ようこそ実力至上主義の教室へ~ジェネレーションネクスト~ 作:たけぽん
翌日、ついに本格的に学校生活が始まる。NSシステムの査定を意識してか遅刻者は一人もいなかった。チャイムと同時に堀北先生が教室に入ってくる。
「おはようございます。昨日はよく休めたでしょうか。今日から本格的に授業が始まります。上のクラスを目指すためにも真摯に取り組んでください」
生徒たちはそんな社交辞令のような挨拶にも真剣に耳を傾ける。
「そして、昨日連絡しましたがみなさんネクストリングは着用していますか?」
ネクストリングとは、入校許可を貰うテントで貰ったブレスレッドの事であり、昨日の帰りのホームルームで今日の朝までに装着することを指示された。
「では、これから皆さんのネクストリングの電源を入れます」
先生はそういってもっていたタブレットを操作する。それと同時に俺たちのリングに光が灯った。ディスプレイには、NOW LOADINGと表示されている。
「このネクストリングはわが校の生徒全員に装着義務付けられているブレスレッドで、主な機能はネクストポイントの管理、体調管理、時間管理です。勝手に外すとペナルティが課されるので注意してください」
「おお、なんかかっけー!」
「これはまじですごいっしょ!映画みたいだし!」
周りからそんな声が上がる。
「それでは、これでホームルームを終わります」
堀北先生は教壇を降りる。
「まってください」
それをひきとめたのは高橋だった。
「なにかしら、高橋さん」
「さっき先生は上のクラスを目指ために真摯に取り組めとおっしゃいましたが、上のクラスに上がった生徒、またはクラスというのは前例がありますか?」
「過去の事は話せないわ。そもそも話したところであまり意味はありません。ただ、今のあなたたちでは上のクラスに上がることはできないでしょうね」
「それはどういう意味ですか?」
「さあ、どういう意味でしょうね」
そういって先生は教室を後にした。
「なんだよ、堀北先生つめてーなー」
「自分で頑張れって言っておいて無理だとか意味わかんないよねー」
生徒たちは不満を募らせる。
「みんな、今は先生に怒りを向けても仕方ないよ。とにかくやれることをやってクラスポイントを上げていこう」
そう言ったのは高円寺だった。その言葉に一同は不平をやめ、頷いた。どうやら高橋とちがって高円寺はクラス全員で上を目指そうとしているようだ。それに対しほとんどの生徒が賛同を示している辺り、高円寺は速くもクラスの中心となっているようだ。
「さすが斉人クン!高円寺コンツェルンの跡取りは伊達じゃないっしょ!」
高円寺の隣に座る男子がいった言葉によると、高円寺は本当にあの有名な高円寺だったようだ。それはたしかにクラスをまとめられるのもうなずける。
その日の3時間目は体育。生徒たちはジャージに着替え、グラウンドに集合していた。
チャイムと同時にいかにも体育会系といった感じのおっさ……先生がやってきた。
「よーしお前ら集合しろー」
その声に俺たちは並ぶ。
「さっそくだが、準備体操をしたら走力テストをはじめる。これはみんなの基礎体力を知るためでもある。それが終わったら、後は自由にグラウンドを使ってくれて構わない」
「え?それだと自由時間がかなり長いんじゃ?」
疑問の声が上がる。
「一回目の授業から怪我されても困るからな。今日はあくまでオリエンテーションだ」
なるほどそんなもんなのか。
「それじゃあ適当に4人一組をつくってスタート地ポイントに行ってくれ。」
「はいはい先生!質問いいっすか!」
「うん?えーっとお前は……」
「池田優斗(いけだ ゆうと)です!今までで一番早かった人ってどんな人ですか!」
池田と名乗った生徒は元気よく質問する。足に自信があるのか、単に興味本位なのか。
「そうだな……たしか歴代だと高円寺六助と須藤健が最高だったかな」
「ええ!高円寺六助って斉人クンのお父さんで高円寺コンツェルンの社長じゃん!」
「それに須藤健って世界で活躍するプロのバスケット選手じゃん!」
「そんな凄い人たちがこの学校の卒業生だったなんて、凄くない!?」
驚きの声があちらこちらから聞こえてくる。高円寺六助の名前はよくニュースなどで見かける。5年前位に、世界進出を果たしたとかなんとか。須藤健も、スポーツ誌などで見たことがある。バスケット界に革命を起こしたとかなんとか。
「ほら、それくらいにして、さっさと並べー」
***
「はい、次の組用意しろー」
いよいよ俺たちの組の番が回ってきた。しかし何の因果なのか、俺の組は高円寺、池田、そして手塚だった。どいつもこいつもキャラが濃すぎる。そもそも高円寺とか明らかに早そうなんだが。
「よろしくねみんな。ベストを尽くそう」
「おうよ、俺の華麗なる走りをみるがいい!」
「はっ。余裕だねえ高円寺クン」
なんかみんな凄いやる気なんだが。
「それじゃあよーい」
ピストルが鳴るのとともに俺たちは走りだす。先頭を走るのはわかりきっていたが高円寺……と手塚だった。
「うそだろ!?手塚の奴斉人クンと互角に走ってる!?」
「うぐぐ、非常に不愉快だ……」
手塚嫌われすぎだろ。まあ、初日のあの態度のせいだな。自業自得。そう思いながら俺は3番目を走る。
「はあ、はあ、ど、どういうことだ、この俺がああああ!」
どうやら池田は別に俊足でも何でもなかったようだ。さっきの質問は完全に興味本位だったらしい。そしてそのままゴール。一位は手塚と高円寺の同着。ついで3位は俺、4位は池田だった。
「ぜえゼえ……くそ。今日は星占い最下位だったからな……仕方ないか……」
そんな声が聞こえていたが気のせいかもしれない。
「高円寺君すごーい!」
ゴールした高円寺の周りには女子が群がっている。おい、同着の手塚にもなんか言ってやれよ。え?言いたくないの?そうだな、俺も特に言うことは無い。
「お疲れ様」
その声とともにタオルが頭に飛んでくる。
「……高橋か。俺より高円寺にアピールしたらどうだ」
「別に私は彼に好意はないわ」
「俺にはあるのか」
「あなた、死にたいの?単純に聞きたいことがあったから声をかけただけよ」
「なんだ?」
「霧咲君。あなたなにか運動してた?フォームがものすごくきれいだったけど」
こいつは俺のストーカーかなにかなのか。普通3位の奴のフォームなんて気にしないだろうに。
「特になにも……いや、中学の時に1年くらい陸上をやってたな」
「とても一年で完成するフォームじゃないと思うのだけど……」
なんて答えようかと考えていると、ちょうど最後の組がゴールしたところだった。
「よーし。これで全員だな。それじゃあ後は自由時間だ」
「いよっしゃああああ!」
先生の言葉に、男子たちがはしゃいでボールを取りに走る。
「それじゃ、俺も球技に混ざってくるから」
「あ、ちょっと、待ちなさい!」
待てと言われて待つわけないだろ。的な。