「───ウオオオオオ!!!」
「───ハァァァァァッ!!!」
飛び交う銃声、響く爆音。溢れかえるのは雄叫び、怒号、悲鳴。
そう。今、ここはまさに戦場。
それも国同士──などという話ではない。
世界と世界の戦争だ。
かたや空を駆ける赤き竜の軍勢。
かたや筋骨隆々たる獣人達。
どちらが押すともなく、戦況はまさに互角の一言であった。
「───ハァッ!!」
その戦場の1箇所で、1人の男が矢を放つ。 その矢は獣人の五十にも渡ろうかという軍勢を一撃で吹き飛ばした。
「………ちっ。まだ立つか。」
先程の一撃で起こった砂煙の中から、獣人達が数人、再び立ち上がる。
男は今度は四方八方に向けて矢を放ち、辺りを吹き飛ばす。
「クソッ……”デルポ=ナイラック”の両側から攻めてくるとは予想外だ……確かアルテミスの方はイシスの軍とぶつかっている……。」
味方の援護に行きたいのは山々といった様子だが、彼はこの赤き竜達の総大将。自分が此処を抜けて皆の士気を下げるわけにはいかない。
「とりあえずここは粗方片付いた……次は中心の戦場を押さえる……!!」
男は単身、戦場の中心へと向かう。
「──クソッ、数が多すぎる!!」
「──段々と包囲されているぞ!!一点突破で抜け穴を作れ!!」
中心の戦場では、竜達が獣人達に押されていた。
竜達は"星竜"という種族のスピリットだ。
「──押し潰せ!!力で我々に勝るものなど居ない!!」
「───敵方は所詮スピリット!!我らアルティメットの力を思い知らせてやれ!!」
かたや獣人達は"獣頭"という種族のアルティメット。
アルティメットは、基本的にはスピリットの上位存在であるが故に、地力で星竜達が押されていた。
この地点を取り仕切っていると思われる一体の竜が叫ぶ。
「持ちこたえろ!!もうじきアポローン神が来る!!それまでは何と替えてもこの場を落とされてはならん!!」
名を『ヘリオスフィア・ドラゴン』。
彼らの神よりこの戦場の中心を任された将の一体。
中心を突破されるということは、本陣への最短ルートを作られてしまうということである。
それゆえ、此処はお互いにとって絶対に負けられない戦場であった。
「ハハハハハ!!我らの勢いを押しとどめるなど不可能!!大人しく砂海の藻屑となるがいい!!」
高笑いする獣人は『ラムセトス二世』といい、ヘリオスフィアと同じく、この中心での指揮を任された者である。
二体は対峙し、攻撃をぶつけ合う。
しかし、先程言ったように、存在はアルティメットの方が上。ヘリオスフィアは少しずつ圧されていた。
ヘリオスフィア「ぐっ……!?」
ラムセトス「ハハハハハハ!!これで!終わ───
ラムセトスが弓をつがえたその瞬間──
彼を含み、その場にいた獣頭達が、爆撃によってほとんど吹き飛んだ。
ヘリオスフィア「!?」
「随分と待たせた……よく持ちこたえてくれた!!」
空からヘリオスフィアより一回り大きい赤い竜が降りてくる。
ヘリオスフィアに労いの一言を投げると、次の瞬間には赤いビームを掃射し、獣頭達を薙ぎ払った──
───はずだったのだが。
「おいおいおい………初っ端から化神でのご登場たァ……随分やる気じゃねぇの。」
掃射によって発生した煙の中から1人の男が歩いてくる。
それを見た赤い竜が指を鳴らすと、自身が炎に包まれた。
「へぇ……一旦解くのか。」
炎の中から出てきたのは、先程別の戦場で獣頭達を圧倒していたあの男。
「俺達が戦う際はそうときまっているだろう。セト。」
セトと呼ばれた鎧の男は、ニヤリと笑うと、戦闘の構えに入る。
セト「そういやそんなんだったっけか?まぁんなこたどぉーでもいい。テメェとやり合うのを今か今かと心待ちにしてたところだ。アポローン。」
アポローン「お前に構っている時間はない。こっちをさっさと終わらせてアルテミスの援護に向かう。」
アポローン。そう呼ばれた男は弓をセトに突き出すと、戦場全体に轟くかのような大声で名乗りを上げる。
アポローン「我が名は創界神アポローン!!!
太陽と星の竜達を統べる神である!!!!」
セトはそれを聞き届けると、勝るとも劣らない声で同じように名乗りを上げた。
セト「我は創界神セト!!!
砂海、そして獣の勇士達の頂点に座する神なり!!!」
セト・アポローン「「いざ尋常に勝負───出でよ、我が化神!!!」」
2人がそう叫ぶとアポローンは先程の赤い竜に、セトは半人半馬の鎧の戦士に姿を変える。
両者の一撃がぶつかり合い、戦場を揺らした。
創界神、文字通り世界を作る神。
彼らは最低でも1つの種族の者達の信仰を集め、自らが作った世界を管理する者である。
セト「こんなものか!!アポローン!!」
アポローン「バカを言うなセト!!まだまだァ!!」
両者の一騎打ちは得物を打ち合うだけで戦場を抉る。
創界神は、自らが神である証の存在、化神を保有する。
先程、両者が変身したのがそれである。
得物がぶつかり合う音が戦場に響き渡る。
その間だけは、周囲で戦っていた両軍の者達全てが、神と神の一騎打ちに魅入っていた。
「───はぁ、今日はこんなもんかしら。」
場所も時間も変わり、ここはとある神社。
『博麗神社』と言えばお分かりだろう。
そして、博麗神社という事は、今掃除をしているのは当代博麗の巫女、”博麗霊夢”その人である。
霊夢「暇ったらありゃしないわ……バトスピが広まってから異変のひとつも起こらない。
皆が退屈せずに平和してる証拠だけど、それはそれでなーんか暇よね……。」
などと愚痴のようなものをこぼす彼女。
1年ほど前、この幻想郷に”バトルスピリッツ”というものが流れて以来、幻想郷の一大ブームとなった。
霊力も何も持たなくてもカードとコアさえあればできることから、それまで行われていた弾幕ごっこに台頭して揉め事などの解決にもバトスピを用いるほど。
霊夢「魔理沙は昨日来たから今日は来ないだろうし……来るとしてもレミリアが勝負ふっかけに来るくらいかしらね……。」
独り言を呟きながら、神社の境内の裏にある物置小屋に箒を戻しに行く。
神社の角を曲がった物置小屋が見える。
そのまま小屋に向かおうとすると───
ガラガラ!!ガッシャァァァァン!!
いきなり物音が。それもかなり大きい。
霊夢「……。」
霊夢の表情が一気に変わる。指を鳴らしながら物置小屋に歩いていき、小屋の戸に手をかける。
霊夢(またチルノ……アイツ今回は洒落ならないくらいいたぶってやろうかしら……。)
心を決めた霊夢は戸を一気に開け放ち、怒鳴り声をあげる。
霊夢「──チルノォッ!!!アンッタ今日という今日は許さ……な……。」
霊夢「……え?」
霊夢の言葉が段々と消えていくのも無理はない───なにせ誰もいないのだから。
霊夢「え……ちょ………なんで……?」
散らかった物をかき分け、誰か埋もれていないか探してみるが、見当たらない。
幽霊かと思い除霊をしてみたが、何かが消えたような気配も感じない。
霊夢が首を傾げていると、足元から聞いたことのない声が聞こえてくる。
「──おーい、そこのアンタ。もしかしてこの小屋みたいな建物の持ち主か?」
霊夢「───は?」
霊夢は質問に答えることもなく、ただ目の前の現象をいまいち理解出来ずにいた。
霊夢は、声がした足元を見た。そこにあったのは──
───宙に浮いたカードだったのだ。