僕の前に立つ悪魔。村を襲った魔族の姿が思い出されるけど、そんな事はどうだっていい。生徒を人質に取った以上、絶対に倒す。
「オオォォッ!!」
砲撃のようなパンチが飛んでくる。パワーもスピードもテクニックもある。でも不思議と怖くはない。当たればダメージはあるだろうけど、死ぬようなものではない。
軽く受け流し懐に飛び込んで崩拳を叩き込む。多少後退りはさせたものの、ダメージは軽微といったところ。正体を現して肉体の強度まで変わったみたいだ。
「その若さでこの実力。強いなネギ君」
「ネギばっか見とるんやないで!!」
小太郎君の分身が一斉に悪魔に襲い掛かる。あの強固な肉体にはろくにダメージが入っていないようだし、悪魔の一撃で数体の分身が消し飛ぶ。でも目眩ましとしては十分だ。
どれだけ硬いといっても生物が基本となっている以上は柔らかい部分も存在する。僕は一気に走り出し、悪魔の顔面へ向かって飛び出した。狙うのは眼球。流石に眼球を硬くなんて出来はしない。
「それは流石にさせられないな!!」
迫ってくる悪魔の手。掴まれれば僕の体なんて簡単に握り潰されるだろう。
「契約執行1秒間! ネギ・スプリングフィールド!!」
「ギャアァァッ!??!?」
ほんの一瞬の強化。それにより掴まれるよりも早く眼球へと指を突き立てた。でも浅い。悪魔は着地した僕を目から血を流しながら睨んでいる。
「おのれ……」
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル。来たれ雷精、風の精。雷を纏いて吹きすさべ、南洋の嵐」
「!」
僕の詠唱が聞こえたのか悪魔は防御の体勢に入る。どうやら視力は僅かのようだ。こちらの狙いすら分かっていない。
「雷の暴風」
「「「うぎゃあぁぁぁぁっ!!?!?」」」
僕の放った魔法は明日菜さん達が戦っていた鬼達を呑み込んだ。悪魔は何が起こったのか飲み込めずに呆然としている。
「皆さん! ここは危ないので早めに帰って下さい!」
「あんたの魔法が一番危なかったわよバカネギ!!」
「まあまあ。ほなネギ君、負けんといてや」
「硬い相手には浸透勁アルネ!」
「あっ!! ネギ先生危ない!!」
のどかさんの言葉の前から回避動作はしていた。真横を通り過ぎる巨腕。視力が落ちていなければこうも余裕に回避出来なかった。
古老師の助言を活用させてもらおう。振り向き様に悪魔の顔面を平手打ちする。浸透勁による一撃は脳に直接衝撃を与え、顔の穴という穴から血が流れ出す。しかし悪魔は膝をついただけで倒れない。
「ネギ! 合わせぇや!!」
「うん!」
ーーゴシャッ
小太郎君が背後から、僕は前から蹴りを悪魔の頭に叩き込んだ。意識が朦朧としていた悪魔への止めの一撃。遂に悪魔は地面へと沈んだ。でもこれで終わりじゃない。えっと、確かこの辺りに……あったあった。
「封魔の瓶」
よし、これで封印完了。どこかで時間を作って処分しよう。
ーーパチパチパチ
「悪くなかったぞ坊や」
「師匠! 見ていたんですか?」
「何よエヴァちゃん。見ていたなら手伝ってくれても良かったじゃない」
「この状態の坊やに私の助けなどいらんかったろう」
珍しい。師匠が僕を褒めている。これは嬉しいな。
「なぁエヴァ師匠。士郎さんはどこなん? いつの間にか消えとったけど」
「ん? あいつなら月詠を連れて」
直後、師匠の声を遮るかのような爆発音が響いた。全員が音の方向を向くと、そこには異様な光景が見えた。雷撃が落ち、花弁が舞い、斬撃が飛び交う。天変地異と言われてもおかしくはない。
「……ん、この、音は……?」
「せっちゃん、おはよう」
「このちゃん? ……あっ、そういえば私は捕まって」
「起きるのが遅いな桜咲刹那。平和というぬるま湯に浸かりすぎではないか?」
「うっ……申し訳ありません」
「はは、師匠そう責めないであげて下さい。さあ皆さん、月詠さんの相手は士郎さんに任せて帰りましょう。僕と木乃香さん、それと師匠は残る形でいいですよね? 小太郎君はどうする?」
「勿論や」
「ああ。その前に、氷盾」
師匠の盾が向かってきた斬撃を防いだ。士郎さんが戦っているであろう場所からかなり離れているのに飛んでくるなんて、天変地異っていうのもあながち間違いじゃないかも。
「ごっついな……月詠にはここまでの力はなかった筈や。かつての仲間でもあるし、ちょっと見学させてもらうわ」
「見ての通り危ないです。早く帰って下さい」
「ネギ先生はどうするです?」
「僕は麻帆良に被害が出ないようにさっきみたいな斬撃を撃ち落とします。僕がいる以上、あまり好き勝手にはさせません」
次回は士郎と月詠、4度目の対決です