「士郎! 修学旅行だぞ! 京都だぞ!」
まだ修学旅行まで日数があるのにうちの姫様は騒がしい。まあこれまで散々行きたくても行けなかった修学旅行に参加出来るのだからこれくらい喜ぶのは当然なんだが、俺は行く予定はないのだからいちいち報告に来なくてもいいと思う。
「マスター、ハワイの可能性もあります」
「安心しろ。ジジイを脅してでも京都にしてやる」
「脅すのはやめろよ。それとここにあんまり入り浸り過ぎないでくれよ。魔法先生達への言い訳が大変なんだから」
エヴァの監視役って事でエヴァの傍にいてもおかしくはないのだが、あまり親しくし過ぎていると不審がられてしまう。現に昨日ガンドルフィーニ先生から『闇の福音と共に歩いていましたが、監視とはもっと隠密にやるものではないのですか?』と聞かれてしまった。その時はエヴァの了解を得て堂々と監視をしていると言ったけれど、談笑していたりするのは監視に見えないよなぁ。学園長も面倒な役割を押し付けてくれたものだ。
「エヴァは京都が好きなのか?」
「ああ、そうだぞ。神社仏閣なんかを見るのが好きだからな。他の国の古い文化もいいが、日本のものは特に好ましく感じる。私の感性に響くものがある」
「へぇ、そういうものか。茶々丸は修学旅行にどこがいいって希望はあるのか?」
「私は麻帆良の外へ出た事がありません。画像等でデータとして外の世界は知っていますが、どこかへ行きたいという事はありません」
「なら今回が初めての旅行だな。目一杯楽しんでこいよ」
「なんだその言い草。貴様も来るんだ」
はっ? こういう学園のイベントに俺みたいな用務員は参加しないだろ。教師じゃないんだぞ。
「いえ士郎さんも参加をするべきかと思われます。マスターの監視役である以上、あまり離れた場所にいるのはよろしくないのでは?」
「茶々丸の言う通りだぞ。さあジジイに交渉に行くぞ」
「お、おい引っ張るなって」
ーーーーーー
「衛宮君の参加は無論考えておるよ」
茶々丸の言い分である程度納得はしていたけれど、雇い主である学園長からこう言われてしまっては断れない。
「それでジジイ、場所は京都だな」
「断言されても困るのじゃが……まあ京都になるじゃろう。関西呪術協会との関係もあるからのう。今回の修学旅行ではネギ君に親書を持っていってもらうつもりじゃ」
修学旅行でまで魔法関係の仕事か。ネギ君も大変だ。俺もある意味では魔法関係の仕事とも言えるけれど……
「大丈夫じゃと思うが、もしかすると妨害があるかもしれん」
「妨害ですか?」
「組織の上は仲良しでも下ではそうとは限らん。魔法協会が気に食わん呪術協会のしたっぱもいるだろうさ」
「そういう事じゃ。形式上でも親書という形で繋がりを作っておきたい。万が一に備え、衛宮君にはネギ君の護衛を頼みたいのじゃ」
「ええ、いいですよ」
何もないのが一番だけれども、親書なんてものを持っている以上は何があっても不思議ではない。可能な限り手助けさせてもらおう。
「ふん、面倒な。士郎、テキトーでいいぞテキトーで」
「そうはいかないだろ。危険性だってあるんだ」
「貴様が危険に陥る可能性など、馬鹿なガキ共の身代わりになる時くらいだろう。下手な行動をするようならば強制的に喚び戻すからな」
パクティオーカードをちらつかされる。あれにはそういう機能もあったな。だからと言って誰かが危険な時に見過ごすつもりはない。俺にはそれだけの力がある。その為に、力を得たんだから。
自分、観光には全く興味を持てないので修学旅行は食う事に専念していた覚えがあります。