ようこそ実力至上主義の教室へ~ジェネレーションネクスト~   作:たけぽん

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20話 友人は信用せよ。しかしそれには相応の見極めが必要となる

「というわけだ」

「いや、どういうわけ!?」

 

朝日が鋭いツッコミを入れてくる。時刻は4時半、放課後。ショッピングモール行きのバス停で先にまっていた朝日たちの前に山崎を連れて行ったらこうなった。

 

「何か問題あったか?朝日は山崎と友達だろ?」

「そうじゃなくて、霧咲君と山崎さんって友達だったの?」

 

質問したら質問で返された。その質問に答えようと思ったが、果たして俺と山崎はどうい関係なのだろうか。先ほど教室で話した以外は交換試験の前とお茶会の時ぐらいしか話していない。ということは、顔見知りといったところだろうか。

 

「そうだよ~前にAクラスの楪さんが企画したお茶会で知り合ったんだ~」

 

友達だったらしい。これでボッチ脱却だな。

 

「まあ、山崎は食べるのも好きだが作るのも好きらしくてな、力になってくれると思って連れてきた」

「何だよ霧咲、俺一人じゃ不服ってことか?」

 

檜山が少し不満そうにしている。プライドを傷つけてしまったんだろうか。

 

「まあまあ檜山君。人数は多いほうがいいよ。それに料理に詳しい人が二人もいれば佐藤さんの為にもなるよ」

 

高円寺がフォローしてくれたので檜山もそれ以上は反論してこなかった。

 

「そうそう。食材を買うポイント、私も出すから仲間に入れてほしいな」

「……まあ、いいけど、お前料理どれくらいできるんだ?」

 

確かに、飲食店の息子である檜山と同等かそれ以上の実力が無ければ山崎がわざわざ参加する意味はほとんどない。当然の疑問だな。

 

「うーんそうだなあ。私の家は両親が共働きだったから弟たちに毎日作ってあげてたよ」

「期間は?」

「小学校2年生の時から中学卒業するまでかな。最近はお母さんの仕事が落ち着いたらしくてお役御免って感じ」

 

約8年か。しかも毎日となると単純計算で2920日。三食とすると8760食。それだけ作っているなら実力の方も折り紙つきだろう。

 

「そっか。それなら安心だな。俺は檜山優輝。よろしくな、山崎」

「うん!よろしくね!」

 

山崎はそういって手を差し伸べる。檜山は少し照れながらもそれに応じた。

 

「あ、バス来たね。行こうか」

 

 

バスに揺られること10分。ショッピングモールへと到着した。俺たちはすぐにスーパーに入り、食材を探しだした。とはいっても、俺や朝日は料理に詳しいわけでもない。檜山と山崎の後ろについて歩くだけだ。高円寺がその間を歩き、俺たちの会話を繋いでくれている。

 

「そういえば、高橋は?」

 

隣をあるく朝日に問いかける。

 

「高橋さんは図書館に用があるって言ってたよ」

 

また避けられたのか。こうも露骨に拒絶されると結構傷つくな。あ、でも図書館に行ったのなら草薙に会ってるかもな。頑張れ草薙。

 

「檜山君。結局何を作ることにしたんだい?」

「カレーだ」

「カレー?カレーって体にいいの?」

 

朝日が首をかしげる。確かに俺もカレーを体にいいという理由で食べたことはない。

 

「そうだよ。カレーに使うスパイスの中にはカプサイシンっていう消火を促す成分があったり、他にも入れるもの次第でダイエット効果や美肌効果もあるんだよ~」

「そういうことだ」

 

ほう、カレーにはそんな効果があるのか。たしかに日本人ならカレーは食べやすいだろうし、そこまで値も張らないため俺たちが払うポイントも多くはならないだろう。

取りあえず状況は把握できたな。後はこいつらに任せれば万事オーケーだろう。そう思い、俺はトイレに行くふりをしてスーパーを出た。とはいってもあまり時間をかけると迷子扱いされるだろうしさっさと用事を済ませよう。

俺は少し歩調を速めながら家電量販店へと向かった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

「よーし、それじゃあ作ってくぞ」

 

エプロンを身につけ、腕をまくる檜山の様子はかなり絵になっている。そしてそれを見ている俺や高円寺は……まったく似合っていない。

 

「なあ、高円寺。お前料理って作ったことあるか?」

「いや、恥ずかしい話だけど無いよ。家では専属のシェフがいたし、ここでは食堂を利用してるからね」

 

高円寺は苦笑いする。まあ俺も料理は完全に食べる専門だし、人のことは言えないんだが。

 

「ところで、朝日たちは?」

「朝日さん達はさっき買ったエプロンにアイロンをかけに行ったよ」

 

わざわざ買ったのか。食堂にも一応エプロンは備わっていて、俺と高円寺はそれを借りているのだが、どうやら女子というのはエプロン一枚にも相当こだわるようだ。

 

「じゃんじゃじゃーん!」

 

そう思っていると食堂の扉が勢いよく開かれる。入ってきたのは今話題になっていた朝日たち女子だ。朝日はピンク、山崎は青いエプロンをつけている。そしてその後ろから入ってきた高橋は黒いエプロンをしている。まあ、あいつの事だから汚れが目立たないとかそういう理由で黒を選んだんだろうけどな。

 

「えへへ、どうかな?男子諸君!」

 

山崎はくるりと一回転する。

 

「お、おお。にに似合ってんじゃねーか、山崎」

 

檜山の口調はかなり動揺しているように感じる。

 

「あれれー?檜山君、山崎さんだけ?わたしたちは~?」

 

朝日が少しニヤニヤしながら檜山に問いかける。これは、あれか。檜山にも春がやってきたということだろうか。買物中も楽しそうに話してたしな。

 

「ば、ばばばっかお前。山崎が聞いてきたからそれに返事しただけだって。朝日と高橋も意外と似合ってるぞ」

「意外~?なるほど、わたしたちは眼中にないってことか~」

「う、うるさい。ほらさっさとカレー作るぞ」

 

檜山は顔を赤くしながらスーパーの袋から野菜を取り出す。山崎はというと、特に気にした様子もなくそれを受け取り、洗いだした。何と言うか、檜山一人でも絵になってたが山崎も加わるとさらに映えるな。ふたりで店を切り盛りする夫婦、みたいな感じだ。あんまり眺めていても悪いので適当なところに視線を移す。

……と高橋と目があった。

 

「……何?」

「いや、別に。そういえばお前図書館に行ってたんじゃ無かったのか?」

「目当ての本がすぐに見つかったから合流したのよ」

「目当ての本?」

 

どんな本だろうか。小説?参考書?高橋の事だから後者が濃厚だな。

 

「高橋さんは麻優佳ちゃんの体調回復の為に「簡単にできる健康法」って本を探してきてくれたの!」

 

へえ、図書館にはそんな本もあるのか。俺も今度行ってみよう。

それにしても高橋が他人の為に本を借りてくるなんて、明日は雨でも降るんじゃないのか?

 

「言っておくけど、佐藤さんには朝日さんと同様に部屋に泊めてもらっている借りがあるからってだけよ」

「いや、何も言ってないだろ」

「そうかしら、大体あなたは……」

 

俺たちの会話を見てなのか、朝日が笑い出した。

 

「どうした、朝日?」

「ううん。霧咲君と高橋さんがそんな風に会話するのって久しぶりだなって」

 

そういえば、高橋との一対一の会話は随分久しぶりな気がする。逆にいうとそれだけ避けられてたということでもあるが。でもなんだか不思議とほっとしている自分がいた。

 

「ちょっと朝日さん。別に私は話したくて彼と会話しているわけではないのよ。もとはと言えば彼が」

「はいはい。分かってるって。それよりほら、檜山君たちを手伝おうよ」

 

なんというか、朝日の高橋の扱いが上手くなってるな。同室になったことも影響しているんだろうか。

 

それからしばらく、俺たちは他愛のない話をしながら野菜を切り、ジャガイモの皮を剥き、スパイスを調合し、炒め、煮込み始めた。まあほとんどは檜山と山崎がやったわけだが。しかしなるほど、カレーってこうやって作るのか。

 

「煮込むのに時間かかるし、みんな自由にしてていいぞ」

「え、でも檜山君だけに鍋をまかせるのは申し訳ないよ」

「いいって高円寺。ここまで手伝ってくれただけで十分さ。あとは俺と山崎に任せろって」

 

そんな檜山の言葉を、朝日はニヤニヤしながら聞いている。女子ってやっぱりこういう話が好きなんだな。

 

「あ、そうだ。誰かこれ、佐藤に届けてきてくれないか?」

 

そう言って檜山は冷蔵庫から何かを取り出す。出てきたのはラップされた皿。中身は……お粥か。

 

「檜山君、これいつの間に?」

 

高円寺が尋ねると、檜山はにっこり笑って答える。

 

「いや、実は昼休みに高円寺たちに話を持ちかけられた後、そっこーで作っておいたんだ。カレーもいいけど、やっぱりお粥がメジャーだと思ってさ」

 

そういって檜山は皿を電子レンジにいれ、時間を設定する。2分ほどで、レンジが軽快な音を鳴らす。

 

「それじゃあ、えっと、誰が持ってく?」

「あ、じゃあ、わたしがいく!あと、霧咲君も一緒に来てくれる?」

「え、俺?」

 

なぜこのタイミングで俺なんだ?一緒の部屋にいる高橋や女子人気の高い高円寺の方がいいんじゃないのだろうか。だが、朝日はにこにこ、というよりはニヤニヤして俺の返事を待っている。

 

「よくわからんが、俺でいいなら」

「うん。じゃあいこう!」

 

朝日は檜山からお粥を受け取るとお盆に載せ、食堂を出る。俺もそれに続く。

 

 

「というか、2階って男子禁制じゃなかったか……?」

 

ぎしぎしと音を立てる階段をのぼりながらの俺の呟きは、はたして朝日に聞こえただろうか。

 

「ん~?なんか言ったー?」

 

聞こえていなかったようだ。まあ、朝日もいるし大丈夫だろう。

 

「そういえば、なんで俺を連れてきたんだ?」

「ん~?知りたい?」

「まあ、知りたいな」

「そっかー知りたいんだ~」

 

やけに勿体ぶるな。何だ?思い当たる節が全く無くてなんだか怖いな。

 

「さっき、部屋に戻った時に麻優佳ちゃんがベッドで寝てたんだけどね」

「おう」

「その時に麻優佳ちゃんが寝言で『勝真君……勝真君』って言っててさ!いや~霧咲君も隅に置けないね~」

「なんじゃそりゃ……」

 

だが、朝日が嘘を言っているそぶりは無い。ということは、寝言の件は本当なわけか。

そう思っていると、朝日が205号室の前で足を止める。ここか。

朝日がノックをすると、中から佐藤の声がする。それを聞いてから、俺たちは部屋へと入る。

 

「麻優佳ちゃん。檜山君が作ってくれたお粥持ってきたよ~」

「あ、美空ちゃん。それと……霧咲君?」

「ああ、邪魔だったなら戻るけど……」

「あー!急にお腹が痛くなっちゃった!ごめん、霧咲君!あとお願い!」

 

朝日は俺にお盆を押し付け足早に部屋を出て行く。おい、流石にわざとらしすぎだろ。佐藤が訝しげな眼でこっちを……

 

「美空ちゃん、大丈夫かな……?」

 

見てない。なんて純粋なやつなんだ。取りあえず俺はお盆をベッドの横の机に置き、ラップをはがす。

 

「ほら、熱いから気をつけてな」

「あ、ありがとう」

 

佐藤はお粥を一口食べると、目を見開き、続けざまに食べる。そんなに美味しいのか。今度俺も作ってもらおう。

 

「どうだ、美味いか?」

「うん。凄く美味しい……」

「胃袋掴まれたか?」

「へ!?い、いや、確かに美味しいけど私は別に檜山君のことは別に!」

「冗談だって」

「も、もう!からかわないでよ勝真君!」

「え?」

 

今、佐藤は俺の事を名前で呼ばなかっただろうか?勘違いだろうか。取りあえず記憶に新しい今の会話をリフレインする。うん。言ってるな。完全に言ってる。

 

「あ、ご、ごめん!今のは霧咲君の事じゃなくて、つい癖で……」

「癖?」

「あう……」

「あ、いや、言いたくないなら言わなくていいぞ」

 

佐藤は少し困っているようだったが、すぐに真剣な顔で俺を見る。

 

「中知半端に知っちゃったら霧咲君にも迷惑だろうし、言うよ」

「そ、そうか?」

「実は、私の家って私が小さい頃に両親が離婚して、お父さんはお兄ちゃん、お母さんは私をつれていったの」

 

なんだかとてつもなく重い話になったんだが、これは本当に俺に言ってもいい話だったんだろうか。

 

「それでね、お兄ちゃんと離れ離れになって泣いてた私を慰めてくれた男の子がいたんだ。その子の名前は、山中勝真君」

「俺と同じ名前だな」

「うん。最初に霧咲君の名前を知った時は少し驚いたの。でも、霧咲君と私の知ってる勝真君は全然違ったから」

「その子はどんな子だったんだ?」

「勝真君は、明るくて、いたずら好きな子だったよ。いつも私をからかってきて。でも私は彼といる時間がとても好きだったの」

 

それは確かにオレとは大違いだな。さっきの会話の中で俺が冗談を言ったことが記憶にひっかかったんだろな。

 

「それが、寝言の勝真君の正体ってことか」

「え!?私そんな寝言を!?」

「朝日が言ってたぞ」

「うぬぬ……美空ちゃんめ……」

「でも意外だな」

「え、何が?」

「佐藤ってちゃんと話せるんだな。それも自分の初恋の話しを他人にするなんて、普通ならなかなかできないぞ」

 

保健室の前で俺や高円寺と話していた時はもっと根暗な感じだと思っていたんだがな。

 

「は、初恋!?いいいやそういうのじゃなくて!」

「冗談だ」

「も、もう!」

「ごめんって」

「でも、なんでだろう。いつもは美空ちゃんとしか話せないのに……霧咲君とは普通に話せる……」

「まあ、佐藤自身が成長してるってことなんじゃないのか?」

「そう……なのかな?」

 

佐藤が首をかしげていると、ドアが勢いよく開く。

 

「よう佐藤!特製の薬膳カレーだ!これ食って元気出せよ!」

「ちょっと檜山君。女子の部屋にノックも無しに入るなんて非常識にも程があるわ」

「あはは。檜山君怒られてる~」

「ちょっと、みんな落ち着いてよ」

「麻優佳ちゃん!ただいま~!」

 

急に部屋が騒がしくなる。すごく久しぶりな雰囲気。でもまあ、こういうのも悪くないか。

俺は今どんな顔をしているだろうか。いつも通りの無表情?いや、ちがうな。少なくとも俺の認識では、これは『笑顔』と言える部類だと思う。

 

 

***

 

2日後、佐藤は元気を取り戻し、俺たちと一緒に登校した。実質1日半の欠席だったため、ポイントも大幅には減らないだろう。唯一の問題点はDクラスの環境下で、いつまた体調を崩すともわからないことだ。

 

「え、何だこれ!?」

 

教室に入るや否や檜山が窓側にある物体に向かっていく。

 

 

「これは……加湿器だね。しかも最新式だ」

 

高円寺も驚いている。まあ、この加湿器は最新式でかなり値も張る。当然の反応だな。

 

「それに、なんだか教室が綺麗になっていない?」

「確かに!天井の蜘蛛の巣とかなくなってるし!」

 

高橋と朝日も驚いているようだ。それに、周りの生徒たちも加湿器の方を興味深そうに見ている。

 

と、チャイムが鳴り堀北先生が入ってくる。毎度思うがこの人はなんで毎回チャイムとぴったり同じタイミングで入ってこれるんだろうか。

 

「みなさん、おはようございます。では朝のホームルームを始めます」

「先生~あの加湿器なんですか?」

 

生徒の中からそんな質問がでる。

 

「その加湿器はBクラスの山崎さんからの申し出により各クラスに設置されることになりました。高価なものですので、扱いは気を付けてください」

「先生、それは山崎さんがポイントで買ったということですか?」

 

高円寺の問いに先生は首を横に振る。

 

「いいえ、それは山崎さんが全校生徒の3分の2の署名を集めて学校側に申請した結果配置されたものです」

 

堀北先生の言葉に、教室がざわめきだす。その署名とは以前、山崎が交換試験の時に言っていた制度だ。

 

「全校生徒の3分の2って……240人じゃん!」

「なにそれ~山崎さんまじパねえって~」

「では先生、教室の清掃も山崎さんが?」

「いえ、それに関しては学校側は何もしていません。……さて、これ以上話している時間も無いのでホームルームに移ります。まずは……」

 

 

 

 

 

「悪かったな。こっちの都合を押し付けることになってしまって」

 

放課後、図書館のラウンジで俺は山崎に謝罪する。

 

「ううん、いいって。私も署名の効果を知ることができたからウィンウィンだよ~」

 

正攻法でやっても240人もの生徒の署名を集めることは現実的では無い。可能だとしてもそれはかなりの時間を要する。だからこそ、現在この学校に在籍する生徒の中で署名による学校への申し立てを行ったものは誰もいない。山崎はそれに目を付け、『署名の効果を知るための署名』を行った。つまり、生徒たちは署名の効果を知ることができ、今後の学校生活でも署名制度を利用しやすくなったということでもある。

 

「それにしても、よく240人分も集めたな。何に使われるか、誰も分からないってのに」

「それに関しては問題ないよ。誰かの不利益になるような事に使用したら賠償としてプライベートポイントを払うことになってたから」

「なるほど、考えたな」

「それはこっちのセリフだよ。あのノートを拾ったのは偶然とはいえ、それを佐藤さんの為に使おうと思いつくなんてさ」

「たまたま悪知恵が働いただけだ」

 

山崎は「ふーん」と俺を見まわし、椅子から立ち上がる。

 

「まあ、今はそういうことにしとくよ。霧咲君や高円寺君。それに……檜山君とは協力関係でいたいしね」

 

山崎の顔が赤く見えるのは、窓から入り込んでくる夕日のせいだろうか。なにはともあれ、俺もBクラスとは協力関係でいたい。なにせ檜山同等のコックがいるのだ。仲良くしといて損はないだろう。

 

「そういえば、朝日さん達とは仲直りできた?」

「別に、俺はあいつらと喧嘩していた訳じゃない。いつもどおりだよ」

 

いつも通りの、友達と言う関係。今回の件で俺はそれを取り戻せた。佐藤とも連絡先を交換したしな。

 

「そっか~よかったよ。でもさ、霧咲君ってクレバーにみえて友達思いだよね」

「そうか?」

「じゃなきゃ教室の掃除したりしないでしょ?」

「……誰に聞いたんだよ」

「堀北先生」

 

見られてたのか、不覚だ。

 

「さて、もうすぐ夏休みだね。霧咲君は夏休み何かするの?」

「いや、特に変わったことはしない。いつも通りのんびりするさ」

「そっか。それじゃあまたね~」

 

山崎はひらひらと手を振ってラウンジを後にする。

夏休み、確かに普通の学校なら楽しいイベントだろう。

 

 

だが、この学校が、「アイツ」が、そんなものを用意しているだろうか。

 

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