いいんちょの誘いでクラスのみんなで来た南の島。そこの夜の砂浜で、ウチは無心になって覚えたての呪文を唱える。魔力を流すだけやなく、その呪文から発動する魔法を明確にイメージするのも大切やとエヴァ師匠は言っとった。
まだウチは始動キーがない。せやから使うのは初心者用の汎用始動キーやけど、それでも魔力だけはあるから威力はある方や。でも足らん。これだと戦いの場に立つのは出来ん。もっともっと精度を上げへんと。
「プラクテ・ビギ・ナル、光の精霊5柱、集い来たりて敵を射て、魔法の射手、光の5矢」
放たれた光の矢は空へと飛んでいって霧散した。うん、成功やね。まあまだまだ遅いし、飛ぶ方向もバラバラやけど。
そんな風に1人で魔法の練習をしていたら誰かが後ろで拍手した。振り返るとそこには夕映がおった
「どないしたん?」
「すみません、たまたま見掛けたので着いてきてしまいました。凄いですね木乃香さん。まだ魔法を習って一月も経っていないのでしょう?」
「大した事あらへんよ。ちょっとコツを掴むのが上手かっただけや」
「実はネギ先生と契約して私も魔法を教えてもらう事になりましたので、そのコツを教えてもらえませんか?」
「夕映が魔法を? 何でなん?」
単純に不思議やった。だって夕映が魔法を習う理由が分からへんかったから。護身ならもっと使いやすい体術とかでええ。
「何でって、魔法ですよ。科学では存在が否定された神秘の力。それを自分が使えるなんて素敵じゃないですか?」
「そんな、理由なん?」
「そんなと言われるほどではないと思うのです」
夕映はウチの言葉にムッとしていたけれど、ウチは開いた口が塞がらんかった。ネギ君は何も言わんかったんか? 魔法は人を簡単に殺せる技術や。単純に言えば拳銃の使い方を覚えるようなもの。夕映はそれをきっと分かっとらん。魔法を使う上での覚悟を知らんのや。
ウチは新しい魔法を覚える度にいつかこれで誰かを傷付けるかもしれんと心に刻んどる。ウチの行動で人の人生を奪うかもしれんと思うと手が震える。それでもウチは士郎さんの為にも強くならないかん。例え誰かを傷付けたとしてもや。意識はしとらんやろが明日菜もネギ君の為なら同じように誰かを傷付けても戦うやろうし、せっちゃんなんかはウチの為やったら殆ど躊躇せんと思う。2人共覚悟はあると思っとる。
でも夕映は違う。ただ理想を見て、夢に触れる事が出来てはしゃいどるだけ。魔法の現実を知ろうとしとらん。
「そっかぁ、ごめんなぁ」
だからって夕映の理想を否定するつもりもあらへん。理想は大事やと思う。それを原動力にする事が出来る。いつかはきっと理想と現実のギャップに気が付くとは思うけれど、それを乗り越えるのは夕映自身や。今ここでウチがそれをぶつけるべきやないと思うんや。
「コツやったね。うーん、体内にある魔力を意識して……」
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木乃香の成長スピードは驚異的と言っていい。師匠たる私も鼻が高いが、次のステップに進む速度が速すぎて教材を用意するのも手間だ。
「楽シソーダナ御主人」
「楽しい? そうだな。手間のかかる弟子というものはどうも愛着が湧きやすい」
「アノ坊主ニモ愛着ガ湧クノカヨ」
坊やに愛着か。無くはないな。だがやはりある程度育ったものよりは全く無垢なものを自分の色に染めていくのがいい。
坊やも木乃香もスポンジのように教えた事を吸収するので教える側としての楽しさもある。実は最近は士郎にも魔法を教えているのだが、これがまた全く使えそうにない。こっちはこっちで手のかかる赤子のようで愛らしくはあるのだが。
「始動キーはどんなものがいいだろうな。それは個人に任せて中級魔法にチャレンジさせてみるか」
「御主人ガ楽シソーデ何ヨリダゼ」
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