剣と杖と先生   作:雨期

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えー、生存報告を兼ねて更新します
正直とてつもないスランプでして、書いては消してを繰り返していました。この話も納得いっていませんが、でもいつまでも更新を停止しているわけにもいかず、とりあえず更新します


第55話『自己嫌悪』

 ヘルマン襲撃の晩、刹那は眠れない夜を過ごしていた。あの場で全く役に立てなかったという事実もそうだが、それ以上にショックだった事があった。

 

 ネギ、エヴァンジェリン、小太郎、木乃香が士郎の元へ向かおうとした時、刹那はそこに着いていこうとした。その場にいたメンバーでも実力は上位の筈の刹那だが、ネギと木乃香はみんなと一緒にいてほしいと頼み込んでいた。

 

「どうしてですか? 今の月詠は強大な敵です。少しでも戦力が多い方がいい筈です」

 

「ですが万が一また襲撃があったら……」

 

「そうよ。せっちゃんにはみんなを守ってほしいんよ。お願い。な?」

 

「しかし」

 

「貴様ら、そう優しく言っても無駄だぞ。足手まといだとはっきり伝えてやれ」

 

「っ!? 足手まといになどなりません!!」

 

 誰よりも強いという訳ではない。それでも邪魔になるほど弱くはない。いくらエヴァンジェリンといえどここまでの侮辱は許せないと語気が強くなる刹那に対し、エヴァンジェリンは呆れたように溜め息を漏らした。

 

「はぁ、そう思うなら我が弟子に聞くといい」

 

 答えを聞くまでもない。2人なら自分を肯定してくれる。そう信じて見た2人の顔は刹那の脳裏から離れない。うつむき、とても申し訳なさそうな顔をする木乃香。そして曖昧な笑顔を浮かべているネギ。それが何よりの答えだった。

 

「分かっただろう。今の貴様は気が抜けているんだ。1人で木乃香を守ろうとしていた時には周り全てが敵とみて、常に警戒を怠らない姿勢があった。今と比べれば剣術の腕前は落ちるだろうが、あんなスライムに捕まる事などなかった筈だ。

人というものは気持ちの変化で強くも弱くもなる。現に坊やは魔族相手に無傷で戦え、木乃香は魔法を覚えたばかりにも関わらずスライムだけでは手に余ると判断された。対して貴様はどうだ? 木乃香の側に多くの味方が現れ木乃香を守る事が容易になり、自分は士郎に指導をしてもらい腕が上がった。少し前までと比べれば恵まれた環境で、堕落した」

 

 反論はない……何も言えない。あんな下級の魔族に遅れを取るほどに油断していたのだ。そして気が付いてからもみんなの安全を確認して安堵しただけ。士郎さんがいるというだけでもう大丈夫だと刹那は思ってしまった。

 

 結局刹那はみんなを寮まで護衛してから部屋に引きこもっている。今の自分では何も守れないのではないかとずっと悩んでいた。

 ふと夕凪が目に入る。詠春から譲り受けた愛刀。それを握り締め外へ出ると振りかぶり、そして振り下ろす。以前とは比べ物にならないほど成長しているのがそれだけで分かる。しかしそれに対して内面は明らかに劣化していた。そして剣術についてもきっと月詠に劣ると刹那は判断していた。直接月詠と士郎の戦いを見たわけではないが、飛び交う月詠の攻撃、そして竜巻。あれの再現は刹那には出来ないだろう。

 

「私は、どうすれば……」

 

 過去のような自分に戻れるのか。刹那はただそれだけを考えていた。再び木乃香から離れ、従者として陰ながら見守る事が今更出来るだろうか。人を寄せ付けずに過ごした日々に戻るなど、これまで考えた事もなかった。しかしそうしなければまた同じ過ちを繰り返すかもしれない。

 結局一睡もする事なく夜が明けた。フラフラとした足取りで向かったのは龍宮神社だった。

 

「おや、早朝から珍しい客だな」

 

「頼みがある。私を襲ってもらいたい」

 

「おかしな依頼をするものだな。残念だがそういった趣味は「ち、違うぞ! 攻撃対象としてもらいたいという事だ!」ふむ、それもまたおかしいな。ターゲットが依頼主の依頼など初めてだ」

 

「今の私は腑抜けている。常に誰かに狙ってもらうのが特効薬になると思ってな。金さえ出せば何でもしてくれるだろう?」

 

「……私に依頼するのだからそれなりに準備はしてあるよな?」

 

「ああ、十分に」

 

 財布から金を取り出そうと懐に目をやった瞬間にこめかみに冷たいものが当たる。拳銃だ。それもモデルガンなどではない実銃。

 

「こういう形になるが、構わないな?」

 

「…………くっ、ははっ……本当に、私は弱いな」

 

「弱くはないぞ」

 

「それは力だけ。実戦になればこうも隙だらけだ。弱いと言わずして何と言う? ふふっ、惨め……」

 

 常に意識を緩めない為に依頼に来たというのに早々に油断をする。そんな自分の様子を自嘲する刹那。真名は面倒な依頼を受けてしまったかもしれないと顔を引きつらせていた。

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