ようこそ実力至上主義の教室へ~ジェネレーションネクスト~   作:たけぽん

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14話 時は迫る。それを不幸と捉えるかそれとも幸福と捉えるか

「ったくおせえぞ霧咲!」

 

体育館に入った矢先、須藤コーチがヘッドロックをかましてきた。俺、けが人なんだけどな。腕をたたいてギブアップの意思を伝えると、すんなりと解放してくれた。彼なりのアイスブレイクのつもりだったんだろうか。

 

「そんじゃあ、取りあえず怪我した部分のケアからしてくか」

「あの、須藤さん」

「敬語はやめてくれ。なんつーかお前に敬語使われんのは違和感あんだよ」

「じゃあ、須藤」

「極端だな」

 

須藤のつっこみには反応せずに俺は疑問を伝える。

 

「体育館、バスケ部が使ってるんだがどこでリハビリを?」

 

俺の言葉通り、体育館はバスケ部の練習に使われている。それも半コートではなく対一館全体を使っている。明らかに俺がリハビリするスペースは無い。

 

「おう。もともと俺はバスケ部のコーチに呼ばれてっからな。今日も大半の時間はそっちに使う」

「いや、それじゃあ……」

 

一応難色を示してみる。だが須藤は屈託のない笑顔で俺の肩をたたく。

 

「大丈夫だ。鈴音から事情は聞いてる。お前の不都合になることはしねーよ」

「そうか。じゃあ頼む」

「おう。じゃあとりあえずストレッチのやり方教えるからその後は適当にやっといてくれ」

「了解」

 

それから10分くらいストレッチの基本を教えてもらい、須藤はバスケ部の指導に向かった。俺は取りあえず言われた通りのメニューを何順も繰り返す。その合間に須藤が声をかけてくる。とはいっても「調子はどうだ?」と聞かれ「普通だ」と答えるだけの薄い内容だが。俺が15週目に入ったところで体育館の扉が開いた。俺は特に気にせずストレッチを続ける。だが、訪問者の足音はこちらに近づいてくる。

 

「調子はどうですか、霧咲君?」

 

話しかけられて無視するのも悪いので俺はストレッチをやめ、そちらへ向き直る。声の主はそれをみて満足気に笑う。

 

「楪か。先日のお茶会以来だな」

「そうですね。日数的には全然離れていないのにとても久しぶりに感じるのはそれだけ私が霧咲君と会うのを楽しみにしていたからでしょうか」

「そんなに俺に恋焦がれているのか、照れるな」

「ふふ、霧咲君の冗談は面白いですね」

 

ですよね。知ってた。くだらない会話を早々に切り上げ、俺は楪の隣、一緒にやってきたもう一人の訪問者に目を向ける。

 

「楪、そっちの人は?」

「あら、すみません。お話が楽しくてすっかり忘れてました。こちらは……」

 

楪が紹介しようとするとその人物は手でさえぎる。

 

「俺は3年Aクラス、涼野信司(すずの しんじ)。学園では生徒会長を務めている」

「生徒会長?そんな人が俺になんのようですか?」

「一年の間で、今年初の交換試験が行われるということは当然生徒会にも伝わっている。その受験者の確認に来たまでだ」

「それに霧咲君が怪我をしたと聞きまして。心配になったので私もついてきたんです」

 

とは言っても、生徒会長と楪が一緒にいることの説明にはなっていない。楪はオレに変な興味を持っているらしいし、生徒会長と結託して探りにきた可能性もある。

 

「ああ、説明不足でしたね。実は私、生徒会に入ったんです。つまりここに来たのは生徒会長のサポートの為です」

 

あくまで仕事の範疇だと強調したような言い方だが、現状気にしてもどうしようもない。

 

「確認するが、お前は学園によってDクラスに配属された霧咲勝真、で間違いないか?」

「はい。霧咲です」

「そうか。では霧咲、いくつか質問がある」

「なんでしょうか。悪いんですけど、今リハビリ中なんで手短にお願いします」

「了解だ。俺も次の予定がある。手短に済ませよう」

 

涼野は少し間をおくと、再び口を開いた。

 

「まず、お前はその怪我で、交換試験が体育系の内容だったらどうするつもりだ?」

「一応そのために須藤……須藤さんにケアをしてもらっています」

 

涼野は特に反応を示さずに次の質問を投げかけてくる。

 

「次に、前回の中間テストでDクラスが全員満点をとった訳だが、お前はその時何かしたか?」

 

やはり楪が何か拭きこんだのだろうか。彼女の方に視線を向けると、満面の笑みを返してきた。

 

「高円寺にネクストポイントを支払いました」

 

嘘では無い。俺もあの時高円寺にポイントを渡したことは事実だ。

 

「では最後の質問だ。お前は入学試験。どの教科が難しいと感じた?」

「全部難しかったからDクラスの配属だと思います」

「……そうか。質問は終わりだ。交換試験、最善を尽くせるように須藤さんにしっかり見てもらうといい」

 

鈴野はそう言い残すと体育館の出口へと向かった。楪も俺に一礼するとその後を追っていった。

 

「生徒会……か」

 

まためんどくさい連中に絡まれたもんだな。

 

***

 

その日のリハビリは終わり、俺は寮へと戻った。確か今日の晩飯は山菜定食だったな。なんでも以前は大不評だったらしいが制度改革の際に良質な山菜を仕入れられる事になり、今ではDクラス寮の人気メニューらしい。制度改革の時に山菜の質を上げるなんてグルメな重役もいたもんだ。

 

「おねがいだ。学校にきてくれないか?」

 

食堂に入ると、なにやらざわついているようだった。見てみると、高円寺が何人かの生徒に頭を下げている。俺は気にしていなかったが、寮の食堂は共有スペースだ。当然飯を食わずにすごしていくことはできない。かといってショッピングモールで外食したり惣菜を買ったとしても、プライベートポイントには限りがある。つまり、手塚の一件で授業放棄した生徒とも必然的に顔を合わせることになる。

 

「高円寺、しつこいぞ!俺らがいくら頑張っても手塚があのままならプラマイゼロどころかマイナスにしかならないだろ!」

「でも、俺たちが真面目にとり組めば手塚君も授業放棄を続けるわけにはいかないと思うんだ。学ぶ意欲が無い生徒をいつまでも放置するほど学園側も甘くないはずだよ」

「それはお前の推測だろ。俺たちを説得する前に手塚を何とかしろよ。手塚がどうにかなるなら俺らだって授業を受ける」

「お前らなあ!斉人クンがこんなにお願いしてるのに心がいたまねーのか!」

 

尚も言い合いを続ける両者を横目に、俺は山菜定食を口にする。うむ、美味いな。

 

「全く憐れね」

 

急に隣に座ってきた高橋が俺に呟く。

 

「そういうことは本人に言え。このままだと俺が憐れみたいになってるだろ」

 

高橋はそれには答えず山菜定食に手をつける。

 

「お前もなんとかしようと思わないのか?クラスの一大事だぞ」

「全く思わないわね。前にも言ったけど、私はクラスポイントを上げることに興味が無いの。Dクラスがいくらマイナスを出しても私には関係ないわ」

「ぶれないなお前は」

「褒めてくれてありがとう。ところで、あなたの方はどう?」

 

高橋は声をひそめて尋ねてくる。

 

「問題ない。お前は言った通りにしてくれれば大丈夫だ」

「そう。それにしてもあなたが先に契約を行使してくるなんてね」

「使えるものは何でも使うべきだろ、フリーダイヤルの相談室とか」

「例えが微妙すぎるわ……」

 

俺はそこで会話を切るとお盆をさげる。これ、本当に美味いな。今度食べるときは大盛りにしてもらおう。

 

こうして、交換試験の日はどんどん近付いてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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