「折角呪いが解けたのだ。記念に1つ、共に踊ってはくれんか?」
エヴァンジェリンがそう言うと同時に停電が復旧し、電灯が輝き始める。まるで彼女を祝福するかのようだ。更にエヴァンジェリンの体を大量のコウモリが包み込み、内側から士郎の上着が投げ捨てられると大人の姿になりマントや衣服を身に纏ったエヴァンジェリンが現れた。
士郎は困った顔を浮かべていた。エヴァンジェリンの踊りの意味は分かっている。だが仮にも従者である自分が主人に刃を向けてもいいのか迷っていた。
「どうした? 主人の言う事が聞けないのか居候」
「むっ。怪我するかもしれないんだぞ」
「怪我程度なら許容範囲だ。私もお前もたまには全力で運動する必要があるだろう? 主人の優しさを大人しく受け取れ」
「はぁ、とんだ優しさだ……同調(トレース)、開始(オン)」
肉体に強化を施し、干将莫耶を投影する。2人の間にピリピリとした空気が流れる。
「ネギ先生、神楽坂明日菜さん。これから見られるのは世界トップクラスの戦いです。よく見ておくといいでしょう」
茶々丸の言葉の直後、エヴァンジェリンの姿が消え、続いて士郎も消える。直後上空で金属がぶつかる音が響く。干将莫耶と魔力で作った黒い爪がぶつかり、火花を散らしていた。
「ふんっ!!」
腕力で押し返したのはエヴァンジェリン。上空で踏ん張る手段がない士郎だが、橋になんなく着地する。
「魔法の射手! 連弾・闇の100矢!!」
「投影(トレース)、開始(オン)」
ネギとの戦いの最中では見られなかった空の一部を隠す程の魔法の射手。士郎は弓矢を投影し、それを撃ち落としていく。その動きはネギ達では見えないくらいの速さで、矢はマシンガンのようだった。しかも1発の威力が魔法の射手を上回っている。
「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック! 来たれ氷精、闇の精!! 闇を従え、吹雪け、常世の氷雪!! 闇の吹雪っ!!!」
「赤原を往け、緋の猟犬!! 赤原猟犬(フルンディング)!!!」
敵を追尾する魔剣は闇の吹雪と真正面からぶつかりながらも威力を落とす事なく、闇の吹雪を貫いた。
「こうも容易に闇の吹雪を貫くか!」
高速で回避するエヴァンジェリンを追尾する赤原猟犬(フルンディング)。無詠唱の魔法の射手を飛ばすも剣に触れる前に消し飛んでいく。
「単純に真正面から止めるのはより強力な魔法が必要か。ならば!」
「! 消え、後ろか!!」
姿が消えたエヴァンジェリンが士郎の影から飛び出し、士郎は振り向き様に干将莫耶を振り抜いた。エヴァンジェリンはそれを回避し、爪を首へと突き立てようとする。
「停止(フリーズ)解凍(アウト)ッ!!」
「おっと」
その一撃も上空から落ちてきた剣に阻まれる。ここまで使われた剣のどれもが凄まじい魔力を秘めているのを感じたネギは息を呑んだ。
後方から最短距離でエヴァンジェリンを貫こうとする赤原猟犬(フルンディング)を消した士郎は再び干将莫耶を構える。対してエヴァンジェリンは魔力の剣を生み出す。その膨大な魔力に危険性を感じた士郎は干将莫耶へと更に魔力を籠める。
「オーバーエッジ!!」
「エクスキューショナーソード!!」
ぶつかり合う剣。結果として勝ったのはエヴァンジェリンの剣。無理な強化をした干将莫耶・オーバーエッジでは2本でもエクスキューショナーソードを一度止めるのみで砕けてしまった。
「投影(トレース)」
ならばあれに勝つ剣を用意すればいい。それが衛宮士郎の魔術。
「開始(オン)!!!」
その手に握られるは黄金の剣。王の選定の剣。エクスキューショナーソードと真正面からぶつかっても傷付く事もない。
「それがカリバーンか!! ふふ、全てを相転移させるエクスキューショナーソードとも打ち合えるとは。しかも美しい」
「ありがとよ」
超高速での打ち合いを続ける2人。それ衝撃波だけで地面は抉れ、大気は弾ける。
「うおぉぉおおおおおおおっっ!!!」
やがて士郎の一撃はエクスキューショナーソードを砕いた。だがエヴァンジェリンは懐に飛び込み、腕を掴む。吸血鬼の筋力は尋常ではない。払い除けようと力を込めた士郎だが、突然天地が逆転する。否、逆転したのは自身だった。頭部からの落下を何とか腕で防いだが、エヴァンジェリンに組伏せられる。パクティオーカードを取り出すも、口を塞がれアーティファクトを呼び出せない。
エヴァンジェリンが士郎の顔を握り潰して終わり。誰もがそう思ったが、ネギだけは悪寒を感じ空を見上げた。そこには数々の聖剣や魔剣が星のようにきらびやかに浮いていた。エヴァンジェリンは手を士郎の口から離すと微笑みかけた。
「引き分けだな。いい運動だった」
「ああ、これだけ体を動かしたのは久し振りだ。ありがとうエヴァ」
エヴァって、いいよね。