剣と杖と先生   作:雨期

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第28話『短い観光』

 修学旅行も3日目の折り返しとなった。麻帆良の生徒は相変わらず騒がしく今日はどこに向かうか話し合っている。士郎は木乃香の班に同行するのが決まっている以上、彼女達についていくだけだ。

 士郎がエヴァンジェリン、茶々丸と朝食を取っているとカモミールがそそくさと近付いてきた。

 

「士郎の旦那、昨日仮契約しましたかい?」

 

「昨日のあれはお前の仕業か」

 

「え、ええ、まあ。でも仮契約したらパクティオーカードがオレっちのところに出るようにしてあったんですが、旦那が契約しても魔力反応だけで何もなくって」

 

「それなら私が弄ったのだ。下手にお前にパクティオーカードが渡って妙な要求をされても困るのでな」

 

「エヴァンジェリンの姐さんの仕業でしたか。ま、とりあえず確認が取れただけ十分っす。んで、誰と仮契約したんすか?」

 

「私です」

 

 茶々丸は自慢げにパクティオーカードを披露した。普段からは想像できない茶々丸の態度とガイノイドと仮契約が可能という事実にカモミールも驚きを隠せなかった。

 

「茶々丸の姐さんっすか! こいつぁ驚いた。へへ、でもなかなかお似合いの主従ですぜ」

 

「カモミールさん」

 

「なんすか?」

 

「ありがとうございます。お菓子を差し上げます」

 

「おっ、サンキューっす!」

 

 お似合いという言葉に機嫌を良くしたらしい。茶々丸はにこやかに菓子を渡していた。

 

「おいオコジョ。坊やは誰かと契約したのか?」

 

「スカカードが何枚か。仮契約したのは宮崎のどかって子っすよ」

 

「一般人を巻き込んだのか?」

 

「あいや、士郎の旦那、そんな怖い顔しないで下さいよ。ただのゲームの景品で、魔法関係のものって伝えてないっすから、出来のいい自分のカードくらいにしか思わないっすよ」

 

「……何の目的があったのかは知らないが、あれはこっちの世界への切符になりうるものだ。そののどかって子がこっち側に来ないように注意しておけよ」

 

「うっす!」

 

 分かっているのかいないのか、返事だけはいいカモミールに士郎は思わずため息を漏らした。

 

 

ーーーーーー

 

 

 完全な自由時間となった3日目は各々が自由に京都観光をしている。士郎は周囲の警戒を怠らず、生徒達が安全に観光出来るようにしていた。

 

「なぁなぁ士郎さん、一緒にプリクラ撮らへん?」

 

「? いやこういうのは友達とやるものだろ」

 

「思い出作りの一環や。明日菜ー、ネギくーん、士郎さんも入れるでー」

 

「いいわよー。ほら士郎さんおっきいんだからしゃがんで」

 

「あ、ああ」

 

 若い時には友人に連れられてゲームセンターなんかには行った事のある士郎だが、流石にプリクラは初体験だった。ぎこちない笑顔の写真がプリントアウトされ、木乃香は手際よくハサミでそれを切り分けとると士郎に手渡した。

 

「はい、これ士郎さんの分やで」

 

「こうなるのか……よく出来ているな」

 

「次はせっちゃんも一緒がええんやけど、逃げられてまうのよね……」

 

「木乃香は刹那と長い付き合いなのか?」

 

「うん、ちっちゃい頃からの友達なんやけど、いつの間にか疎遠になってもうて。せっちゃんはなんや昔みたいに付き合ってくれへんくなってな。寂しいわぁ」

 

「そうか……木乃香、気持ちっていうものは言葉にしないと伝わらない事が多い。それが長い付き合いの相手でもな。木乃香は自分の気持ちは抑えて相手に遠慮するタイプに見えるから、時にははっきりと伝えてやるといいぞ」

 

「うーん、確かに。勇気いるけど、せっちゃんとまた昔みたいに仲良くなりたいし、頑張ってみる! おおきに士郎さん!」

 

 そんな話をしているとネギと明日菜がこっそりと士郎へ近寄ってきた。

 

「僕らは親書を届けてきます。ここはお願いしてもいいですか?」

 

「分かった。親書も敵の狙いの1つだ。危なくなったら逃げるんだぞ。明日菜もだ」

 

「はい」

 

「行ってくるわ士郎さん」

 

 走り去っていくネギと明日菜。その後すぐに士郎の足元に何かが飛んできた。長細い針に手紙が括られている。

 

「これは……」

 

 手紙には30分後にシネマ村の日本橋で待つと書かれていた。ご丁寧に月詠と名前も書いてある。行かなければどうなるか分かったものではない。

 

「刹那、少しいいか? 敵から決闘状がきた。これからシネマ村に向かうが、木乃香と一緒に来てくれ」

 

「敵のいる場所へ、お嬢様も連れていくのですか?」

 

「俺が月詠の相手をしている間に、こっちに敵が来ないとも限らない。護衛対象は見えている方がいい」

 

「月詠!?」

 

 その名を知っているのか刹那は酷く驚いた顔をした。

 

「月詠の相手は危険です。相手は生粋の人斬りと言われていますし、何人もの神鳴流の剣士達が敗れたと聞いています」

 

「そうか。でも大丈夫。相手を倒す必要はないんだ。木乃香を守ればそれでいい」

 

「ならば逃げるのも手では?」

 

「それもいい。木乃香は絶対に守りきれるだろう。でもそれで月詠達がネギ君を狙えば親書は確実に奪われる。親書を守り、木乃香を守り、相手の動きもある程度コントロールするには誘いに乗るしかないんだ。おーい木乃香、刹那がシネマ村に行きたいってよ!」

 

「ええねー! 行く行く!」

 

 これが相手の掌で踊らされた結果なのか、もしくはこれから相手を掌握する為の行動になるのかそれは分からない。だが士郎は次こそは木乃香を守ると誓い歩みを進めた。




最近決めていたヒロインにブレが発生しております。どうしよう。激流に身を任せてみましょうか。
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