「……よし」
顔を洗い鏡を見る。体調は万全。今日は衛宮さんにお手合わせして頂く日だ。夕凪を背負って森に向かう。
衛宮さんの強さは底知れない。本人は才能がないと卑下するものの、あそこまで辿り着く努力、それを行えるのも才能だと私は考えている。同じ剣士として尊敬に値する方だ。
いつも通りのお手合わせと思っていたのだが、気配が1つ多い。衛宮さん以外に誰かいるらしい。エヴァンジェリンさんだろうか。
「お待たせしました。あっ、茶々丸さんでしたか」
「こんにちは刹那さん」
「今日は茶々丸が性能テストをしたいらしいから、一緒に参加してもいいか?」
「はい、私は大丈夫です」
茶々丸さんとは仕事を共にする事はあれど共闘する事はない。しかし戦闘スタイルは私もあちらも知っている。邪魔になる事はない筈。
「参ります」
まずは茶々丸さんが飛び出し、それに追従する。茶々丸さんは乱打からのレーザー。私はその隙を埋めるように斬撃を放つ。衛宮さんはそれを双剣で全て防ぎきった。このくらいはやられて当然。追撃をする。
「斬空閃 弐の太刀!!」
放った気の斬撃は茶々丸さんをすり抜け衛宮さんを襲う。しかし初見である筈のその奇襲も双剣に切り落とされた。再度茶々丸さんがレーザーを放とうとしたが、足払いをされ狙いが外れる。倒れる茶々丸さんの背後から突きを放つも弾き飛ばされる。普段も防御は固いが、今はそれ以上だ。
「……楓、見てないで参加するか?」
「ニンニン、バレていたのでござるか」
「楓? 何故こんな場所に?」
「士郎殿を山籠りに誘いに来たのでござるが、なかなか面白そうな催し物をしているようなので見学していたのでござるよ。しかし途中参加可能なら、全力でやらせて頂こう!!」
分身をする楓。その数は6体。これで単純な数では9対1。並の敵ならば余裕で葬れる。衛宮さんでも多少は手こずる、そう考えていた。
ここで初めて衛宮さんが攻勢に移る。双剣をブーメランのように投げたのだが、目を見張るのはその速度。まるで銃弾。双剣は一瞬にして楓の分身達を切り裂くと再び衛宮さんの手に戻る。分身は実物となんら変わらないというのに、一瞬で分身だけを見抜いたのか。
「あ、はは……笑ってしまうでござる」
「分身の術なんてまさしく忍者って感じだな。麻帆良の人々には驚かされてばかりだ」
「それはこちらの台詞です。衛宮さんはどれだけ強いのですか」
「力がないとやっていけなかったからな」
話の途中、不意打ちで楓のクナイと茶々丸さんのロケットパンチが飛ぶが、それも打ち落とされる。チマチマとやっていても駄目だ。
「衛宮さん、全力の一撃を決めさせてもらいます」
「ほう、ならば拙者は援護するでござる」
「お手伝い致します」
夕凪が帯電する。士郎さんはそれを見て双剣を消した。あの双剣がどこからか自在に出し入れしているのは知っているが、何故このタイミングで?
「フッ!!」
ジェット噴射で一気に走り出す茶々丸さんに対し、衛宮さんはどこからかあの双剣とは違う剣を取り出す。十字架のような剣。それを茶々丸さんへと投げ付けた。当然茶々丸さんはそれを避ける。だが避けた先には2本目の剣。弾こうと剣に触れた瞬間、茶々丸さんの方が吹き飛ばされた。
「受け取るでござる、よっ!!」
「
楓は分身で衛宮さんを取り囲み、本体は巨大な風魔手裏剣を投げ付けた。ここで衛宮さんが呪文を唱える。両手には再びあの双剣。
「オーバーエッジ」
「なんとぉ!?」
双剣は砕けるような音を立てながら姿を変える。さながらそれは白と黒の巨大な翼。回転するように振るわれたそれは分身を、そして風魔手裏剣を砕いた。あれに内包されている力は私がこれまで見た様々な武器の中でも最上位に位置する。
「神鳴流奥義! 極大 雷鳴剣!!!」
落雷のような電撃を放つ斬撃を一撃必殺のつもりで放った。普通は人に使うようなものではないが、どこかで感じていた。この人はこの程度では死なないと。
案の定、黒の翼に電撃を欠き消され、白の翼で夕凪を弾き飛ばされた。
「ふぅ……みんな本当に強いな」
純粋な称賛の筈なのに、とてもではないが喜べなかった。
衛宮さんと茶々丸さんはエヴァンジェリンさんからの呼び出しがあったという事で帰っていった。私も楓と寮へと帰る。
「士郎殿は強い……理解していた以上に強かったでござる」
「そうだな。あれほど強い方にお手合わせして頂けるだけ幸せだ」
「何故あれほど強いのでござろうな。力がないとやっていけなかった、士郎殿はそう言っていたが……」
目的もなくあんなに強くはならないと私は考える。衛宮さんは何を目指しているのだろうか。それを知れば、私もお嬢様を確実に守れるくらい強くなれるのだろうか。
次からは桜通りの吸血鬼編スタートです