剣と杖と先生   作:雨期

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リハビリが足りんですね。週刊くらいまでペースをあげたいです。


第56話『超包子』

 早朝に士郎と茶々丸は林道を歩いていた。士郎の背中にはエヴァンジェリンが引っ付いている。

 

「日が昇るのも早くなってきたな」

 

「そうですね。マスター、起きていますか?」

 

「んむっ……」

 

「眠いなら無理して付いてこなくても良かったんだぞ」

 

「出来立ての士郎の中華を、朝から食えると思えばこの程度……」

 

 士郎達の目的地は超の経営する超包子。昨晩超から連絡があり、士郎に店に来てもらいたいとの事だった。何でも店についての相談という事らしい。茶々丸は超包子で働いている為、朝の仕込みに参加する為に同行し、エヴァンジェリンは士郎が店の食材で作る中華料理にありつく為に同行している。

 

「おっ、やってきたネ。早朝から済まないネ」

 

「構わないさ。俺だっていつもこのくらいには仕込みを始めるから朝は慣れている」

 

「それはそれは。しかしエヴァンジェリンさんも来るとは予想外だったヨ」

 

「朝飯の為だ……」

 

「マスター、お顔を洗ってきては如何でしょうか?」

 

「うむ……」

 

 士郎の背中から降りてふらつきながらお手洗いへ歩いていったエヴァンジェリンを見届け、茶々丸は仕込みの為に厨房に入った。

 

「学生なのに朝から仕込みなんて大変だな」

 

「毎週やっている訳でもないヨ。それで相談なんだけど、いいカナ?」

 

「ああ。平行世界から来た事を見破られた報酬があるしな。しかし店の相談なんてされても俺は経営なんてした事ないぞ」

 

「ハハハッ、それは期待していないヨ。近いうちに麻帆良祭、学園祭があるのは知っているネ?」

 

「勿論。かなり大規模らしいな」

 

 麻帆良の学園祭は都市1つ丸ごと使った祭りのようなもので、その期間の盛り上がりはそれはもう凄まじいものだ。麻帆良のサークルの中にはその期間に数千万もの売上を出すサークルもあるほどだ。超包子もこの例に漏れず、酷く忙しい期間である。

 

「士郎さんの料理の腕前はよく聞いているヨ。どうかその腕を貸してもらいたいネ。勿論士郎さんの意見や自由時間は大切にするヨ」

 

「そうだな……」

 

 手伝いたいのは山々だ。しかし士郎も用務員としてその期間には学園中を駆け回り、物品の故障等が発生すれば即座に駆け付ける必要がある。自分の仕事を放ってこちらの手伝いをするのは流石に問題がある。ただ超包子が普段から人気店だというのも知っている。麻帆良の学園祭に初参加だが、規模を考えれば超包子がどれだけ混雑するかも予想がつく。

 学園祭は学生が楽しんでこそ。店に付きっきりで超達が学園祭を楽しめないというのはいただけない。

 

「少し学園長と話してみるよ」

 

 携帯電話で連絡を取る。まだ朝早いというのに学園長もすぐに電話に出た。

 

『もしもし、どちら様かな?』

 

「早朝からすみません。衛宮です」

 

『何かあったのかね?』

 

「少し頼みがあります」

 

 学園祭の期間、少しだけでも超包子の手伝いをしたいという旨を伝える。それを聞いた学園長は笑って答えた。

 

『実は学園祭の期間は衛宮君には休みを取ってもらう予定じゃったのじゃよ』

 

「えっ、休み、ですか? でも忙しい期間に休みなんて」

 

『折角麻帆良に来たのじゃ。初めての学園祭なのに仕事に追われては勿体ないじゃろ。職員が1人休んだ程度で問題が発生するような事はない。好きなように過ごしてくれれば良いぞ』

 

「…………ありがとうございます。なら好きに過ごしますよ」

 

『お主の事じゃし人助けばかりしそうじゃな。ホッホッホ』

 

「否定はしませんよ。では失礼します」

 

「問題なかったようネ」

 

 超はニヤニヤとした顔でそう告げる。士郎も頷き、学園祭の期間は超包子の手伝いをする事が決定した。そんなところへ顔を洗い終わったエヴァンジェリンがやってくる。

 

「うん? まだ調理に入っていなかったのか?」

 

「エヴァの方こそ随分と長かったな」

 

「眠気が取れなくてな」

 

「さて士郎さん。早速だけれど腕前を見せて欲しいネ。炒飯、お願いできるカナ?」

 

「わかった。エヴァもそれでいいな?」

 

「朝だからあんまり脂っこくしてくれるなよ?」

 

「善処はするけど、炒飯なんだ。しっかり油は使うからな」

 

 厨房に入っていった士郎。その姿を見送ると超はエヴァンジェリンへと声を掛けた。

 

「聞いていた通り、学園祭の期間は士郎さんを借りるヨ」

 

「ずっとという訳でないのなら構わん。いざとなれば勝手に呼び出すしな」

 

「それとエヴァンジェリンさんと士郎さんの2人にお願いなんだけど、まほら武道会に参加してもらいたいネ」

 

「? あんなちっぽけな大会に出場しろだと?」

 

 まほら武道会は当時はかなり大きな格闘大会として学園祭の目玉の1つだった。しかし今では賞金10万円程度の小さな大会となっており、エヴァンジェリンも話として聞く程度で見に行った事もない。

 

「あの大会を買い取らせてもらってネ。2人には目玉選手として参加してもらいたいヨ」

 

「私は考えてやらなくもないが、士郎は諦めろ。あいつは自分の力を見せびらかすのは好まんし、仮に出たとしてもわざと負けるぞ」

 

「エヴァンジェリンさんの説得でそこを何とかできないカナ?」

 

「無理だな」

 

 きっぱりと否定をしたエヴァンジェリンに対し、超は参ったと言わんばかりに苦笑するしかなかった。

 その後士郎が持ってきた炒飯は当然のように合格。自分の味に自信があった超だが、それを初めて扱う厨房であっさりと越えてみせた士郎に本日二度目の苦笑を見せた。


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