慧音「なるほど……アポローンが霊夢の下に来てまだ1週間も経っていないのか……ちょうど皆が彼らを信仰するようになった時期と概ね重なるな。」
霊夢「そゆこと。当のアポローン本人は何も知らないっぽいし。ねぇ?」
アポローン「あぁ、悪いが俺はここに来た原因も犯人も知らん。幻想郷、などという言葉も初めて聞いたからな。」
霊夢「だそうよ。」
慧音「ふむ……。」
現在、慧音の家にて最近の状況を確認する3人。と言っても、まだ情報が少なすぎるせいでこれといった進展はないようだ。
霊夢「というか、慧音はこの影響受けてないのね。なんでかしら?」
慧音「そういえばそうだな……これでも半妖だし、それが原因じゃないか?妖怪が神を信仰するなんて妙だしな。」
霊夢「アンタ以外にまだ妖怪と会ってないからなんとも言えないけど……まぁ、それは置いときましょうか。」
アポローン「だな。となると次はあの咲夜という女が言っていた事だが……。」
霊夢「『エジットとオリンの戦争の続き』だっけ?」
アポローン「あぁ。事実として俺達創界神はオリン、エジットの2つの勢力に分かれて戦争をしていた。」
慧音「世界を創る神々の戦争など、想像もつかないな……。」
アポローン「あとは……そうだな。ここ最近『ウル』という勢力も浮上してきたが……これは俺達オリンと共闘しているし、勢力も小さいから今は置いておこう。」
アポローン「さて、次に俺達が戦争している理由だ。」
霊夢「……信仰と土地。そうでしょ?」
アポローン「察しがいいな、霊夢。神である以上信仰に力を依存する節はある。戦に勝つことで信仰を集めること、そして敵の創界神の世界を奪うこと。」
アポローン「創界神が戦争を起こす理由は概ねこんなところだ。」
慧音「略奪はあまり快く思えないが……こちらとそちらの価値観の違いも分からない。下手なことは言えないな。」
アポローン「今回の戦争はウルの創界神、『ロロ』がとある理由で創界神の禁忌に触れたのをいいことにエジットがウルに侵攻してきたのが発端だ。俺達はそれに対して、エジットからオリンとウルの世界を守る目的でウルに助力した。」
霊夢「ふぅん………とりあえず、アンタ達の向こうでのことは概ね把握したわ。」
アポローン「ならここからが本題だ。俺の予測では───この世界は俺達の神世界と融合、もしくはそれに近い状態になっていると予想する。」
慧音「融合……?」
アポローンの意見に対して頭に疑問符を浮かべる慧音。
かたや霊夢はすぐさま聞き返す。
霊夢「なんで融合なのよ。」
アポローン「この人里を見る限り、大抵の者がオリンかエジット、どちらかを信仰しているのは予想がつく。」
慧音「だから、世界同士が融合して信仰が染みのように広がっている、ということか?」
アポローン「そうなるな。」
霊夢「……その考えに自信はある?」
アポローン「3割ほどだが。」
霊夢「情報が少ない今じゃそんなもんか……とりあえず、咲夜が言ってた守矢神社に行きましょうか。」
慧音「え、今からか?」
霊夢「もちろん。動くなら早い方がいいでしょ。」
慧音「そうか……分かった。私の方でもできる限り調べてみるよ。何か分かったらまたここか博麗神社で情報共有としよう。」
霊夢「了解。じゃあアポローン、早速行くわよ。」
アポローン「分かった。慧音、世話になったな。」
2人はそう言うと、慧音の家を出て、守矢神社の方に飛んでいった。
天狗達が住まう、幻想郷で最も高い山。妖怪の山。
守矢神社はその山頂にある。
その守矢神社の風祝、私こと東風谷早苗は日課となっている神社の境内の掃除をしている。
早苗「……ふぅ。今日はこのくらいでいいでしょう。」
今日は昨日よりも落ち葉などが少なかったので手早く終わった。結構広いのでこういう日はありがたい。
境内をもう一度見回した後、神社に戻ろうと振り返────
────ろうとした矢先、後ろから頭をべチッと軽く叩かれた。
早苗「あぅっ。」
痛くはないが突然のことなので一瞬怯む。
今度こそ振り返ると、頭上に1枚のカードが浮かんでいた。
「わりぃわりぃ。勢い余ってぶつかっちまったぜ。」
早苗「目で負えない速度に針を縫うような正確さで森の中を飛んで回る人がよく言いますね……。」
じとーっと睨むと、そのカードは笑いながら謝る。
「ははっ、わりぃわりぃ。まぁ気にすんなって。」
早苗「貴方が言う台詞じゃありませんよね、ヘルくん。」
ヘルくん。私が彼をそう呼ぶと、彼は少し不機嫌そうに返した。
ヘル?「なぁ早苗……その呼び方どうにか出来ないか?ヘルとかそれ地獄じゃん。オレは『ヘルメス』だってぇの。」
早苗「私、頭を叩いてくるような人の名前は覚えづらいんですよねー。」
ヘルメス「むむ……ん?」
ヘルメスが急に高度を少し上げる。
それを見て私も後ろの空を見た。
霊夢「……どうやら咲夜の言ったのはホントだったっぽいわね。」
「だな。あの緑のお嬢さんと居るのは……ヘルメスか。」
霊夢さんがふよふよ浮かぶカードと一緒に降りてくる。
ヘルくんと同じような感じがするので彼もひょっとして……?
そんなことを考えていると
ヘルメス「アポローンじゃねぇかーーーーッ!!」
ヘルくんがいきなり霊夢のカードに突進、突進されたカードは、吹き飛ばされることなく受け止めた。
アポローン「ええいっ、出会い頭にいきなり突進してくるなヘルメス!!危なっかしい!!」
どうやらお知り合いのようで。
私がきょとんとしていると、霊夢さんが寄ってくる。
霊夢「咲夜に聞いたのよ。アンタのとこに創界神がいるって。」
早苗「!!…ってことはあのカードは……。」
霊夢「アポローン、オリンの創界神らしいわ。あの緑のヤツは?」
早苗「ヘルメスって言います。彼もオリンの人らしいですね。」
早苗「……って、いやいやいや!?なにサラッと紹介してるんですか!!霊夢さんも創界神と一緒に居たんですか!?」
霊夢「まぁね。知ってるでしょうけど、人里の様子がおかしくなってるから、ここに来たのはそれの捜査よ。」
早苗「な、なるほど……。」
アポローン「俺達を置いて話を進めないでもらおうか……。」
ヘルメス「そーそー!!オレら居ないと始まんないだろ?」
アポローン「脱線させたのはお前だろう。」
ヘルメス「えー。」
霊夢「……で、ヘルメスだっけ?」
ヘルメス「おう、そうだぜ。あんたは?」
霊夢「博麗霊夢よ。とりあえず今はアポローンと一緒に居るわ。
アポローン、この緑のは早苗。まぁ私と同じ巫女みたいなもんよ。」
いきなり私の紹介を始めて驚いたが、まずは自分で名乗らねばなるまい。
早苗「東風谷早苗です。ヘルメスさんのお世話をしてます。」
ヘルメス「あれ、そこは普通『世話になってる』じゃ」
アポローン「そうか、この能天気の世話は大変だろう。」
早苗「まぁ、それなりに……ところで、やはり人里の件ですか?」
アポローン「あぁ。咲夜という者からここに創界神が1人いると聞いてな。これで孤立無援の心配はなくなった訳だ。」
早苗「ホントですよ……ヘルくんの仲間が居て良かったです……。」
霊夢「まぁそういう確認も含めて、情報交換しに来たのよ。諏訪子と神奈子は?」
ヘルメス「2人なら寝てたぜ。」
霊夢「なら放置でいいわね。じゃあまず私たちの方だけど───」
──小一時間ほどか。四人は互いの近況を報告しあったものの、出てきたの情報は似たようなものばかりでこちらも特に進展があったとは言えないだろう。
霊夢「ここまで何も無いとだるくなってくるわね……。」
アポローン「こればかりは根気強くいくしかあるまい。何も早く解決せねばどうというものでもないしな。」
ヘルメス「ま、気楽にだな。で、どうする?まだ話すことあるか?」
早苗「流石にあるとは思えないですね……。」
霊夢「なら今日はもう帰ろうかしらね……何かあったらまた共有しましょ。あと慧音も私達に協力してくれるらしいから、アイツのとこにも顔出しときさいよ。」
早苗「わかりました。道中お気をつけて。」
早苗の言葉に霊夢は背を向けたまま手を振ると、アポローンと共に博麗神社に向けて飛び立っていった。
早苗「……ふぅ。」
ヘルメス「どした?」
早苗「いや、霊夢さんが敵じゃなくて良かったなぁ、と。」
ヘルメス「そんな強いのか?アイツ。」
早苗「それもそうですけど、何かと頼りになる人なんですよ。霊夢さんは。」
ヘルメス「へぇ……じゃ、オレらもアイツらの足引っ張らないように、気合入れてこうぜ。」
早苗「はいっ!!」
巫女二人。神二人。
この先何を見ることになるか。
咲夜「───ただいま戻りました。」
「おかえりなさい、咲夜。そしてお疲れ様。」
霊夢が早苗達と会うのとほぼ同刻、咲夜は紅魔館に戻っていた。
咲夜は書斎の椅子に腰掛ける吸血鬼、そして自らの主である少女──レミリア・スカーレットと向き合う。
レミリア「どうだったかしら咲夜。あの二人は。」
咲夜「……率直に申しますと、大変強力です。霊夢は、創界神を初めて使うにも関わらず、十分に使いこなしていました。」
レミリア「ふぅん……流石は霊夢と言ったところかしら。まぁ───
──私達の敵ではないわ。」
不敵に笑う吸血鬼。その風格はまさしく支配者のそれである。長年共にいる咲夜ですら、その笑みの前には鳥肌が立つ。
「──それはどうかな。相手の力を侮ったものに勝利はないぞ」
もうひとつ聞こえる声、今度は男の声だ。
気づけば、レミリアの横に1枚のカードが浮かんでいた。
レミリア「……それは、私たちが負けるということ?」
「油断をするなということだ。オリンの神は強力無比。我らがいくら強いとしても、最大限の敬意と警戒をもって相手をしなければ、喰われるのはこちらになるぞ。」
レミリア「なに、そのような事は百も承知よ。相手の実力を問わず、吸血鬼は容赦というものを知らないわ。」
「──フン。であればよいのだ。我と共に戦う以上、無様な敗北だけは許さぬぞ。」
レミリア「言われなくても……さて、咲夜。」
咲夜「はい。お嬢様。」
レミリア「今日はもう休んでいいわよ。本当にご苦労さま。」
咲夜「……承知しました。では、私はこれにて。」
咲夜はそう言うと、次の瞬間にはその場所から消えていた。
「十八番の時止めか。人の身で面白い異能を持つ。」
レミリア「自慢の従者よ……さて、此度の異変、果たして月は紅いのかしら。」
霊夢「………あー……。」
アポローン「ん?どうした?」
場所は変わり博麗神社に向かう階段。
それを登っている最中、霊夢は突然声を上げた。
霊夢「……買い出し結局やってない……。」
アポローン「……あぁ、なるほどな。」
霊夢「仕方ない……今日はご飯とお味噌汁だけね……。」
ため息をつきながら階段を上がる。
霊夢はそこで、ここ最近賽銭箱の貯まりがいいことを思い出し、少し気分が上向いた。
霊夢とアポローンは階段を登り切る。(ただしアポローンは浮いているが。)
鳥居の下で霊夢が伸びをした。
霊夢「さーて、まずは賽銭箱の中身をチェッ──
「おかえりなさい、霊夢。やはり探さずにここで待っていて正解でしたね。」
────ん?あ、アンタ………。」
霊夢は驚いて目を見開く。
目の前の人物は、笑顔で霊夢に挨拶を送った。
「────お久しぶりですね。霊夢。」