夢幻の魔女がゆく!   作:風里

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星空の下での世界征服宣言と指輪

この世界は美しい。

リアルとは違うスモッグに覆われていない大空、大地に茂る草、虫の鳴き声、ガスマスクを必要としない清純な空気。

 

 

「ああ……なんて、美しい―――!」

 

「宝石箱みたいだ……」

 

「モモンガ様とセレスティア様がお望みならばナザリック全軍を用いてこの世界を手に入れてみせます」

 

二人だけで外に出ようとした際、供を連れて欲しいと懇願してきたデミウルゴスが喜色いっぱいの声で言った。

 

「ふふ、この世界にどれだけの強者がいるかもわからないのにか?でもまぁ……世界征服、なんてのも面白いかもしれないな」

 

「《そんなこと言ってるとNPCはマジに取るよ》」

 

「《まっさか~~。……いやでもあの忠誠心の高さと謎の深読みの方向性ではあり得るのか……?》」

 

罵声を交わしつつモモンガはむむむ、と考え込む。

その近くに控えているデミウルゴスにいたってはモモンガが最高の知者であり、智謀遠謀に長けていると信じて疑っていない。

そして同じく至高の御方の一柱でもあるセレスティアも違わないと思っている節すらある。

事実先ほど第六階層で守護者と対面した際も「端倪すべからざる」と日常ではまず聞かないであろう言葉が飛び出してきたのだし。

 

「……デミウルゴス、今からモモンガさんと内密の話をする。このことは他言無用であり、破ったら厳罰に処する」

 

「ハッ、かしこまりました!」

 

「セレスティアさん?」

 

デミウルゴスが了承したのを確認するとセレスティアはモモンガに向き直った。モモンガとセレスティアの身長差は結構あるが、今は《飛行》で飛んでおり、この時ばかりは二人の目線の高さは同じである。

 

そんな少女がモモンガに胡乱な目を向ける。

 

「ねぇ、モモンガさん」

 

「な、なんでしょうか」

 

「アルベドの設定、書き換えたでしょ?」

 

「―――! ……すみません、書き換えました」

 

「まぁそんなことはたいした問題じゃないんだけどね。ギャップ魔のタブラさんならむしろNTRだ!って喜びそうだし。私も処女の女の子にビッチはねぇだろと思うしさ。ただね、一個引っかかることがあってね」

 

「ですよねビッチはあんまりですよね!? って引っかかること?」

 

「うん。忠誠の儀でNPCたちはこう言ったよね。私たちにこの地に残られた(・・・・・・・・)、もしくは見捨てずに(・・・・・)だとか慈悲深いとかね。彼らは創造主が去ったと思っている。それは間違いでもあり、正しくもある。そして、これはさっき気付いたのだけれど、恐らくNPCは創造主のであるメンバーの性格を引き継いでいる。もっと的確に言うなら設定として書き込まれていない部分は創造主の性格が反映されている、ということかな。特にセバスなんかは顕著だと思うよ」

 

「セバス、ってことはたっち・みーさんか。確かに何となく面影を感じるような感じないような……?ん?え、ってことはアルベドのあの肉食的な一面も実はタブラさんの隠れた一面ってこと?意外……」

 

「まぁタブラさんだから。それと、モモンガさん」

 

「まさかあの薀蓄ブレインイーターが……。はい?」

 

「パンドラズ・アクターに会いに行ってね」

 

「カハッ(精神的ダメージ)」

 

「モモンガさんのことだから後回しにしそうだから言っておくけども。宝物庫から出れるようにしてあげてよ」

 

「で、でもあいつは宝物庫の領域守護者ですし」

 

「指輪あげて緊急時には戻るように厳命すれば問題ないでしょ?それにさ、話し相手もなく一人きりって寂しいじゃん」

 

「……そう、ですね。このあと、少しだけ会いに行ってきます。指輪も……」

 

ギルドメンバーもいなくなり、セレスティアがいたが生活環境の違いから顔を合わせること自体少なく、ナザリックを維持するためにただひたすら維持費を稼ぐだけだった日々がふと思い浮かぶ。

 

「うん。そしたら遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)で人を探そう」

 

「……はい!」

 

「デミウルゴス、良いぞ。さて、そろそろ戻るかの」

 

「あぁ。―――ん?あれは、マーレか」

 

森司祭(ドルイド)のマーレが土魔法を使用し、ナザリックの隠蔽作業を行っていた。

 

「デミウルゴス、マーレに褒美を与えようと思うのだが、何がいいと思う?」

 

餅は餅屋、ならばNPCが欲しい物はNPCに聞こうとモモンガがそう尋ねるが、忠誠心高いNPCには「モモンガ様からお言葉をかけていただけるだけで十分でございます!」と言われてしまい、思案する。

 

「《モモンガさん、マーレには私から指輪を渡すから、モモンガさんはアルベドに渡してね》」

 

「《え“っ》」

 

「《当たり前でしょ。モモンガさんがアルベドより先にマーレに渡したとなったら陰でマーレが縊り殺されかねないよ。それにNPCが動き出した以上、緊急時に移動に時間がかかったら困るのは私たちでしょ?》」

 

「《……わかりました。となると、デミウルゴスにも渡したほうが》」

 

「《デミウルゴスは次の機会にした方がいいと思う。特にアルベドの前では》」

 

「《了解です。じゃあマーレの方はお願いします》」

 

「《おっけー》」

 

 

その後、指輪を受け取ったマーレが左手の薬指に嵌めたことに内心驚きながらも取り繕った二人の支配者に、マーレは素朴な疑問を投げかける。

漆黒の鎧のモモンガと純白のローブを目深く被ったセレスティアに「何故そのような格好を?」と無邪気な様子で聞かれてしまい、「息抜き」とは答えられずにいた支配者二人に代わって答えたのは先ほどからちょくちょく話題に上がる守護者統括、アルベドだった。

 

「《ごめんなさいただの息抜きです、とは言えない雰囲気だよねぇ》」

 

「《そうですね。……ヒィ!》」

 

マーレの左手の薬指に嵌ったリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを見つけたアルベドの表情が一瞬恐ろしい形相に変わる瞬間を目撃したモモンガは思わず悲鳴を上げる。幸い《伝言》を繋いでいたセレスティアにしか聞こえなかったようで、ようやくセレスティアが言っていたことを理解し、自分がマーレに指輪をあげていたらこれの比ではなかったことに思い至りそっとセレスティアに礼を言った。

 

そしてモモンガから指輪を受け取ったアルベドの喜びようはすさまじく、転移で二人が移動した瞬間雄叫びが聞こえた気がしたが、無駄に虎の尾を踏みたくない二人は転移先のモモンガの私室で目を合わせた後ため息をついた。

 

 




ナザリックが転移したことによってNPCたちが動き出し、セレスティアさんの中で「家にいる」=「安心できる場所」という心境に至っていないためドジ封印中。
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