新年度になってから桜通りの吸血鬼という噂が流れ始めた。実際に3ーAの生徒には被害も出ていた。エヴァンジェリンの仕業とは知らないネギは夜の見回りを行う事とした。
エヴァンジェリンはネギの動向を察知し、見回りに合わせて夜道を歩く獲物を探す。偶然見つけたのは宮崎のどか。そして近くにはネギの魔力も感じる。都合がいいとエヴァンジェリンは口角を上げた。
一方士郎は……
「むっ、出汁が旨い。腕を上げたな茶々丸」
「恐縮です」
料理に勤しんでいた。
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宮崎のどかを襲い、上手く悲鳴もあげてくれたので坊やも気が付いてくれた。今は逃げるようにして誘い込んでいるが、存外飛行速度が速い。予定よりも早く追い付かれそうだ。
『茶々丸、そろそろ坊やの相手をする。来い』
『畏まりましたマスター』
「そこです! 風花! 武装解除!」
おっと、少し気を抜いてしまっていたな。折角のマントがコウモリに変えられ飛ばされてしまった。一先ず屋根に着地するか。
「あ、貴方は僕のクラスのエヴァンジェリンさん!? な、なんで魔法使いなのにこんな事をするんですか!? みんな怖がっていますよ!!」
「必要経費さ。先生、世の中には善い魔法使いばかりじゃない。悪い魔法使いだっているのさ。そんなのに言う事を聞かせたいなら力を見せるがいい。私が認めたなら何でも話してやるさ。この事件の事も、サウザンド・マスターの事でもな」
ナギの事を出した瞬間に目に見えて動揺したな。やはりガキだな。今の隙に倒す事も出来たが、もっとじっくりといたぶってやろう。
「ど、どうしてお父さんの事を知っているんですか!?」
「さっきも言っただろう。私が認めたなら話してやるとな! リク・ラク・ラ・ラック・ライラック、氷の精霊7頭、集い来たりて敵を切り裂け! 魔法の射手・氷の7矢!!」
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル!! 光の精霊7柱! 集い来たりて敵を射て! 魔法の射手・光の7矢!!」
私の放った魔法の射手が尽く相殺され、更には1矢だけだが相殺されずに私の真横を通過した。反応速度、詠唱速度、そして威力。どれも歳の割には申し分ない。流石はあれの息子か。しかし1人では限界もあろう。
「よし、押しきれる!」
「それはどうかな」
「? どういう、ギニャ!?」
妙な悲鳴をあげて転がる坊や。やってきた茶々丸に突き飛ばされたのだ。
「うぐぐ、貴方は……」
「紹介しよう。私の従者、絡繰茶々丸だ……何故エプロン姿なんだ?」
「先程まで料理をしていましたので。本日は山菜の天麩羅うどんになります」
ほう、いいな山菜の天麩羅。和食は好きだ。特に士郎の和食は旨い。たまらん。っとと、思考が脱線してしまったな。
「さあ1人でどうする坊や?」
「従者がいなくたって、ラス・テル・マ、いたぁ!?」
詠唱を茶々丸のデコピンによって止められてしまう坊やの姿は何とも情けない。ま、これで終わりだ。血を吸わせてもらおう。いやしかし実に呆気なかっ「うちの居候になにしてんのよ!!」た?
「へぶっ!?」
け、蹴られた!? 障壁がこうも安易に破られるなどあり得ん!! 神楽坂明日菜め。何をしたというのだ。
「あ、あんたらうちのクラスの……寄って集って子供をいじめて楽しいわけ!?」
「興が削げた。帰るぞ」
「失礼します。ネギ先生、神楽坂明日菜さん」
「ま、待って下さい! 勝負はまだ」
「勝負をしたくば従者を作る事だ。今のままでは楽しくもない」
あっ、鼻血が少し出てしまっている。おのれ神楽坂明日菜。いつか倍返しにしてやる。
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「お帰り、エヴァ、茶々丸。明日菜のやつ凄かったな。障壁がまるでシャボン玉だったぞ」
「見ていたのか士郎」
玄関前に立っていた士郎はどうやら観戦後に帰ってきたらしい。恥ずかしいところを見せてしまったな。吸血に夢中になってあんな素人に気が付かないとは。
「チャチャゼロがどうしてもって五月蝿くって」
「ウルセー! 結局アノ距離ジャ見エネーヨ!」
「どこで見ていた?」
「3キロくらい離れた場所だよ」
それは見えん。裸眼でそれは異常だ。いや士郎にとっては普通か。
「うどんが伸びる。さっさと食わせろ」
「そうだな。春になったとはいえそんな格好で冷えたろ。うどんで体を温めろよ」
家に入ると出汁と揚げ物の匂いが鼻孔を刺激する。ああ、腹へった。
うちのエヴァは食いしん坊万歳