ようこそ実力至上主義の教室へ~ジェネレーションネクスト~   作:たけぽん

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5話 状況を理解せよ、さもなくば解はない

『NSシステム』の説明、檜山との出会い、高橋の宣戦布告と入学早々いろいろなことがあったが、その後は特に何も起きず一週間は過ぎていった。そして今日は初の土曜日。少し早めに起き、特にやることのない俺は高橋が部屋を出てから10分後に食堂へ向かった。

今日の朝食は白米、茄子の味噌汁、漬物、卵焼きだった。一周回って健康的な素晴らしい朝食に見えてきた。

 

「おーっす霧咲!」

 

奥の方のテーブルで檜山が手を振っているので、そちらへ向かう。

 

「おはよう檜山、今日も元気だな」

「そりゃそうだぜ。なにせ今日は初の卵料理だからな!」

「確かにそうだが、それがどうかしたのか?」

「この前言ったろ?この学校では最先端の食材を使ってるって。当然鶏も例外じゃない。その卵が食えるんだから元気も出るってもんよ」

 

なるほど、それはどんな味なのかとても興味がある。割り箸を割り、いただきますをしてから早速卵焼きを口には運ぶ。

 

「なるほど、これは美味いな」

「だろ?」

 

けして檜山の言葉による先入観では無く、卵焼きは本当に美味かった。

 

「しかも、味付けが神がかっててさ、白だしとか良くあるものしか入れてないのにその配分がまた絶妙なんだよ」

 

とするとあのおばさんは相当の腕の持ち主ということか。たしかに、豪勢ではないがこの一週間、昼まで腹が減ったことは無かったしな。もくもくと卵焼きを食べていると檜山が話しかけてきた。

 

「霧咲は今日なにすんの?」

「特に決めてないし、校内の探索でもしようかな。そっちは?」

「俺は今日、皿洗いの後に釣りスポットを見に行くんだ」

「釣りスポット?」

「ああ、何でも敷地の西の方につりぼりがあるらしくて、そこでとった魚は自由にしていいんだと。今度一緒に釣りにいこうぜ」

 

友人と休日に釣りに行くなんてなんともシャレてるな。たくさん釣れば檜山が料理してくれるわけだし、百利あって一害なしだな。

 

「でも、つりざおとかはどうするんだ?」

「そーそれなー。今日はスポット探索だからいいけど、竿必要だよなー。レンタルとか販売とかしてねえかな」

 

そういえば敷地の北側にショッピングモールがあったっけか。そこにいけばあるかもしれない。

 

「今日ショッピングモールに行けたら探してみるよ」

「お、わるいな!じゃあお礼に晩飯のあと、あまった卵と昨日の焼きそばでオム焼きそば作ってやるよ」

 

それは楽しみだ。後で高橋にも伝えておこう。

 

朝食を終え、部屋でくつろいでから服を着替えて玄関にむかう。あいかわらず廊下はぎしぎし音が鳴るが、床が抜けたという話しは聞かないので特に気にすることはなくなった。

玄関の方を見ると、何人かの集団がいた。その中には高円寺の姿もあった。やはり目立つなあの金髪は。邪魔しても悪いのであまり音を立てずに靴をはく。

 

「あれ。君は」

 

しかし、速効で高円寺に見つかってしまった。その声に反応して、集団の全員が俺の方を見る。男子が4人に女子が3人か。

 

 

「あ、霧咲君!」

 

その中には朝日もいた。俺に気付くと駆け寄ってきた。まるで子犬のようだ。

 

「よう、朝日」

「これからショッピングモールに行くんだけど、霧咲君も行かない?」

 

まさかのお誘いを受けてしまった。俺もショッピングモールに行く予定なので、断る理由もないのだが、強いてあげるとすればこのメンツだろうか。高円寺と朝日以外は名前も知らない。向こうだって俺の事なんてほとんど知らないだろう。それは少し気まずい気もする。

 

「いや、俺、迷惑じゃないか?」

 

とりあえずそう聞いてみる。

 

「そんなことないよ?ねえ、高円寺君?」

「そうだね。俺たちは全然構わないよ?ね?みんな?」

 

他のメンツも賛成してくれたようなので、俺はめでたく高円寺のグループに混ぜてもらうことになった。

 

「おい、どいてくれよ。靴取れねーんだけど」

 

声の主は高円寺たちを強引に押しのけ靴を取り出す。こいつは確か……。

 

「ああ、ごめんよ手塚君」

 

そう、手塚だ。入学式初日から挑発的な発言でDクラスの中でも少し浮いた存在だ。どこかへ出かけるのだろうか。それにしては服装は上下ともにジャージ。とてもショッピングモールに買物に行くようには見えない。

 

「手塚君はどこか行くのかい?」

「まあな。でもお前らには関係ないから」

 

そう言って手塚は扉をあけ出ていった。

 

「なんだよあいつ。せっかく斉人クンが話しかけてんのに感じ悪いなー」

 

グループの男子の一人がそう言う。女子たちも口々に手塚の悪口を言っている。やっぱりあんまり印象良くないんだな。

 

「ま、まあ。彼は少し変わってるからね。それはさておき、俺らもそろそろ行こうよ」

 

なんて寛大なんだ高円寺。気のせいか輝いて見えるぞ。

 

***

 

校内の最東端のDクラス寮から北のショッピングモールに行くにはまず校舎まで行き、裏口から出なければいけない。なので俺は相当歩くことを覚悟していたのだが、どうやらショッピングモールにまでのバスがあるそうで、俺たちはそのバスを使いショッピングモールへとやってきた。

ショッピングモールはとても大きく、スーパーに家電量販店、カフェにデパートなど、とても充実している。高円寺グループのメンツは手慣れた様子でカフェに入り注文を始める。

平日の放課後に来たことがあるのかもしれないな。

 

 

「霧咲君は何にする?」

 

高円寺に尋ねられたので、メニューを見る。なんだか異様に長い名前の飲み物が多く、読むのが面倒だった俺は一番短い名前のものを注文した。

 

「へえ、霧咲君って結構渋いの頼むんだね」

 

朝日が俺の注文に反応する。どうやら俺が頼んだのは渋いものらしい。味がだろうか、見た目がだろうか。

それからしばらくして、飲み物が運ばれてきた。俺は自分が頼んだものを飲んでみる。なるほど、確かに渋いな、味が。高円寺グループの面々は楽しそうに会話を始めた。話題についていけそうにないと悟った俺は静かにストローをすする。

 

「霧咲君は、俺らに聞きたいことないかい?」

「え?」

 

高円寺の唐突な問いに対して、俺は気の抜けた返事をしてしまった。

 

「そうだぜ霧咲クン。俺らもう友達じゃん?何でも聞いてくれよ~」

 

グループの男子が少しオーバーなアクションで言ってくる。なるほど、高円寺の気遣いか。俺も聞きたいことがあったし、ありがたい。

 

「じゃあ一つだけ。ネクストポイントの事なんだけど、俺のスタート値は100ポイントなんだけど、これは多いのか?少ないのか?」

 

そう言って周りの様子をうかがう。このメンツが『NSシステム』をどれくらい理解しているか、それによって答えは変わる。

 

「それは少し低いんじゃね?俺600だったし?」

 

さっきの男子が教えてくれる。

 

「そうだね、私は300だったよ。高円寺君は?」

「俺は1000だったかな」

「えーすごーい!流石高円寺君!」

 

女子たちが騒ぎ立てる。それぞれが自分のネクストポイントを言っては称賛し合っていた。そこからはしばらく高円寺への質問タイムとなり、俺の出した話題はすっかり消え去った。だが、このグループのメンツのスタート値は大体わかった。平均で大体700前後、ここから察するにDクラス全体でも大体は650以上と考えるべきか。

 

カフェを出た後、今度はデパートへ入った。しばらく自由に見て回ろうとの事だったので、俺は釣り道具を見に行った。

 

「あーこれは結構高いな」

 

高くて5、6万、一番安くて売れ筋なものでも15000円はする。これは生徒にとって家からの仕送りがあっても少しきついだろう。ふと、値札を見ると、

『定価15000円 ネクストポイント300で引き換え可能』

と書いてあった。

 

「あ、霧咲君!」

「朝日か、どうかしたか?」

「ううん。たまたま見つけたから。霧咲君って釣りが好きなの?」

「いや、全くの素人だ。でも友人が今日釣りスポットを探してて、今度教えてもらうことになってる」

「へえ、いいね、釣り!」

 

朝日は目を輝かせる。

 

「よかったら、朝日もくるか?」

「え?いいの!」

「とは言ってもまだ竿すら用意できてないからいつになるかわからないけど」

「そういえば雪坂先生に頼まれて物置に行った時、少し古いつりざおがあったような気がするよ?」

 

ほう、それは朗報だ。ここに売っているものよりは性能は遥かに低いだろうが、それでも買わなくていいというのはとても助かる。

ふと、朝日の方を見るとなんだか浮かない顔をしている。

 

「朝日?」

「あ、ごめん。その、さっき変な噂を聞いたから……」

「うわさ?」

「うん。『交換試験』の事なんだけど、毎年Dクラスの生徒に仕掛けてくる人が必ずいるんだって」

 

Dクラスに『交換試験』を挑む?それはおかしな話だ。Dクラスで受けられる恩恵は学園内では一番レベルが低い。それなのにDクラスを希望する生徒がいるってことは……

 

「Dクラスの生徒が仕掛けられた『交換試験』に負けた場合、何らかのペナルティがあるのかもしれないな」

「やっぱり、そうなのかな」

 

朝日もその可能性に気付いていたようだ。だが、現状では何ポイントあれば『交換試験』を受けられるのかわからない。まあそれも、上級生とつながりを持てば明確になるだろうが。

 

 

「現時ポイントでは出来る範囲でネクストポイントを獲得していくしかないだろうな」

「あ!霧咲君!あっちに水槽があるよ!なんか泳いでる」

 

朝日は俺の言葉を最後まで聞かずに別のものに興味を移してしまった。本当に感情の起伏のおおきい奴だな。

 

 

 

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