もう深夜になろうという時間帯に9歳児と中学生数人が歩く姿は目立ってしょうがない。この暗闇だから普通の人は誰が歩いているのか判断出来ないかもしれないが、俺は目がいい。木乃香、ネギ君、明日菜、それと知らない子が6人。向かっているのは、図書館島と呼ばれる場所か。
茶々丸から軽く説明を受けた程度だが、貴重な書物が眠る図書館らしい。特徴的なのは地下へと増設された構造で、まるでダンジョンのようになっており、それを探検する図書館探検部なる部活まであるほどだとか。
学生が図書館に向かう理由は勉強か、読書感想文の本を借りに行くというのが定番どころだろうな。この時期だから勉強なんだろうけれど、何故深夜なんだ? ネギ君が教師だから夜くらいしか空いている時間がないのだろうか?
「……よし」
着いていこう。見ていてなんか不安だ。そうと決まったならエヴァに連絡ぐらいはしておかないとな。確かこのパクティオーカードを頭に当てれば念話が出来るんだったか。初めてだから少しワクワクする。
『エヴァ、聞こえるか?』
『士郎? 貴様がこの機能を使うとは珍しいな』
『珍しいというか初めてだけどな。今ネギ君と生徒数人が図書館島に向かうのを偶然見つけてな。あの子達だけだと見ていて不安になるから追い掛けるよ』
『ふむ……誰がいる?』
明日菜と木乃香は名前を伝えて、他の知らない子は外見的特徴を伝えていく。するとエヴァは何かに納得したようにポツリと呟いた。
『あぁ、バカレンジャーか』
ば、バカレンジャー? なんだその絶対になりたくない戦隊名は。決して立派な称号ではないのは間違いない。
『2ーAが誇る成績下位5人の総称だ。近衛木乃香、宮崎のどか、早乙女ハルナは別だぞ。そいつらは確か図書館探検部だった筈だ』
のどかって子とハルナって子がどの子か分からないが、その2人と木乃香の成績は並かそれ以上みたいだな。
『しかしそんな不名誉な総称を誇っちゃ駄目だろ。でもこれで分かったな。徹夜で勉強会ってわけだ。効率的に褒められた事じゃないけれど、その気持ちは本物か』
『いや恐らく違うぞ。実は今こんな噂が流れている』
エヴァの言った噂はどれも眉唾物というか、有り得ないものばかりだった。成績が悪いと小学生からやり直しをさせられる、クラス成績が最下位だとネギ君がクビになる、図書館島の最奥部には頭の良くなる魔法の本がある。
頭が痛い……小学生からやり直し? 留年はあるが、前の学年に戻ったりするなど有り得ない。成績で先生がクビ? スポーツの監督じゃあるまいし有り得ない。魔法の本? そんなものに頼らず勉強しろ。
『あのメンバーは魔法の本を求めて図書館島に潜るわけだ……楽して頭が良くなる筈がないだろう』
『所詮はガキの考えだ。坊やも言いくるめられたのだろうさ』
『なんかもっと不安になってきた。やっぱり追うよ』
『お人好しめ。好きにしろ』
ああ、好きにさせてもらおう。ふむ、2人を残して残りは図書館島に入っていったな。魔法の本を狙うのが成績下位のバカレンジャーだとすると、残ったのが宮崎のどかと早乙女ハルナか。
「おい! そこの2人、こんな時間に何している!?」
「やばっ! のどか、逃げるわよ!」
「えっえっ、で、でも、みんなが」
「逃げ切ってから迎えに来れば大丈夫よ!」
どうやら見張り番というわけでもなく、警備員のように少し怒鳴ったらあっさりと逃げてくれた。これで遠慮なく図書館島へ入れるな。
「これは圧巻だな……」
本棚の森とでも言おうか。無数に広がった巨大な本棚はまさにダンジョンと呼ぶに相応しい。一旦その本棚の頂上へと登り、辺りを見渡す。すぐにネギ君達の姿は見つかった。ある程度距離を置きながら追跡しよう。
うわ、ネギ君が不用心に本を触ったら矢が飛んできたぞ。トラップまであると本当にダンジョンだな。しかしあの糸目の子、あれを素手で掴むとは大したもんだ。これは俺もネギ君の二の舞にならないように周囲を解析しながら進もう。
ここは本当に図書館なのだろうか。そして彼女らは中学生なのだろうか。中国人らしき少女の中国拳法は既に一流の域。糸目の少女の反射速度は人のものとは思えない。明日菜は明日菜で身体能力が異常に高いし、体操のリボンを持った少女はそのリボンで落下を防ぐというとんでも技能を見せてみせた。解析したが普通のリボンだった。普通なのは木乃香と小柄な少女くらいなものだ。
そしてここまできてある違和感に気が付いた。ネギ君の魔力が明らかに少ない。彼の魔力はもっと溢れるほどあった筈。何かで魔力を大量に消費したのだろうか?
一行はどうやら目的地の最奥部まで到着したらしい。ネギ君が石像の持つ本を見てメルキセデクの書だと興奮していたが、その石像が動き出す。
『ふぉふぉふぉー、これが欲しくばワシの質問に答えるのじゃ』
何やってんだこのジジイ、ではなく学園長。英単語TWISTERなるゲームで楽しく英単語を覚えようってか? 馬鹿なのか? あっ、ラストで踏み間違えた。
『間違えたのぉ。地下でお勉強じゃー!!』
ハンマーを持った石像が地面を叩く。当然のように巨大な穴が開き、皆が落下して、って本当に何やってんだこのジジイ!!!
「学園長! あんた何やってんだ!! 生徒を怪我させるつもりか!?」
『衛宮君来ておったのか。安心せい、絶対に怪我せんように魔法が施してある』
「だからってこんな乱暴な事を……」
自分の孫も一緒に落ちているというのにこの落ち着きよう。どこかで監視していて無事なのは確認済みか。
『楽してテストの点数を上げようとしたお仕置きじゃよ。地下では各種テキストや筆記具は勿論、寝床やキッチンも完備しておる。ちと無理矢理じゃがしっかり勉強してもらうつもりじゃ』
「それを否定するつもりはありませんよ。勉強は学生の本分の1つですからね。なのでその手伝いを俺もしてきます。料理を木乃香に任せたら木乃香の勉強の時間が減るでしょう。刹那への説明はしっかりして下さいよ。あいつ木乃香が消えて心配するでしょうから」
穴へと飛び込む。その時上から学園長の声が聞こえてきた。
『あっ! 衛宮くーん! エヴァへの説明は君から頼むぞー!!』
……やべ、どう説明しよう。
次回、士郎が全力で包丁を振るう?