剣と杖と先生   作:雨期

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リアルで嫌な事が多すぎて書く気力がなくなっていましたが私は失踪しません


第54話『対決! 月詠戦!』

 ネギ君が戦いを始めた頃、まだ俺は月詠と歩いていた。場所の移動を提案したのは俺だが、場所を選んでいるのは月詠だ。

 

「うふふ~、まるでデートやねぇ~」

 

 生憎とこんな大雨の夜に、雨具も着けず自分に対して殺意を向けてくる相手とデートをする趣味はない。ロマンの欠片もありゃしない。

 嬉しそうにぴょんぴょん跳ねていた月詠がクルリとこちらに振り返る。その姿はとても可憐だ。普通の少女として街中で見つけたら思わず目を奪われるだろう。そして抜かれる刀。以前までは名刀止まりの刀だったが、今の刀は宝具に片足突っ込むような代物になっている。

 

「この辺りでやりましょか」

 

 かなりの道幅のある大通り。特に障害物もなく、こんな時間なので車通りもない。とはいえ完全とも言い難い。簡易的な人払いの結界を張る。

 

「攻めてこないんだな。結界を張っている間なんて隙だらけだろう」

 

「今回は殺し合いという訳でもありまへんし、奇襲したところで防がれるのがオチでしょう?」

 

「殺し合いじゃない? それだけの殺気を放っておいてか?」

 

「はい~。秘密にしろとは言われてませんので言いますが、ウチとヘルマンはんの仕事は子供先生とお姫様の潜在能力、そして士郎はんの調査ですぅ。ヘルマンはんだけやと厳しいと思われとったみたいやけど、まさか子供先生にすら圧倒されるとは思っとりませんでしたわぁ」

 

「今のネギ君は強いさ。あんな奴なんかには負けはしない」

 

「ウチもそう思いますぅ。では……えーい!」

 

 無造作に振るわれる2本の刀。そこからは無数の斬撃が飛ばされた。その斬撃を壁にするように走ってくる月詠。干将莫耶で斬撃を全て切り落とし、直接迫る刀を受け止めた。瞬間俺は背後へと吹き飛ばされた。

 

「チッ」

 

 着地は問題ない。しかし今の威力は斬岩剣のもの。飛ぶ斬撃は斬空閃と同じ。月詠は通常の攻撃全てが神鳴流の技となるように修行したのか。大した努力と才能だ。

 

「せーや、とーう」

 

 飛ぶ斬撃、重量級の斬撃、雷撃を纏った斬撃。2本の刀からランダムに繰り出される斬撃はなかなか隙を見せてはくれない。そして斬撃に混じり、気による花弁が舞う。触れた瞬間に肌が切れたのでそちらにも意識を向けなくてはならない。

 

「うーん、流石は士郎はん。全く打ち崩せまへんなぁ」

 

「その割には随分と余裕だな」

 

「言いましたやろ。今回は士郎はんの調査なんですわぁ。このくらいは防いでもらわな困りますぅ。さて、次は技を使わせてもらいますね」

 

「ここまで技は使わなかったというのか?」

 

「あれはただの攻撃ですわぁ。らーいめーけーん!」

 

 それをどう形容したものか。目の前に壁となり向かってくる雷。巨大な道路の道幅いっぱいに広がったそれに逃げ道などない。

 

「投影(トレース)、開始(オン)」

 

 だが対抗策などいくらでもある。投影したのは刀。それをブーメランのように投げ付けると、壁となった雷は真っ二つに裂けて霧散した。投げたのは雷切。雷神を斬った日本刀だ。

 

「ざーんくーせーん……らんぶー」

 

 無差別に放たれる飛ぶ斬撃。無差別に周囲の建物や街路樹も切り刻む。まるで嵐のようだ。そしてその威力は斬岩剣に匹敵し、一部の斬撃は雷を纏っている。そんなものを放ちながら月詠は徐々に近付いてくる。

 短期間でこの成長は想定外だ。才能で言えば刹那と大差ないと思っていたが、血反吐を吐くような鍛練を積み重ねたのだろう。だが今はまだ俺の方が強い。

 弓矢を投影し射出する。斬空閃など容易に貫通するそれを直接切り落とそうとした月詠だが、矢は触れた瞬間に爆発した。矢はまだ止めない。確実に月詠が行動不能になるまでは気を抜いてはならない。

 

「二刀大旋風」

 

 矢が爆発すると知ってからは受け止めず回避しながら刀を振っていた月詠の動きが止まった。正確には最小限の動きで矢を避けながら何かの構えを取っている。だが避けきれなかった矢は体を掠め、手足の肉を引き裂いていく。行動不能にするのが狙いだったので頭部や胴体は狙っていないが、それでも出血多量になれば死に到る。そんな事はあいつも承知の筈だ。

 まるで鳥か蝶のように両手を広げていた月詠は回転を始めた。刀に籠められた気はまだ気に疎い俺でも察知可能なほどに濃密。徐々に速くなる回転はやがて俺の矢をも寄せ付けず、巨大な竜巻となった。

 

「百烈桜華斬」

 

 先程までの攻撃を嵐のようだと思っていたが、まさか本当に嵐を造り出すとは思わなかった。周囲のもの全てを切り刻みながらこちらに直進してくる竜巻に矢は通じない。放置すれば俺ごと街の一部を呑み込むだろう。なら消し飛ばそう。

 

「投影(トレース)、開始(オン)!!」

 

 イメージするのは1本の金剛杵。真名解放もない使い捨ての宝具。ただ持ち主が誰であろうと同じ力を引き出す便利なものだ。使い捨てなのも俺の投影なら関係はない。

 

「行け、ヴァジュラ!!」

 

 投げ付けたそれは電光となり竜巻に直撃するとそのまま貫通していった。形を維持出来ず消えていく竜巻。残ったのは目を回してフラフラとしている月詠だけだった。

 

「はらほらひれ~……バタンキュ~」

 

 手足からの出血による一時的な貧血もあるのだろうが、敵前で倒れるとは相変わらず図太い奴だ。さてこいつはどうしようか。相当街に被害が出たし、学園長に渡すのが

 

「…………フェイトか」

 

「また会ったねエミヤシロウ」

 

 裏にいたのはこいつか。今は敵意を感じられないが、この雨の中で水を使うこいつの相手は分が悪い。このまま敵対しないでいてもらいたいが、さて。

 

「士郎さーん!!」

 

「んげっ!? お前はフェイト!? なんでお前までおるねん!」

 

「ネギ・スプリングフィールドに犬上小太郎か。遠方で攻撃の準備をしているのは闇の福音に近衛木乃香、他にも誰かいるね。戦えばお互いただでは済まないが、今は月詠の回収に来ただけなんだ。見逃してもらえるかな?」

 

「ああ、帰ってくれ」

 

「はぁっ!? 兄ちゃんは敵を見逃すんか!?」

 

「僕も士郎さんに賛成かな。戦わなくて済むならそれが一番だよ」

 

「懸命な判断、感謝するよ。そうだネギ・スプリングフィールド。君の持っている封魔の瓶を渡してもらえるかな?」

 

「これの事? 残念だけどこれはこっちで処分するから」

 

 見せ付けるように小さな瓶を取り出したネギ君。一見すると油断をしているようだがあれは誘っている姿だ。

 

「…………隙がないね。君の実力を見た対価と考えて瓶は諦めよう。月詠、帰るよ」

 

「フェ、フェイトはん、ちょっと待って。士郎はん、ウチ強かった?」

 

「? 強かったが」

 

「殺してもええくらい?」

 

「……このスピードで成長されては加減が出来なくなるな」

 

「えへへ~、そっかぁ、そうなんかぁ。ふふっ」

 

「もういいね。帰るよ」

 

 水に呑まれて姿を消すフェイトと月詠。今日のところはこれで終わりか。

 

「士郎さん、お疲れ様でした」

 

「警戒ありがとう、茶々丸」

 

 空から飛んできたのは茶々丸。俺と月詠が戦っている最中、ずっと狙撃の用意をしていてくれた。何かあっても大丈夫なように待機していてくれたのは心強かった。

 

「ネギ君、怪我はなかったか?」

 

「はい。僕も皆さんも無傷です。士郎さんは、ちょっとほっぺが切れてますよ」

 

「この程度は何でもないさ」

 

「兄ちゃん強いんやな。街はボロボロやのに怪我はそれだけかいな」

 

「守りは得意だからさ。俺達も帰って休もう。怪我はなくても疲れたよ」

 

 この雨で体も冷えた。ゆっくり風呂に入ってゆっくり寝よう。




オリジナル技をつい使わせてしまった
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