「いい湯じゃ……」
「とても、いい」
第九階層にあるスパ・ナザリックと併設する湯気が立ち込める温泉施設にいるセレスティアの呟きに同意したのはセレスティアが創造したNPC「
モモンガと供にマーレを激励し、セレスティアからマーレへ、モモンガからアルベドへと無事に指輪を渡し終えた後。
それぞれ自らのNPCへ会いに行き、困惑したり、沈静化されたり、困惑したりしながらなんとか乗り切り折角だからと
「(ナザリックが現実になると
かつて共に冒険した仲間たちを思い浮かべてほう、と息を吐く。
あぁ、このまま溶けてしまいたい……。
そう思うが、これから先訪れる出来事、将来のナザリックを思えばそんなこと言っていられないのも事実。
「さて、ナイトメアよ。
「……一緒に行く」
言葉少なにそう言うナイトメアはセレスティアに良く似ており、その瞳だけがセレスティアとナイトメアを見分ける差異でもあった。……ナザリックに所属するシモベには何故か通用しないのだが。
「セレスティア様、こちらをどうぞ」
ナザリックの一般メイド、本日のセレスティア担当のフォアイルがタオルを差し出す。
惜しみなく晒された裸体。風呂であるが故のことではあるが、フォアイルは思わずその美しい肢体に見惚れてしまう。
バランスの取れた手足、不健康にも思えるほど白く傷のない柔肌。
程よい大きさのそれと引き締まったウエスト、そして小ぶりながらも弾力を備えたヒップ。
女であれば誰もが――創造主にそうあれと創られて尚――憧れてしまうほどの容姿。
白灰の髪から覗く大きく曲がった山羊の角が唯一彼女が人外であることを示しているのだが、その角も今は無くなっており見た目だけ言えばどこにでもいる――美しさという意味では唯一無二であるが――人間の少女であった。
「モモンガはどうしておる?」
「はい。モモンガ様は休憩室の方にいらっしゃいます」
「ふむ、そうか。今は何時じゃ?」
「現在7時52分でございます」
「そろそろか。まぁもうしばらくはのんびりできそうじゃな」
「「?」」
セレスティアの言葉に首を傾げる二人を見て、にやりと笑う。
この後、モモンガは名をアインズ・ウール・ゴウンに変えてシモベたちへ一つの命令を下す。
「アインズ・ウール・ゴウンを不変の伝説とせよ」
セレスティアという本来であれば
後の世に生きる者にとって幸福なのか、不幸となるのか。
それはまたいずれ語るとしよう。