エヴァから大切な話があると言われた。真剣な顔をしているものだからこちらも何を言われてもいいよう覚悟をしていたつもりだが、それでも顔が強張ってしまうような話だった。
「明日から3ーAの生徒を吸血する」
「っ!? …………どうしてだ?」
「冷静だな。宝具の1つや2つ投影してくると思ったが」
「エヴァは理由もなくそんな事をするやつじゃない。何かあるんだろ?」
「私の登校地獄については聞いているか?」
「詳しい事までは分からないが、もう15年くらい中等部に通っているんだろ?」
「そうだ。そしてその呪いを掛けたのがナギ・スプリングフィールドという男だ」
ナギ・スプリングフィールド……スプリングフィールド? それって確かネギ君と同じ苗字。
「ネギ君の血縁者か」
「正確には父親だ。以前ある大戦があってな。そこで活躍した英雄であり、マギステル・マギだ。千の呪文の男(サウザンド・マスター)とも呼ばれている。そいつは3年経ったら迎えに来るという約束を破り、10年前に死におった」
「なら、そのナギって人のツケをネギ君に払わせるつもりなのか……」
「本人がいない以上、息子に責任を取ってもらうしかない」
賛成出来る事ではない。エヴァの気持ちだって分からなくはないが、呪いを解呪するだけなら俺がやってやる。
「エヴァ、登校地獄は俺が」
「士郎。お前の考えは分かるし、その気持ちは嬉しい。だがこれは私とナギや坊やの問題以前にこの世界の問題だ。別世界から来た貴様が首を突っ込んでくれるな」
ああ、確かにその通りだ。俺がいなければこんな話をわざわざ誰かにする必要もなかっただろう。でも今は俺もこの世界の住民だ。首を突っ込んだっていい筈だ。
「それに吸血と言っても貧血になる程度だし、多少は操る事もあるかもしれないが、そちらの死徒、だったか? それのように血を吸った相手が吸血鬼になる事もない。坊やだってそうだ。呪いを解くには坊やの血が大量に必要となるが殺すつもりなど毛頭ない」
「……生徒から吸血する必要性はなんだ? 魔力だけなら俺の血でいい筈だ」
「坊やを引きずり出す為だ。いくら魔力が私より多くても戦闘においては私が一枚も二枚も上手。そんな相手に坊やが向かってくるか?」
無理だろうな。ネギ君は所詮は子供。600年生きたエヴァとの経験値は歴然。経験の差っていうのは様々な戦況をひっくり返す事が出来る。
「その為に生徒から吸血をすると」
「一種の脅しだ。手段を選ぶつもりはないぞ。なんたって私は悪だ。それに待ちに待ったチャンスだからな。邪魔をしてくれるなよ」
「それは約束出来ないな」
「ならば契約だ。私は先程言った生徒からの過度な吸血はせず、坊やも必ず生かす。恐らくは坊やとも戦闘になるだろうが、万が一敗北するような事があれば呪いはきっぱりと諦めてやろう」
……諦めるか。ここまで覚悟があるのを邪魔する訳にもいかないか。人が傷付くのを見過ごすってのは気持ち悪いが、エヴァはずっとこの機会を待ち続けた。それは考慮しなければならない。もしここを逃せばエヴァはこの学園に通い続ける。その苦痛ははかり知れたものじゃない。
「分かった。邪魔はしない。中立の立場にいるとする」
「ああ、それで十分「それと」むっ?」
「万が一が起こってネギ君が勝ったなら、俺が呪いを解く。エヴァの我が儘を聞いてやるんだ。俺だって我が儘を言ってもいいだろ」
「……好きにしろ。お人好しめ」
「あっ、でも呪いが解けても学園に通えよ」
「はぁっ!? 何故あんなところに」
「修学旅行とか、夏休みとか、遠足とかあるだろ。最後の1年くらい他の生徒と同じ条件で学校生活楽しんでみろよ」
「……とんだ契約を結んでしまったな」
そう言いながらもエヴァの口元は緩んでいた。これまで強制的に送らされていた学校生活を次は彼女の意思で過ごすんだ。きっとそれはエヴァが体験した事のない楽しいものになるだろう。そうなったら俺も全力でサポートさせてもらう。
勝っても負けてもエヴァは自由にさせてやる。だって個人的に好きなんだもん。