剣と杖と先生   作:雨期

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趣味で書いているのであんまり評価とか気にしない方がいいかなぁ、と思いつつも評価機能があると覗いてしまう


第35話『木乃香、弟子になる』

「「弟子入りさせて下さい!」」

 

「朝から騒がしい!!」

 

 修学旅行の翌日、気持ちよく朝食のフレンチトーストを食べている最中に坊やと近衛木乃香がやってきたと思ったらこれだ。

 

「弟子など取るつもりはない! 帰れ!」

 

「そこを何とかお願いします! 士郎さんとの戦い、修学旅行での活躍、魔法を師事するならエヴァンジェリンさんしかいないと思ったんです!」

 

「ほう、それはつまり私の強さに惚れ込んだと?」

 

「はい!」

 

 むぅ、これだけはっきりと言われるとむず痒いものがあるな。

 

「見て下さい士郎さん。マスターが照れています」

 

「ああやって褒められる事なかったんだろうな」

 

「五月蝿いぞ従者共! コホン、近衛木乃香、お前は何故私の下へ来たんだ?」

 

「一番身近で一番凄い魔法使いやってお父様に言われたんよ。ウチもこっちで生きていくなら魔法をちゃんと覚えたいんや」

 

「お前の場合ジジイでもいいだろう」

 

 普段はどうあれジジイは麻帆良でもトップの魔法使いだ。近衛木乃香の頼みなら断るという事もない筈だ。

 

「それも考えたんやけど、お祖父ちゃんもそれなりに忙しいみたいで、お祖父ちゃんからもエヴァちゃんを薦められたんや」

 

「押し付けおったなジジイめ。ともかく駄目だ駄目だ。さっきも言ったが弟子を取るつもりはない。近衛木乃香は坊やにでも魔法を教われば良かろう」

 

「何よ。別に弟子くらいいいじゃない」

 

「なんだ神楽坂明日菜もいたのか」

 

「ひどっ!? ずっといたわよ!! 弟子を取らないならそれなりの理由があるんじゃないの?」

 

「理由? 私にメリットがないからだ」

 

 こやつらを弟子に取ったところで何が得られる? 何もない。士郎のように飯を作れる訳でもなく、茶々丸のように科学面でのサポートがある訳でも、むっ? 近衛木乃香が鞄を漁っている。何か出すつもりか?

 

「ウチかてタダでお願いするつもりはないよ。はい、これ」

 

 和紙の包みを渡される。開いてみると中には小さな菓子が1つ。

 

「きんつばか?」

 

「ウチの手作りよ。和菓子には自信あるんやで」

 

「どれ……!?」

 

 う、旨い……!! 周囲をしっかりと焼かれ閉じ込められた餡子は固まっている筈なのに、トロリと口の中で蕩けるようだ。そして小豆の粒はしっかりとしており歯応えもある。更に甘さは強いのにくどさはない。いくらでも食べられそうだ。これは……

 

「認めよう。貴様の和菓子は士郎以上だ」

 

「やった! 弟子入りの月謝代わりにならんかな?」

 

「ふーむ」

 

 このレベルの和菓子をいつでもとなると流石に悩ましい。どうせ教えるとしても適当に呪文なんかを教えておいて勝手にやらせればいいだけだしな。いやしかし私のプライベートな時間を奪われるのも……

 

「ならば弟子入りの試験を用意してやろう。それを見事にこなせば弟子にしてやる」

 

「えー! 木乃香さんだけズルいですよ!」

 

「ふん、坊やは何も用意しなかったではないか」

 

「それ言われると厳しいわよネギ。あんたも今からでいいからなんか持ってきたら」

 

「でも何を持ってくれば」

 

「……いやそうだな。物はいらんぞ。私の足を舐めろ。そして永遠の忠誠を誓えば弟子にしてやらなくも」

 

「あほー!! 子供にアダルトな要求すんじゃないわよ!!」

 

ーースパーンッ

 

「っ!!? か、神楽坂明日菜!! 簡単に真祖の障壁を破るな!!」

 

「エヴァちゃんが悪いんでしょうが!!」

 

「そうだな。エヴァが悪い。チャンスくらいあげたらどうなんだ?」

 

「士郎まで坊やの味方に回るか……まあいいだろう。坊やにも試験を用意してやる。内容はまだ決まっていないから、決まったら伝えよう」

 

「本当ですか?」

 

「本当だ。近衛木乃香、貴様の試験は……明日までにこれを出来るようにしてこい」

 

 近くにあった紙に初心者用の火を灯す呪文を書いて手渡す。弟子として迎え入れる以上、才能がない者の相手をするつもりはない。

 

「茶々丸、何か杖になるものはあったか?」

 

「それなら俺が代わりになるものを投影するか?」

 

「貴様の剣では触媒として強力過ぎるわ。おい坊や、子供用の杖を持っていたな。あれを近衛木乃香に貸せ」

 

「はい、いいですよ」

 

「そういえばネギ、士郎さんの弟子じゃ駄目なの?」

 

「うーん、士郎さんも強いんですけれど、魔法使いとしてはエヴァンジェリンさんかなと」

 

「ネギ君の考えは正しいよ。俺は魔法の才能はないからな」

 

 士郎に魔法か。教えてみるのも楽しいかもしれん。仮に士郎が空を飛べるようになればとてつもない戦力となる。飛べるだけで戦闘の幅は格段に広がるからな。

 

 

ーーーーーー

 

 

「プラクテ・ビギ・ナル、アールデスカット!!」

 

 …………うーん、何も起こらへん。ネギ君に聞いたら火を起こす魔法みたいなんやけど、火どころか光すら起こらへん。何度も何度も繰り返すけど、結果は同じ。叫んでみたり、目一杯気持ち込めたりしたけれど意味はなかった。

 火、火……あかん。士郎さんの記憶思い出してもうた。強がり言ったけれど、怖い気持ちはまだ消えてへん。

 

「あれ、木乃香まだやってたの?」

 

「明日菜ー、全然出来んわー。助けてー」

 

「私に頼んないでよ」

 

「ならネギ君……ネギ君どこ?」

 

「クーに中国拳法教えてもらいに行ったわよ」

 

 ほぇー、魔法に続いて拳法かぁ。ネギ君も頑張りやさんやねぇ。でもうちだって負けへんよ。明日までに火ぃつけれるようにしてみせるわ。何かコツがある筈やし、それを見つけなあかん。

 

「ウチももうちっと頑張るわ」

 

「うん、何も手伝えないけど頑張ってね」

 

 魔法のコツ……そういえばウチ、誘拐された時に無理矢理魔力っての奪われて魔法使うのに利用されたんよね。あの魔力を意識してみようかな。感覚はまだ覚えとる。

 

「プラクテ・ビギ・ナル」

 

 体の中にある魔力は……これかな? 杖にこれを流し込む感覚……あっ、いい感じや。魔力奪われた時の感覚に近いわ。あとは最後の呪文を唱えるだけ。

 

「火よ灯れ」

 

ーーゴオォォォォォッ

 

「アカーン!!」

 

「ちょっ!? 何やってんのよぉっ!!?」

 

 まさか火柱が上がるとは思わんかった。すぐ消火出来たから良かったけれど、下手したら寮を火事にしとったわ。火力の調整、気を付けよ。

 

 

ーーーーーー

 

 

「お邪魔しまーす」

 

 あっ、木乃香さんがいらっしゃいました。今日は学校がありますので放課後にいらっしゃると思いましたが、早朝を選んだようです。

 

「マスター、木乃香さんがいらっしゃっています。起きて下さい」

 

「ふがっ!? むぅ、まだこんな時間ではないか……」

 

 寝ぼけ眼を擦りながら欠伸をするマスターは大変愛らしいです。画像データ、動画データ、共に保存完了です。

 

「エヴァちゃん、おはよう」

 

「早すぎるわたわけ」

 

「えへへ、感覚を忘れんうちにやりたかったんや」

 

「という事はやれるようになったのか。時間としては実質半日程度だった筈だが、いいだろう。見せてみろ」

 

「いくでー。プラクテ・ビギ・ナル、火よ灯れ」

 

 杖の先に指先程度の火が灯ります。偶然ではなく完全に魔法として成立していますね。お見事です。これを見たマスターの顔は大変驚いているようにも見えます。確かに素人である木乃香さんがこの短期間でこれだけやれたのは驚きですが、ネギ先生から指導されたりすれば不可能ではないと思われるのですが。

 

「魔力の出力の調整までこなしたか」

 

「ウチ凄い?」

 

「そうだな。大したものだ。坊やにでも習ったか?」

 

「んーん、ほら修学旅行で誘拐されたやろ。あの時の感覚があったんよ」

 

「他者から魔力を操作された事で内に眠る力に気が付いたという事か。見事だ! 約束通り弟子にしてやる!」

 

「ありがとう! エヴァちゃん大好きや!」

 

「弟子なら師匠なり先生なりと呼び方があるだろう」

 

「ならエヴァ師匠、よろしゅうたのんます」

 

 木乃香さんの嬉しい顔を見ると、こちらまで暖かな気持ちになります。良かったですね。あれ? しかし木乃香さんがマスターと弟子になったとなれば、木乃香さんは我が家を訪問する事が多くなるという事で……

 

「朝御飯できたぞー。木乃香も食べていくか?」

 

「ありがとう士郎さん! 頂くわぁ」

 

 あぁあぁぁぁっ! なんという事でしょう。士郎さんの傍に女性が増えてしまいました。由々しき事態です! 士郎さんは勘違いしているようですが、木乃香さんは僅かなりとも士郎さんに好意を抱いているのは明白。共に過ごす事でそれが膨らむ可能性も否めません。いえ間違いなく膨らみます。どうしましょうどうしましょうどうしましょう。回路をフル回転させて打開策を見つけなければ!

 

「茶々丸ー、飯にするぞー……? 動かんな。フリーズというものか?」

 

「動カネェナラホットケ御主人」

 

「そうだな。何かあればハカセにでも頼めば良かろう」




木乃香、簡単に弟子入り。身内の身内は身内! うちのエヴァは無意識のうちに身内に甘くなります。
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