――8月21日
そんなわけで遂にやってきました、
ここはニホンでも有数の港町で、最大規模の軍港でもあるらしい。
今は深海棲艦に立ち向かう艦娘たちや海上部隊が所属する一大拠点として稼動しているそうだ。
磯波さんと海防艦の姉妹が曳航するイカダ(途中で五十鈴さんと交代したのだ)の上から軍港を眺めても、勇壮なイージス艦や空母といった主力艦艇、また掃海艇や輸送艦などの補助艦艇が堂々と並んでいるのがよく見える。どれも
こんなにたくさんの船を一度に見るのは、私も初めてだ。
……何と言っても、私の世界では“世界大戦”が始まって真っ先に壊滅したのが空軍と海軍だから。
どの国の核兵器もまずは敵国の“目”であり“脚”である空軍と海軍を狙い、その際にほとんどの戦闘機や軍艦が失われたらしい。
その後は互いの陸軍による泥沼でグダグダの地上戦だ。おかげで戦争が長引いて兵士だけでなく一般市民もどんどん死んでいった。
“戦術人形”が歩兵の代替として発展したのも、頷ける話であるのだ。
私たちが軍港エリアに入ると、すぐに一隻の哨戒艇が近づいてきた。私が乗っていたあの船より一回り大きいくらいかな。
「横須賀第二鎮守府所属『第九哨戒艦隊』旗艦、五十鈴。只今帰投しました」
そう言って五十鈴さんは哨戒艇の甲板に立つ、いかにも偉そうな士官さんに声を掛けた。後ろに控える水兵さんたちは銃を持っているけど、私の持っている銃に似ているような気もする。
気になったので後で磯波さんに聞いてみると、ニホンの正式装備である『89式小銃』という銃らしい。……その戦術人形とは会った事無かったなあ。
「――了解しました。それで、そのイカダに乗っている女性はこちらで保護しましょうか?」
「いえ、それには及びません。この
*
この横須賀港には“
鎮守府とは“提督”――私『FF FNC』が所属している
この横須賀では、“第一鎮守府”が深海棲艦に奪われた制海権を取り戻す為に戦う攻略部隊。
“第三鎮守府”はその攻略部隊のサポートを行う支援部隊。
では私が今向かっている“第二鎮守府”と言えば……? どうやら立場が微妙らしい。
「詳しくは司令官が話してくれるかもね」と五十鈴さんは言っていたけど……。
*
第二鎮守府は思ったよりもこじんまりとしていた。
壁は赤レンガで覆われていて、いかにもな風格を感じさせるけど……。
ここに来る途中で通り過ぎた“第三鎮守府”の方が大きな
「……元々、美術館として使われていた建物を改装したそうですよ。ふふ」
対馬ちゃんが鎮守府をじっと見つめる私にそう語りかけた。
佐渡ちゃんと同じ
「そうなの?」
「はい。実は建物自体も割と最近になって建てられた観光用の施設なんです。壁の赤レンガは古い倉庫を解体した物をそのまま使った本物ですけど」
元々は観光施設……私の世界の
「ふふ、ではお客さまのごあんなーい」
「えっ、ちょっ……」
「行こうぜ、ふーねーちゃん!」
左手を対馬ちゃん。いつの間にか右手に来ていた佐渡ちゃんにがしっと両手を引っ張られて、私は横須賀第二鎮守府の中へと導かれた。
*
「あ、思ったより涼しい……」
少し強い日差しが照りつける外とは違って、第二鎮守府の中は静かで、ひんやりとしていた。
「冷暖房完備なんだぜ! 元々は美術館だかんな」
そう言って、私を先導する佐渡ちゃんは心なしか楽しそうだ。後ろで五十鈴さんが「お客さんに鎮守府の案内をするなんて久々だしねえ」とクスクス笑っている。
私の手をぶんぶんと振って、意気揚々と鎮守府内を案内しながら進む。
「ここが備品科でー。あっちが主計科なんだ。
そっか、あの“オニギリ”はここで……後でちゃんとお礼を言わなきゃ。美味しかったです、って。
佐渡ちゃんの案内を受けながら、私は提督のいる“執務室”へと向かう。
なお備品科にて、いったん私(……のダミー人形)の腕と脚、そして銃を預けた。邪魔になるからね。
受け取った備品科の男の人は千切れた手足を見てぎょっとしてたけど。……なんと言うかその、ごめんなさい。
*
「失礼します……あれ、司令官は?」
「おう、電車が遅れたらしくてな……そろそろ到着するってさ」
五十鈴さんがノックをして執務室へと入ると、そこには
「私の名前は摩耶。重巡洋艦の艦娘だ。よろしくな!」
そう名乗った摩耶さんはニッと笑って私に右手を差し出してきた。私も同じく右手を差し出し握手をする。
「で、アンタが噂の『戦術人形』……だっけか?」
「は、はい。『
「あー……すまないな。ウチの提督が到着したら、もう一回同じ口上言ってやってくれ……って、どうやら来たみたいだな」
と摩耶さんが言うと、どたばたと部屋の外から足音と喧騒が聞こえてくる。
「廊下を走らないでください!」と注意する女性の声がすると共に駆け込んできたのは、
「はあ、はあ……間に合った……かな?」
「間に合ってねーよ。余裕でアウトだよ、提督」
「ははは……ごめん」
――黒縁の眼鏡を掛け、息を切らせて苦しそうな優しそうな男性。
余程全速力で走ってきたのか、息を整えるのに必死なその人は、私の顔を見ながら摩耶さんに“紙袋”を差し出す。
「さて、“お客さん”か。どうぞよろしく……あ、これお土産――」
「お土産って……なんで呉に行ったのに『京都のお土産』なんだよ」
「はは、呉で予定が押しちゃって、急いで帰りの電車に飛び乗ったからね。お土産買ってる暇が無くて途中で……って、あれ。この
私が後から提督――
憧れのニホンのお菓子である“ナマヤツハシ”を見たその時の私の目は、それはもう
ようやく提督登場である
勢い余って毎日投稿してましたが、ぼちぼちペース緩めるかもしれませぬ