戦術人形は提督に奢られたい   作:山の漁り火

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台風凄かったですね


第7話

 結局のところ、私は当分の間“第二鎮守府(ここ)”預かりになるようです。

 

「第一も第三も……総司令部も今は『再攻略作戦(レコンキスタ)』で手一杯でね」

 

 と語るのは、第二鎮守府の提督である夜凪大佐。ナマヤツハシ美味しかったです。

 

 ちなみに夜凪大佐が言う『再攻略作戦(レコンキスタ)』とは、数週間前から始まっている海域奪還作戦。

 話は数週間前にさかのぼる。艦娘の活躍で深海棲艦はニホンの近海からほとんど駆逐され、戦況がだいぶ落ち着いていたらしい。それでも()()()の深海棲艦は時たまニホンの海域に侵入していたけれど、その多くは後方部隊で問題なく迎撃できていたという。

 

 ところが、数週間前に突如深海棲艦の艦隊による大攻勢が開始され、取り返していたはずの海域を再び奪われてしまった。敵の攻勢は凄まじく、総司令部はまず一度撤退し態勢を立て直す事に決めた。

 おかげで勢力図は逆戻り。各海域における要の基地や泊地はなんとか死守したため、そこを橋頭堡として深海棲艦を蹴散らし、再び海域を取り返す――それが作戦の概要とのことだ。

 

「まあ、そんなわけで何処の鎮守府も忙しいんでね……まあうちもそんなに暇ってわけじゃないはずなんだけど、はは」

 

 そう言って、提督はすまなそうに頭を掻いたけど……。

 私としては別にその決定に問題はない。

 

 私は『グリフィン&クルーガー社(G & K 社)』の“兵士(しゃいん)”であり“戦術人形(びひん)”である。敵に拘束されたり身動きが取れない状況に置かれようとも、己で帰還できる方法を導き出し、本隊もしくは司令部に帰還するのが規則(ルール)だ。

 司令部への連絡が出来ない以上、私はその規則に従い帰還しなければならない。

 

 とはいえ現状は、司令部への帰還の手段なんて見当も付かない。

 しかもこの世界に来て船員さんもダミー人形(ドール)も全滅してしまった時点で、私は一人ぼっち。

 協力者がいなければ……つまり鎮守府に保護されなければ私は活動停止(野たれ死に)である。

 当面はここのお世話になり、帰還の手立てを探す――それが現在取れる最も有効な手段だろう。

 というわけで、私に選択肢なんて無いのだ。

 

 

 

*

 

 

 

 ――パリポリ。パリポリ。

 

「もぐもぐもぐ……」

 

 大佐との話を終えて主計科に寄った私は、そこでお菓子を食べていた。

 うん、単にオニギリのお礼を言いに来ただけなんだけど……ほんとだよ?

 お礼を言った後、事務員さんが食べている物が気になって、じっと見てたら「……食べるかい?」ってお菓子の袋を渡してくれただけ……どう見ても催促ですね、ごめんなさい。

 

「この()()()()()、美味しいね」

「だろ! クラッカーじゃなくてお煎餅だけどなー」

 

 隣に座ってぱりぽりオセンベイを食べるのは佐渡ちゃんである。そっか、これが“オセンベイ”なんだ。

 表面は香ばしくてしょっぱい。佐渡ちゃん曰わく、ショウユが塗られているんだって、あのサザエのツボヤキにもショウユがあればなあ。

 

 ――ショウユの香りと味。パリポリと小気味良く音を立てる食感。

 サザエを食べた時に気付いた事……この世界で新しい食べ物を食べる時、私の中(マインドマップ)でそれは経験値となり、蓄積されていく。

 やがてその経験値は私のAIの発達へと繋がる。戦術人形に限らず自律人形のAIはまだまだ発達途上。“新鮮な経験”に飢えているのだ。

 もし帰還できた時は、その経験値を共有して、他の戦術人形のAIの発展に使う事もあるかもしれない。

 

 帰還の方法を探す以外に、私にはもう一つの目標が出来ていた。

 いつか帰った時の為に、このニホンにある食べ物――特に気になるのはお菓子だけど――をたくさん食べようって。

 

 そう私は決意して、事務員さんが持ってきてくれた沢山のオセンベイを頬張った。

 

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