戦術人形は提督に奢られたい   作:山の漁り火

2 / 10
第1話

 ――8月20日 9時00分(マルキュウマルマル) 鎮守府近海沖――

 

 

「――おーい、五十鈴のねーちゃーん! こっちこっちーっ!!」

「もう、佐渡っ! 任務中なんだからちゃんと隊長って呼びなさい!」

「……ふふ、お待ちしてました、隊長」

「まったくもう……対馬からもちゃんと言ってあげてよね? ……で、どうやらここが“沈没地点”みたいね」

 

 

 

*

 

 

 

「残骸から見るに、船員の生存は絶望的ね。……残念だけど」

「襲われたのはクルーザークラス……襲ったのは深海棲艦の駆逐級でしょうか」

「一体どこの船なのかしら……磯波、確か鎮守府周辺の港の出港記録は」

「はい。どの港にもこの数日に掛けて、同クラスの出港記録はありません」

「じゃあ、“大陸”からの漂流船かしら。もう、鎮守府は再攻略作戦(レコンキスタ)で手一杯だってのに……!」

 

 

 

「うへー、血がついてる。食われちゃったのかな……うひゃあ!!」

「!? どうしたの、佐渡?」

「あ、あし……()()()が浮いてる板にひっかかって……」

 

 

 

*

 

 

 

「……よく出来てるけど、これは“人間の”脚ではないわね」

「えっ!? ……ほんとだ、ちぎれたところからコードが飛び出てる」

「“機械の脚”って事ですね。それにしてもすごく精巧に出来てる……義足でしょうか?」

「うーん……。義足だとしたら、これってどう見ても“女の子”の為の脚よね。肌の質感もまるで本物の人間みたい。何なのかしら、これ?」

 

「――五十鈴隊長! 今度は“腕”が見つかりました。しかも“銃”を持っています」

 

 

 

「ふーん……これは突撃銃……『アサルトライフル』ね」

「とつげきー!? 突撃銃って名前、カッコいいなっ!」

「ふふ、佐渡ねえさんったら。ところで、それも大陸製の銃器ですか?」

「うーん、ちょっと待ってね……『89式(ハチキュウ)』に似てるけど、ちょっと違うわね。磯波、分かる?」

「えっと……たぶん『FNC』だと思います」

「えふ、えぬ、しー?」

「はい。ベルギーで開発されたアサルトライフルです。軍への正式採用は少なかった銃なので、メジャーな銃ではありませんが……」

 

 

 

 

*

 

 

 

「う、うーん……」

 

 私が目を覚ますと、そこは白い砂浜の上だった。

 損傷した体を起こして周囲を見渡せば、誰もいない静かな光景が広がっている。

 もしかしたら、偶然にも今回の作戦目標であった島に流れ着いたのだろうか。

 

 ……いや、違う。

 

 そもそも今回の緊急作戦――『無人島に潜む鉄血製戦術人形と、施設の調査』において、ヘリコプターを使わずにわざわざ船を使ったのは、島にヘリコプターが着陸できる平地が見当たらなかったから。

 この島の砂浜は広い。作戦前に見た地図とは明らかに違う。

 

「……どこなんだろう、ここ」

 

 途方に暮れる私に答えるように、私のお腹が『ぐう』と鳴った。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。