今日は外で雨が降っていたが、エヴァンジェリンの別荘では関係なくネギ達は別荘で修行をしていた。ネギはエヴァンジェリンから様々な魔法を教わりながら、魔法を習いたがっていた生徒達に魔法を教えるという忙しい時間を過ごしていた。
「プラクテ・ビギ・ナル、火よ灯れ…………むぅ、消えたか」
その近くで士郎も魔法の練習をしていた。干将莫耶を杖代わりとしているものの、僅かな時間で火が消えてしまう。最初は火を灯す事すら出来ていなかったので成長していると言えるが、その速度は魔力の制御法を知っている割には極めて遅い。目標は自力での飛行だが、何年掛かるか分かったものではない。
「士郎さんが普段使っている魔法ではこういう練習はしなかったのですか?」
流石に火を灯すのすら精一杯というのはネギも驚いたのか質問してくる。士郎は恥ずかしいのか情けないのか、頭を掻きながら答える。
「親父から教わったのは間違ったやり方だったし、俺の属性自体も特殊なものだったからそっちに合わせた鍛練ばかりやっていたんだ。だからこういう一般的というか、基礎的なものはやっていないんだ」
「そうなんですか。どんな属性なんですか?」
「それは剣だな」
「剣?」
ネギはこれまで聞いた事もない属性に首を傾げる。しかし自分の知らないような珍しい属性なら、特殊な鍛練だけでも士郎が強いのもおかしくはないと納得していた。
「士郎さん、ウチが教えよか?」
「そうしろ士郎。従者の方がよっぽど優秀だからいい機会ではないか。坊やは自分の生徒を教えておくんだな」
「くっ……頼むよ木乃香」
「えへへー」
世話になりっぱなしだった自分が士郎の力になれるのが嬉しいのか木乃香はニコニコとしていた。
ーーーーーー
夜になって士郎は茶々丸と全員の食事を作っていた。いつもそこにいる木乃香はまだエヴァンジェリンに教わりながら魔法の練習をしている。
「やはりこれだけ人数がいると作るのも大変ですね」
「そうだな。でもこうやって大人数の料理を作るのも少し懐かしいな」
「士郎さんは大勢で食事を取る事が多かったですからね」
「ああ。それに食べる量も一人一人結構あったからな」
衛宮家ではセイバーや大河が沢山食べており、桜もそれなりに食べる方だった。海外に出てからも執事として働いた時や、戦場での炊き出しなどで量のある食事を作るのは士郎は何度もやっていた。
「よし、こんなものだろう」
作られた和洋中問わない大量の食事。それを持って皆の所へ向かったところ、ネギを中心に皆が何かをしていた。
「エヴァ、何をしているんだ?」
「坊やの記憶を覗いているのだ。貴様も見るか?」
「ネギ君の記憶をか? いいのかネギ君」
「はい、大丈夫ですよ」
のどかの持つアーティファクト、イドノエニッキにはネギの記憶が写し出されていた。
幼少の頃のネギは父親を求めていた。英雄たる父は自分がピンチになると助けに来てくれると信じ、無茶ばかりしていた。周りの大人に叱られながらも父が助けに来てくれる日を待ち望んでいた。
それは最悪の形で実現する。村を襲う魔族の群れ。村人達は逃げ惑い、そして逃げ切れずに石化されていく。ネギの姉、ネカネもネギを守る盾となり脚を石とされ、ネギを守る者が誰一人として居なくなった時、その男は現れた。
大規模な魔法で魔族の群れを凪ぎ払う。村人達がどれだけ魔法で対抗しても敵わなかった相手を一瞬で消し飛ばしていく。ネギはその力を恐れ、しかし姉を守る為に立ち上がる。
「お前がネギか。お姉ちゃんを守っているつもりか?」
伸びてくる手。恐怖から目を閉じたネギの頭が優しく撫でられた。
「大きくなったな」
「えっ?」
「そうだ、これをやろう。俺の形見だ」
手渡された杖。そしてネギは直感した。この人こそが父、ナギ・スプリングフィールドなのだと。
「もう時間がない。じゃあなネギ! 幸せに育てよ!!」
「おとうさん! おとうさん!!」
飛び去るナギを転びながら追い掛けるネギ。しかしその姿は遂に見えなくなってしまった。
ネギの記憶を見た生徒達は殆どが泣き、ネギに協力して頑張ろうと言っていた。士郎の記憶を見た木乃香や茶々丸も2人の記憶を比べるなどという事はせず、この過去を抱えて頑張ろうとしているネギの応援をしようと考えていた。
「そういえば士郎さんって昔はどんな人だったんですか? 折角ネギ先生の過去を見たんだし、士郎さんの過去もちょっと見せて下さいよ」
朝倉和美の好奇心から出た何気ない言葉は一部の者を凍り付かせた。
なんか朝倉が言い出してしまった。どうなってしまうのでしょう。