剣と杖と先生   作:雨期

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あかん、キャラが勝手に動き始めた。まだ序盤も序盤だってのに。


第3話『お話しましょ』

「へぇ、ログハウスか。いい趣味をしているな」

 

「森の中で鉄骨造りなどという無粋な事はせん」

 

 金髪の少女、エヴァンジェリンに連れられて彼女の家までやってきた。名前は道中教えてもらった。

 人払いの結界のようなものはないが、街からそう遠くないのに街の喧騒は聞こえず、人の気配もない。ここまでの道中が人が手を加えた整備された道ではなく、人が踏み均して出来たような道であり、更には用もないと近寄る必要もない場所というのが大きいだろう。うん、いい場所だ。

 

「お帰りなさいませマスター、衛宮様」

 

「ん……私は寝る」

 

「そう畏まらなくてもいいよ。これから居候になるんだから、もっと砕けた態度にしてくれないか?」

 

「では士郎さんと。朝食のご用意が出来ていますが、如何ですか?」

 

「ありがとう。頂くよ」

 

「ではこちらへどうぞ」

 

 確かエヴァンジェリンは茶々丸と呼んでいたな。ただのオートマタかと思っていたが、自分の意思をしっかりと持っているらしい。こんなオートマタを造れる人形師は記憶にない。いや、橙子さんがいるか。最早あの人の人形は人形と呼べる代物ではないから無意識に除外していた。

 そんな茶々丸が持ってきたのはサンドイッチだ。具材はベーコン、レタス、トマト。俗に言うBLTサンドだ。

 

「頂きます」

 

 一緒に出してもらった布巾で手を拭き、手を合わせてからサンドイッチにかぶり付く。カリカリに焼かれたベーコンからジュワッと脂が溢れだし、トマトの果汁と合わさり酸味、塩味、甘味が口いっぱいに飛び込んでくる。シャキシャキとしたレタスの食感と爽やかさ、マスタードを基本としたソースの少しピリッとした辛味が食べながらも口の中をリセットさせ、次の一口を誘う。パンも小麦の風味が強く、個性豊かな具材をしっかりと纏めながらも自身もちゃんと主張している。

 

「旨い。パンは自家製か?」

 

「その通りです」

 

「わざわざサンドイッチ用にパンを焼くとはお店並みの拘りだな……なぁ、どうして茶々丸はずっと立っているんだ? オートマタだから食べられないだろうけど、どうせなら一緒に座らないか?」

 

「いえ、オートマタではなくガイノイドです」

 

 ガイノイドって女性型のアンドロイドの呼び方だったような……は? つまり茶々丸はロボット!? こっちの科学技術はどうなっているんだ!

 

「士郎さんの仰る通り、私には食事が必要ありません。なので私を気になさらず食事をなさって下さい」

 

「悪いけど気にするよ。自分だけ食べていて誰かを立たせておくなんて、いくら美味しい食事でも心が休まらないんだ。やっぱりみんなが食卓について食べるご飯が一番美味しいと思うんだ。だからさ俺の我が儘になるけど、茶々丸も一緒に座ってくれ」

 

「……少々お待ち下さい。すぐに戻ります」

 

 茶々丸が台所に向かう。何かを取りに行ったようだ。本当にすぐ戻ってきた茶々丸の手に握られていたのは缶ジュースほどの大きさのあるケーブルの付いた電池だ。

 

「それは?」

 

「電池です」

 

「うん、それは見れば理解出来る。もしかして茶々丸のご飯か?」

 

「はい。普段はもっと別の方法で電力の供給を行うのですが、人のような食事をしたい時にとハカセに頂きました。非常用の電力になるとしか考えていませんでしたが、食卓につくのなら私も何か頂こうと思いまして」

 

「ありがとう。気を使ってくれたんだな。なら改めて」

 

「「頂きます」」

 

 ガイノイドと聞いて機械的なもののイメージを持ったが、どうやら彼女はそうではないらしい。とても好感が持てる。耳のアンテナや球体間接がなければ、彼女はなんら人と変わらないだろう。

 

「士郎さんは異世界から来られたのですよね? どのような場所なのですか?」

 

 ケーブルを口に加え、電気を吸っていた茶々丸から質問が飛ぶ。どんな場所か、か。

 

「世界が違うと言ってもパラレルワールド、平行世界なんて呼ばれる可能性の世界だから一般的なものはこっちと大差ないと思うぞ。地球だし、日本やアメリカもある。ただ魔法、こっちじゃ主に魔術と呼ばれるものはだいぶ違う感じがある。あっ、茶々丸みたいなガイノイドを作る技術もないから科学技術もこっちが劣っているのかな?」

 

「いえ、私は相当イレギュラーですので……士郎さんはその世界で魔法使いとして活動をなさっていたのですか?」

 

「それは、違うかな。魔術師は魔術の研究をして根源っていうものを目指すのだけれど、俺がやっていたのは魔術を使っての人助け。俺は正義の味方になりたいんだ」

 

「正義の味方……マギステル・マギですね」

 

 マギ? 知らない単語が突然出てきたので頭を捻らせてしまう。その様子を見た茶々丸がクスリと笑うと説明をしてくれる。無表情だと思っていたけれど、そんな表情も出来るのか。

 

「マギステル・マギとはこちらの魔法使いの多くが目指す目標とでも言いましょうか。世のため人のために魔法を使う、いわば正義の味方です」

 

 驚いた。でも同時に納得もいった。学園長やタカミチがあんなにお人好しなのはこの精神に基づいているからか。この世界は優しい世界だな。遠坂に感謝しないと。

 

「でも、俺はマギステル・マギにはなれないかもな。人を殺した事もある」

 

「士郎さんがですか?」

 

「ああ。1人を助けると視野が広がるんだ。次は10人、次は100人、次は……そう繰り返しているうちに救えなかった人は手から溢れ落ちていく。もっと力があればと世界と契約もしたけれど、それでも見捨てないといけない人はいた……そんな守れなかった人がいるというのに、俺はまだ正義の味方を諦めきれていないんだ」

 

「…………それが間違っているのかは私には分かりませんが、誰かの為に動くというのは良い行いだと思います」

 

「そう言ってもらえると嬉しいよ」

 

「それと気になったのですが、世界と契約とは、どういう事なのでしょう?」

 

 あー、つい言ってしまっていたか。どう説明したものか。茶々丸は優しい子というのはここまでの会話でよく分かる。そんな子にあんまりショックは与えたくはない。

 

「簡単に言えば生きている間に物凄い力が手に入るかわりに、死んでからその代償を働いて返す契約を、文字通り世界そのものから持ち掛けられるんだ。俺はそれを受け入れた」

 

 平行世界に来た事によって守護者の契約は破棄される、なんて事はなく今でも契約は続いている。精々死ぬまで活用させてもらおう。

 

「世界には意思があるのですね。初めて知りました」

 

「こっちの世界でも通用するかは分からないぞ。そういえばエヴァンジェリンはマギステル・マギってのを目指しているのか?」

 

「いえ、マスターは悪の魔法使いで賞金首ですから有り得ないです」

 

「悪の魔法使い?」

 

「数々の称号はあるのですが、『闇の福音』が一番有名でしょう。真祖の吸血鬼であるマスターは「真祖!?」どうなさいました?」

 

 真祖って言うととんでもない吸血鬼だった筈。詳しくは知らないが、サーヴァントをも凌駕するとか。いやでもエヴァンジェリンからそんな力は感じられなかった。この世界と俺の世界の魔法の違いのように、真祖にも違いがあると考えるのが自然か。

 

「ごめん。こっちにも真祖がいたから驚いちまった。続けてくれ」

 

「そうなのですか。マスターは魔法で吸血鬼に変えられたそうですが、そちらの真祖もそうなのでしょうか?」

 

「確かこっちは自然発生するもの、だったような記憶が……まず会う事がないからな」

 

「自然発生。不思議ですね。おや、誰かいらっしゃったようです。失礼します」

 

 こんな場所に来客となれば数限られるな。エヴァンジェリンの交遊関係が広ければ話は別だが、あいつあんまり人付き合い良さそうに見えないから、そんなに訪ねてくる人もいなさそうだ。

 おっ、どうやら上がってくるみたいだ。この気配、タカミチか。

 

「やあ衛宮君、服持ってきたよ」

 

「ありがとう、って新品ばっかりじゃないか」

 

 手提げ袋に入っていた大量の衣服はどれも新品ばかり。タカミチのお古を貰うって話だった筈だ。

 

「学園長がどうせなら新しいものにしろってね。就職の前祝いとでも考えてくれ」

 

「まだ何処に就職するかも決まっていないぞ」

 

「大丈夫大丈夫。そっちも手伝えるように候補はいっぱい持ってきたから」

 

 今度は別の鞄から出るわ出るわ、大量の就活雑誌やアルバイト募集の広告。しかも全てが麻帆良内のものときた。どれだけ広いんだこの学園都市。一度全体をしっかり把握しておくべきかもしれない。

 

「学園長のオススメは教師だって」

 

「教員免許なんて持っていないぞ」

 

「安心してくれ。必要な書類は勿論、運転免許からパスポートまで何でも学園長が用意してくれるらしい」

 

 それは逆に安心できないぞ。偽造じゃないか。当然のように犯罪するのはどうなんだ。しかし身分を証明する書類がなければ就活もまともに出来ないのも事実。ここは甘えるしかないか。

 

「魔法関係の仕事もあるらしいよ。実力は必要だけれど、衛宮君ならなんら問題なく」

 

「本当に問題ないかな?」

 

「マスター、随分と早いお目覚めですね」

 

「別荘で寝たからな。衛宮士郎は力が封じられている私の魔法があっさりと通った男だぞ。戦闘における実力はあってもそれだけで魔法関係の仕事が勤まるか?」

 

「最もな意見だな」

 

「衛宮君、君自身が認めるのかい。そこは否定するところだろう」

 

 事実だからしょうがない。どんなに頑張っても衛宮士郎という人間は魔術に対しての耐性が極めて低い。それを補う道具がない今は耐性は一般人に毛が生えた程度のものだ。

 

「なら魔法関係以外の仕事を」

 

「馬鹿か貴様は。今の流れでどうしてそうなる。普通は魔法耐性をどうするか考える場面だろう」

 

「簡単な方法でいけば魔道具による補助だな。というより俺もこれまでそうしていたし」

 

「うむ、その通りだ。私は600年の年月を生きた真祖の吸血鬼だからな。その手の魔道具もコレクションとして持っている。それを譲ってやってもいい」

 

「対価は? 記憶を無断で見た対価は居候だから、別の対価が欲しいんだろ」

 

「ふっ、流石は魔術師。等価交換が基本なだけあって話が早いな。簡単な事だ。私と契約しろ」




エヴァちゃん、あまりにもやることが早すぎて困る
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