東方信奪郷   作:子アオ

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第6話『彼女の目的─その3─』

───豊姫が行方をくらまして2週間後。

 

都中で捜査が行われたにも関わらず、豊姫の行方は依然として不明である。

 

そんな日の朝、依姫は訓練場で1人素振りをしていた。

 

アルテミス「いたいた。こんなとこにいたのね。」

 

依姫「おはようございます、アルテミス。」

 

アルテミス「おはよ。調子どう?」

 

依姫「もうおおよそ全快ですね。特に痛みもありません。」

 

依姫は素振りをやめ、アルテミスの方に歩いてくる。

 

アルテミス「にしても、バトルで負った痛みの完治にホントに2週間もかかるなんてね……彼女はどんな細工をしたのやら……。」

 

アルテミスがため息をついて言う。

依姫は少し黙ったあと、アルテミスにある事を告げた。

 

依姫「……アルテミス。少しお話があります。」

 

アルテミス「ん?なになに?」

 

依姫「……1度、地上に降りようと思います。」

 

アルテミス「は!?」

 

アルテミスが驚くのも無理はない。

生命(けがれ)が蔓延する地上に降りるのは、月の都においては当然ながら勧められたものではなく、ましてやアルテミスと居る依姫は事実上のトップ。

トップが暗に禁じられた事をするなど、本来ならば言語道断である。

 

アルテミス「いやいやいや!?依姫がそれやるのって1番ダメなやつじゃない!!」

 

依姫「確かに、現状は貴方のパートナーということで事実上のトップです。おいそれと動くわけには行きません。」

 

アルテミス「なら「でも。」

 

依姫「私には、お姉様を放っておくことなどできませんし、仮にそうでなくても、この一件はお姉様を見つけてば何もわかりません。」

 

依姫「私達姉妹のために、貴方のために、そして月の都のためにも、地上に向かう必要があると思うのです。」

 

アルテミス「………。」

 

依姫「……。」

 

アルテミス「……はぁ。そこまで言われたら仕方ないわね。旅は道連れ、私も付き合ってやろうじゃない!!」

 

依姫「……ありがとうございます。」

 

アルテミス「……で、地上にはどうやって行くの?」

 

依姫「あぁ、それでしたらお姉様が………あ。」

 

アルテミス「……もしかして。」

 

依姫「……そうでした……お姉様が居ないと地上に行けないんでした……。」

 

あはは、と苦笑いする依姫。

アルテミスはえ、どうすんのよそれ、といった様子で依姫を見る。

 

依姫「どうしましょう……まさかこんな壁にぶつかるとは……。」

 

アルテミス「……依姫って神様の力借りれるんでしょ?移動系の能力がある奴居ないの?」

 

依姫「いやぁ……なにせ星と星を移動しますから、そこまでの距離を飛べるかどうか……。」

 

アルテミス「そっかー……じゃあダメね……軽く世界移動みたいなも……ん………あ。」

 

依姫「どうしました?」

 

アルテミス「……ねぇ、よっちゃん。」

 

依姫「なんですかその呼び方……「こっちの方が可愛いかなって」いやどういうことですか。」

 

アルテミス「まぁそれはいいとして……神の力って契約した奴のなら使えるのよね?」

 

依姫「まぁ……はい。」

 

アルテミス「なら私と契約しましょ♪」

 

依姫は一瞬アルテミスが何を言っているのか分からず、きょとんとする。

 

依姫「……唐突ですね。」

 

アルテミス「私達創界神ってのは世界を渡る能力があるのよ。それがないと他の創界神と会えないしね。」

 

依姫「それがどう……あ!なるほど!!」

 

アルテミス「そう!私の力を使って移動すればいいのよ!!今の私はカードだからできないけど、私の力を使えるよっちゃんならできそうじゃない?」

 

依姫「た、確かに……その考えは思いつきませんでした。」

 

アルテミス「じゃ、そうと決まったらレイセンに報告してさっさと行くわよ!!」

 

依姫「もうですか!?流石に気が早いですよ!?」

 

アルテミスは善は急げと言わんばかりに兎たちが普段生活している建物の方に飛んでいく。

依姫も慌てながらそれを追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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依姫「──それで、サグメ様とレイセンに私達が不在の間のことをお願いして、この地上に降りてきたのです。」

 

 

霊夢「………。」

 

霊夢は依姫の話を終始表情を変えることなく聞いていた。

依姫が話終わると、霊夢は頭をかきながら口を開いた。

 

霊夢「正直、最初はどんな面倒事かと思ったけど……。」

 

依姫「……。」

 

霊夢「そういうことなら、私も喜んで協力するわ。」

 

依姫「!……ありがとう…ございます…!」

 

霊夢「いいのいいの。それに、私も今回の異変と豊姫の行動を無関係とは思わないしね。」

 

アポローン「それにしても、そちらで依姫の姉だけが異変の影響を受けずにいた事が気になるな……まさか彼女も創界神と接触したのか?」

 

アルテミス「私がいるじゃない。」

 

アポローン「お前以外の、だ。」

 

霊夢「その可能性は有り得るわね……でも、戦った時には出てこなかったんでしょう?」

 

依姫「はい……ジークヴルムノヴァを中心とした星竜達を使ってきたのみでした……。」

 

アルテミス「星竜ならアンタだし……単独で動いてると見ていいかしら?」

 

アポローン「単独で動いているとすれば、あまりにも行動が大胆すぎる。我々でさえ情報不足でまともに方針も決まっていないんだぞ。」

 

霊夢「……答えの出ないことを議論しも仕方ないわね。それは豊姫を探し出して直接聞けばいいわ。」

 

アポローン「だが、依姫の姉を探す事だけに時間を割くわけにもいかないだろう。」

 

霊夢「あー……確かにそうね。依姫、アルテミス。悪いんだけど、豊姫を探すついでに、今回の異変解決の手伝いをお願いしてもいいかしら?今んとこ人手不足で……。」

 

依姫「もちろん協力させていただきます。」

 

アルテミス「その2つ、どこかで絶対つながるでしょうしね。」

 

霊夢「助かるわ……さて、もう日が沈んでるし、今日のところは休みましょう。明日になったらもう1人の創界神のとこに行くわよ。報告とかも兼ねてね。」

 

依姫「わかりました。」

 

アルテミス「そうね……もうねっむぃ……。」

 

霊夢「じゃ、早速準備しますか。2つ目の布団、ホコリ被ってたりしないわよね……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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──ほぼ同刻、紅魔館の一室。

 

レミリア「………。」

 

窓から月を眺めながら紅茶を飲むレミリアと、その後ろに控える咲夜の姿が。

 

レミリア「……そういえば。」

 

咲夜「……どうされました?」

 

レミリア「……『あの二人』はどこにいるのかしら?」

 

咲夜「あの2人……パチュリー様と小悪魔でしょうか?それならば図書室に「そっちの方じゃないわよ。あの脳筋2人のこと。」……あぁ、あの二人ですね。」

 

レミリア「異変の間は此処を拠点にするように言ったのだけれど……どこをほっつき歩いて、いや、飛んでいるのかしら。」

 

咲夜「……私には分かりかねる事ですわ。ですが、このような時間まで戻らないとなると、確かに不審に「心配してくれんのか?嬉しいねぇ。」……お嬢様。」

 

咲夜の言葉を遮って、少女の声が空気を叩いた。

 

レミリア「えぇ。……全く、どこに行っていたのかしら。」

 

「わりぃわりぃ。2人でフライングしてたところだ。」

 

レミリア「意味合いが変わるようにも思えるけれど……まぁいいわ。今日の昼頃、相手の創界神の一人であるアポローンがこちらに来たのを確認したわ。契約者は霊夢よ。」

 

すると今度は男の声が聞こえてくる。

 

「アポローン……アイツも来たか。こりゃあ楽しみだ……!!」

 

「霊夢も創界神と……ハハッ、今回の異変乗って正解だったな。」

 

2人が反応する人物は互いに違えど、霊夢とアポローンの2人と戦うことに相当の闘志を燃やしているようだった。

 

「にしても、エジット陣営が勝ったら幻想郷を統合するってのはマジなのか?」

 

レミリア「もちろん。私と貴方とソイツと彼。4人でしっかりと決めたじゃない。」

 

「まぁ普通に暮らしてりゃこんな事はないだろうからな。信じらんねぇのも仕方ねぇ。」

 

楽しげに話す男の声。

それに対して少女も楽しげに返す。

 

「ま、そしたら私とお前で色んな強いヤツと戦えるから、それでいいぜ。今から楽しみだ。」

 

レミリア「貴方のその楽しみを実現するためにも、今回はしっかりと協力してもらう。勝手なことはしないで欲しいわ。」

 

「はははっ、分かってるよ。頼りにしてるぜ?レミリア。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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──某時刻、某所にて。

月明かりに照らされた木々の中を歩く1つの影。

 

豊姫「………。」

 

豊姫は周囲を見回す。何かがいるような気配はない。

 

豊姫「………。」

 

豊姫は周囲に何もいないであろうことを確認すると、歩を進める。

 

──そして、暗い森の奥へと、姿を消した。

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