外国人恐怖症が巻き込まれて異世界へ   作:夏月太陽

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閑話 勇者達

 響が拐われたその日、神奈は響からのメッセージで立ち直り、訓練に励んでいた。

 

「んー。元気になったのはいいけど、まだどこか気丈に振る舞ってるところがあるよな」

「響くんと、しばらく会えないからね……」

 

 かく言う香純も、どこか気丈に振る舞っている様子だ。

 

 来輝も、二人と理由は違えど響が居ないことは、それなりに堪えていた。

 

「どうしたの、二人とも。訓練して強くなって響兄を助けに行くんだから、頑張らないと!」

「わかってるさ。響を助けるために、強くなって見せる」

「うん、私も、響くんを助けるための強くなるよ!」

 

 改めて誓い合った3人は、訓練を再開した。

 

 3人の訓練は、体力面を強化する訓練や、来輝は勇者の剣,香純は勇者の弓,神奈は勇者の杖のそれぞれの武器を使った訓練、そして魔法の訓練をした。

 

 来輝が使う勇者の剣は、勇者が持つことによって、魔法を防いだり斬ったりということができる代物で、訓練では王国が誇る優れた魔法使い達(宮廷魔法使い)の魔法での攻撃を剣で防いだり斬ったりする練習や、騎士団長であるウォルニットと剣術の稽古をしている。

 

 香純が使う勇者の弓は、勇者が持つことによって、矢の飛んでいく速度と威力が格段に上がる代物で、訓練では王国一の弓の名手であるリーリンの指導の下、止まった獲物や動いている獲物に対して射る練習をして百発百中を目指している。

 

 神奈が使う勇者の杖は、勇者が持つことによって、杖自体に組み込まれている防御の魔法を使えるだけでなく、勇者が使う魔法の威力が格段に上がる代物で、訓練では宮廷魔法使いの代表であるコルバフのアドバイスの下、魔法を上手く,効率よく使えるように練習している。

 

 よって、順番としては、3人で体力面を強化する訓練を行った後それぞれの訓練に入る、といった形だ。

 

 現在の3人はというと……

 

「ライキ殿、まだ脇が甘いですぞ!」

「くっ……!」

「隙ありですぞ!」

「痛っ!?」

 

 来輝は、まだまだ騎士団長のウォルニットに歯が立たない状態。

 

「カスミ、それでは動いている獲物に当たりません! もっと獲物の動きを読んで! すでに止まった獲物でなら百発百中なのですから、カスミならできます!」

「はい、わかりました!」

 

 香純は、動いている獲物に上手く矢を当てられなくて苦戦している状態。

 

 そんな二人と打って変わって、神奈はというと……

 

「カンナさん、ワシの見立てではあと一週間もすれば実戦で充分に力を発揮できるようになるはずじゃ。かといって慢心はいかんぞ。全力で訓練に励んで強くならねば兄を助けに行けんのじゃからな」

「わかってます。響兄のためですから、手は抜きません!」

「ほっほっほ、その息じゃよ」

 

 宮廷魔法使いの代表のコルバフの指導がいいのか、神奈の響に対する物凄い執念のせいなのか、実戦に出れるまでもう少しというところまで至っていた。

 

 しかも、訓練が終わって二人と合流するなり、二人の現状に憤(いきどお)ったからか、神奈は二人に向かってこう言った。

 

「もうっ、二人とも、そんな調子じゃ私だけで魔神国に行っちゃうよ?」

 

 すぐにでも響に会いたいという気持ちがわかる言葉を言う神奈に、二人は冗談だろうと外面で苦笑いを浮かべた後、内心でたぶん本気だろうなと思い焦っていた。

 

 そんな二人は顔を見合わせると、内心で同時に(もっと頑張らないと……)と、同じことを思ったのだった。

 

 その後夕食を食べ、それぞれの部屋に戻るが、来輝と香純は神奈のことが心配になったため、自分の部屋を出た。

 

 ドアを開けると、全員隣同士だったため、お互いに部屋を出てすぐに気づいた。

 

「香純じゃん。どうしたんだ?」

「神奈のことが心配だから、様子を見に行こうと思って……。来輝は?」

「俺も同じだよ。俺ですら響が居ないことに堪えてるのに、神奈が堪えてないわけないからな」

 

 来輝の言葉に「そうだね……。私も、響くんが居ないのは堪えるよ」と言って同意を示した。

 

 それから頷き合った二人は、神奈の部屋の前までやって来た。

 

 まずは部屋に入らずドアに耳を当て、今どうしているのか聞き耳をたててみることにした二人は、そっとドアに耳を当てた。

 

 すると……

 

『うぅ……響兄、響兄成分が足りないよぅ……。早く会いたいよぅ……』

 

 という、幼児染みたような少し危ない人染みたような言葉が聞こえてきた。

 

 これは重症だと思った二人は、平静を保ってドアをノックした。

 

『うぇ!? は、はい、どうぞ……』

 

 思いっきり驚いた声と共に入室許可が下りたので、二人揃って部屋の中へ入った。

 

「あ、来輝、香純。どうしたの?」

「いや、なんか、神奈の様子に違和感があったからさ」

「ちょっと様子を見に来たんだよ」

「違和感? どこに? 私はいつも通りだよ?」

 

 さっきあんなこと言ってたくせに、と来輝と香純は内心でツッコむ。

 

「だって、どこか暗い感じするし……」

「寂しそうな感じもするし……」

 

 ねぇ? と肯定し合いながら言われた二人の指摘に、神奈は動揺のためか所々(ところどころ)吃(ども)りながら答えた。

 

「そ、そんなことないよ! べ、べつに、ひ、響兄が居なくても、ふ、普通に、せ、生活できるし……」

 

 しかも、俯きながら答えたため、完全に強がっているようにしか見えない。

 

 それを見た来輝と香純は、あることを思い付き二人して神奈に向かってこう言った。

 

「はぁ、響、今どうしてるかな……」

「元気にしてるといいけど……」

「魔人が襲いかかったりしてないかな……」

「そうなると、響くん、何もできずに……」

「うあぁぁ、響兄ぃぃぃぃ!! やだよぉ、二度と会えないなんて、そんなのやだよぉ!」

 

 来輝と香純が、ボロが出ると思いわざと響の話題を出したことで感情が爆発した神奈は、ベッドに顔を埋(うず)めて泣き叫んだ。

 

 しかし、狙ってやったとはいえ、思った以上にすぐにボロが出てしまったため、来輝と香純は戸惑った。

 

「神奈、ごめん、今のわざとだったの!」

「というか、神奈が正直に言わないからいけないんだろ? さっき、響に会いたいって独り言言ってたくせに」

「えっ!? 聞いてたの!?」

 

 来輝にぶっちゃけられ、あの独り言を聞かれていたことを知った神奈は、ガバッとベッドから顔を上げて声を荒げるも、物凄い勢いで顔を赤く染めて再びベッドに顔を埋(うず)めた。

 

 終いには、「あぁ、もう、あれを聞かれたなんて……死にたい……あっ、死んだら響兄に会えないじゃん。今のなし」と動揺しているのか冷静なのかわからない独り言を呟いた。

 

 そんな神奈を見た来輝と香純は、顔を見合わせると頷いて神奈にこう言った。

 

「神奈、確か一週間もすれば実戦に出られるんだよな?」

「そ、そうだけど……?」

「私達も頑張るけど、もし間に合わなかったら、先に魔神国に向かってよ」

「……えっ?」

「だって、今回の魔人との対決には、他の国から従者が来るんだろ? だったら、神奈だけで行っても大丈夫だろ」

「それに、早く響くんと会わせないと神奈が可哀想だし」

「でも、王様達が反対しないかな?」

「それは俺達に任せとけ」

「必ず説得するから」

 

 二人の自信満々な答えに、神奈は嬉しさ半分,申し訳なさ半分だった。

 

 二人だってよく見れば寂しそうな感じがしているのに、自分のためにそこまでしてくれる二人に感謝した。

 

「ありがとう、二人とも。でも、できれば3人揃って響兄に会いたいから、訓練頑張ろうね」

「もちろんだ!」

「私だって、響くんに会いたいからね!」

 

 そう言って、互いの気持ちを確かめ合った3人は、訓練を頑張ると意気込んだのだった。

 

 

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