剣と杖と先生   作:雨期

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昨日は体調が優れず、脳が寝ろと命令をしてきたので誠に勝手ながらお休みさせて頂きました。楽しみにしていた皆様、申し訳ありませんでした。


第27話『奇妙な誘い』

 修学旅行2日目は俺はホテルで待機する事となった。昨晩の暴走を考えれば妥当と言える。監視にはチャチャゼロがついており、チャチャゼロを通してエヴァはいつでも俺を見れるそうだ。昨晩、俺を転移させるタイミングを見計らう時にもそうしていたらしい。

 やれる事もないので座禅を組んでいるとチャチャゼロが酒を持ってきた。

 

「一杯ヤロウゼ」

 

「悪いが、何があってもいいように今は酒を入れたくないんだ」

 

「オイオイ固イゾ。昨日ノ今日デ襲撃ナンテネェダロ。第一主犯ッポイ女ノ腕ハ斬リ落トサレテンダ。ソンナ重体デ動クカヨ」

 

「斬ったのは腕一本だ。その程度なら何とでもなる」

 

「ケケケ、テメェハソウカモナ」

 

ーーコンコンコンッ

 

「ルームサービスをお届けにあがりました~」

 

 ルームサービス? って今の間延びした声には聞き覚えがある。恐らくは昨日の月詠という子だ。奇襲にしてはあまりにも堂々としすぎている。逆に不安を煽られるな。

 

「両手塞がってますんで~開けてくださいまし~」

 

「ああ、分かった」

 

ーーガチャ

 

「ほんまおおきに~」

 

「月詠だったか。何のようだ?」

 

「ルームサービスどす~。商品は、ウ・チ♪」

 

ーーバタンッ

 

「あ~ん、いけずぅ~」

 

 どうすればいい。流石にこんな敵は初めてだ。対処法が分からん。チャチャゼロは大爆笑しているし、頼りにならないな。敵意を感じないのが不気味でならない。

 

「入レテヤルヨ。ケケケケケケッ」

 

「おいチャチャゼロ!」

 

「えへへ~、お邪魔します~」

 

 はぁ、もうどうにでもなれ。干将莫耶と数本の宝具をいつでも投影可能なようにはしておく。

 

「今日はぁ~お兄さんに宣戦布告に来ましたわ~。明日、千草はん達はこのかお嬢様を狙うんですが~ウチはお兄さんを狙います~。勿論断ればこのかお嬢様がタダではすみませんのでよろしゅ~」

 

「それを伝える為だけに敵地に来たというのか?」

 

「はい~。お兄さんにリベンジしたかったので~。勝手に来たので千草はん達には内緒どす~」

 

 ニコニコとした笑顔で答える彼女は本気で戦う事しか頭にないらしい。バトルジャンキーとはこの手の人間を言うのだろうか。

 

「ここで君を排除すれば明日はより楽になると俺が考えるとは思わなかったか?」

 

「それはそれで大歓迎どす~」

 

「そうか。なら帰ってくれ。明日相手になろう」

 

 彼女をこの場で倒しておくのは容易いが、明日何が起こるかある程度確定させておく方が木乃香や親書を守りやすくなる。もしここで下手に相手をすると、あちらが今すぐにも動く可能性だってあるのだ。

 

「わ~い!! えへへ~、明日はよろしゅうたのんます~♪」

 

 抱き付いてこようとするが、避ける。また来る。避ける。来る。避ける。来る。避ける。

 

「ほんまお兄さんはいけずやわ~」

 

「その殺気と暗器がある限りはお前に触りたくもないよ」

 

「うふふ~、流石に気付いてはりましたか~。ほなウチは帰ります~。また明日、仲良くしましょうな~」

 

 ……去ったか。油断をしたところで襲撃を受けるかと考えたが、その様子もない。本当にあの子の独断行動だったのか?

 

「オーイ居候、ケータイ鳴ッテルゼ」

 

「ん? ああ、ありがとう。茶々丸か。何かあったかな? もしもし」

 

『士郎さん、素直に答えて下さい。いいですね』

 

 なんか語気が強いぞ。こちらが何か言う前に捲し立てるように茶々丸は言葉を紡いだ。

 

『敵とデートの約束を取り付けたとマスターが仰っていました。どういう事ですか。何故敵となのですか。何故断らないのですか。私では駄目ですか。抱かれそうになったとも聞いていますよ。どうなのですか。そういう趣味なのですか。士郎さんが望むなら私が』

 

「待て待て待て!! 落ち着け茶々丸!! なんかおかしな事言ってないか!?」

 

『正常です。プログラムにも異常は検知されておりません。それよりも士郎さんに動揺がみられますね。今晩直接お話しましょう。いいですね』

 

「えっ、あ、なん『いいですね』はい」

 

 こんなに怖い茶々丸は初めてだった。これは何を言っても聞いてもらえないタイプだ。文句はエヴァに言わなくてはならない。パクティオーカードを頭に当ててエヴァに念話を飛ばす。

 

『エヴァ、これはどういう事だ?』

 

『クハハハッ! 茶々丸の成長の為だ。許せ』

 

『成長って、それはいい事なんだろうが事実を歪めて話すんじゃない!』

 

『あながち間違ってもいないだろう。あの娘にとって果たし合いはデートのようなものだろうし、抱き付かれそうになったのも、少し言葉を変えれば抱かれるになる』

 

『お前なぁ…………帰ったらカップ麺な』

 

『何っ!? 待て士郎!! それはズル』

 

 よし、すっきりした。寝よう。うん、寝て頭をリフレッシュさせよう。

 

 

ーーーーーー

 

 

 夜。ホテル内に妙な空気が漂い始めた。確かエヴァと契約した時の魔力の流れに近い。という事は仮契約? それにしてはホテル全体と範囲がでかい。

 

「士郎さん、僕の話からで大丈夫ですか? その、茶々丸さんが待っているようですけれど」

 

「いいんだ。きっとあっちは長くなる」

 

 茶々丸は終わるまでは大人しく待っていてくれるようだ。ただ威圧感があるがな。さてはて、ネギ君の話とはなんだろう。

 

「士郎さんは人殺しを悪い事だと認識して、どうしてやろうとしたんですか? 僕の知る限り士郎さんはとてもいい人です。人の為に行動が出来るし、人を想う優しさがあると思っています。そんな士郎さんがなんであんな簡単に人殺しをやれそうになったのか。それを知らない限りは僕は、士郎さんを受け入れられないと思います」

 

「昨晩の事か……あの時も言ったがそれが最も確実で、今後のリスクも低い手段だと思ったからだ。誰かを助けるって事は、誰かを助けないって事にも繋がるんだ。でも昨日のは流石に俺の暴走だった。反省はしている」

 

「士郎さんくらいの力があったら誰でも守れるんじゃないんですか?」

 

「昔は俺もそう思っていた。だからがむしゃらに鍛えて力を得る方法は色々とやってきた。周りから止められていた手段にも手を出したさ。それで多くの人が救えた。それは事実だ。でも救えなかった人も、いや殺してしまった人も沢山増えた……」

 

「人を、殺した事が……」

 

 俺は無言で頷く。彼にとって俺がどう見えていたかは分からないが、少なくとも善人ではあった筈。その善人が人殺しをしている。彼はどう感じただろうか。

 

「守る為に走り回った。さっき言った誰かを助けるって事は誰かを助けないって言葉は親父に言われた事なんだが、それを忘れて世界を駆け回ったよ。結果としてその言葉の意味を思い知らされたけどね」

 

「ぼ、僕は……やっぱり人殺しは許せないです」

 

「そうか。きっとそれは正しいよ。ならネギ君は俺を「だから!!」?」

 

「だから、僕は士郎さんを受け入れて傍にいます。士郎さんが独りで頑張って、結果として見捨てないといけない人が生まれるなら、僕ら魔法使いがその人達を助けます! 一緒に頑張りましょう!」

 

 一緒に、一緒にか……その言葉を言われたのは初めてではない。でも全ての人が俺についていけないと離れていった。ネギ君もそうなるだろうか。それとも……

 

「分かった。ネギ君、これからもよろしくな」

 

「はい!」

 

「仲が深まったようで何よりです。では士郎さん、そこに正座を」

 

「あ、はい」

 

 あー、いい雰囲気で終わらないかー。エヴァはにやついてこっちを見ている。助けにはならない。チャチャゼロも同様。ネギ君は茶々丸の雰囲気におどおどしている。超は子供の成長を見守る親のような眼差しを茶々丸に向けて、ハカセはしきりにノートパソコンと茶々丸を見比べている。うん、誰も助けにならねぇや。

 

「失礼します」

 

「なんか顔ちか」

 

ーーチュッ

 

 ……ガイノイドでも唇って柔らかいんだなぁ。ってそんな感想はいいんだ!! なんでキスされた!? しかも今は確か仮契約の魔法陣が敷かれて……あっ、やっぱりパクティオーカードが出てきた。

 

「士郎さんのお話が聞けた事と、このパクティオーカードで今回の件は不問とします。ですが次はありませんよ」

 

「? エヴァンジェリンさん、仮契約の魔法陣を描いてあったんですか?」

 

「だいぶ前から描いてあるな。茶々丸はそれを利用しただけだ。ほれ、ガキはさっさと寝ろ。ここからは大人の時間だ」

 

「エヴァンジェリンさんも消灯までには寝てくださいよ」

 

「茶々丸! よくやったネ!!」

 

「ふむふむ感情の数値が異常。これは、ほうほう、成る程。詳しい検証の為には機材が足りませんね」

 

「ケケケ、妹ノ初メテダゾ。喜ベ居候」

 

「ね、姉さん。恥ずかしいです……」

 

 ……なんでこうなったのさ。




初めてランキングというものを覗いたのですが、日間42位、週間41位にこれが載っていました。応援ありがとうございます。
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