと響を心配そうに見ながら説明した。
「なるほど……。では、その者……ヒビキ殿はその様な過去の出来事から我らのような容姿の者を見ると、その様な症状が出るということだな?」
「そうです。ですので、どこかの部屋で休ませていただけないでしょうか?」
「わかった。部屋を用意させよう」
そう言って国王が側近に指示すると、側近が入り口から出ていった。
「側近が部屋の準備を整えている間に、この世界について説明しておこうと思う」
そう前置きをした国王が説明を始めた。
「この世界では、魔法というものがあり、それを戦いの武器として戦っておる。魔法には火,水,風,土,雷の5属性に加えて無属性の計6属性ある。それぞれ適正がないと使えないのだが、無属性は中でも稀少で、治癒や状態異常を回復させたり色々とできるが、適正者は未だ両手で数える程しか居ない。
そして、この世界では、種族が国によって分かれており、人族である我が国,獣人族の国である獣帝国マリッタ,ドワーフ族の国であるドワーフ皇国シルバス,エルフ族の国であるエルフ興国シーマ,そして、魔人族の国である魔神国ウェルノットがある。魔王は、魔人族が他の種族に比べて戦闘に長けていることから自らを神とし、他の種族の国を占領し我が物にしようとしている。かれこれ400年この状態だ。
そして、この度(たび)4度目の勇者召喚の魔法を使い、貴殿らを喚んだという訳だ。勝手なことだということは重々承知している。たが、そこをなんとか我らを救っていただけないだろうか……!」
頭を下げてお願いしてくる国王達に、苦しんでいる響以外の3人は、顔を見合わせると頷き合った。
そして、代表して来輝が前に出て国王にこう言った。
「わかりました。お受けします。しかし、その前に一つ質問があります」
「なんだ?」
「元の世界に帰ることはできますか?」
「すまないが、それはできない。召喚の魔法陣はあるのだが、帰すための魔法陣は無いのだ。すまない」
国王が謝ったタイミングで、側近が戻ってきた。
「まぁ、それは覚悟していたので大丈夫です。ともかく、響を休ませてください」
「あぁ。……しかし、その前に気づいたことがあってだな」
「なんですか?」
「召喚するはずだった人数は3人だったはずなのだが、貴殿らは4人居るのだ」
「ということは、この中の誰かが勇者じゃないということですか?」
「そうなる。そのため、部屋に行く前に3つの勇者の武器に触ってもらえないだろうか」
国王のお願いに、来輝は響を見る。未だ苦しそうにしている響が、来輝が心配そうに見ているのに気づくと、話は聞いていたので、微笑みながら「僕は大丈夫」と言った。
来輝は、それが痩せ我慢だということがわかっていたが、響本人がそう言ったので本人の意見を尊重した。
「わかりました。ですが、早めにお願いします」
「うむ、わかっておる」
そう言って、国王はまた側近に武器を持ってくるように指示を出した。
そして、側近が3つの武器を持ってくると、説明しながら渡してきた。
「これは、神から賜った勇者の武器だ。それぞれ剣,弓,杖の形をしており、勇者が持たねば真価を発揮できない代物だ。勇者が触れれば光るはずだ。まずは、ライキ殿とカスミ殿とカンナ殿で触れてみてくれ」
渡された武器を持つと、3人とも武器が光った。
「あちゃあ、僕が触れるまでも、なかった、みたいだね……」
「まさか、響が、巻き込まれたって言うのか?」
「勇者だったならまだしも、巻き込まれてこの世界になんて、恐怖症のある響くんには地獄だよ……!」
「私としては、響兄と離れ離れにならなかったからよかったけど、恐怖症のことを考えると……」
3人が暗い顔でそんなことを口にしている中、3人が勇者だったことに安心したからなのか、それとも気が抜けたからなのか、響がパタリと倒れて意識を失った。
「響!?」
「響くん!?」
「響兄!?」
「いかん、すぐに部屋へ運べ! それから無属性使いも呼べ!」
◆
響が目を覚ますと、そこには見たことのない天井があった。
横を見れば、一番近くから神奈,香純,来輝の順で並んで安心した顔をしているのが目に入った。
「……ここは?」
「王城のとある部屋だよ。響兄、よかった、目が覚めて……!」
神奈が横になっている響に抱きついて泣きそうになりながらそう言った。
「ごめんね、神奈。二人も、心配かけてごめん」
響が神奈の頭を撫でながら、二人に向けて苦笑いしながら謝ると、来輝と香純は首を横に振った。
「気にするな、友達だろ?」
「そうだよ、響くん。気にしないで」
笑ってそう言ってくれる二人に、響はいい友達を持ったなと思った。
そこへ、バンッと部屋のドアを開け放って入ってきた者が居た。
「勇者殿! そろそろ、訓練の時間ですぞ! 準備してくだされ!」
「あぁ! もう! 騎士団長さん! 響の症状が再発しちゃうから、いきなり入って来ないでくださいよ!」
来輝がそう言うと、急いで響から騎士団長が見えないように壁になる3人を見て、(そっか、3人とも、勇者なんだっけ……。これじゃあ、足手まといだな……)と思った。
すると、それを察知したのか神奈が戻ってきてこう言った。
「今響兄、自分が足手まといだって思ったでしょ!」
双子なので、繋がるものがあるのだろう。そう言われた響は驚きもせず反論した。
「だって、まだなんの役にも立ててないんだよ? この世界に来てしたことと言えば、恐怖症で倒れて心配かけただけだし……」
「そんな寂しいこと言わないでよ。響兄は、私のお兄ちゃんで、来輝と香純の友達なんだよ? 響兄が居なくて、私達3人だけでここに来てたとして、常に冷静に物事を判断できると思う?」
「……無理かな。来輝君が後先考えずに突っ走りそう」
響が苦笑しながらそう言うと、来輝はその通りだとばかりに頷いた。
それを見た響は、(認めちゃうの!?)と心の中でツッコミを入れた。
「そうでしょ? だから、響兄は足手まといなんかじゃないの、いい?」
「そうだね。その通りかもね」
「うんっ。それじゃ、訓練に行ってくるね、響兄!」
「行ってくるね、響くん。安静にしててね」
「じゃあな、響。外に出るなよ、また症状が出かねないからな」
「うん、行ってらっしゃい」
挨拶を済ませると、来輝達は騎士団長に続いて部屋を出ていった。