――8月20日
「――失礼します。摩耶さん」
「おう、浦波か。どうした?」
「はい。『第九哨戒艦隊』旗艦“
「お、そりゃあ良かったな……って、待て。
「はい……あの、確かに打電通りなんですが……。ところで、司令官はいつお戻りに?」
「ああ、さっき実家を出た所らしい。呉の鎮守府に挨拶した後、明日の午前中には戻れるってさ」
*
「――五十鈴さん、大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ。ありがとうね、磯波」
「疲れたら、私が代わりますからね」
西の水平線に、日が沈もうとしていた。
ニホンが誇る鎮守府の一つ『横須賀第二鎮守府』へと向かうのは、四
戦術人形であり、“遭難事件”の唯一の生き残りである私『FF FNC』を、鎮守府へと移送すべく夕暮れに染まる太平洋を進んでいた。……もぐ。
そして五十鈴さんの
「もぐもぐもぐもぐ……」
――ただひたすらに“オニギリ”をほお張っていた。
「はへー、よく食べるなあ」
と、少し呆れ顔なのは五十鈴さんの横で併走する佐渡ちゃん。
だってお腹すくんだもん。しょうがないじゃない……。
ちなみに食べているのは、彼女達から貰った
サザエを食べてもお腹を鳴らしていた私にと皆が分けてくれたのだ。本当にごめんなさい。
佐渡ちゃんが生存者捜索のため散らばっていた他の仲間に連絡をして、私が“第九哨戒艦隊”の面々と顔を合わせて事情を説明したのは、つい1時間ほど前の事だ。
“艦隊”のメンバー構成は、旗艦である“軽巡洋艦”五十鈴さん。
脇を固めるのは“駆逐艦”の磯波さん、そして“海防艦”の佐渡ちゃんと対馬ちゃん。
海防艦の『サド』と『ツシマ』には私にも聞き覚えがあった。ニホンにある島の名前だ。
*
――彼女たちは、この世界では“
数年前に世界中の海に現れた異形の生命体である“深海棲艦”。深海棲艦は瞬く間に制海権を奪い、一時期はシーレーンが壊滅した事もあったらしい。
そこに現れたのが、軍艦の能力を備える艤装を装備した“艦娘”。
彼女達は深海棲艦を倒し、いつの日か世界の海を取り戻すために日夜戦っているそうだ。
なお私たち“
あ、そうだ。彼女たちは私のダミー
左脚は2体目。右腕と銃は4体目の物であり、どちらも“化け物”……つまりは深海棲艦に食い千切られた痕跡が残っていた。
何にせよ私がこれから破損した時の予備パーツが出来たので助かった。たぶんこの世界で私を修復する技術は無いだろうし。
そんな事を考えながら、貰った3個目のオニギリを食べ終えた私。
ああ、白いコメを握っただけなのに、何でこんなに美味しいのだろう。表面の適度な塩気と、中に入っているウメボシのコントラスト。ウメボシは酸っぱいけど、佐渡ちゃん曰く「ウメボシを入れておくと腐りにくいんだぜ!」とのこと。
「
名残惜しそうな私を見かねてか、佐渡ちゃんがオニギリを渡してきた。
ちなみに「ふーねーちゃん」と言うのは、さっき付けて貰った私の呼び名だ。
いちいち『FNC』と呼ぶのがわずらわしかったみたい。そこで私の頭文字を取って、『ふー』と呼ぶことになった。
「……いいの?」
「いいよっと。そろそろ泊地で休憩だし、ふー姉ちゃんお腹すいてるんだろ?」
「ありがとう!」
佐渡ちゃんの笑顔とお言葉に甘えて、私は笑顔でそのオニギリを受け取った。
……それをすぐにぺろりと食べ終えた時、佐渡ちゃんも流石に呆れていた。
他の艦娘もぽかんとしていた。
うん。ちょっと恥ずかしい。
――やがて夜になり泊地へと到着した艦隊は、一晩休憩した後で