ようこそ実力至上主義の教室へ~ジェネレーションネクスト~   作:たけぽん

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1話 始まるということは同時に終わることを意味する

時は過ぎても、時代が変わっても、人間という生物の本質は変わらない。これを前提に、俺の出す問いの答えを考えてほしい。

 

問い 人は平等であるか否か。

 

随分ぶっとんだ問いかけだと思うかもしれないが、いつの世も人々は平等を訴えてきた。男女間の平等、障害者と健常者の平等、身分の平等。あげればきりがないほどに。

だが、そんなものは幻想だ。つまり答えは否。なぜなら、この世界そのものが不平等無くして回らないからだ。生まれてくる子どもが全員天才なら教育機関はいらない。障害者がいなければそのための医療機関はいらない。皆が容姿端麗ならイケメン俳優なんてジャンルは存在しない。いうなれば不平等こそが社会の潤滑油なのだから。

 

 

***

1時間ほど乗ったバスに別れを告げ、少し歩くと目の前には大きな建物が見えた。

 

 

「三年間、ここで暮らすのか」

 

 

西暦2030年四月。特に新生活に心躍るわけでもないが、俺、霧咲勝真(きりさき しょうま)はそんなことを口にする。東京都高度育成高等学校。日本政府が作り上げた、未来を支えていく人材を育成する学校だ。今日から俺はこの学校の生徒となる。

 

 

「新入生の方はこちらで入校許可をもらってくださーい」

 

声の方を見ると、大きなテントが用意されており、係の人たちが誘導している。俺もそれに従い順番を待つ。辺りを見渡すと、新入生でも制服の色が違うことがわかった。俺含め赤い制服を着ているものの他に、青、黒、緑の制服を着ている生徒がいる。

 

「次の方どうぞー」

 

順番が回ってきたのでテントへと入る。係の人に名前を伝えると、パンフレットと学生証端末、そしてブレスレットのようなものが渡された。

 

「こちらのブレスレットは、指示があるまでつけないでください。そして、霧咲勝真さんはDクラスの配属です」

 

Dクラス。この学校では入学試験と面接の結果によって生徒をAクラスからDクラスへと振り分ける。つまり、試験と面接の結果が良ければAよりに、悪ければDよりのクラスへと配属されるのだ。だが、世間に開示されている情報はここまで。そんな謎だらけな学校だが、就職率、進学率において他の学校を圧倒的にしのぐ結果を残していることから、この学校を受ける者は多い。

 

 

 

 

 

「このあたりのはずなんだけどな」

 

テントを出て、渡されたパンフレットを見ると、この学校は広大な敷地の中にクラスごとの学生寮があり、生徒たちはそこで生活するそうだ。Dクラスの寮はどうやら校門から一番遠いらしく、10分くらい歩いても見えてこない。ふと振り向くと、背の低い赤髪の少女が周りをきょろきょろ見ていた。無視していくのも悪いので、とりあえず話しかける。

 

「どうかしたか?」

「え?ああ、その、迷子になっちゃいまして」

 

入学早々迷子の女子と遭遇とは、なんとも二次元的な出来事だ。

 

「そうか、ならついてくるといい。俺も新入生で今からDクラスの寮へ行くところなんだ」

 

すると少女は驚きの表情を俺に向ける。

 

「どうして私がDクラスの新入生だってわかったんですか!?」

 

もっともな疑問だな。特に急いでいるわけでもないので質問いに答える。

 

「まず、在校生ならこんなところで迷子になったりはしない。そしてこの道の先にあるのはDクラスの寮だけ、最後に君は俺と同じ色の制服を着ている。おそらくだが、この学校では制服の色がクラスを表している。俺と同じ色ってことは俺と同じクラス。つまりDクラスだ」

 

少女は尚もポカーンとしている。ひょっとしなくても、少し頭が弱い子なのだろう。

 

「なんか良く分からないけどすごい!探偵みたい!」

 

少女は俺を称賛する。Dクラス配属だってのに随分元気だな。

 

「わたし朝日美空(あさひ みそら)って言うの!よろしくね!」

「ああ。俺は霧咲勝真。よろしくな」

「うん!よろしくね霧咲君!」

 

朝日はとてもうれしそうだ。まあ、一人で迷子になってたんだから不安だったんだろう。そこで人に会えれば元気にもなるよな。

 

朝日とともに寮へと向かっているとだんだん周りを歩く人が増えてきた。Dクラス配属だからか、足取りは重くどんよりし顔をしている。そんな中、俺は何人か他と違う雰囲気の人物を見つけた。例えば俺の少し前をあるく茶髪の男子。他とは違い背筋も伸び、楽しそうに歩いている。

 

「いやー楽しみだなあ!寮ではどんなメシがでるんだろうなあ!」

 

茶髪はそんなことを言っている。一番下のDクラスの寮で彼の期待に沿う食事は出るのだろうか。他には朝日の少し横を歩くキャップを深くかぶった生徒。茶髪と違い元気があるわけではないが、他の生徒のようにどんよりしているわけでもない。他にも何人かいるが、Dクラス所属ということは試験の結果はあまりよくなかったはずだ。だがそれでもこの学校に入学できたということはなんらかの才能があったりするのだろうか。

 

 

 

「あ、寮が見えてきたよ霧咲君!」

 

見えてきたのは広さはあるものの木造でボロボロの建物だった。

扱いが悪いってレベルじゃない。もはや差別だ。

 

***

「ようこそ!我がDクラスの寮へ!」

 

安っぽいクラッカーが鳴る。夕飯の席。眼鏡をかけた細目の男が俺たちを歓迎する。

 

「私は雪坂泰三(ゆきさか たいぞう)。Dクラスの寮長で学校では古典を教えています。よろしく!」

 

だが、生徒たちの反応は薄い。夕飯のメニューはめざしに納豆と、随分チープなものだったので、そのせいもあるのだろう。だが、一人だけ違う反応を見せる人物がいた。

 

「うひょー、納豆うめえ!」

 

さっきの茶髪だ。まだ雪坂先生が話している途中なのにがつがつと納豆ご飯を頬張っている。周りも呆れた目で彼を見ているようだ。

 

 

「やれやれ、元気がいいですね檜山君」

「むぐむぐ……え、なんで先生俺の名前知ってんの?超能力?」

 

檜山と呼ばれたそいつは一応口の中のものを飲みこんでから問いかけける。

 

「さて、それでは歓迎会を存分に楽しんで行ってくださいね~」

 

先生は檜山の疑問には答えず、食堂を出て行ってしまった。生徒たちは檜山からさっさと目をそらし、仕方なしと言った感じで夕飯に手をつける。

俺もめざしを口にしてみる。意外と美味い、と思うのだが周りは特に騒ぎ立てる様子もない。俺の勘違いだろうか。めざしを咀嚼しながら顔をあげると、たまたま向かいに座る人物と目が合う。肩にかかるくらいの黒髪の女子で、おそらく美人の枠に入るであろう顔立ちだ。

 

「……何?」

「いや、別に。醤油とってくれないか」

 

何を言えばいいのかわからず適当なことを言う。女子はしぶしぶといった様子で俺の前に醤油をおき、再び食事に意識を戻してしまう。

それにしても、ぼろい建物だ。食堂こそそれなりに綺麗だが、玄関や廊下はギシギシ音が鳴っていた。耐久的に大丈夫なのだろうか。まだ入っていないがこのぶんだと部屋も期待はできない。学園生活以前に日常生活が不安になるレベルだ。

そう思いながら納豆をかきまぜ、醤油をかける。良く考えたら順番が逆だった。

 

「なあ、だまってご飯食べてるのもなんだし自己紹介でもしないかい?もちろん強制はしないから嫌な人はしなくていいよ?」

 

そう言ったのは日本人とは思えない程の綺麗な金髪の男だった。体つきもがっちりしていて、顔も整っている。女子から人気の出そうな見た目だ。

 

「お、ナイスアイデアじゃん!やろうぜやろうぜ!」

 

一人だけ既に名字がわれている檜山が賛同する。ぽつりぽつりと周りからも賛同の声が上がり、自己紹介タイムが始まった。まずは金髪が自己紹介を始める。

 

「俺は高円寺斉人(こうえんじ さいと)。中学では空手や柔道をやっていて、勉強も苦手ではない感じかな。取りあえず金髪=俺って感じで憶えてくれたらうれしいな!」

 

まわりから拍手があがる。高円寺という名前には聞き覚えがある。確かどこかの企業の名前だったような気がするが、この高円寺がその高円寺と関係があるかはわからない。

 

「次は俺だな!俺は檜山 優輝(ひやま ゆうき)!好きなことは美味い物を食べることだな!ここの食事もなかな美味くて満足してるぜ。もちろん作る方も好きだから、夜食が欲しくなったらバンバン言ってくれよな!」

 

料理男子ってやつか。たしかこの学校にはいろいろな部活動があったな。料理部ってのもあるんだろうか。あれば檜山にとっては天国だろうな。

 

「じゃあ、次は私!朝日美空です!趣味はゲームとかスポーツとか、とにかく楽しいことです!よろしくお願いします!」

 

朝日は相変わらず元気いっぱいだな。朝日が自己紹介したことで、女子たちも積極的に自己紹介を始めた。俺はそれを聞きながら手早く食事を終え、食堂を後にする。別に自己紹介が嫌なわけでもないが、みんなを楽しませることを言う自信もない。幸い自由参加なので特に問題もない。

 

きしむ廊下を歩きながら部屋に向かう。学生証端末によると寮は学年ごとに分けられており、男子は1階、女子は2階で全て相部屋だそうだ。そして、俺の部屋は1階の101号室。食堂から出て真っすぐ、一番つきあたりだ。入寮時に貰った鍵をドアノブに差し、鍵をあける。いよいよこれからお世話になる部屋とご対面だ。

 

「……え?」

 

ドアを開けると、まぬけな声がした。そちらを見ると、さっき俺の向かいで夕飯を食べていた女子が立っていた。

何故か下着姿で。

 

「えーっと……」

 

俺は状況が飲み込めず、立ち尽くしていた。だが、向こうは状況を理解したようだ。

 

「きゃあああああああああああああ!」

 

羞恥に顔をそめた彼女は悲鳴をあげてこちらに殴りかかってくる。それをすんでのところでかわすと後ろの壁に穴が開いた。直撃していたら大変なことになっていただろう。

 

「なにかわしてるのこの変態!のぞき!」

「いや、のぞきでは無いだろ。こうしてドアを開けてるわけだし」

「……確かに、なんで鍵を持っているの?やっぱり変態じゃない!」

 

向こうが再び殴りかかってこようとしたので俺はあわてて部屋をでてドアを閉めた。

 

「おや、どうしたんですか、霧咲くん?」

 

ちょうどそこに雪坂先生が通りかかる。

 

「いや、俺の部屋に女子がいたんですが、一階って男子の部屋ですよね?」

 

だが先生は特に驚きもしない。

 

「ああ、すみません。実はですね……」

 

***

 

先生が言うには、一年の男女比の問題で俺と彼女は余ってしまったようで、しかも2階の部屋はすべて埋まってしまったらしい。それゆえ俺たち二人は特例として同じ部屋にされたようだ。

 

「だそうだぞ」

 

ドアの向こうの彼女にそう伝える。しばらくするとドアが開き、彼女は出てきた。今度はちゃんと服を着ている。

 

 

「すみませんね高橋さん。こちらの不手際で伝えるのが遅くなってしまって」

 

先生の様子はとても悪びれているようには見えない。

高橋は納得しない様子で先生に抗議を始めた。

 

「だからといっていくらなんでも男女を同じ部屋にするなんておかしいです。間違いが起きたらどうするんですか?」

「高橋さんは間違いが起きると言うのですか?」

 

思わぬ返答に高橋は真っ赤になり俺の方を睨んでくる。そんな目で見られても俺にはどうすることもできない。

 

「ありえません。こんな変態なんかと」

 

ひどい言われようだ。完全に過失だと言うのに、理不尽な世の中だ。

 

「では、問題はなにもありませんね。じゃあ私はこれで」

「え、ちょっと」

 

先生はさっさと行ってしまった。

 

「まあ、よろしくな高橋」

「あなた、なんですんなり状況を受け入れているのよ、本気で私に何かする気?」

 

まだ警戒されているようだ。当然と言えば当然だが。

 

 

「なにかすれば俺は一発で退学だ。そんなリスクを背負ってまで何かするほど俺はバカじゃない自信がある」

「そのいいかただとリスクがなければ何かするってこと?」

「揚げ足をとるな。とりあえず俺は眠いんだ。細かい話は明日以降ってことで」

 

 

 

そういって俺はベッドに横になる。だが高橋は俺の方を睨んだまま立っている。

 

「……なんだ?」

「私は高橋茜(たかはし あかね)。あなたは?」

 

唐突に自己紹介された。確かにこれから同じ部屋で生活するわけだし、互いの名前を知らないのは不都合かもしれない。俺は上半身を起こし、それに答える。

 

「俺は霧咲勝真だ。よろしく」

「よろしくするつもりは微塵もないけどね」

 

そう言って高橋は自分のベッドへ腰かける。

 

「明日から登校だけど、絶対に私より後に部屋をでて。一緒に出たところを見られでもしたら迷惑だもの」

「わかった」

 

すぐにばれるだろうけどな。

 

 

 

 

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